音の四人衆最強の男   作:北山 真

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 お待たせして申し訳ありませんでした。
 最近は暑くなってきたのもあり、私生活でも色々あったので、モチベが上がらないことが多かったです。
 これからも不定期更新になったり違う小説を投稿したりするかもしれませんが、応援してもらえたら幸いです。






角都と飛段 その参

 

 飛段を蹴り飛ばして角都と分断することに成功したカカシ。しかし、分断したとはいえ角都と飛段との距離はせいぜいが百メートル程度であり、妨害したとしても合流されてしまう可能性が高い。

 そうはさせないとカカシはヤマトへと一つの指示を出す。

 

「テンゾウ、木遁で壁を作ってくれ」

「分かりました!木遁・樹界壁!」

 

 カカシの指示を聞いたヤマトはすぐさま術を発動し、足元から複数の樹木が複雑に絡み合うように伸びていき、一瞬にして大きな木の城壁を作り出して角都と飛段を完全に分断した。

 これにより、飛段は角都と合流しようと思えばカカシとヤマトの妨害を乗り越えてから木の壁を越えなければならず、またカカシは背後から角都の術が飛んでくる可能性を極力減らすことができた。

 

「さて……これで簡単には合流できないだろう。テンゾウ、お前は壁の上に陣取って壁の維持と危なそうな味方へのフォローを頼む」

「了解!……あと、今はヤマトです」

 

 さらっと名前を訂正しつつ自らが作った木の壁を駆け上がったヤマト。そんなヤマトをカカシは横目で見送りながらも決して飛段から目を離さない。

 カカシに一切の油断はなく、また原作とは違って今のカカシは万全に近い状態だ。対して飛段はアスマに切られた首の影響で万全とは言えない状態である。

 

 カカシは負傷している飛段を角都と分断できている今のうちに倒し切る腹づもりであった。

 ヤマトが壁を維持してくれるだろうが、角都が放ってきた威力の高い術の数々を考えれば、分断はいつまでできるか分からない。

 

 ゆえに、カカシの狙いは短期決戦。それも可能な限り早く決着をつけてナルトの援護に回りたいと考えていた。

 

 カカシがそう考えているということは当然だが飛段は理解していた。

 普通ならカカシの狙いから外れるために角都との合流を目指すのが定石だ。だが、飛段はあえてカカシの狙いに乗るつもりだった。

 

 短期決戦を狙ってくるカカシは多少の傷と引き換えにでも飛段に致命傷を与えようとするだろうと飛段は予想していた。肉を切らせて骨を断つ──それが最短の決着方法だからだ。

 だが、飛段を相手に肉を切らせれば魂まで刈り取られることになることをカカシは知らない。

 

(俺の能力はまだバレてねえ……なら、あの野郎の攻撃に合わせてカウンターをくらわせて血を取り込んで儀式をする。そうすれば相手が一人減って俺と角都も逃げやすくなる)

 

 飛段が持つ能力は不死身の肉体だけではない。相手の血を摂取することで発動する呪い──『呪術・死司憑血(しじひょうけつ)』があった。

 この呪いは呪いたい相手の血を舐めとり、自身の血を使って地面に丸の中に三角がある魔法陣を書くことで、その魔法陣の上で受けた自身の傷を血を舐めとった相手にも与えるというものだ。

 

 術の原理は比較的簡単で、『影分身の術』が消える時に本体と情報を共有する作用と同じである。『影分身の術』が本体と分身との間にチャクラの繋がりがあることで情報を共有できるように、『死司憑血』は血を舐めとることで呪いたい対象との間にチャクラの繋がりを作り出して相手を呪う。

 もちろん、本来は他人との間にチャクラの繋がりを作成するのは難しいので、血を摂取し、血の魔法陣を結界として作り上げることで効果を発揮するようにしているのだろう。

 

 呪いを妨害するためには飛段を魔法陣の外に追い出す、あるいは魔法陣そのものを壊すことが重要だが、呪われた状態でそれを行うのは非常に困難であり、その性質上、一対一の戦いでは非常に強力である。一度でも呪いが完了したならば、血を舐め取られた相手は激痛により身動きすることがほぼ不可能になるのだから。

 

 お互いの思惑とともに視線が交差する。

 

 カカシが左手に『雷切』を構え、飛段はカカシに対して半身になりながら両手で大鎌を腰の辺りで振りかぶった。両者が構えをとったことで緊張が高まる。

 緊張から膠着状態に陥る──ということはなく、次の瞬間にはカカシが飛段へと向けて雷の如く駆け出した。

 

(速えな!だが、合わせられねえほどじゃねえ!)

