音の四人衆最強の男   作:北山 真

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天地橋の戦い その参

 

 時は少し遡り、右近左近とナルトとの戦いが始まった頃、もう一つの戦いも始まろうとしていた。

 

 大蛇丸の部下であるカブトと君麻呂の二名。それに対するは木ノ葉隠れの里所属のヤマト、サイ、サクラの三名。深い峡谷を挟んで睨み合う両陣営。

 

 一触即発の状況の中、この場にいる五名は全員が違う表情を浮かべていた。

 カブトは右近たちの思いがけない行動と、ここから今の状況がどのように推移していくのかを楽しみにして面白がっている様子であり、その口角は少し上がっていた。

 君麻呂は右近たちの行動に眉をひそめて苛立ちを隠せておらず、八つ当たりするかのように敵対者であるヤマトたちを睨みつけていた。

 ヤマトは今すぐにでもナルトを止めなくてはいけないと使命感を感じており、そのためには目の前で怒気を放つ君麻呂を倒さなくてはいけない最悪な状況に強く焦っていた。

 サイは右近の正論でナルトがなぜあれほど怒りを見せたのか理解が追いついておらず、ナルトのことを気にしてはいるものの、ダンゾウからの任務をこなすうえで目の前の相手とどのように交渉しようかと冷静に見定めていた。

 サクラは暴走したナルトのことを心配し、そうさせた自分に罪悪感を抱きつつも、今は気を散らしている場合ではないと、目の前の敵との戦闘に集中して凛とした表情を見せていた。

 

 五者の思惑が絡み合う中、初めに動いたのはカブトだった。だが、その動きは攻撃のためではなく、むしろその逆、戦いを傍観するための動きであった。

 

「じゃあ君麻呂、任せたよ」

「はい」

 

 カブトは戦闘行為を君麻呂に任せ、自分は木に背中を預けてリラックスした体勢になった。

 そんなカブトの動きを君麻呂は咎めることはなく、素直に頷いて了承した。

 

 カブトは大蛇丸からカカシと同じぐらいの実力者と評される忍である。実際に、下忍のサクラやシカマルに解除されたとはいえ、中忍試験会場の全員に対してまとめて幻術にかけられたり、医療知識を応用してチャクラのメスを用いて敵の筋肉や神経を切断したり、一時的に死体を操作したりと、高い技量を持つ忍である。

 

 だが、カブト本人はその評価のことを医療忍術の力量も含めた総合的なものであると判断しており、自身が戦闘能力に秀でている忍だとは思っていなかった。

 なぜなら、カブトの近くには数年前から右近左近や、君麻呂や重吾といった自身以上に戦闘能力の高い忍たちがいたからだ。

 

 ゆえに、この場でも戦闘は君麻呂に任せるつもりであったし、君麻呂もカブトほどの卓越した医療忍者をわざわざ前線に出そうとは考えていなかったので、一もニもなく頷いたのだ。

 

 だが、その前提を知らないヤマトたちからすれば、敵が勝手に一人減ったことに困惑することになる。

 

「何……?」

「どういうつもりなの?」

 

 カブトが傍観体勢に入ったのを見て、疑問の声をあげたヤマトとサクラ。

 その疑問に答えたのは君麻呂だった。

 

「お前たちぐらいなら僕一人で十分ということだ」

 

 三人を相手に一人で戦うことを自信満々で宣言した君麻呂に対して、ヤマトたちはさらに警戒を強めた。

 

 もともと、ヤマトたちからすれば君麻呂は情報の無い未知の敵であり、この場に現れたことと、立ち振る舞いから醸し出される強者の雰囲気を考えると要警戒対象ではあった。

 そんな君麻呂から、その実力を裏付けるような発言が飛び出したのだ。より警戒することこそあれ、侮ることなど決してできない。

 

 警戒する三人を相手にして、君麻呂はその実力を測るように様子見から入る。

 

「まずは小手調べだ……」

 

 君麻呂が両腕を二度振るう。一度目は外から内へ両腕を交差させるように、二度目はその逆、内から外へと振るった。その両腕の勢いに合わせて君麻呂の指の骨が飛んだ。その総数は両腕の指の数の二倍、すなわち二十個の指の骨がヤマトたち目掛けて勢いよく迫る。

