音の四人衆最強の男   作:北山 真

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サスケ勧誘編 その参

 

 砂隠れの里の援軍が到着したところで、右近は素早く状況を整理した。

 木ノ葉隠れの里の忍達は幻術にかかって動けないままである。特に、ガイに関しては鬼童丸の糸で縛ったうえで次郎坊にチャクラを吸われており、無力化が完了していた。さらに、援軍が来たとはいえ、援軍と木ノ葉の忍達との距離はまだまだ離れていて、木々に遮られてお互いの姿すら見えていない状態であった。

 以上の事から、右近はまだ自分達が有利な状況だと考え、その有利をさらに広げるために、幻術にかかっている木ノ葉の忍達の完全な無力化を優先した。

 

 まず右近は、近くにいる木ノ葉隠れの忍でもっとも強いアスマの対処を優先した。ゲンマ達にした処置と同じように、呪印札をアスマの頭に貼り付けた後に猛毒のクナイで浅く切りつけた。

 

 処置が完了したのを確認する間も無く、次に下忍達を無力化しようとした右近だったが、ほんの数メートル離れた程度の至近距離に突如として荒々しい凶暴なチャクラが現れたのを感知して、咄嗟に距離をとるために飛び退いた。

 

「っ!?……このチャクラは……!?」

 

 距離をおき、感じたチャクラの方を向いた右近の目に映ったのは、真っ赤なチャクラを全身から放出しているナルトだった。ナルトは多由也の幻術に完全にハマっていたはずだったが、その身の封印から九尾のチャクラが漏れ出したことで、幻術は解除されており、九尾のチャクラを纏っている時特有の縦に長い瞳孔で右近を睨みつけていた。

 

 ナルトは幻術にかかったことにより、サスケを取り戻せないかも知れないという焦りと、自身の力不足からくる怒りを感じていた。その思いが九尾のチャクラと呼応することにより、腹部にある九尾の封印からチャクラが漏れ出していたのだ。

 

「サスケをっ……返せっ!!!」

(九尾のチャクラ……今の咆哮のせいで他のメンバーの幻術が解けてしまったか……)

「ううっ……」「くっ」「ぐぬぅ」

 

 ナルトが右近を睨みながら大声で吠えた。ただそれだけで、声が物理的な衝撃波となって、木々と水面を大きく揺らした。それにより、至近距離にいた他の木ノ葉隠れの忍達が幻術から逃れて意識を取り戻していた。ただし、呪印札を貼られて毒を盛られたアスマは別で、うめき声は漏らしたものの、いまだに意識を取り戻していなかった。

 

 九尾のチャクラが渦を巻くようにナルトの身を覆う姿を見た右近は、状況が悪くなってしまったのを悟った。

 

 上忍を除く木ノ葉の忍達が動ける状態になったうえに、今のナルトの咆哮を聞いた砂隠れの忍達が急いでこの場に来ようとしていた。ガイとアスマは無力化しているとはいえ、人数は四対九と圧倒的な差がついてしまっている。その内のほとんどが下忍の集まりだが、それぞれが才能のある者達であり、侮りすぎては危険であった。

 

(ここは上忍達を人質にとって撤退させるのが最上か?)

 

 右近は脳裏に閃いた人質作戦を実行しようと即座に動き出した。慎重に動くことが多い右近にしてはやや早急な動きだが、動くなら砂隠れの忍の援護が届かない今すぐが最善と判断しての行動だった。

 

 右近の体にかかっていた『軽重岩の術』は既に効果が切れていたが、腰を低くして構えて、仙人状態の『瞬身の術』でアスマに近づき、その身柄を攫おうと考えた右近。

 その右近の構えを見て、ナルトとリーとネジの三人は右近とアスマの間に立ち塞がり、さらにその三人の後ろにシカマル、チョウジ、キバと赤丸の三人と一匹がアスマを囲うように構えた。

 

(判断が早いな……だが今のお前達に負ける気はしない)

 

 心中で六人と一匹の動きを褒めた右近だったが、その動きを無駄と断じてアスマを攫うために動いた。

 『瞬身の術』で一気にナルトの前にまで近寄り、近接格闘を仕掛ける右近。

 

(急に目の前に……!?)