 

 飛段はカカシの速さに瞠目しながらも大鎌に込める力を少し緩めた。心中の独白でも分かる通り、決して諦めたわけではない。むしろその逆。確実に仕留めるためにあえて力を緩めたのだ。

 

 カカシと飛段の距離が急速に縮まり、カカシが飛段の大鎌の間合いの内側に入った瞬間、飛段はカカシの胴体を真っ二つにするべく大鎌を横薙ぎに振り抜いた。大鎌は大気を切り裂きながらカカシの胴体へと吸い込まれていく。

 

 だが、カカシが大鎌から逃れるべく跳躍したことで、大鎌はカカシへと当たらずに空を切ることになる。

 

「それぐれえは予測済みだバカめ!」

 

 飛段は空振った大鎌を手放した。飛段の手から離れた大鎌は振り抜かれた勢いのまま彼方へと飛んでいく。

 そして手放した大鎌の代わりに飛段は懐から細く短い黒塗りの槍を取り出した。

 

 飛段は初めから大鎌による一撃をフェイクとし、カカシが避けた後の隙を短槍で素早く突くつもりだったのだ。大鎌を強く握っていては短槍を素早く取り出すことができないので、あえて緩く握っていたのだ。

 

「空中じゃあ避けれねえだろ!」

 

 飛段は空中にいるカカシにむけて威勢良く短槍を突き出した。狙いは再び胴体。頭や心臓などの一撃で致命傷を与えられる場所を狙うのではなく、狙いやすく躱されにくい胴体を狙うことで確実に手傷を負わせて呪いを発動させようという魂胆である。

 事実、空中では流石のカカシも身を捩るのが精一杯であり、鋭く突き出される短槍を躱しきることなどできない。

 

 そう────避けることはできない。

 それならば、避けなければ良い。

 

「神威!」

 

 空中で身を捩ったカカシの左目が──亡き親友から貰い受けた万華鏡写輪眼が飛段の短槍を捉える。

 カカシの持つ万華鏡写輪眼の瞳術『神威』により短槍の先端部が空間ごと捩れていき、一瞬にしてカカシすら知り得ない異空間の彼方へと移動させられた。残されたのはただの棒切れとなった槍の残骸のみ。

 

「何だとっ……!?」

「終わりだ!雷切!!」

「ぐはっ……!!」

 

 飛段が消えた短槍に戸惑った瞬間にはすでにカカシの雷切は飛段の心臓を貫いていた。

 完全な致命傷を与えたカカシだが、まだまだ手を緩めない。

 

「おおおぉぉ!!」

 

 カカシは『雷切』を維持したまま左手を飛段の肉体から抜き取り、そのまま一閃させ、飛段の首を刎ね飛ばした。

 

「またかよクソっ……!」

 

 一日に二回も首を刎ねられた飛段が悪態を吐くが、状況はアスマに刎ねられた時よりもなお悪い。飛段の首の傷跡は『雷切』によって焼け爛れており、一部に至っては完全に塞がれていた。それこそ、再び角都に『地怨虞』で繋げてもらおうにも、一度火傷した部分を切除しなければ繋げないほどに。

 

 もはや再起不能と言えるほどの負傷を負った飛段は、しかし、再び首一つになってもその威勢の良さだけは変わらない。

 

「テメーッ!よくもやってくれたなチクショウがっ!一日に二回も首切られるなんてそうそうねえぞこのヤロー!!」

「だろうね……いや、まあ冷静に考えれば首を切られたら普通は死ぬんだけどね……」

 

 その威勢の良さにはカカシが呆れ果て、ついつい常識的なツッコミを入れてしまうほどだった。

 ただ一度ツッコミを入れられた程度では飛段の口は止まらず、さらに口撃を続ける。いや、もはや口しか動かせない飛段にはその程度しかできなかった。

 

「俺がこの程度で死ぬなんて思ってんじゃねえぞ!絶対許さねえからな!テメーも!あの髭面も!必ずぶっ殺して首を刎ねて並べて晒してやるぜ!」

「それは無理だね」

 

 悪態ばかりを吐き出す飛段の口を縫い止めるようにカカシはハッキリと飛段の言葉を否定した。そして、カカシはそのまま飛段の行く末を語る。

 

「お前はこれから生首の状態で木ノ葉へ持って帰って、尋問のプロの下へ運ばれる。安心しな、うちの尋問官は優秀だから首から上さえあれば好きなだけ情報が抜き取れるから」

「テメーッ………!」

 

 木ノ葉隠れの里には山中一族という精神干渉に特化した一族がいる。現当主の山中いのいちの手にかかれば、カカシが語ったように飛段の生首からでも暁の情報を入手することは赤子の手を捻るよりも簡単なことだった。

 そして、飛段にはそれを防ぐ手立てが何一つなかった。精神への干渉を跳ね除ける術もなければ、強い意思もない。原作での鬼鮫の最後のように情報を取られないようにと自害したくとも、飛段は不死身ゆえにそれすらできない。

 

「ま、お前が不死身で助かったよ……尋問中に死なれたら情報は取れないけど、その状態でも死なないならその心配もないしね」

「クソヤローが!テメーには絶対に神罰が下されるぜ!いや!俺が必ず下してやる!首だけの状態でもなあ!」

「だから無理だって……」

 

 もはや飛段の言葉には信憑性は一つもなく、ただの負け犬の遠吠えにしかなっておらず、カカシは呆れるばかりだった。

 

