アンケートを締め切りました。総数4248の投票、誠にありがとうございました。メインストーリーは柱間細胞ルートに決定となりました。これからの主人公の活躍に期待しておいてください。
また、他のルートにつきましては、メインストーリー中に戦った強敵相手に『もしもこの時、柱間細胞ルートじゃなくて他のルートだったなら〜』という形で書いていくつもりであります。
大蛇丸の持つアジトの一つ、薄暗く小汚い部屋の中心で、仙人状態の右近はあぐらを組み目を閉じてひたすらに集中していた。
すでに右近はその状態を五時間は維持していた。極度の集中状態を長時間にわたって維持していたために、身動き一つしていないにも関わらず額にうっすらと汗が滲んでおり、疲労が溜まっていることがわかる。
やがて右近は大きく吐息を吐き出して体を楽にする。
「ふぅ……ようやくここまで来たな……」
(そうだなぁ……双魔の攻は十分に極めたと言っていいだろうぜぇ)
集中を解いて目を開けた右近が呟き、左近がそれに同意した。彼らは今まで『双魔の攻』を極めるための修行をしていたのだ。
集中してじっと座っているだけに見えた右近は、その実、『双魔の攻』により細胞の一欠片の動きまで掌握することにより、呼吸や心臓の鼓動に至るまでを操作していたのだ。
右近たちにとってもそこまで精密な動きをすることにはかなりの集中力を要する作業であり、これほどまでの長時間にわたって維持できるようになるまでに半年の時間が必要だった。
そう、右近と左近が修行の方針を『双魔の攻』を鍛えたのちに柱間細胞を移植すると決めてから修行を開始して半年が経過していた。その間、二人はひたすらに『双魔の攻』を極めるべく精進を重ねていた。それこそ、音隠れの里にいる全ての人間との交流を断つ勢いであり、もちろん、里に合流したサスケともまだまともに話してはいなかった。
もっとも、サスケとの関わりが少なかったのは、サスケ自身が環境の変化とイタチ抹殺という大きすぎる目標に向けての修行で忙しく、周りと交流を重ねる余裕が無かったのも一つの要因でもあった。
そうやって少なくとも半年間をひたすらに修行に費やした右近と左近。その甲斐もあってか『双魔の攻』の質は十二分に高まったと判断できる状態にまで成長していた。
「ようやく次の段階へ……柱間細胞の移植に動けるな」
今の状態ならば柱間細胞を御し切れると判断した二人は、部屋を出て柱間細胞の使用許可を得るために大蛇丸へと直談判しに行く。
仙人の感知能力で大蛇丸が彼の自室にいることが分かった右近は、迷いなくアジトの中を進んでいく。やがて大蛇丸の部屋にたどり着いた右近たちは、椅子に座る大蛇丸へと対面して柱間細胞の使用を願い出た。
しかし–−−
「せっかくのあなたの申し出だけど……柱間細胞は貴重な物。ただではあげられないわね」
右近たちのお願いに対して、大蛇丸の答えは拒否であった。
「だけど、条件次第ではあげてもいいわよ……ククク」
「条件とは?」
「アナタに呪印を刻ませてもらうわ。もちろん、サスケ君や君麻呂に与えたものじゃなくて、封印術のやつをね」
大蛇丸が提示する条件はたった一つ。大蛇丸の呪印を受け入れること。
この呪印はサスケや君麻呂たちに刻まれた特別性のものではなく、右近たちが大蛇丸に逆らえなくするための封印術によるものだ。
(右近と左近……この二人の実力は今や私に匹敵するまでに成長してきた。そのうえで柱間細胞まで取り込んだとなると危険すぎるわ。絶対に反抗できないように首輪を嵌める必要があるわね)
大蛇丸は右近たちを危険視していた。もともと右近たちは修行に励んでおり、力への渇望が人よりも強かったが、次郎坊たち三人が死んでからはそれがより強く、過剰とも言えるほどに強くなっていた。
