アスマたちへの援軍として現れたナルトだったが、知らせを受けてから短時間で到着したにも関わらず、途轍もなく疲弊しているアスマたちの姿を見て戦慄していた。
「アスマ先生とシカマルがこんなにボロボロに……」
ナルトは『螺旋丸』に性質変化を加える修行の途中、風の性質変化のコツをアスマから伝授されていた。その時のアスマのチャクラ刀は、手加減していてもなお岩を貫通するほどの尋常ではない切れ味を発揮していた。
幾年も研鑽を積んだ技量の片鱗を感じたナルトは、その光景に強い衝撃を受けていた。
だからこそ、その強いアスマと、自分の同期で最も頭のキレが良いシカマルが一緒にいたのに追い詰められていたことにナルトは驚き、角都と飛段に対して警戒心を強く持った。
一方で、援軍に現れた木ノ葉隠れの里の面々を見て、角都は顔のほとんどを隠すマスクの下で苦虫を噛み潰したような表情をしていた。
「三忍の自来也にコピー忍者のはたけカカシか……」
自来也とカカシ。どちらも忍界に名の通った実力者である。
特に自来也は暁に所属していた大蛇丸と同格の存在。大蛇丸の実力を知っている角都からすれば、侮ることなどできるはずもない。
だが、角都は危機感を覚えても恐怖心は芽生えていなかった。
このぐらいの修羅場ならば、長い人生を歩んできた角都には指の数以上には経験していた。
「飛段、油断すると死ぬぞ……」
「だからそれを俺に言うかよ角都……」
角都に忠告された飛段の態度は普段と変わらずふざけたものだったが、その内心では自来也とカカシをかなり警戒していた。
飛段は大蛇丸と直接の面識はない。ゆえに“三忍”という名が持つ重みを理解していない。だが、それでも分かるほど自来也の周りには強者の雰囲気が滲み出ていた。
互いに警戒し合い、様子を見合い、結果的に軽率に動かずに睨み合う両陣営。
重苦しい雰囲気の中、すでに左目の写輪眼を万華鏡写輪眼へと変化させているカカシがアスマから情報を聞こうとする。
「アスマ、あいつらの情報を」
「鎌を持った方は不死身で、致命傷を与えて首を刎ねたがまだ生きてる。術はまだ未知数。もう片方が四体の化け物を出した奴で、四体の化け物はそれぞれ風、火、水、雷と違う性質変化を使う。それと本体も体から黒い触手を出せるから接近戦には注意が必要だ」
「なるほどね……そりゃ厄介極まりない」
アスマが立ち上がりながらした簡潔な説明にカカシが辟易するように呟いた。
アスマの説明を聞いていた他の人間も、緊迫した状況ゆえに余計な口は挟まなかったが同様の気持ちであった。
アスマからの情報を得た自来也は仲間の様子を見て素早く状況判断を行う。
「とりあえずお主らは少し休め。ここからは儂らがやる」
アスマたち先に戦っていた四人は疲弊している。万全ではない状態で戦わせるには危険すぎる相手だと判断した自来也は、アスマたちに休息を命じて、自分が前に出た。
里の中でも一、二を争う強者である自来也がそう指示したことで、アスマたちは少しだけ緊張を和らげることができた。
それとは対照的に、真剣な表情をしたナルトが自来也に並び立つように一歩前に出る。
ナルトは右近と左近に敗北して里に帰ってきた後、自来也とカカシとヤマトという豪華な師匠に見てもらいながらずっと修行を続けていた。
一月にも満たない短い期間だったが、『多重影分身』を駆使して行われた高密度な修行の成果を出す場として、今よりも適した場面は無いとナルトは考えていた。
ナルトは修行中、強い焦燥感に襲われていた。
それは、二年半という長い期間を自来也と共に旅して修行を見てもらっていたにも関わらず、サスケに会うこともできずに右近と左近にあっさりと敗北してしまったからだ。
その焦燥感を糧に修行した結果、自来也とカカシが太鼓判を押すほどにナルトは強くなれた。
だが、その実感をナルトはまだ得ていない。他者の口からいくら強くなったと褒められようと、強者を自身の手で倒したという結果を得るまでは実感を得ることはできない。
ナルトはこの場で暁という強敵を相手に修行の成果を発揮しなければいけないという強迫観念を抱いていた。そうでなければ一生サスケに追いつくことができず、里に連れ戻すことができないと思っていた。
その危うい考えを自来也とカカシは見抜いていた。そのうえで、自分たちがナルトをフォローすることでナルトに成功体験を与えたいと考えていた。
「ナルト、油断は禁物だぞ」
「オッス!」
「テンゾウ、俺たちは二人のサポートだ」
「了解です先輩」
自来也がナルトにしっかりと言い含めるように語ると、ナルトは威勢の良い返事を返し、そんな二人を支えるためにカカシがヤマトへと違う名前で語りかけ、ヤマトは真剣な場面なので名前のことには触れずにカカシの指示に従った。