 飛段の敗因はたった一つだ。

 

 少年の頃から戦争に参加して大切な人を失いながらも忍として生きてきたカカシ。

 戦争を知らないぬるま湯に浸かって生き、ジャシン教の教徒として人を殺してきた飛段。

 

 両者の間には決して埋まらない差があった。

 

「ま、相手が悪かったな」

「……このクソカスがッ……!」

 

 飛段は戦う相手を間違えた。

 

 

 


 

 

 

 一瞬で決着のついたカカシと飛段の戦いをよそに、角都と対峙していたナルト、自来也は、途中から参戦したヤマトを加えて激闘を繰り広げていた。

 

 角都が中で操る『完成体・地怨虞』はその巨体からは考えられないほど滑らかに、かつ素早く動き、巨腕を振り回してナルトたちを押し潰そうと暴れ回る。

 黒い巨腕は時に倍以上にまで伸びてナルトを叩き潰そうとし、時に関節がないことを活かして鞭のようにしならせて自来也を薙ぎ払いにかかり、時に腕部の結合を解いて無数の細い触手にしてヤマトを貫こうとした。

 

 ナルトは新術のためにチャクラを温存しようと回避に専念していた。

 ヤマトは回避しながら時折木遁を牽制として放っていたが、大技でない術は黒い巨腕によって簡単に粉砕されてしまった。

 

 そして、自来也は攻撃を冷静に回避し続けながらある違和感を覚えていた。

 

(おかしい……なぜあれほど使っていた術を使ってこない……)

 

 違和感の正体──それは角都が術を使わずに肉弾戦のみで戦っていることだった。

 黒い巨人による物理攻撃は極めて強力だ。大質量からくる破壊力は凄まじく、伸び縮みすることで間合いは読みづらく、関節がないことを活かして変則的な動きまでする。

 だが、今現在ナルトたちが冷静に捌けているように、それだけでは決定打にはならない。

 

(確かめてみるか……)

「火遁・大炎弾!!」

 

 自来也は実際に角都がなぜ術を使わないのか確かめるべく黒い巨人へと巨大火球を吹き出した。火の玉は大気を焦がし尽くしながら黒い巨人へと襲いかかる。

 自来也の『大炎弾』が生物に当たればあっという間に黒焦げの焼死体になるだろう。それだけの火力があり、それだけのチャクラが込められていた。

 

 その火球に対して、角都は術で返すのではなく回避を選択した。

 しかし、火球は大きく、そして速い。黒い巨人は火球を完全には回避しきれず、その右腕の先端部から三割ほどが焼失する結果となった。

 

「なるほどのお……」

「チッ……」

 

 自来也は角都の動きからその考えを見抜いて満足げに頷き、それに対して角都は黒い巨人の内側で舌打ちをした。

 

 自来也は自らが見抜いた情報を共有するべくナルトとヤマトに話しかける。

 

「あやつはチャクラ量に不安があるようだのお。だから先ほどから術を使わずに体術のみで戦っておるのよ」

「そうだったのか……」

「おそらくは一発で戦況を変えれるだけのチャクラを溜めてから術を使うつもりだろう」

(流石は三忍の自来也……この程度は見抜くか)

 

 自来也の予想はズバリ当たっていた。そのことを角都は声には出さずに賞賛した。

 

 角都はアスマたちとの戦いから連続でナルトたちと対峙している。その中で多数の術を使い、さらには『完成体・地怨虞』まで使用していた。

 角都は他者から奪った五つの心臓のおかげで膨大なチャクラ量を誇る忍だが、それにしても術の使用回数が多すぎた。

 ゆえに角都は『完成体・地怨虞』による体術で時間を稼いでチャクラを一度溜め、その後に一気に術を使って包囲網を突破しようと考えていた。

 

 だが、その考えを読めていたのならば、わざわざ時間を稼がせるほど自来也は甘くない。

 

「ナルト、やつがチャクラを溜めとる今が好機よ。あの術の準備をしろ」

「──オッス!!影分身の術!」

 

 自来也の指示を聞いて気合いを入れ直したナルトが『影分身の術』を使って分身を二人生み出した。

 そして、オリジナルと『影分身』、合わせて三人のナルトが一箇所に集まって『螺旋丸』を形成していく。

 ただし、ただの『螺旋丸』ではない。通常の『螺旋丸』がチャクラの圧縮と乱回転により作られるのに対し、今ナルトが使っている『螺旋丸』はそこに風の性質変化を加えて作られていた。

 

 徐々にナルトの手の平の上で形作られていく新型の『螺旋丸』。

 

 その集まっていくチャクラの量と質を感じ取った角都は術を完成させないように邪魔をするべく動こうとしたが、自来也が睨みを利かせているために動けない。

 

 そうこうしている間にナルトが完成した新型の『螺旋丸』──『風遁・螺旋手裏剣』を手に持って掲げた。

 