「コノォッ!!」

「うおりゃぁ!」

「シィッ!」

 

 ナルトは心中で驚いていたが、三人はなんとか右近の動きを追えていた。それは、ナルトは九尾の力の恩恵があったからであり、リーとネジはガイの動きを普段から見ていたからであった。

 至近距離に現れた右近に対して、正面に立つナルトは叫びながら右腕を振りかぶって殴りかかり、左側面からリーは最小限の動きで右近の頭を狙って上段蹴りを繰り出し、右側面からネジは柔拳で右近の腹部の点穴を突こうとした。

 

 今の三人の体術は下忍の中では最上位のものであるが、仙人状態の右近にとっては欠伸が出るほど鈍い動きであった。

 右近は正面から来たナルトの腹を右足の前蹴りで蹴り飛ばし、そのまま右足を伸ばした状態で左を向くように回転して、リーの回し蹴りが到達する前にリーの腹部を蹴り飛ばし、さらに回転の勢いで伸ばした左腕の裏拳でネジを殴り飛ばした。

 

「ぐえっ!」「ぬおぅっ!」「ぐうっ……!」

(あの三人を今の一瞬で!?)

 

 三人の後ろにいたシカマルは、三人が一瞬にして吹き飛ばされたのを見て驚愕した。赤いチャクラを纏ったナルトからは途方もない力を感じていたし、リーとネジは自分が逆立ちしても体術では勝てないと思える二人だった。だが、そんな三人を苦もなく弾き飛ばしてみせた敵は、シカマルの常識の外に位置する実力者に見えた。

 驚愕したのはシカマルだけではない。残りの二人も同様に驚き、警戒していた。

 

(この人はすごく強い!ボクじゃトンガラシ丸を飲まないと勝てないかも知れない!!)

 

 チョウジは普段は細い目をしているが今は目を見開いており、右近の一挙手一投足を見逃さないようにしながら、懐から切り札として任務に持ち込んだ秘伝の三色の丸薬の中でも一番強力で危険なトウガラシ丸を服用するチャンスを窺っていた。

 

「グルルゥ……」

(そうだよなぁ赤丸!こいつはヤバイ匂いがしやがるぜ!!)

 

 キバとその相棒である赤丸は右近の匂いを嗅いで警戒しており、同じように牙を剥き出しにして、喉を鳴らして威嚇していた。

 

 警戒を強める三人を前にして右近はゆったりとアスマに向けて歩くだけで、先ほどのように体術をしかけることはしなかった。だがそれは、シカマルの優れた頭脳から繰り出される『影真似の術』や、チョウジの『倍加の術』、キバと赤丸のコンビネーション攻撃を警戒してではなく、わざわざ近づいて体術をしかける必要性がすでに無かったからだ。

 

「なっ!?」「えっ!?」「なんだと!?」「キャンッ!?」

 

 三人と一匹それぞれの足元の水面が急激に盛り上がり、勢いよく噴水のように吹き出したからだ。激流のような勢いの水に吹き飛ばされ、三人と一匹が宙に舞う。全員が最大限の警戒心を持っていたし、右近の動きは何一つ見逃していなかったにも関わらず、全員が急に吹き飛ばされていた。

 たしかに、今吹き飛ばされた全員が右近の動きは見逃していなかった。だが、外套の中に隠れて印を結んでいた左近の動きを察知できていなかった。

 

 左近が発動した忍術は『水遁・間欠泉の術』というものであり、本来は地中にある水を地面から勢いよく吐き出させる忍術であったが、水上では地中から掘り出す手間を無くして使える忍術だった。

 

 左近の発動した『間欠泉の術』はアスマだけを避けるように完璧にコントロールされており、もはやアスマの守りに入れる者は誰もいなかった。

 

「さてと……」

「やめろっ!!」

 

 右近がアスマを肩に担ぎ上げたのを見たシカマルが必死な表情で叫んだ。その叫びに、右近はアスマを殺害するつもりは無いと弁明しようとした。

 