前に自来也とナルトが立ち、後ろにカカシとヤマトが立つことで、前衛後衛のバランスが良い布陣になった。
その陣形を見た角都は飛段へと声をかけながら術を発動する。
「飛段、いつでも動けるように準備をしておけ──水遁・挫吼、雷遁・偽暗!」
角都が『地怨虞』で水遁と雷遁を発動させたことで、眩く発光する雷を纏った水がナルトたちに降り注ぐ。
「テンゾウ!水遁を頼む!」
「はい!」
水遁と雷遁の複合忍術によって作り出された感電水は広範囲に降り注いでいる。回避は難しいと判断したカカシはヤマトへと水遁の術を発動するように指示を出し、自身は素早く風遁の準備を始めた。
「水遁・破奔流!」
「風遁・烈風掌!」
ヤマトの腕を突き出す動作とともに生み出された巨大な渦潮が感電水と激突し、そのすぐ後にカカシの腕を突き出す動作に合わせて強烈な風が吹いたことで、膨大な量の水全てが角都たちの方へと動き出した。
「おい角都!」
「分かっている……!火遁・頭刻苦、風遁・圧害!」
大量の水が押し寄せて来たのを見た飛段は角都に対して言外に「なんとかしろ」と叫び、そんな事は言われなくても理解していた角都はすぐさま『地怨虞』から火遁と風遁を吐き出させた。
『頭刻苦』を後押しするように発動された『圧害』によって、広範囲、超高温の火炎が瞬く間に生み出される。
「散れ!!」
大量の水と超高温の火炎が接触することで引き起こされる現象を予想した自来也が散開の指示を出し、それを聞いた他の面々は素直に指示に従ってその場から離れた。
その直後、頭上から降り注ごうとしていた大量の水を火炎が迎え撃ち、大量の水が一気に高温で熱せられたことにより、特大の水蒸気爆発を引き起こす。
鼓膜を破りかねない轟音が周囲に響き渡り、爆発の衝撃は地面に大きく破壊の跡を刻みつけながら広がり、その跡をなぞるように高温で高濃度な水蒸気が吹き荒れる。
一瞬にして地獄のような戦場が作り出されたが、自来也の的確な指示によって木ノ葉隠れの里の面々に被害はなかった。
そして、水蒸気爆発を引き起こした角都とその相方である飛段にも被害はなかった。それどころか、二人は状況が不利だと判断して、水蒸気爆発を利用してすでに逃走に移っていた。
角都と飛段の本来の目的は木ノ葉隠れの里の九尾の人柱力──つまりはナルトを生かしたまま拉致することである。二人は現れた援軍の中にナルトの姿があることを確認していたが、その横に自来也とカカシがいては目的を達成するのは困難であると判断した。さらに、自来也たちという増援が来る速度を考えると、すぐに他の増援も来るかもしれないと判断し、一先ずこの場から撤退することを決めていた。
そのためにわざと水蒸気爆発を起こしたのだ。
最初の感電水は攻撃のためではなく、そこに火遁を加えて水蒸気爆発を起こすための下準備であった。
木ノ葉隠れの里の忍たちが感電水を受けるならそれもよし、その隙に火遁を放つことで追撃して撤退するつもりだった。感電水を避ける、あるいは土遁などで壁を作り出して防がれたならば、そこに火遁を加えて水蒸気爆発を引き起こせばよかったのだ。
そうして引き起こした水蒸気爆発の爆風により距離を取り、水蒸気に紛れて近くの森の中に入って撤退するというのが角都と飛段の逃走経路であった。
しかし、角都と飛段の逃走経路を塞ぐように長大な土壁が立ち塞がる。
「そう簡単に逃すわけないのぉ」
自来也はその逃走すら読んでいた。水蒸気爆発が起きる直前に警戒の声を出した自来也は、そのまま『瞬身の術』で角都と飛段が逃げ込むであろう森へと回り込み、逃走経路を塞ぐように『土流壁』を発動させていた。
「なんだぁ!?」
「チッ……やるぞ飛段!」
逃走経路を潰された飛段が戸惑い、角都が苦い顔で舌打ちをしながら飛段へと呼びかけた。
自来也に逃走経路を塞がれた以上、転進して別の方向から逃げ出すか、でなければ自来也と戦って壁を破壊するしか逃げる方法は無い。加えて、どちらを選ぶにせよ時間をかけてはいられない。
判断は一瞬だった。選んだのは自来也に手傷を与えてから逃走すること。
角都は迷うことなく木の枝を力強く蹴り、自来也へと真っ直ぐに突き進む。
角都と飛段が逃げる方向を変えたとて、自来也は必ず追撃する。それならばいっそのこと、ナルトたちがいない今この瞬間に自来也へと手傷を与えて逃げるのが最善だと角都は判断したのだ。
飛段はそんな角都に付いていき、木々の間を飛ぶたびに揺れる首を左手で抑えながら右手で大鎌を構える。
二人が向かってくることを認識した自来也が迎撃のための術を発動する。