 『風遁・螺旋手裏剣』はその名の通り巨大な風魔手裏剣の中心に『螺旋丸』を据えたような形状をしている。

 そんな形状の割に投げ飛ばすことは今はまだできないが、『風遁・螺旋手裏剣』の圧倒的なまでの攻撃力の前にそんなことは些細な問題であった。

 

 『風遁・螺旋手裏剣』は超極小サイズの風の刃の集合体である。触れた物質を粉微塵になるまで切り刻む切断能力があり、人に当てれば全身の経絡系をズタズタに引き裂いてチャクラを練れなくする能力もあった。

 それゆえにナルトの手の経絡系にもダメージのいく諸刃の剣だったが、今はまだその副作用にナルト本人ですら気づいていない。

 

 そんな『風遁・螺旋手裏剣』を前にして、角都は久しく感じていなかった死の危機を感じとっていた。

 

(あれはヤバイな。地怨虞越しにくらうのも避けた方が良さそうだ……だが、策はある……)

 

 角都が警戒心を最大限に強めながら密かに策を練る一方で、自来也は少しだけ物思いに耽っていた。

 

 自来也はナルトの背中にかつての弟子──四代目火影である波風ミナトの姿を重ねていたのである。

 

(ミナトよ……ナルトはお前を超えるぞ──!)

 

 『螺旋丸』の開発者である波風ミナトですら成し得なかった『螺旋丸』に性質変化を加え、さらには進化させた『風遁・螺旋手裏剣』を目の当たりにし、自来也は戦闘中にも関わらず感極まって涙が溢れそうになった。

 

 そうやって気が緩んだからだろうか──自来也の耳に幻聴まで聞こえてきた。

 あるいはその声は自来也自身の本能が緩んだ気を引き締めるために聞こえた自来也の妄想かもしれない。だが、確実にその声の主なら──波風ミナトならそう言うだろうと、自来也は確かに思った。

 

『ナルトを頼みますね、先生!』

 

 声を聞いた瞬間、自来也は瞠目する。その脳裏にミナトに頼まれてナルトの名付け親となった時のことと、かつて大ガマ仙人から授けられた予言のことを思い出した。

 

(そうだ!ワシはナルトとミナトの師だ!そしてナルト……お前は間違いなく予言の子だ!)

 

 波風ミナトはナルトと名付ける時に自来也の著書『ド根性忍伝』の主人公から名を取った。ナルトも『ド根性忍伝』の主人公のような諦めない心を受け継いで大切にしてほしいと思ったから。

 

 大ガマ仙人はかつて自来也にこう予言を残した──『自来也の弟子が、安定か破滅という形で忍の世にそれまでにない大きな変革をもたらす』と。

 

 今のナルトの姿を見て自来也はナルトはミナトを超えると確信し、同時に大ガマ仙人が語った予言の子だとも確信した。

 

 ならば──

 

「お前たちの師であるワシが……こんな所で師であることを諦めるわけにはいかんのお──!!」

 

 自来也とミナトが忍として最も重要なものであると考える“諦めないド根性”をナルトが受け継いでいる。そんなナルトがミナトを超えたからと、まだまだ未熟なナルトを導くことを諦めたならば、自来也はミナトに会わせる顔がない。

 

 自来也は自らの長い忍としての生の終着点を“ナルトを立派な火影にすること”に今、決めた。

 

「影分身の術!」

「えっ!?」

 

 ナルトが『風遁・螺旋手裏剣』を構えている横で自来也が『影分身の術』を使って一体の分身を生み出した。

 ナルトは自分の十八番の忍術を自来也が使ったことで戸惑いの声を漏らした。だが、そこからさらに戸惑うことになる。

 

「それは──」

 

 戸惑うナルトを他所に、分身とオリジナル──二人の自来也がナルトと同じように『螺旋丸』を作り出し──ナルトのように時間をかけることなく一瞬で作りきった。

 

 オリジナルの自来也の手の平の上で、赤く燃え輝く『螺旋丸』。それはまるで恒星のような姿である。

 

 ナルトの先ほどの戸惑いから漏れた言葉に答えるように、自来也が術の名を呟く。

 

「火遁・大玉螺旋丸──」

 

 『火遁・大玉螺旋丸』に『風遁・螺旋手裏剣』ほどの完成度はない。自来也はナルトを参考にして『影分身』を使って『大玉螺旋丸』に火の性質変化を加えることに成功したが、『風遁・螺旋手裏剣』のように通常の『螺旋丸』以上の形態変化を加えることはできなかった。

 それも仕方がないことである。自来也は木ノ葉隠れの里で一、二を争うほどに優秀な忍であるがゆえに里内で一、二を争うほど多忙を極めていた。ナルトのように『多重影分身の術』を用いた修行の効率化もできない自来也では、『螺旋丸』を完成させるための修行ばかりに時間をかけてはいられない。

 

 それでも、二年半前からナルトの修行を見ながら自身の修行もコツコツと続けてきた結果が性質変化を加えた『螺旋丸』であり、今作り上げた『火遁・大玉螺旋丸』であった。

 