寝食すらも忘れるほど修行する二人を見た大蛇丸は、そう遠くないうちに自身の実力を上回られることを危惧していた。
ただでさえ三代目火影が施した『屍鬼封尽』により両腕を封じられていた大蛇丸と右近たちの実力差はほとんど無くなっていた。いや、むしろ純粋な戦闘能力だけを比較してみると右近たちが上であるかもしれなかった。大蛇丸には多数の禁術や戦闘経験があるので、実際の戦闘になれば結果は読めないが、右近たちと大蛇丸の力関係が拮抗していることは確かだった。
しかし、もしも右近たちが柱間細胞を完全に御しきれたとすれば、それが決定打となって力関係が逆転することは確実であり、それを大蛇丸は危惧していたのだ。
(だけど殺すには惜しい人材だわ。対暁を考えた時にこの子たちの戦力は必要不可欠)
だが、大蛇丸にとって右近たちの戦闘力は極めて重要なものでもあり、殺すには惜しい人材である。特に、大蛇丸が敵対している暁のメンバーには五大国の隠れ里の影たちに匹敵、あるいは凌駕する実力の者もおり、その者たちとの戦闘を考慮するならば右近たちの戦力は必要になるのは明白だった。
だからこそ大蛇丸は右近たちを短絡的に殺すのではなく、呪印により縛り付けようと考えたのだ。
「分かりました。呪印を刻んでください大蛇丸様」
この条件を右近たちは悩むそぶりすら見せずに即座に了承した。
右近と左近にとっては、呪印により大蛇丸のもとに縛り付けられるデメリットよりも、柱間細胞により力を付けるメリットのほうがはるかに大きかったのだ。
実のところ、右近たちは柱間細胞を盗み出して里を抜けることで、呪印に縛られずに行動することもできた。だが、それはあえてしなかった。それをすれば確かに大蛇丸に縛られることはないが、同時に右近たちは孤立無援になってしまう。
そして、その後に味方を得ようと他里へ取り入ろうとすると、大蛇丸の部下として木ノ葉と争った経歴が足を引っ張り難しい。抜け忍の集まりである暁に入ろうにも大蛇丸のスパイとして見られる可能性が非常に高く余計に入りずらい。
とは言え、右近たちはいつまでも呪印に縛られ続けることを受け入れたわけでもない。いつになるかは分からないが解除するつもりでおり、最悪の場合は原作でオビトがマダラの呪縛を断ち切るためにカカシに心臓を潰させたように、肉体の呪印の刻まれた部分を物理的に排除することで解除することを決めていた。
「ククク……良いわ、上半身をはだけさせなさい」
「はい」
右近たちが抵抗する気がないのを見た大蛇丸は機嫌を良くして右近たちに命じた。
右近は素直に大蛇丸の指示に従って上半身の衣服を脱ぎ捨てていき、その上半身があらわになる。まだ十五歳と発展途上の肉体だが、幼い頃からの修行と多くの実戦で鍛え上げられた肉体には無駄な脂肪も筋肉もなく、まさに戦う者の肉体となっていた。
上半身を露出した右近たちに対して、大蛇丸は座ったままの状態で首を伸ばして近づくと、右近の左胸、心臓を覆う筋肉に対して牙を突き立てた。
「ぐっ……」
右近は噛み付かれた痛みにより小さく呻き声をあげたが、大蛇丸は気にした様子を見せない。
そのまま数秒が経ち、ゆっくりと大蛇丸の首が右近から離れると、右近の左胸には先ほどまでは無かった自らの尾を噛む蛇のような紋様の呪印が刻まれていた。
「その呪印は木ノ葉の暗部、根で使われているのを改造したものよ。アナタが私に害をなそうとしたら呪印が動き、アナタの心臓はその鼓動を止める。精々慎重に動くことね」
「分かりました」
大蛇丸の説明に相槌を打ちながら右近は脱いでいた服を着る。
無事に右近に首輪を嵌められた大蛇丸は少し安堵した気持ちのまま、まだ着替えている最中の右近に対して疑問をぶつける。