「なにも殺すつもりは無いから安心しなよ……君達がこれ以上追って来ないと約束さえしてくれたらだけどね」

「安心できるか……あの裏切り者の大蛇丸の部下だろうアンタは」

 

 木ノ葉に三忍ありと言われていた尊敬されていた大蛇丸は、その信頼を裏切り木ノ葉を襲って三代目火影を殺した。そんな部下の男の言葉など信用できないとシカマルは告げていた。

 

「そう言われるのは仕方ないが……だからと言って恩師を目の前で殺されたいわけではないだろう?」

「くっ……」

 

 懐から取り出したクナイを見せつける右近。恩師であるアスマに危険が迫っているのをまざまざと見せつけられたシカマルは悔しげに唇を噛んだことで血が流れた。さらには、右近の言った“恩師”という言葉はアスマとシカマルの関係を把握していなければ出ない言葉であり、敵に詳細な情報を知られているという事実がシカマルをさらに追い込んでいた。

 そして、ちょうどそのタイミングで、その場に砂隠れの忍達が到着した。

 

「これは……」

「砂の君達には着いた早々で悪いが、動かないでもらおうか」

 

 到着したばかりの我愛羅は状況を見て思わず声を出した。それを聞いた右近は、肩に担いだアスマの首筋にクナイを突きつけ静止を要求した。

 

「アスマ先生ッ!!」

 

 チョウジには刺激が強い光景だったのか、今にも駆け出しそうな表情で叫んだ。

 戦闘するつもりで来た我愛羅達だったが、チョウジの鬼気迫る叫びを聞き、ひとまず様子を見るべきと考えて、右近の要求どおりに動かない。

 

 木ノ葉隠れの忍が六人と砂隠れの忍が三人の計九人に囲まれながらも、どうにか膠着状態を作り出した右近。

 

「さて、俺の要求は一つだけ……君達にはこれ以上俺達を追わないようにしてもらいたい」

「バカなんじゃねぇかテメー!こんだけ囲まれておいて逃げられると思ってんのかよ!」

 

 右近の要求に、キバが状況を見れていないと叫んだ。今この場は一対九の状況であり、任務のために覚悟を決めて、アスマを見捨てるという選択肢を木ノ葉と砂の忍達が取れば右近は倒される、というのがキバの認識であった。

 だが、それは右近の認識とは違っていた。

 

「ああ、思ってるよ。だってほら……俺の仲間が来るからね」

「なんだ……まだ終わってなかったぜよ」

 

 右近は感知能力で味方が来るのを分かっており、その言葉に合わせて、ガイを手に持った次郎坊、サスケ入りの桶を背負った鬼童丸、笛を握りしめた状態の多由也の三人がこの場に到着した。いつでも戦える体勢である三人だが、いつまでも状態2でいるのは体への負担が大きいので、次郎坊と鬼童丸は呪印を解除して通常の姿になっていた。

 三人の知る右近と左近の実力は大蛇丸を除いた音隠れの里で一番である。三人は戦闘音も聞こえないのに、その二人がなかなか帰って来ないことを気にして迎えに来たのだ。

 

 そして、ガイの首の後ろを掴むように手に持っている次郎坊の姿を見たリーが悲痛な叫びをあげた。

 

「ガイ先生ッ!!」

 

 ガイは鬼童丸の糸で顔を除いて雁字搦めに縛られており、その顔色は次郎坊にチャクラを吸われすぎて非常に悪かった。

 その顔色を不安視したネジが、ガイの体調を測ろうと白眼で注意深く観察した。

 

(ガイの様子は……体内のチャクラが少ない?いや、今もなおあの大柄な男に微量だがチャクラが流れているところを見るに、チャクラを吸収されすぎたようだな。さらにはあの糸……)

 

 ネジがガイを縛っている鬼童丸の糸を観察する中、人質を解放しようと我愛羅は秘密裏に動こうとした。

 我愛羅は他の者と同じように水面に立っていたが、背中に背負った瓢箪の砂を少しずつ、ほんの数グラム単位ずつ崩して水面下に忍ばせ、右近と次郎坊の下から奇襲を仕掛けてガイとアスマを解放しようとしていた。

 