 ただ単に『大玉螺旋丸』に火の性質変化を加えただけであるが、長年に渡り『螺旋丸』を使い続けてきた自来也の『螺旋丸』の練度はこの世の誰よりも上である。

 『風遁・螺旋手裏剣』のように無数の小さな風の刃で切り刻むようなことはできないが、完成したばかりで十分に習熟されていない『風遁・螺旋手裏剣』と、非常に洗練された『火遁・大玉螺旋丸』の破壊力は互角と言っても過言ではなかった。

 

「すげえってばよ……」

 

 ナルトが流石は自分の尊敬する師匠だと感嘆の声を漏らした。

 自身が苦労して『風遁・螺旋手裏剣』を生み出したからこそ分かる単純な『螺旋丸』の練度の差に、ナルトは心から自来也に敬意を払った。

 なまじ『風遁・螺旋手裏剣』が完成したからこそ、ナルトの心中にはある種の驕りが──この術さえあれば右近左近やサスケにも負けないという気持ちが生まれていたが、まだまだ努力が足りていないことを改めて突きつけられたことで、そんな気持ちがナルトの心中から一掃されていた。

 

 二つの新型『螺旋丸』が並び立つ光景を見た角都は思わず黒い巨人の中で歯噛みしてしまう。

 

「ぐっ……」

 

 ナルトの『風遁・螺旋手裏剣』だけでも危険度はかなりのものであったのに、そこにさらに自来也の『火遁・大玉螺旋丸』まで追加されたのだ。その脅威度は計り知れない。

 

 しかし、明らかな二つの脅威を目の当たりにしてもなお、角都にはこの場を切り抜けるための策があった。

 

(当たる直前に完成体・地怨虞から抜け出し、そのまま土遁で地中へと潜る……地怨虞の心臓は少々勿体無いが……仕方ない。背に腹はかえられん)

 

 角都の策とは『完成体・地怨虞』を囮にして逃亡することだった。

 二つの新型『螺旋丸』を正面から受けると同時に黒い巨人の背中側から抜け出せば角都が逃げたことは判明しにくい。さらには二つの新型『螺旋丸』が炸裂すれば、圧縮されたチャクラが解放されるので、それを隠れ蓑にすることも可能だろうと角都は考えていた。

 

 だが、無防備に二つの新型『螺旋丸』を受ければ自来也は確実に違和感を覚えるだろうと、角都は敵である自来也の力量を信頼していた。

 

(限界まで抵抗し、本当にやられたように見せかける必要がある。そのためには──)

「ウオオッ──!!」

 

 角都は黒い巨人の中で雄叫びをあげてありったけのチャクラを練り上げていく。もちろん、逃走用の土遁に使えるチャクラは残してあるが、それ以外は全て使い切る勢いだ。

 そして同時に、『地怨虞』の四つの心臓からも同じようにチャクラを練り上げさせるが、こちらは心臓を使い捨てにするつもりで限界を超えてチャクラを搾り尽くしていく。

 

『グウウオオオオオッ──!!!』

 

 『地怨虞』たちもまた雄叫びをあげた。だが、それは限界を超えて酷使される心臓の痛みからくる悲痛な叫びでもあった。

 『完成体・地怨虞』の腹部から四つの白い面が現れてそれぞれが大口を開き、そこから角都と四つの心臓から生み出される膨大なチャクラが放出されながら混ざり合い、ドス黒い血のような色へと変化して一つの巨大なチャクラ球を形成していく。

 これから発動する大技は奪った心臓を含めて五つもの心臓を総動員して放つ術である。そのため、奪った心臓のチャクラ性質に左右されずに発動できるようにするために、角都はあえてチャクラ球に性質変化を加えていなかった。

 

「あれは……尾獣玉か──」

 

 自来也が察したように、その様子はまるで尾獣が使う『尾獣玉』のようである。

 実際に、この術は角都がかつての戦場で見た『尾獣玉』を模倣して作った術であった。

 だが、似ているのは形だけではない。その圧倒的な破壊力もまた『尾獣玉』に匹敵するほどの術なのだ。

 

 これこそが対尾獣、対須佐能乎用の決戦忍術。角都が他人から奪ったものも含めて五つもの心臓から生み出される膨大なチャクラを一つのチャクラ塊にして撃ち放つ最強の術──『滅牙尾威矛(メガビイム)砲』であった。

 

「ヤバイってばよ……!」

「案ずるなナルト!」

 

 角都の膨大なチャクラが込められた術を見たナルトが危険を感じ取る。

 角都の術に込められたチャクラの量は膨大であり、つい最近九尾のチャクラを借りて戦った時と同じぐらいのチャクラの圧を感じていた。

 だが、そんなナルトの不安を払拭するように自来也は力強くナルトに声をかけた。

 その声を聞いたナルトがハッとした表情で自来也の言葉に耳を傾ける。

 

「ナルトよ、螺旋丸は元々やつのような強大なチャクラを持つ敵と戦うために開発された術なのだ。だから臆するなナルト!ワシとお前なら必ずやれる!」

「──オッス!!」

 