「忍法・毛針千本!」
自来也が髪の毛にチャクラを通して強化し、千本のように高速で飛ばした。
角都と飛段に飛来する白毛は広範囲に散らばっており、避けて進む隙間は無い。
白毛は人体に突き刺さりはするが、流石に大木の幹を貫通するほどの力はないので、木を盾にすれば簡単に防御できる。だが、そうやって足を止めてしまえば、ナルトたちはすぐに追いつくだろう。
ゆえに、角都と飛段は一切臆することなく雨の如く降り注ぐ白毛の中を突き進む。
とは言え、角都と飛段は何も考えなしに進んでいるのではない。
角都は素早く印を結んで『土遁・土矛』を使って体表を硬化させることで防御力を飛躍的に高めて、飛段は右手に持っていた大鎌を盾のように正面に構えた。
キンキンッ──と白い毛針は角都の皮膚と飛段の大鎌に弾かれた。
全身を硬化できる角都は完全に防いだが飛段はそうもいかず、いくつかの毛針は飛段の肉体にグサグサと突き刺さった。
「ぐっ──痛ってぇなぁ!オイ!」
だが、飛段は口では痛がるものの、その動きに一切の支障はない。
そもそもが不死身の飛段である。毛針程度は眼球か神経を的確に貫かなければ効果はないに等しく、また、痛みに慣れている飛段の動きはこの程度では鈍らない。
勢いを落とすことなく自来也に接近してみせた飛段と角都。
「来るかっ……!」
距離を詰めてきた二人を迎え撃つために自来也は術を構えようとする。
「させるか!」
自来也に印を結ぼうとした瞬間に、角都は自来也との距離がまだあるのにも関わらず、右腕を勢い良く振り抜いた。
角都の右腕は振り抜いた勢いを活かして肘の辺りで二つに分割されて、前腕部と二の腕が『地怨虞』の黒い触手で繋がっている状態になり、前腕部だけが振り抜かれた勢いをもって自来也に向けて飛翔した。
「ぬぅっ……!」
その異様な光景に自来也は面食らった。数々の戦闘経験がある自来也だが、これほどまでに奇怪な攻撃をされたのは流石に初めてだった。
とは言え、いくら奇怪な攻撃と言えど所詮は直線的な拳打であり、対処は簡単である。
自来也は印を継続して結びながら横に生えている木に飛び移ることで角都の拳打を華麗に避けた。
そのまま自来也は準備していた『乱獅子髪の術』を発動させて二人を捕縛しようとしたが、その前に『地怨虞』の怪物の一体が自身へ向けて火遁を放ったのを見て再び近くの木に飛び移る。
さらには火遁を避けた自来也に向けて残りの『地怨虞』の怪物たちが次々と術を撃ち放っていく。
放たれた術の数々を自来也は時に華麗に躱し、時に木を盾にすることで直撃を受けないように立ち回り続ける。
自来也に当たらなかった術の数々は大木を削り、燃やし、穿ち、へし折る。森の中は黒煙と木屑と土煙が舞い上がり、その全てが次々に放たれる術により吹き飛ばされていく。
流石の自来也でもこれほどの猛攻に晒されては余裕は無く、その肉体にはかすり傷一つないものの、その顔には大粒の汗が滲んでいた。
(本当にこれだけの性質変化を使用できるとはのぉ……)
自来也は声には出さずに驚いていた。角都が自身の師である三代目火影と同じく数々の性質変化を使い熟しているのもそうだが、何よりも右近と左近がもたらした情報の精度に驚いていた。
(この分だと小南と長門の情報も……)
右近と左近が語った角都が複数の性質変化を使うという情報は正しかった。だからこそ、自来也はかつての弟子たちが暁に加担しているかもしれないという情報も正しいのではないかと、そう考えてしまった。
戦闘中にも関わらずだ。
その隙を見逃すような弱者は暁にはいない。
「隙を見せたな」
「しまった……っ!」
周囲の木々が破壊されて地面に降り立った自来也が気づいた時にはすでに角都は自来也の背後をとっており、自来也が反応するよりも早く角都の左腕から生えた『地怨虞』の黒い触手が自来也の全身を縛り上げた。
「飛段!」
「ヒャッハァッ!!」
角都が飛段の名を呼んだ次の瞬間、飛段は振りかぶっていた大鎌を横一文字に振り抜き、その刃の鈍い光が自来也の首を一閃した。
自来也の首が飛び────そのままボフンと音を立てて白い煙に変わって消えた。
「あ……?」
「──影分身か!?」
目の前の光景に飛段は思わずといった形で声を出し、その直後に角都が自来也の使った術を見破った。
自来也が使ったのは角都の推測通り『影分身の術』だ。自来也の弟子であるナルトの十八番であり、自来也もナルトほどではないが戦闘中に使用する。生み出す分身の数はナルトに比べたら極少数なれど、その精度はナルトを上回る。
飛段と角都が写輪眼のような特別な眼を持っていなかったこともあり、『影分身』が消えるまで本物だと思い込んでしまったのだ。