 狙いはヤマトたちの四肢。『十指穿弾』に致命傷を与えるほどの威力は無いので、四肢を傷付けて動きを鈍らせるのが目的だった。

 

 肉眼で捉えづらい小さな白い礫の指弾を、ヤマトたちは君麻呂の腕の動きを見て避けた。高速で飛来した骨の弾丸は標的を穿つことなく森の中に消えていき、木や地面に当たって軽い音を立てた。

 いかに素早い指弾だろうと腕の動きからある程度の弾道予測は立てられるし、崖を挟んでいることで距離があったので、ヤマトたちは比較的簡単に避けられた。

 

 だが、それはあくまで単発ならの話だ。

 

「十指連弾」

 

 君麻呂が呟いた途端、ヤマトたちの目には君麻呂の両腕が分裂したように見えた。実際には分裂したわけではなく、君麻呂が両腕を高速で動かし続けるのをヤマトたちの目では捉えきれず、残像が目に焼き付いたことで両腕が増えたように見えたのだ。

 

 その目で追えないほどの動きに合わせて、無数の指の骨が雨あられとヤマトたちに襲いかかる。

 

「木遁・木錠壁!」

 

 君麻呂の腕が増えたように見えた瞬間、ヤマトは自身の危機感に従って目の前に木材のドームを形成することで骨の雨を防ぐ傘とした。

 同じく危機感に導かれたサクラとサイが咄嗟にドームの中に滑り込んだ直後、ドームの外壁にカカカカカカカッ–––と、軽い音が鳴り響き続ける。

 

 木材のドームが『十指連弾』により削られながらも三人を守り続ける。

 骨の雨は十秒、二十秒と続くが、『十指連弾』の火力では木のドームを貫くまでに時間がかかると判断した君麻呂が腕の動きを止め、右手に次の攻撃のための骨の武器を創造しようとした。

 

 武器を創造するために骨の雨が止んだ瞬間、ヤマトが叫ぶ。

 

「サクラ!」

「はいっ–––!しゃんなろーっ!!」

 

 ヤマトの声に応じたサクラが木のドームを内側から思い切り殴りつけた。師である綱手譲りの怪力を発揮したサクラの拳は、絶妙な力加減により木のドームを破砕することなく殴り飛ばし、木のドームが君麻呂に向けて勢いよく吹き飛んでいく。

 

「ふっ–––」

 

 一閃。君麻呂が右前腕部の骨を改造してひきだした剣を下から上へと振り上げたことで、飛んできた木のドームを真っ二つに切り裂いた。木のドームは空中で左右に分かれ、遮られていた君麻呂の視界が開かれた。

 

 ヤマトたちの動きを見ようとした君麻呂の視界に飛び込んできたのは白黒の大虎。

 木のドームを目眩しに、サイの『忍法・超獣戯画』により作られた墨汁の巨大な虎が、君麻呂の喉笛を噛みちぎろうと迫るが–––

 

「邪魔だ」

 

 再びの一閃。上から下へと振り下ろされた骨剣により白黒の虎も左右に切り裂かれ、元の墨汁に戻って地面を黒く染めた。

 

 その直後、今度は虎を囮にしたヤマトの『木遁の術』により作り出された多数の鋭く尖った角材が君麻呂を襲う。

 

「椿の舞」

 

 目前に迫る木材に対して、君麻呂が選んだのは今度も迎撃。右手の骨剣を閃かせ、連続突きを放つ。

 ガガガガッ–––と、木を断つ音が連続して響く。ヤマトは間断なく木遁による攻撃を放ち続けるが、その全てを君麻呂は剣一本、腕一本で壊し続ける。

 

「くっ–––」

 

 やがて根負けしたヤマトが『木遁の術』を止め、君麻呂を襲い続けていた角材の群れが姿を消した。

 君麻呂はその場から一歩も動くことなく、周囲の地面には粉々になった木屑が足の踏み場も無いほどに散乱していたが、君麻呂の足元だけは結界でも張られていたかのように綺麗なままである。

 

「この人……強い」

 

 サクラが油断なく君麻呂を見つめながら余裕の無い表情でしみじみと呟いた。

 