 自来也の言葉を聞いて自信を取り戻したナルトが気合を入れ直して元気よく返事をした。

 

 自来也が語ったとおり、『螺旋丸』とは強大なチャクラを持つ敵──すなわち対尾獣用に考案された術である。

 波風ミナトがかつての戦場で相対した人柱力の『尾獣玉』を見たことでその強さを感じ取り、そんな人柱力と相対することになるだろう当時の九尾の人柱力であり、自らが愛した女性──うずまきクシナに授けるために『尾獣玉』を参考にして開発した術だった。

 

 つまり『滅牙尾威矛砲』と『螺旋丸』──この二つはどちらも『尾獣玉』から刺激を受けて開発された術だったのだ。

 

 そんな二つの術が今──激突する。

 

「これが最後の勝負だ!」

 

 そんな心にも思っていない大嘘を叫びながら角都が膨大なチャクラを込めた術を発動する。

 

「滅牙尾威矛砲────発射!!!」

 

 角都の声で巨大に膨れ上がったチャクラ球の溜め込まれていた全てのチャクラがもの凄い勢いで放出されていく。チャクラの奔流は漆黒の巨大なビームとなって地面を抉り、大気を押し退け、射線上にあるもの全てを滅ぼそうとナルトと自来也へ迫っていく。

 

「合わせろナルト!」

「おう!」

 

 迫り来る滅びのビームを前にして、ナルトと自来也は一歩も引かずに構えた。

 ナルトの右手に『風遁・螺旋手裏剣』が、自来也の左手に『火遁・大玉螺旋丸』がそれぞれ構えられ、そして──

 

「火遁・大玉螺旋丸!!」

「風遁・螺旋手裏剣!!」

 

 師弟は寸分の狂いもなく同時に腕を前に突き出した。

 角都の『滅牙尾威矛砲』と師弟の『螺旋丸』が激突した瞬間──周囲に凄まじい破壊が巻き起こった。

 轟音、閃光、衝撃波──それらが爆発したかのように一斉に周囲を蹂躙する。

 

「ぐっ、うわ……っ!」

 

 少し離れた木の壁の近くで待機していたヤマトは激突の寸前に木遁でドームを作り出して自分を防御していたが、激突の衝撃波だけでドームと木の壁には大きく亀裂が入り、大地を揺るがす大きな振動によりヤマトは立っているのもやっとの状態であった。

 

 当然、離れたところにまで影響を齎した強大な術の激突の影響は、ナルトと自来也にも襲いかかっていた。

 

「ぐっ……!」

「つぅっ……!?」

 

 滅びのビームの破壊力を真正面から『螺旋丸』が受け止めたからか、二人の周囲には破壊痕は刻まれていない。

 だが、ビームを受け止めた『螺旋丸』を持っていたそれぞれの腕に凄まじい衝撃が突き抜けて衣服は弾け飛び、腕は筋肉や血管の一部が千切れて激痛が走っていた。

 

 だが──

 

「まだまだぁっ──!」

「まだだってばよっ!」

 

 その程度のダメージを負ったところで諦めるような師弟ではない。

 ナルトと自来也は歯を食いしばって次から次へとチャクラを『螺旋丸』へ供給していく。

 

「「うおおおおお──!!!!」」

 

 ナルトと自来也の叫びが共鳴し、二つの『螺旋丸』がそれに呼応する。

 ナルトの『風遁・螺旋手裏剣』を持つ右手と自来也の『火遁・大玉螺旋丸』を持つ左手が引かれあい、それに伴って『螺旋丸』同士も接近し合う。

 ナルトの“風”が自来也の“火”をより強く燃え滾らせ、同時に強くなった自来也の“火”が生み出す気流がナルトの“風”をより強く吹かせる。

 

 二つの『螺旋丸』の勢いが飛躍的に増していき、徐々に拮抗していた術の押し合いの天秤が崩れていく。

 もちろん、徐々に押し返されていくのは『滅牙尾威矛砲』だ。

 

「なんだとっ……!?」

 

 思わぬ事態に驚愕する角都。

 ついにはナルトの右手と自来也の左手が重なり合い──二つの『螺旋丸』が一つになった。

 

「「うおおおおお────!!!!!!」」

 

 風と火が完全に混ざり合い、超高熱の火炎旋風を纏う極大サイズの『螺旋丸』となってビームを急速に押し返し始めた。

 

(マズイッ──脱出を!)