「ところで……アナタは柱間細胞をどう使うつもりなの?そのまま移植するつもり?それともシンの細胞と一緒に使うつもり?」
「はい、そのまま使うつもりでおりました。シンの細胞は必要ありません」
大蛇丸の疑問に対して、右近は簡潔に返答した。
シンというのはかつて大蛇丸の実験体であった男であり、大蛇丸と共にクローンの研究をしていた男でもある。右近の原作知識には影も形も無い人物だったが、右近は大蛇丸の研究資料を読んだことで、右近も知り得ていた。
シンはうちはイタチに心酔していた。その気持ちは非常に大きく、うちは一族の細胞を培養して作り出した写輪眼を自身の眼球と入れ替えるのみならず、自身の肉体のいたる所に埋め込み、自らをうちはシンと、うちは一族を自称するほどである。
そもそもなぜそんなにも多くの写輪眼をシンは移植できたのか、その秘密はシンの特異な細胞にあった。
シンの細胞は他者から移植された組織に全く拒否反応を示さないのだ。この性質のお陰で、シンは写輪眼を身体中に埋め込んでも無理なく生命活動を維持しており、それを利用して大蛇丸によって作り出されたのがダンゾウの右腕であった。
ダンゾウの右腕は柱間細胞とシンの細胞を混ぜ合わせて腕を形作り、そこに大量の写輪眼を埋め込んで作成されたものであり、シンの細胞があるからこそ拒否反応を起こすことなくダンゾウに移植することができたのだ。
しかし、そんな有用な細胞を持っていたシンは、大蛇丸がイタチと敵対した情報を知ったことにより、大蛇丸の下から去ってしまった。本来なら大蛇丸は逃すつもりなど無かったが、イタチにやられて焦燥していたのと、シンの万華鏡写輪眼の瞳術が時空間移動を可能とするものであったためにシンに逃げられてしまっていた。
また、シンとダンゾウの左腕、また写輪眼に関する研究の詳細な情報は音隠れの里の中でもトップシークレットであり、とりわけサスケに対しては完全に秘匿されていた。サスケがうちは一族に誇りを持っているのは音隠れの里の中でも周知の事実であり、そんなサスケが写輪眼を好き放題に研究していたことを知れば、どのような感情を抱くのか明白だったからだ。
そんな便利なシンの細胞を移植することを明確に拒否した右近。それに対して大蛇丸は興味をそそられて、どんな考えでシンの細胞を拒絶したのか聞いてみたくなった。
「へぇ、なぜか聞いても良いかしら?」
「そうですね……明確な理由は二つです」
大蛇丸の質問に対して少し間を開けて考えを整理した右近は指を二本立てて、指折り数えながら理由を答え始める。
「一つ目はシンの細胞が無くとも融合するのに支障が無いことです。この半年で私と左近は双魔の攻を極めたと言える状態にまで仕上げました。今なら柱間細胞と融合し、制御することも可能であると確信しております」
「そうね……アナタたちが努力していたのは私も知っているわ。そこまで言うのなら、柱間細胞の制御も可能なのでしょうね」
シンの細胞は他者の細胞を移植する時の繋ぎとして有用であるが、右近たちの『双魔の攻』は単体で他者との融合を可能とする。柱間細胞は宿主を殺しかねないほど過激な細胞であるので半年の修行期間を取っていたが、他の細胞との融合ならそれも必要無かったほどに有用な術であるのだ。
その術の有用性を知り、右近たちの技量にも信用を置く大蛇丸も、制御困難な柱間細胞でも右近たちなら制御できると考えていた。
「二つ目はシンの細胞には明確なデメリットがあることです」
「拒否反応が無いことによる免疫不全ね」
シンの細胞は他者から移植された組織に対して全く拒否反応を起こさないがゆえに、害となる毒や病気にさえも反応を起せないリスクがあった。もちろん、なにもかも全て素通りしてしまうわけではないが、簡単な風邪でさえも重篤な肺炎などに繋がると考えれば、簡単に使える細胞ではないことが分かる。