 木のドーム、『超獣戯画』の虎、そして多数の角材。サクラ、サイ、ヤマトにより行われたそれぞれの攻撃を陽動にした怒涛の連続攻撃を骨の剣一本で斬り伏せてみせた君麻呂の技量の高さに、三人の背筋に冷たいものが走る。

 

 崖を間にして一人と三人の睨み合いが続く中、ヤマトは右の手のひらにある文字が三から四になっているのを見て焦っていた。文字は九尾をナルトの中に封印した術と連動しており、四という文字はナルトの中にある九尾の力が尾が四本分まで解放されていることを意味していた。

 そして、尾が四本の状態のナルトは自来也に瀕死の重傷を与えたことすらあると、ヤマトは綱手から聞き及んでいた。

 

(少しでも早くナルトを止めなきゃいけない……が、目の前の敵は強敵だし、こっちには前衛がいない状態……戦況はかなり厳しい)

 

 今回ヤマトが率いる小隊のバランスは良くない。

 ヤマト、サイは中衛もしくは後衛。彼らが扱う術は応用力は高いが近距離向きではなく、前衛を後方から援護する時が最も力を発揮する瞬間であった。

 サクラは持ち前の怪力を踏まえれば前衛と考えられそうだが、そうではなく、彼女の本分は医療忍者として怪我人を治療することであり、立ち位置としては後衛である。彼女が倒れれば小隊全てを危険に晒すため、本来なら前衛として戦うべきではない。

 ナルトは『影分身』と『螺旋丸』を駆使して戦う前衛であり、『影分身』により小隊の前衛を一手に担う貴重な存在だった。

 

 だが、前衛のナルトが抜けたことで、小隊は後衛ばかりになり前衛不足が露呈した。

 

(誰かが奴の前に立たなくてはいけない……)

 

 瞬時に骨で武装を作り出す能力、華麗な剣捌きを含めた極めて高い体術の技量、それらを含めた君麻呂の近接戦闘能力は驚嘆に値する。暗部所属であり経験豊富なヤマトをして、君麻呂の実力の高さには舌を巻いていた。

 ゆえに、そんな君麻呂を相手にして、この場にいる三人の内の誰かが前衛に立たなくてはいけないのだが、ヤマトはそれを決めかねていた。

 

 まず、サイが前衛に立つ選択肢はヤマトの中には無い。サイの『超獣戯画』は筆で絵を描く必要があるが、君麻呂を相手にして悠長に絵を描いている暇など無いので、候補からは除外される。

 残るはヤマトかサクラだが、順当に考えれば前に立つべきはサクラである。

 ヤマトが立てばサクラは後方で医療忍術を使えるが、仮にヤマトが傷を負った場合、君麻呂を目の前にして医療忍術でゆっくりと治療している時間は取れないだろう。逆にサクラが前に立つ場合、もしもサクラが傷を負っても、ヤマトが後方から木遁で支援できるので、サクラが自分を回復させる時間を稼ぎやすいだろう。

 

 そう考えればサクラが前に立つのが自然である。だが、君麻呂という極めて危険な敵の矢面に立たせたくないという思いがヤマトにはあった。

 

(どうする……?やっぱり僕が……)

「私が前に立ちます。二人は援護を」

 

 ヤマトが悩んでいる最中に、サクラが前に立ち宣言した。

 サクラはサイとヤマトに背中を見せながら、黒い防刃手袋の調子を確かめている。

 

「サクラ、任せたよ」

「はいっ!」

 

 その逞しい背中から確かな覚悟を感じ取ったヤマトは、サクラの身を案じることがその覚悟を踏み躙る行為だと恥じて、彼女に前衛を託すことに決めた。

 

 そのやり取りをじっくりと観察するサイ。

 

(相手は強力。最悪の場合は全滅もあり得る相手……なら、隙を見て二人を拘束してダンゾウ様の命を果たすふりをして、ナルトも含めて三人を逃せたらベストか……)

 

 サイはダンゾウの使いだと説明することで大蛇丸の部下たちとの敵対状況を解除し、なんとか三人を逃がそうと算段をつけていた。敵対状況さえ解除できれば、右近左近の言動から命を助けてもらえる可能性が高いというのがサイの予想だった。