 

 これ以上の勝負は死に直結すると判断した角都が黒い巨人の背中側から抜け出そうと上半身を黒い巨人の外側に露出させた瞬間、どこからともなく飛来したクナイが角都の背中に突き刺さった。

 

「がっ……!?」

「悪いがそれは想定済みだ。お前は逃さないよ」

 

 どこからともなく聞こえてきた声の方へと角都が振り向こうとするが、クナイに纏わりついていた雷遁チャクラにより全身が痺れてうまく体が動かせなかった。

 

 クナイを投げた張本人──飛段を倒した後に隠れて様子を窺っていたカカシは角都の動きを止めれたことに満足そうに一つ頷き、ナルトの方へ視線を向けて声を張り上げる。

 

「行け!ナルトッ!!」

「うおおおおぉぉぉぉぉ───!!!」

 

 カカシの応援に触発されたように、ナルトがさらに力を込めて自来也と一緒に『螺旋丸』を押し込んでいく。

 角都が『滅牙尾威矛砲』へのチャクラ供給をやめたせいでチャクラの放出は弱まり、『螺旋丸』と『滅牙尾威矛砲』の押し合いの天秤は完全に崩壊した。

 

 全てを滅ぼそうとした漆黒の奔流が、全てを赤く照らす火炎旋風に飲み込まれていく。

 まるで影が光に払われるように、闇が炎に焼き払われていく。

 

 ビームを地表ごと焼き払いながら瞬く間に火炎旋風は黒い巨人へと迫っていく。

 

 そして──

 

「あつっ────」

 

 角都が熱さを感じて叫び声をあげようとしたが、そんな最後の断末魔を上げさせる暇もなく、黒い巨人ごと火炎旋風は一瞬にして全てを飲み込んだ。

 

 飲み込まれたとはいえ、黒い巨人とそれを盾にしていた角都は火炎の内側で生きていたが、それも少しの間のこと。火炎旋風に触れている表面部分からあっという間に風化するようにボロボロと崩れていく。

 

 この時、火炎旋風を形成する二つの『螺旋丸』のうちの一つである『風遁・螺旋手裏剣』が作り出していた超極小サイズの風の刃は、もう一つの『螺旋丸』である『火遁・螺旋丸』の極熱を纏っていた。

 無数の超極小サイズの風の刃は無数の黒い触手で形作られた巨人へと襲いかかり、触手を細かく切り分けながら内側に潜り込み、炎熱を体内で解き放つことを無数に繰り返していた。

  

 超極小の風の刃は黒い触手も角都の肉体も一緒くたに細かく切り裂き、切り裂いた端から極熱をもって炭化させていく。そして、炭化した部分は次なる風の刃に晒されて、ボロボロと風化するように崩れていく。

 その行程が一瞬で、それも無数に引き起こされた結果が、角都に断末魔をあげさせる暇も与えない瞬殺劇だった。

 

 やがて『螺旋丸』に込められていたチャクラを使い果たした時、そこに残っていたのは地平線にまで真っ直ぐに伸びた真っ黒に焦げつき半円状に抉れた地面の一本道だけだった。

 

「やった……ってばよ……」

「ああ……よくやったナルトよ……」

 

 疲労困憊な様子で支え合いながら立つナルトと自来也の師弟。

 大量のチャクラを一度に消費したことで疲れ果てているが、その消耗具合と反比例するようにその顔には強敵を打破したことと新型の『螺旋丸』が実戦で通用したことへの達成感が浮かんでいた。

 

「やったなナルト……」

(これで先生を越したかもな……)

 

 そんなナルトの姿を、カカシはかつての師匠である波風ミナトの存在を思い出しながら感慨深く眺めていた。

 自来也もまた、カカシと似たような視線をナルトへと向けている。

 

 そんな視線を一身に受けるナルトはというと──

 

(これでちょっとは追いつけたかってばよ……サスケ……)

 

 ナルトは右近左近の妨害にあったせいで会うことすらもできなかったサスケのことを思い浮かべていた。

 

 ナルトの中にあるサスケの背中は、少年期の時に連れ帰ることができなかったもののままである。

 サスケに勝てなかった、サスケのことを木ノ葉へと連れ戻せなかったという強い後悔が、その追いかけるべき背中を遠くかけ離れたものにしていた。

 

 そのことには右近左近の言動も関係していた。

 

 天地橋での戦いの際、ナルトの精神世界へと入り込んでしまった右近左近は「今のお前ではサスケを連れ帰るのは無理だ」と、ナルトに語っていた。

 

 だからこそ、ナルトは性質変化の修行に精を出し、『風遁・螺旋手裏剣』を完成させるという偉業を成し遂げ、ついには暁の一人を仲間の協力があったとはいえ倒すことができたことに喜びを感じていた。

 

 ナルトがそうやってサスケに近づけた喜びと『風遁・螺旋手裏剣』の疲れにより物思いに耽る中、自来也やカカシたちは暁との戦闘の余韻に浸るナルトを置いておいて木ノ葉隠れの里へと撤収するための準備を進めていた。

 

 負傷したアスマたちとの合流を待ちながら、肉の破片すら残らなかった角都は捨て置き、首と胴体が分たれた飛段の肉体を持って帰ろうとしていたのだが──

 