鍛え上げられた双魔の攻によりデメリットを封じ込められるかもしれないが、試してみないと分からない。
そのことはシンの細胞を研究した大蛇丸にとって十分に承知していることであった。
「そうね……確かにアナタたちにはシンの細胞は不要だったようね」
「納得いただけたようでなによりです」
(もっとも、本当はもう一つ理由があるがな)
大蛇丸が右近の意見に納得している裏で、右近は心中で隠したもう一つの理由について考えていた。
右近の原作知識にはダンゾウの右腕がどうやって作られたかの知識は無かった。だが、サスケとの戦闘中にダンゾウのチャクラが減ったことで柱間細胞が暴走したことは知っていた。暴走の経緯から考えるに、シンの細胞には柱間細胞を制御する力など全く無く、柱間細胞を制御していたのはダンゾウであったことが分かる。
右近が考えるに、ダンゾウの義手の状態は非常に不安定でリスキーな状態である。例えるなら、柱間細胞という持っているだけで呪われる妖刀を、シンの細胞というマジックハンド越しに握っているような状態なのだ。マジックハンド越しに握ることで妖刀に呪われずに済んでいるが、そんな状態でまともに刀が振れるわけがない。運が良ければ敵を切れるが、そうでなければ即座に自身の肉体を切ってしまうような、そんな危険すぎる状態だ。
義手を使っていたダンゾウは熟達した忍であり、柱間細胞の力を極力発揮しないようにしていたにも関わらず、最後には危うく木になって取り込まれるところだったし、そうでなくても右腕と共に大量の写輪眼を失ってしまっていた。
それを知る右近にとって、シンの細胞はまったく信用に値しない存在だった。
「それでは早速柱間細胞を移植したいと思うのですが、よろしいですか?」
「ええ、いいわよ。早速研究室まで行きましょうか」
「はい、分かりました」
右近が急かすように柱間細胞の使用許可を大蛇丸から獲得し、二人揃って実験室へと移動することになった。
二人は大蛇丸の部屋から出てアジトの通路を並んで歩く。時折廊下で音隠れの忍と会うが、大蛇丸と右近が並んで歩くのを見た途端に慌てて頭を下げて道を譲る者ばかりだった。
そうして歩くこと数分。大蛇丸と右近は研究室の前へとたどり着いた。研究室の扉の鍵穴には複数の文字が書かれた封印札が貼られており、厳重に閉ざされていることが分かる。
大蛇丸が右手をゆっくりと顔の前にまで持ち上げて、その親指の腹を歯で薄く切り裂き、そのまま血に濡れた親指を封印札へと押し付けた。
大蛇丸の血を吸った封印札が赤く染まっていき、やがて全体が赤く染まると同時に、それまで扉に張り付いていたのが嘘だったかのようにはらりと剥がれ落ち、その下にあった鍵穴を露出させた。
封印札は大蛇丸の血に反応して解除される仕組みになっており、大蛇丸以外が入らないようにされていたのだ。
そうやって固く閉ざされていた鍵穴に対して、大蛇丸は舌を伸ばして懐から一本の鍵を取り出して鍵穴に差し込み、ぐるりと半回転させることで鍵を開けた。
固く閉ざされていた扉がゆっくりと開き、その中身を見せる。
開けられた部屋の中には大量の棚が並べられていた。そこには特殊な溶液に満たされた大小無数のガラス容器が安置されており、溶液の中には眼球や指などといった人体のパーツがぷかぷかと浮かんでいた。溶液はガラス容器に納められた人体細胞を腐敗させないための物であり、右近に前世で見たホルマリン漬けを彷彿とさせる光景であった。
この研究室は大蛇丸が数多持つ研究室の中でも特別な一室であった。柱間細胞やシンの細胞などの他に、過去も現在も含めた全ての音隠れの忍の細胞、各里の歴代影などの強者の墓を暴いて強奪した細胞などが集積されている、言うなれば細胞保管室であった。