 

 そしてヤマトたちが様々なことを考えているように、君麻呂もまた敵の戦力を分析していた。

 

(老け顔の男は右近たちと同じ木遁使い。だが、質も量も速度も遠く及ばない。体術はまだ判断できないが、少なくとも率先して前には出て来ないか。

 もう一人の男は筆と巻物を持っているところを見るに、おそらくさっきの虎の術を使ったのはこいつだ。両手を塞がれているから懐に潜り込めたら勝算は高い。

 残る女の実力は不明だが、前に出てきたところを見るに前衛)

 

 君麻呂には油断も慢心もない。ある意味では右近と左近よりも完成された忍である。ゆえに、ただ黙々と事実だけを見て敵の戦力を分析し、必要な行動を計算し続ける。

 

(見た術は木遁と墨の獣だけ、それで全てでは無いとして……一度近接戦を仕掛けてみるか)

 

 君麻呂が無造作にゆっくりと橋の上を歩き始める。ギシギシと木が軋む音を立てながら歩く君麻呂を固唾を飲んで見るサクラ。

 

 サクラがパチリと瞬きをした瞬間、君麻呂が一気に踏み込んだ。

 サクラの瞼が開いた時、すでに君麻呂は一挙手一投足の間合にまで踏み込んでいた。君麻呂はさらにもう一歩踏み込み、サクラの手足は届かないが、骨剣は届くギリギリの間合いから胴体へ向けて横一文字の斬撃を繰り出す。

 

「はやっ–––!」

「シィッ!」

 

 君麻呂の右腕が右から左に振り切られるが、サクラは咄嗟に腰を引いて、体をくの字に折り曲げるようにしたことで、間一髪回避に成功した。

 だが、一撃目は回避に成功したが、サクラの体勢は最悪の状態である。続く第二撃、今度は左から右へと振り切る斬撃がサクラの首を狙って放たれる。

 

「くっ–––!?」

「サクラ!」

 

 骨剣がサクラの首と胴を分ける直前、ヤマトが右腕から伸ばした木でサクラの体を後方に引っ張ったことで、骨剣はサクラの首筋に一筋の傷を残すだけに終わった。

 君麻呂はさらに追撃を加えようとしたが、ヤマトの左腕から伸びた角材のような木とサイが『超獣戯画』で生み出した白黒の鷹が君麻呂に襲いかかったことで、君麻呂は動きを変えた。

 

「柳の舞」

 

 君麻呂が回転し、上昇しながらヤマトの木を躱し、白黒の鷹を骨剣で切り裂いた。さらに、飛び上がった君麻呂はヤマトの伸ばした角材の上に着地し、そのままヤマトへ向けて駆け出した。

 骨剣を構えて走る君麻呂に対して、ヤマトは両腕から木を伸ばしていることで無防備な状態である。このままではヤマトは抵抗もできずに無惨に切り裂かれることは確実。

 

 そんな絶対絶命の危機を救ったのはサクラであった。

 

「しゃんなろーっ!!」

「ッ!?」

「むっ……」

 

 ヤマトが伸ばし、君麻呂が走る角材のような木をサクラが横から全力で殴りつけた。

 綱手譲りの怪力で殴られた結果、木は爆破されたかのように原型も残さないぐらいバラバラになりながら吹き飛ぶ。

 

 急に足場を失った君麻呂が一瞬だけ宙に浮く。無防備なその姿を見逃さず、サクラが追撃を放つ。

 

「そこッ!」

 

 気迫のこもった叫びとともに突き出されたサクラの右拳は、狙い過たずに君麻呂の胸に向けて吸い込まれていく。当たれば肋骨程度は簡単に粉砕する拳が胸に当たる直前に、君麻呂はその肋骨を『屍骨脈』で伸ばし、胸部から突き出して交差させて盾にした。

 

「そんな防御で!」

 

 生えてきた肋骨の盾ごと胸部を打ち抜くつもりで拳を振り切ったサクラ。

 拳は肋骨の盾に直撃し、ガンッと硬い物を打ち据えた音が鳴り、君麻呂はサクラの怪力に押されて吹き飛ばされる。

 

 君麻呂を殴り飛ばしたサクラだったが、その心中は穏やかでは無い。

 