まんまと騙されたことに戸惑った二人だが、そこは暁に属する二人。戸惑いを一瞬で抑え、自来也が近くに潜んでいるはずとすぐに周囲を警戒しようとするが、それよりも自来也の方が早く動いた。
「螺旋丸!」
『影分身』だけを『土流壁』の前に出し、本体は『土流壁』の後ろに隠れていた自来也は、角都の術の影響でボロボロになっていた『土流壁』を『螺旋丸』で破壊した。
『土流壁』は『螺旋丸』により砕かれ、大小様々な土塊となって吹き飛ばされていく。その方角は揃って飛段と角都がいる向きである。
『影分身』が消えた時に飛段と角都の位置情報を得ていた自来也が、狙って土塊を吹き飛ばした結果だった。
「くそっ……!」
大気を切り裂き、唸りをあげて飛来する土塊を『土矛』で全身を硬化させて防御する角都。
飛段は角都ならそう防御すると信じて角都の背後に回り込むことで角都を盾にした。
土塊は辛うじて残っていた木々を粉砕しながら角都へと殺到し、次々とぶつかるが、チャクラで固められていたとは言え所詮は土。飛んできた土塊は角都の硬さに負けてぶつかった途端に砕けて割れていく。
角都と飛段にダメージは無い。だが、先ほど受けた『毛針千本』とは違い、土塊には十分な質量があったせいで、角都はその場から動くことができずにいた。
土塊が壊れた影響でもうもうと土煙が立ち込める中、角都は思考を巡らせていく。
(チッ……まんまと足止めされてしまったか。流石に他の連中も追いついているだろう。おそらく、すでにこの土煙の外を包囲するように囲んでいるはず……その包囲網をどのように食い破るか……)
角都の予想通りに角都たちを逃がさないための包囲網はすでに形成されていた。
自来也が角都たちの足止めに成功したことでナルトたちは追いつき、土煙の周りに集結したうえで、カカシの指示により『多重影分身の術』を使用したナルトが百体程度の分身を生み出して土煙の周りを囲っていた。
その気になれば千人単位で分身できるナルトだったが、角都は広範囲を攻撃できる術を多数持つことはカカシも把握しており、いたずらに分身の数を増やせば角都の広範囲攻撃を躱すための逃げ場がなくなると考え、あえて『影分身』の数を絞らせていた。
そうやって飛段と角都が中にいる土煙を囲む『影分身』たちの外側に、自来也、カカシ、ヤマト、そしてオリジナルのナルトの四名がそれぞれ四方に散らばって囲んでいた。
そんな正確な予想をしたうえで、角都はそれを破るために全力を出すことを決めた。
「飛段、俺が今から本気で暴れる。お前は隙を見て誰かの血を奪え」
「へぇ、了解だぜ角都。思いっきりやってやれ!」
飛段の返答を聞いた角都は『地怨虞』により生み出していた四体の怪物を再び自分の体の中へと入れ直した。
そして──
「ウオオオオオオオッッ────!!!」
角都が雄叫びをあげてチャクラを練り上げ、体の中にある『地怨虞』によって奪い取った五つの心臓が唸りをあげて大量のチャクラを生み出す。
「なんだってばよ……!煙の中でなんか……っ!?」
その多量のチャクラの圧は煙の外からでも感じるほどに強く。その圧力は自来也にかつて瀕死の重傷を負った時のことを──四本の尾を生やしたナルトと対峙した時のことを思い出させた。
圧を感じ取ったナルトは戸惑い、自来也、カカシ、ヤマトの三名もまた煙の中に突入せずに慎重に様子を窺っていた。
そして、角都の中で練り上げられた大量のチャクラは全て『地怨虞』の黒い触手へと込められていき、煙の中で徐々に角都の肉体が変化していく。
角都の肉体の至る所から黒い触手が溢れ出し、その身を覆い尽くしていく。
ナルトたちが土煙の中の様子を固唾を飲んで見守る中、ついに土煙が晴れていき──変わり果てた角都の姿が露わになった。
「な、なんだってばよ……こいつは……」
ナルトが呆然として言葉を漏らした。
ナルトの目に映ったもの──それはもはや人とは到底呼べない異形となった角都の姿だった。
多量のチャクラを込められた『地怨虞』の黒い触手は角都の肉体全てを覆い尽くして余りあるほどに増殖し、全長三メートルを超える異形の人型の姿を形成していた。
頭部の左右の側面からは一対の鹿のような角が伸び、顔の中心では真っ赤な一つ眼がギョロギョロと動き続けて睥睨している。
胴体と肩周りは鎧を着たように分厚く見えるが、そこから伸びる長い両腕は関節がなく、ブラブラと忙しなく動き続けていた。
そこからさらに下に目を向けると腰回りは胴回りと比べても一段と太くなっており、まるでスカートが膨らんでいるように見えた。そして、そこから伸びる脚は巨体を支えられるように異様に太く膨らんでいた。