「木ノ葉のクソどもがっ!俺の首を二回も切りやがって!絶対に許さねぇからなぁ!!角都のやつも殺しやがって!!必ず後悔させてやるからなぁ!!」

「この状態でもうるさいですね。どうしますかこいつ……」

「情報を取るためには木ノ葉に持ち帰るしかないでしょ。仕方ないから木遁で猿轡でもしといてやって……」

「それしかないのぉ……それにしても元気なやつだ……」

「なんだとっ!この──もがもがっ!?」

「これでちょっとはマシでしょ……はぁ……」

 

 飛段のあまりにも騒がしい様子を見聞きして、自来也とカカシとヤマトは呆れ果てるばかりだった。

 カカシがヤマトへ指示を出し、飛段に木遁で猿轡をつけたことで多少は静かになったが、それでも猿轡の隙間から漏れ出る怒声や動き回る表情だけでも十分にうるさかった。

 

 だからこそ、飛段の言葉が妙に説明口調だったことにカカシたちは気づくことはなかった。

 

 

 


 

 

 

『────必ず後悔させてやるからなぁ!!────なんだとっ!この──もがもがっ!?」

 

 世界のどこかにある天然の洞窟の中。

 影のようにぼやけたシルエットだけの状態の飛段の生首が一方的に捲し立てていたが、途中で猿轡を噛まされたことでその言葉も途切れることになった。

 

 その飛段の言葉を聞いていたのは残りの暁の人員たちだった。

 暁の人員は全員が飛段と同じように影のようなシルエットの姿であり、この姿はペインの特別な術により各員が遠く離れた場所にいながら意識だけを一箇所に集められた状態だった。

 

 飛段と角都の戦闘が終わった頃、ペインは捕まえた尾獣を外道魔像へと封印するために暁の人員たちに召集をかけたのだが、集まったのはペインを除いて五名であり、うち一人は首だけになった飛段であったのだ。

 

「なるほど……飛段と角都は木ノ葉にやられたか……」

 

 弥彦の死体を使ったペインが飛段の喚き声により状況を理解して淡々と呟いた。

 抑揚もなく感情を感じ取らせない声色だったが、同時に今後の暁の行動を真剣に考えている証でもあった。

 

 ペインの言葉を皮切りに、各々が好きに話し出す。

 

「飛段はともかく、まさか角都までやられるとは……木ノ葉もやりますねえ……」

 

 鬼鮫はあまり好きではなかった角都を思い出しながら呟いた。

 角都は暁として二人一組(ツーマンセル)で動く時に相方にイライラして殺しにかかる悪癖を持っており、それが仲間殺しの任務を請け負っていた鬼鮫にとって癪に触ったからだ。

 だが、その強さだけは認めていた。

 だからこそ、そんな男を殺した──ペインの術で召集されてないことから間違いなく死んだ──木ノ葉隠れの里の忍たちを若干嬉しそうに褒めたのだ。

 

「まっさか、デイダラ先輩に続いて角都先輩まで死んじゃうなんてビックリだー!」

 

 鬼鮫の次におどけた調子で言葉を発したのはトビだった。

 トビと名乗っているうちはオビトは、軽い調子とは裏腹に割と本気でビックリしていた。

 オビトから見ても飛段はさて置き角都は相当な修羅場を潜ってきていた猛者であり、自分の倍近い年齢の経験豊富な忍であった。まさかそれが倒されるとは夢にも思っていなかったのだ。

 

 そして、さらりとオビトは重要なことを口にしていた。

 オビトがトビと名乗り暁の一員として二人一組を組んでいたデイダラが死んでいたことについてだ。

 

 ここにいるのはペインを除いて五名。

 その五名とは小南、イタチ、鬼鮫、ゼツ、トビのことであり──デイダラはここにはいなかった。

 

 その事について、普段はこういう場では声をかけられるまで口を開かないイタチが珍しく口を開いた。

 

「トビ……デイダラは確かサスケとその仲間にやられたのだったな……」

「ええ、そうっすよ……やっぱり弟さんのことは気になりますか?」

「………」

「ありゃりゃ……」

 

 トビに話しかけたイタチだったが、トビの探るような言葉に対しては鋭い眼光と沈黙で返した。

 トビとイタチの関係を考えれば不思議ではない。

 イタチからすればトビ──そう名乗り若者口調で話すマダラは、うちは一族を皆殺しにする時に協力した共犯者であり、同時にいまだ帰属意識は木ノ葉隠れの里にあるイタチからすれば里にあだなす敵でもあった。

 そんな存在に自身の弱みとなるサスケの存在を仄めかされたのだ。心中穏やかではいられない。

 

「……そうだったなデイダラのこともあったか……ゼツ、デイダラとサスケとの戦いは記録しているのだろう?話せ」

 

 ペインがトビではなくゼツに対して命令すると、白いゼツが待ってましたとばかりに饒舌に語り出す。

 

「うん、いいよ!ただまぁ、デイダラと戦ったのはサスケじゃなくて──」

「右近とか言うやつだったがな」

 

 落ち着きのない声で話す白いゼツの言葉を引き継ぎ、落ち着いた声で黒ゼツが語り出す。

 

「そう、あれは三日ほど前のことだった────」

 

 

 

 

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