(なんていう強度なの、あの骨……全力で殴ったのに折れないどころかこっちの拳にヒビが入った)

 

 ズキズキと痛む右拳を医療忍術で治しながら、サクラは君麻呂を吹き飛ばした方向をキッと睨みつけた。

 

「二人とも注意して!あの骨、めちゃくちゃ硬い!」

 

 サクラの注意を受けて、君麻呂が吹き飛んだことを喜んでいたヤマトは気を引き締め直して、視線を鋭くして君麻呂の吹き飛んだ方向へ向けた。

 

 しばらくして、その方向からザワザワと葉の揺れる音がして、当然のように無傷の君麻呂が現れた。

 

「なかなかの拳だ。直撃すればただでは済まないな」

 

 着物についた枝葉をバンバンと払いながらサクラのパンチを淡々と評価する君麻呂。

 

(なら、今度は直接……!)

 

 その言葉を挑発と受け取ったサクラが接近して直接殴りつけようとする。

 

「忍法・超獣戯画!」

 

 サクラの接近する動きを援護するように、後方からサイが四匹の燕を生み出し、君麻呂へ向けて突撃させた。白黒の燕たちは高速で飛行し、君麻呂の顔目掛けて特攻を仕掛ける。

 先ほどまでの虎や鷹よりも素早い攻撃だが、君麻呂には通用しない。

 

「ふっ!」

 

 左手にもう一本の骨剣を生み出した君麻呂は、鋭く息を吐き出しながら素早く両腕を振るい、四匹の燕たちを悉く両断した。

 だが、両断されることはサイにも想定内。サイは君麻呂の顔目掛けて燕たちを飛ばし、あえて切らせることで墨汁による目潰しを狙っていたのだ。

 

 サイの想定どおりに君麻呂の顔目掛けて墨汁が飛ぶが、それは君麻呂が着物の袖で顔を庇ったことで届かない。

 しかし、一瞬だけ視線が塞がった隙を狙って、サクラが君麻呂のすぐ近くにまで踏み込むことに成功していた。

 

(ここっ!)

 

 声でバレないように心中で掛け声を発しながら、サクラは君麻呂の腹部に向けて全力で右拳を叩きつけようとする。

 

 その瞬間、裾で隠れている君麻呂の口元が嗤う。

 君麻呂が視界を塞いだのはサクラを誘い込むためだった。君麻呂はサクラの踏み込みの音を聞いて大体の位置を割り出し、接近した瞬間を見計らってヤマアラシのように全身から大量の骨を突き出した。

 

「きゃあっ!!」

「サクラッ!?このっ!」

 

 突然生えてきた骨により、全身を細かく刺し貫かれ、全身を赤く染めながら地面に倒れるサクラ。

 ヤマトはサクラを心配して声をあげて『木遁・大樹林の術』を発動し、無数の木々を君麻呂に向けて放った。

 

 膨大な数の木々が君麻呂に殺到する。君麻呂は迫り来る木々を前にして避けるよりも迎撃する方が比較的簡単だと考え、全身から骨を出したまま迎撃する。

 

「唐松の舞」

 

 全身から骨を突き出した状態のまま君麻呂が舞う。ギガガギガッ–––と、迫り来る無数の木々を数多の骨が弾き、切り裂き、打ち壊していく。

 破断音が響き渡る中、ヤマトは術を維持しながらサクラの怪我の状況にも気を配っていた。

 

「サクラ!無事か!」

「なんとか……すぐに治します」

 

 ヤマトの側にまで下がったサクラが医療忍術で自身の傷を塞いでいく。幸いにも致命的な部位が貫かれてはいなかったようで、細かい傷を無視すれば、すぐに戦える状況にまで回復できそうであった。

 

「くっ–––!なんて奴だ……!」

 

 サクラの状況を聞きながらも、『大樹林の術』を迎撃し続ける君麻呂にも意識を向けるヤマト。すでに相当量の木々が破壊されており、サクラが回復するための時間を稼ぐために追加で木々を生み出しているものの、それでも君麻呂にダメージを与えられていない状況に畏怖ともどかしさを感じていた。

 