これこそが角都が『地怨虞』を手に入れて滝隠れの里を抜けてから長い時をかけて完成させた対尾獣、対須佐能乎用の異形の巨人。
その名も『
「この姿を見せるのは本当に久しぶりだ……」
黒い巨人の内側から角都の声が響く。
この姿を角都が見せることはほとんどない。正確に言えば、見せたくても見せられないことが多い。
『完成体・地怨虞』は強敵を相手にしている時のみに使用する姿だが、この姿を形作るには多量のチャクラが必要であり、『地怨虞』で奪ったものも含めて心臓が五つ揃ってなければならないが、強敵を相手にした時には心臓を一つか二つ潰されていることも珍しくないので、この姿を披露できなかったのだ。
「さて……」
ぽつりと黒い巨人の内部で角都が声を漏らしたと同時に黒い巨人が動き、長い両腕を左右に伸ばした後にその手を開いた。
「あっ……!」
開かれた手の平の中心には白い仮面が嵌め込まれていた。右手は口元が緑色の面が、左手には口元が黄色の面がそれぞれあった。
それを見たナルトの『影分身』たちが驚きの声をあげた直後、黒い巨人の手に嵌められたそれぞれの面から風遁と雷遁が撃ち放たれた。
暴風が吹き荒れ、雷光が迸る。
「うわっ!」「ぐえぇっ!」
咄嗟に回避できた『影分身』は少数であり、暴風と雷光の直撃を受けた『影分身』たちは次々と消滅していく。
「まだまだいるってばよ!」
「「「「おう!!」」」」
先ほどの攻撃で消滅した『影分身』たちは三十体程度。つまり、残りは七十体前後である。
その数を活かして、本体のナルトの掛け声に応じて『影分身』たちは一斉に黒い巨人に突撃していく。
前後左右全方位から『影分身』たちに襲われる黒い巨人だが、中にいる角都に焦りは無く、目の前の状況に冷静に対処する。
黒い巨人の背面からニョキリと残りの二つの面──すなわち口元が青色の面と赤色の面がその姿を表し、それと同時に口から水遁と火遁を吐き出したことにより、黒い巨人の後方から迫っていた『影分身』たちはあっという間に水と火に飲み込まれて消え去ってしまった。
「まだまだぁ!!」
後方から襲いかかった『影分身』たちは水遁と火遁に処理されてしまったが、まだまだ諦めないと、『影分身』たちは黒い巨人の左右と前方から迫っていく。
そんな残りの『影分身』たちを迎え撃つように、黒い巨人は両腕の拳を握り込み、肘から先の前腕部を振り回し始めた。
両腕の前腕部は鞭のようにしなり、ゴオゴオと大気を切り裂く音を立てながらぐるぐると円を描くように振り回される。先端の握り拳が重しとなって遠心力を増幅させ、ただでさえその巨体から繰り出される強大な破壊力がさらに増幅していく。
その様子は巨人が二つのモーニングスターを扇風機のように振り回しているような姿であり、あっという間に巨人の周囲は超危険地帯へと変貌した。
「怯むなってばよ!」
そんな恐るべき光景に対峙しても怯むことなく突撃していった『影分身』たちだが、拳に当たっては跡形もなく粉砕され、しなる腕に当たって吹き飛ばされては消えていく。
運良く両腕の巨大扇風機を避けれて接近できた『影分身』も幾人かはいたが、巨人の側に佇んでいた飛段によって迎撃され、巨人に手傷を与えることなく消滅させられてしまった。
「クソッ……!」
十秒と経たずに『影分身』たちは全滅させられてしまい、ナルトは悪態をついて悔しがった。
しかし、角都は『影分身』を全て倒しても両腕の動きを止めない。それどころか、両腕の動きは徐々により鋭く、より速く、より豪快になっていく。
そして、その勢いがピークに達したと角都が判断した瞬間に、黒い巨人は勢いそのままに右腕をカカシに向けて振り下ろす。
黒い巨人とカカシとの間には距離があったが、黒い巨人は腕を振った勢いで腕の触手を大きく伸ばし、カカシの頭上へと伸ばしていた。
「狙いは俺か!」
写輪眼で黒い巨人の動きを見切ったカカシは迫り来る鉄槌を余裕を持って回避した。
カカシに避けられた黒い巨人の右腕の一撃だったが、遠心力を限界まで溜め込んだ右腕はそのままの勢いで地面に叩きつけられ、ドシィンッッ!!!と轟音を響き渡らせて地面に大きなクレーターを作り出した。
「うわっ!?」
「くっ……」
地面に打ち付けられた右拳は局地的な地震を引き起こし、地に立っていたナルトとヤマトは地面の揺れのせいでふらふらとバランスを崩してしまった。
その決定的な隙を見計らっていた角都は、間髪入れずに黒い巨人は左腕をヤマトへと向けて振り下ろさせる。
バランスを崩しているヤマトに避ける余裕はない。
(あっ……これは死ぬな……)