この一室に保管されている細胞は大蛇丸の実験や『穢土転生の術』の媒介にされたりするために、大蛇丸以外が使用できないように扉が固く閉ざされていたのだ。
大蛇丸は部屋の中を無造作に歩いていき、右近がそれに続く。大蛇丸は無数にあるガラス容器の中からすぐにお目当ての代物、柱間細胞を保管している容器を見つけ出した。
「あったわ、これよ」
「これが……」
大蛇丸が柱間細胞の入った容器を右近に見せつけ、右近は感嘆の声をあげた。
仙人化している右近には柱間細胞の異質さがよく理解できた。
(明らかに他の細胞とは違う……鮮度が段違いだ)
普通なら柱間本人が死んでいる以上、その細胞も徐々に死滅していくはずだが、柱間細胞は生き生きとしており、その鮮度を保っている。
右近が仙人としての感知能力で柱間細胞を探ってみたところ、恐るべきことが分かった。
(この細胞の感じ……細胞自体が植物、木としての性質を強く持っている。それがこの鮮度を維持している理由なのか?)
仙人の感知能力は自然を強く感じ取れる。その感覚が柱間細胞から植物のような性質を感じ取っていた。初代柱間は木遁の使い手であり、その細胞が植物としての性質を持っていても何もおかしくはない。
だが、右近だけは何かの違和感を感じ取っていた。
(だが、何か違和感を感じる……いったいこの細胞はなんだ?)
(千手柱間はアシュラの転生体だ。どんな不思議細胞だとしてもおかしくはねぇだろ?それに、どちらにせよ移植することには変わりねぇんだ。早いとこ移植しちまおうぜぇ)
(それは……確かにそうだな)
悩む右近に対して左近が意見を言い、それに従った右近は湧き上がっていた疑問をひとまず置いておくことにした。
今するべきことは柱間細胞の謎を解き明かすことではなく、その力をものにすることであると意識を切り替えた右近が、大蛇丸へと話しかける。
「では大蛇丸様、柱間細胞を少しいただきます」
「ええ、どうぞ」
大蛇丸の許可を得た右近が、柱間細胞の入った容器の蓋を開けた。溶液独特の匂いが部屋に漂う中、右近はピンセットを使って柱間細胞を取り分けて、ガラス瓶の中に入れて、再び容器の蓋を閉めた。
その様子を見届けた大蛇丸は、右近へと話しかける。
「アジトの地下にある訓練場を一つ貸し切って細胞を移植しなさい。そこなら万が一に失敗してもアジトへの影響は少ないわ。まぁ、アナタなら失敗しないでしょうけどね……クククッ」
「はっ、分かりました」
機嫌良く柱間細胞を与えた大蛇丸は右近へと指示を出し、それを聞き入れた右近と共に部屋を出た。
「それじゃあ良い報告を期待しておくわ」
「はい、吉報をお待ちください」
部屋の鍵を閉めて再び封印を施した大蛇丸は、右近へと言葉を投げかけて自室へと戻っていく。右近はその後ろ姿に軽く頭を下げた後、大蛇丸に言われた通りに地下の訓練場へと足を運んだ。
地下深くの訓練場ということもあり、都合良く右近以外には誰もいない。
「それじゃあ始めるか左近」
(おうよ右近)
訓練場の中心に立ち集中力を高めていく右近。左近も右近に続いて同じように集中していく。
頭の頂点からつま先まで、全身に意識を張り巡らせる感覚で集中していく二人。二人は髪の毛の一本の動きまで把握し、血管に流れている血を感じ取っていく。
しかし、まだ足りない。さらに細かく、細胞の一欠片にまで意識を通していく。
徐々に、徐々に、二人は自らの肉体を完全に掌握していく。
集中すること十分。完全に肉体を制御した二人。
準備が完了したことを確認した右近は、柱間細胞をガラス瓶から取り出して手のひらに握り、『双魔の攻』で融合していく。
「ぐぅっ……」
(つぅっ……!)