 一方で、木々を破壊し続けている君麻呂にしても、次々と襲いくる木々を前にして、もどかしさを感じていた。

 現状、ヤマトの木々を生やす速度と君麻呂がそれを破壊するペースは互角。君麻呂は体力を、ヤマトはチャクラを消耗しており、このままいけばヤマトの方が早く力尽きるだろう。

 

 だが、君麻呂はそんな決着の仕方を拒否する。

 君麻呂は舞い踊りながら大蛇丸に授けてもらった地の呪印を意識し、その力を引き出していく。

 君麻呂の体を三日月模様の呪印が覆っていき、全身に行き渡ったことで充分なチャクラを得た君麻呂が、次の術を発動した。

 

「早蕨の舞」

 

 君麻呂の体から無数の骨が次々と飛び出していく。ただでさえ硬く鋭い骨の一つ一つが呪印の力で強化された結果、容易くヤマトの木々を貫き、一気に破壊した。

 

「何っ!?」

 

 膠着していた状況の急激な変化についていけなかったヤマトと治療中のサクラの下に無数の骨が襲いかかる。

 

「危ない!」

 

 ヤマトとサクラが串刺しになる直前、サイが二人のことを横から突き飛ばしたことで、無惨な死体になることは避けられた。

 だが–––

 

「つぅ–––!」

「ありがとう……ってサイ!あなた足が!」

 

 見事にヤマトとサクラを助けたサイだったが、そのせいで彼は骨を躱しきれず、ふくらはぎに数本の骨が突き刺さっていた。

 

「待ってて!今すぐ治すから!」

 

 ある程度自分の傷を治し終えたサクラが今度はサイの傷の治療にかかる。

 その横で、ヤマトは自分の右手のひらを見て大いに焦っていた。

 

「ヤバイッ……!?これは本気でマズイぞ!!」

 

 ヤマトの右の手のひらには五の文字が刻まれており、それはナルトが九尾のチャクラを半分以上解放していることを意味していた。

 四本でも自来也を瀕死に追い込んだのに、今はそれ以上の力を引き出している。

 

(もはや一刻の猶予もない!すぐにでも九尾の力を抑え込まないとっ……!)

「早くナルトの下に行かなくてはっ!そこを退け!誰にも止められなくなるぞ!」

 

 ヤマトはこのままナルトが九尾の力を引き出し続けるのならば、この地に破滅が訪れることになる。それを理解しているからこその必死の叫び。

 

 だが、その叫びを聞いて君麻呂は嗤った。ヤマトの勘違いに気づいたからだ。

 

「ふっ……お前は何か勘違いをしているようだな」

「何?」

「右近と左近が本気でやっていれば、とうに勝負はついている。終わってないということは本気で殺す気がないんだろう」

 

 君麻呂は右近たちの実力を知っている。今の彼らが本気を出せば、主人である大蛇丸の力すらも超えることを。

 

「右近と左近の実力はすでに三忍のそれを超えている。大蛇丸様には不敬となってしまうがな」

 

 君麻呂からもたらされた情報に驚愕するヤマトたち。二年半前に右近と左近が仙人状態になっていない自来也とほとんど互角だったことを考えれば、それほど驚くことではないのかもしれないが、ヤマトたちにとって三忍とは木ノ葉隠れの里を象徴する存在である。

 それを超えたと語られれば、驚かないわけがなかった。

 

 唖然とする三人を見て、君麻呂は無慈悲に宣言することにした。

 

「お前たちを殺すのは止めておいてやる。殺せば右近と左近が煩いかもしれないからな」

 

 君麻呂は一度、ヤマトたちの扱いを右近左近に任せた身だ。ゆえに、殺害はしないと宣言した。

 先ほどまで死んでもおかしくない攻撃を繰り出していた人物から出たとは思えない宣言だが、君麻呂にとっては先ほどまでの攻撃は様子見であり、それで死ぬのなら、その程度の存在だったとするつもりだった。

 

「だが、代わりに絶望を知れ……大蛇丸様に歯向かうことがどれだけ愚かな行為なのか、その体に刻んでやる」

 

 君麻呂から発せられる慈悲の無い殺気にヤマトたちの足がすくむ。

 

 君麻呂とのヤマトたちにとって絶望的な戦いの第二ラウンドが始まった。

 

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