ヤマトは迫る巨拳を前にして死を強く意識していた。観念したというわけでは決してない。現に精一杯の抵抗として木遁を使って体から大木を生み出し壁にしようとしていた。だが、咄嗟の反応で出せる程度の木の壁など、黒い巨人からすればベニヤ板に等しく、鎧袖一触に叩き壊されて即死すると確信できた。
そんな確信を持ちつつも必死に生きようとしていたヤマトが次の瞬間に木の壁越しに感じたのは予想を遥かに下回る衝撃と音だった。
すぐに衝撃は収まり、それと同時にヤマトは木遁によって木の壁に隙間を作り出して周囲の状況を把握しにかかった。
「これは──!?」
ヤマトは視界に飛び込んできた光景に驚いた。そして、なぜ自分が助かったのかも理解した。
黒い巨人が振るった剛腕はヤマトがいる場所よりも十メートルは手前の地面を叩いていた。当然、黒い巨人──延いては黒い巨人を操っている角都の狙いは地面ではなくヤマトだった。
つまり、黒い巨人の拳が狙いを外したのではなく、他者の手によって狙いを外されたのだ。
それを為したのは自来也だった。
自来也は黒い巨人がカカシを狙って放った一撃目が引き起こした地震を飛び上がることで避けていた。そして、続くヤマトを狙った二撃目に対して『乱獅子髪の術』を発動した。
チャクラを込められた自来也の白い髪は急速に伸び、ヤマトへと迫っていた黒い巨人の腕の肘あたりに絡みついた。それにより、ヤマトへと振り下ろされていた黒い巨腕は白髪によって軌道を変えられてしまい、ヤマトの遥か手前に拳を振り下ろす結果となったのだ。
「大丈夫かテンゾウ!」
「ええ大丈夫です。あと……今はヤマトです」
カカシがテンゾウもといヤマトの下に駆けつけて声をかけた。それに対してようやく自分が助かった実感が出ていたヤマトが軽口を叩きながら返答した。
「そうやって返せるなら平気そうだの」
「ええ、助かりました自来也様」
「さっすがエロ仙人だってばよ!」
さらには二人の下に自来也とナルトまで駆けつけて、四人全員が揃った。
ナルトたちが一箇所に集まったのは、ヤマトの怪我の具合を心配していたのもあったが、それ以上に敵の──特に黒い巨人への対処を話し合いたいという気持ちが強かった。
四人の中で最も観察眼と分析力のあるカカシと最も戦闘経験の多い自来也が中心になって話しだす。
「厄介ですね……とくにあの黒い巨人」
「うむ……あの巨体から繰り出される攻撃も強力だが、それ以上に体のどこから術を使われるのか分からんのが厄介だの」
「ええ、ただし分かったこともあります」
そう言い切ったカカシは持ち前の分析力で理解できたことを順に指を立てながら説明していく。
「一つ目は面の口元の色で相手の術が分かること。今のところは赤が火、青は水、緑が風で、黄が雷しか使ってないことから、確定ではありませんが概ね間違ってないと思います」
「なるほど……言われてみれば確かに」
カカシの分析にヤマトが唸るように納得した。自来也もまた、カカシの分析を聞いて無言で頷いていたが、ナルトだけは面の口元に注目してなかったのか、頭を捻っていた。
「二つ目は相手の対処能力はあまり高くないこと。ナルトの影分身が四方八方から襲っても対応できたことから、巨人の中からなんらかの感知方法で外の様子を把握しているのは間違いないと思います。ですが、完璧な対応ではなく何体かの影分身に懐に入られてるので、その感知能力が不十分なのか、あるいは体がデカすぎて細かい動作ができないのか……」
「なるほどのぉ……」
カカシの推測通り、角都は黒い巨人の中から外の様子を把握するためにチャクラを感知する術を使用していた。それにより、全方位からの攻撃を把握することができているのだが、角都本人が感知タイプではないのでその精度はさほど高くない。
ゆえに、仕掛けてきた相手に対して大雑把な対応しかできていなかったのだ。
しかし、今はそんな欠点を補うように飛段がいる。飛段が黒い巨人のすぐ側にいる限り、例え黒い巨人に接近できたとしても容易く倒せるわけではなかった。
そして、その事に気づかない自来也とカカシではない。
「だが、懐にあの飛段という男がいればその欠点もカバーできるわけか」
「ええ、ですのでまずはあの二人を分断したいところですね」
自来也とカカシが飛段と角都の二人組を分断しようと考えている時、角都が不意に口を開いた。その声は黒い巨人の中からの発声であったせいで籠っていたが、黒い巨人に意識を集中させていた自来也たちにはよく聞こえた。
「お前たちを──特にその木遁の小僧を見ていると最初に戦った木ノ葉の忍を思い出す……初代火影をな……」
「なっ……!?」
「いったい何歳なんだ……!?」