『双魔の攻』により融合した直後、右近の手にまるで針で刺されたかのような鋭い痛みが走った。右近という宿主を得た柱間細胞が急速に活動を開始し、まるで植物が根を生やすように二人の肉体を侵食していき、その結果、手に痛みが走ったのだ。
痛みにより集中が乱れかけ、『双魔の攻』の制御が緩みかけたのを右近は強い意思で抑えた。
(集中しろ!この程度の痛みはどうってことはない!この細胞と融合することを第一に考えろ!)
(そうだ!この程度の痛みは屁でもねぇだろ!)
二人の意識が体内の柱間細胞に集中していく。
柱間細胞が二人の肉体を餌にして木へと成長しようとするが、それよりも早く二人の肉体が『双魔の攻』で柱間細胞との境界を犯していく。
徐々に二人の肉体と柱間細胞の境目が無くなっていく。細胞同士が結びつき、溶け合って混ざっていく。まるで蛹から蝶へと進化する時に一度肉体を溶かして作り変えるように、二人の細胞と柱間細胞が混ざり合い、全く新しい細胞へと生まれ変わっていく。
二人が行っていることは細胞の移植などではない。細胞との融合、真の意味での柱間細胞との共存であり、柱間細胞への完全な適合である。
ダンゾウのように暴走させることなく、オビトのように接合が甘いことなどなく、マダラのように柱間の人面瘡が浮かび上がることもない。柱間細胞を移植されたヤマトのように、いや、それ以上の適合率で融合していく。
その状態を一時間以上も維持していた二人。極度の集中状態を維持していた二人には時間感覚はすでになく、無限にも思える時間が過ぎていった時に、その感覚は訪れた。
「きた……!」
唐突に右近が歓喜の声をあげた。
(きたぜぇ……!!)
左近もまた、心中で喜びを爆発させた。
二人は激闘の末に、ついに柱間細胞との融合を成し遂げてみせたのだ。
その喜びに呼応して、肉体が自然にチャクラを生み出す。
「身体エネルギーが漲る……!」
(それだけじゃねぇなぁ……!自然エネルギーとの相性が桁違いによくなってやがるぜぇ……!)
今までの数倍のチャクラが右近の体から吹き出して全身に満ちる。その感覚に右近が驚けば、左近が自然エネルギーとの親和性が良くなったことを指摘した。
「確かにな。これまでよりももっと近くに感じられるような気がする」
左近の指摘を受けて右近が仙術チャクラを練ろうとすれば、今までよりも驚くほど簡単に仙術チャクラを練り上げられた。
その感覚のまま右近はふと思いついたことを実行しようとする。
「アレも試してみるか?」
(あぁ、今なら簡単にできそうだぜぇ)
右近が素早く水遁と土遁に使う印を即興で結び、最後に両手をガッシリと組んで術を発動させた。
「木遁の術!」
右近が宣言した途端に、右近の体からニョキニョキと木々が生えていく。それも、ヤマトが生み出していた角材のような状態ではなく、柱間が使っていたような生命力に満ち溢れた樹木の状態のものである。
「ふははははは!」
(ヒャハハハ……!!)
まるで新しい玩具を手に入れた子供のようにはしゃぐ二人は、寝食を忘れて夢中になって新しい体の性能を測っていく。
結局、大蛇丸が二人の成果を知ったのは融合成功から二日後、全く訓練場から出てこない二人の様子を見に行ったカブトからの報告で知ることになったのだった。