角都の衝撃的な発言にナルトたちは開いた口が塞がらないほどの衝撃を受けた。
なにせ初代火影と言えば、孫の綱手が五十を優に超える年齢であり、今も初代火影が生きていたとしたら九十歳前後の年齢である。
そんな彼と戦った人物ともなれば、角都も相当な年齢になるのは間違いない。ナルトたちが衝撃を受けるのも当然であった。
しかし、角都はそんな木ノ葉隠れの忍たちを見て嘲笑した。
角都自身からすれば、驚くべきなのは己の年齢ではなく、忍の神とまで称された初代火影と戦って生き残った事実であると考えていた。
なにせ、角都が戦った時でさえ柱間は本気の一片すら見せていなかったのだから。
角都は当時のことを思い出して怒りと恐怖に震える。
角都が滝隠れの里の忍として柱間を暗殺しに行った時、柱間は滝隠れの忍に襲われる理由が分からず困惑したまま対応した。そして、困惑したまま角都を圧倒した。
その当時、角都には『地怨虞』がなかったが、それでも容易くあしらわれたことが屈辱で仕方がなかった。
火影暗殺失敗の責を負わせてきた里を抜けて『地怨虞』を手に入れた後、いつか必ず柱間を殺して心臓を抉り取ってやると息巻いていた。
だが、あの光景を見て、角都の怒りは恐怖に変わった。
角都は柱間とうちはマダラが最後に戦った場所である終末の谷を見た。元々あった地形は何もかもが無惨に破壊された場所を見た。
その時、角都は恐怖で震えた。誰に喧嘩を売ったのかを理解し、いかに自分が命の危機にあったのかを理解したからだ。柱間がその気だったのなら──角都はすでにこの世にいなかっただろう。角都は否応が無しにそれを確信させられた。
そして、柱間が死んだと風の噂で聞いた時、角都は安堵した。もうこれで柱間と戦わなくて済むと思ったからだ。
そんな自分に対して怒りを覚えたことを角都は思い出していた。
木ノ葉隠れの里の忍と対峙して、さらにはその中に初代火影の秘伝忍術である木遁を使う忍までいたことにより、角都の心の奥底で燻っていた火種が一気に燃え上がり、木ノ葉隠れの里の忍を薪にしてさらに強く燃え上ろうとしていた。
だが、角都は歴戦の忍である。心は燃え上がっていても、頭は氷のように冷静に状況を判断していた。
「お前たちを殺して心臓を抜き取ってやる……あの世で初代火影に詫びてもらうんだな。あの時お前が取り逃した男に殺されたとな」
黒い巨人の中から聞こえてくる地の底を這うような低い声の抹殺宣言に、木ノ葉隠れの里の忍たちは身構えた。
「来るぞっ!」
自来也の警告が飛んだ直後、黒い巨人が両腕を自来也たちへと突き出すように構えると、その手の平と黒い巨人の胴体から白い面が顔を出して術を発動した。
黒い巨人の右手からは豪雨のような散水が、左手からは台風のような突風が、それら全てを貫くように胴体から紫電が迸った。
黒い巨人の前方全てを薙ぎ払うような大嵐が自来也たちを襲う。
「「「土遁・土流壁!!」」」
目の前に迫る嵐を前にして自来也、カカシ、ヤマトの三名は声かけもアイコンタクトもなしに全く同じタイミングで同じ術を使った。彼らの前に分厚い三枚の土壁が並び立ち、嵐を遮る防波堤と化す。
だが、大嵐は土壁を抉り、削り、貫く。ボロボロと崩れ去っていく土壁。特に、雷遁は土遁に強いせいで、槍のような紫電がどんどん土壁を破壊していく。
あっという間に二枚の土壁が崩壊し、続く三枚目の土壁すらも嵐はすぐに破壊して自来也たちへと襲いかかろうとした。
しかし、嵐が自来也たちの元に殺到したころにはすでに土壁の裏にいたはずの自来也たちはその場から姿を消していた。
自来也たちは『土流壁』で嵐を凌いでいる間に土遁で地面を掘って嵐をやり過ごし、そのまま黒い巨人の足元から攻撃しようとしていた。
「──飛段!下だ!」
角都がチャクラ感知により自来也たちが地面の下にいると看破して飛段に忠告した直後、飛段が返答するよりも前に自来也たちが地面から飛び出た。
そして、自来也たちは飛び出すよりも前に地中にて攻撃準備を整えていた。
自来也とナルトが右腕に『螺旋丸』を、カカシが左手に『雷切』を構えていた。どちらの術も十分な攻撃力を持った必殺の一撃になり得る術。自来也とナルトは黒い巨人を狙い、カカシの狙いは飛段。
その攻撃に対して、角都はナルトと自来也をいっぺんに押し潰そうと左右から挟み込むように黒い巨人の両腕を振りかぶり、飛段はカカシを迎え撃とうと大鎌を振りかぶった。
『螺旋丸』と『雷切』に対して、黒い巨人の両腕と大鎌である。リーチの差は一目瞭然であり、そのままなら木ノ葉隠れの里の忍たちは甚大な被害を被ることになる。
だが、その迎撃の動きを自来也たちは読んでいた。
(ここだっ!)
「木遁・大樹林の術!」
ただ一人まだ地中にいたヤマトが狙い澄ましたタイミングで術を発動させた。
「ッ!?」
「なんだぁ!?」
地下から急速に伸びてきた大樹が枝分かれしながら飛段と黒い巨人に襲いかかり、その身動きを封じ込めるように絡みついた。
自来也たちがこれみよがしに掲げていた『螺旋丸』と『雷切』に気を取られた飛段と角都は、その樹木による拘束をろくに防御もできずに受け入れる羽目になった。
「「螺旋丸!」」
「雷切!」
そして、ヤマトの作った隙を見逃さない自来也たちは、勢いのまま飛段と黒い巨人に攻撃を仕掛ける。
「舐めるな!」「舐めんじゃねえ!」
しかし、角都と飛段も伊達に暁に所属しているわけではない。
角都は黒い巨人の全身から黒い触手をハリネズミのように突き出して身を縛る樹木ごと自来也とナルトを貫こうとし、飛段は大鎌を手首だけで振り回して拘束していた樹木を振り払い、その勢いのままカカシの首を狙って大鎌を振り抜いた。
「こんにゃろっ!」「おお!!」
「ぬうううっ!」
ナルトと自来也は迫り来る黒い触手に対して『螺旋丸』を叩きつけた。
二つの『螺旋丸』は触れた黒い触手を散り散りに消し飛ばし、そのまま溜め込まれたチャクラを解放して迫り来る黒い触手ごと巨人の肉体を数メートルも吹き飛ばした。
「なかなかの破壊力だが、直接当たらなければこの程度……」
しかし、『螺旋丸』の破壊力は絶大なものだったが、黒い触手に阻まれたせいか巨人の胴体に大きな傷はなかった。巨人の肉体を構成する触手をある程度吹き飛ばしたものの、致命傷には程遠い。
負傷度合いを冷静に確認した角都が『地怨虞』へと再びチャクラを注ぎ込むと、黒い触手はすぐさま増殖し、ビデオの逆再生のように元の姿へと回帰してしまった。
「どうやら、やつの体に螺旋丸を直接叩きつけるか、あるいはもっと大きな術で防御ごと吹き飛ばす必要があるようだぞナルトよ」
「──オッス!修行の成果を見せる時だってばよ!」
黒い巨人の復元能力を見た自来也がナルトへと話しかけると、ナルトは覚悟を決めた表情で真っ直ぐに黒い巨人を睨みつけた。
一方で、飛段に襲いかかったカカシは迎撃のために振られた大鎌の軌道を見切り、鎌の刃先を両手で挟み込んで止めていた。もちろん、カカシは『雷切』を解いてなどいない。
「ぐ、があっ!」
カカシの『雷切』が鎌を通して飛段の肉体に流れていき、飛段は全身が痺れて叫ぶことすらままならない状態に陥った。
「ふんっ!」
「ぐえッ!」
そんな無防備な姿を見逃すカカシではなく、鎌を押さえ込んだまま体を一回転させて回し蹴りを角都の腹部に叩き込んだ。飛段はカカシに蹴られた衝撃で嗚咽を吐きながら吹き飛ばされ、そのまま地面をゴロゴロと十メートル以上も転がっていく。
その行先は角都とは正反対の方向であり、カカシは先ほどの自来也との会話通りに角都と飛段を分断することに成功していた。
「痛ぅ──痛ってぇなぁ!オイ!テメー!」
カカシの手加減抜きの回し蹴りをなんの防御もできずに受ければ、普通は内臓が破裂するほどの痛みを覚えて身動きするのも難しいはずだが、飛段は痛い痛いと叫びながらも首を抑えて立ち上がった。
「先輩の攻撃を無防備に受けたのに……なんてやつだ」
かなりのダメージを受けたはずの飛段の元気な様子を見たヤマトが戦慄した。もはやどうすればダメージになるのか理解できなかったからだ。
だが、そんなヤマトとは対照的に、カカシは目線こそ鋭いものの態度はそこまで重くなかった。
「ま、やりようはいくらでもあるでしょ。死なないからって無敵ってわけじゃないんだし」
「は、はぁ……」
楽観的なカカシの態度にヤマトは呆れたように頷くしかない。
そんな二人に向けて、飛段は苛立ちを隠そうともしない態度のまま唾が飛ぶほどの大声で叫ぶ。
「テメーら!頭に来たぜ……!ぜってぇ殺す!バラバラにブチ殺してジャシン様に捧げてやるぜ!」
飛段の殺害予告を聞いたカカシとヤマトが身構える。
角都と飛段に距離を取らせることに成功した木ノ葉隠れの里の忍たち。
角都対ナルトと自来也、飛段対カカシとヤマトと組み合わせを変えて、より過激になろうとしていた。