 だが、そんな些細な動きすらも右近の感知能力の前では即座にバレてしまう。

 

「我愛羅……それ以上砂を動かせば人質を一人殺す」

「チッ」

(すぐにバレたか……コイツ、どんな方法で気づいたかは知らないが、感知能力が高すぎる)

 

 我愛羅は砂の動きに細心の注意を払っており、事実として、右近は砂が動いていることにはまったく気づいていなかった。だが、右近はチャクラの動きから何かをしていることを察して、ハッタリも含めて我愛羅を脅していたのだ。

 慎重に動いたはずなのに時間もかけずに看破されたことで、我愛羅は舌打ちを一つして、心中で右近の感知能力の高さに舌を巻いていた。

 

「次郎坊、まだ殺すなよ……さて、これで四対九だがどうする?人質二人を見殺しにしてまでサスケ様を取り戻すために戦うか?勝てるか分からないのに?」

「ぐっ……」

 

 次郎坊に指示を出しながら状況が悪化したことを木ノ葉隠れと砂隠れの忍に周知するように語った右近。

 我愛羅の一連の動きも含めて、状況が悪化したのが分かったキバは、右近の言葉に悔しげに黙り込むしかなかった。

 そして、黙ってしまったキバの代わりに、シカマルが話し出す。

 

「アンタが言ったように俺達はこれ以上サスケを追わない––「何言ってんだシカ「テメーは黙ってろナルトッ!!今は俺が喋ってる!!!」

 

 シカマルの発言の途中で、抗議するように口を挟んだナルトだったが、ナルトの口を封じるように余裕のない表情で怒鳴ったシカマルに、ナルトは閉口してしまった。

 

(そうだってばよ……オレがサスケを助けたいように、シカマルだってアスマ先生を助けたいはずだってばよ)

「悪いってばよ……」

 

 シカマルの真剣な表情を見たナルトは、シカマルと自分の状況が似ていることを悟って謝った。

 おとなしくなったナルトを見た右近は、これ以上は抵抗されないと考え、状況をより有利なものにしようと指示を出していく。

 

「木ノ葉と砂の忍は一箇所に固まってくれ。分かってるとは思うが–––」

「分かってる!抵抗したら人質を殺すって言うんだろ?言うとおりにするよ」

 

 右近が指示を出した後に、従わなければ人質を殺すと脅そうとしたが、それを見越したシカマルは途中でその言葉を遮った。右近とシカマルの言葉を聞いた木ノ葉と砂の忍は、右近の指示どおりに、散らばっているのをやめて一箇所に集まった。

 これにより、右近はようやく囲まれている状況を脱したと同時に、散らばっていた敵対者達を一塊にしたことで監視もしやすくなった。

 

 状況を確認した次郎坊、鬼童丸、多由也の三人も右近に近づいた。

 これで、音の四人衆と二人の人質、木ノ葉と砂の同盟勢力の九人と一匹は、十メートルほどの距離を置いて、正面から対峙する構図へとなった。

 

 これから交渉が始まるという、その時だった。鬼童丸が背負っていたサスケの入っている巨大な桶が小刻みに震え始め、黒い霧が漏れ出す。この現象は、呪印の力がサスケの肉体へと馴染みきった証であった。

 

「おっと、そろそろ時間ぜよ」

 

 何が起きるのか木ノ葉と砂の同盟が警戒する中、鬼童丸が桶を地面に置いた。地面に置かれた桶は、全体の半分ほどが水に浸かりながら黒い霧を吹き出し続けていく。徐々に、徐々に、黒い霧は増えていく。

 

 その場にいる全員が固唾を飲んで見守る中、ついにその瞬間が訪れた。

 

 ボフンッという爆発音が桶の中で発生し、勢いよく黒い煙が溢れ出して、その場にいた全員の視界を一時的に封じた。

 その瞬間を狙いすまし、あるいは警戒していた者達が一斉に動き出した。

 

 桶の様子から何かが起きることを察して、隙ができたら動こうと考えていた我愛羅がガイとアスマを助け出すために砂を急速に動かした。

 それを警戒していた右近と左近。左近は隠れて印を結び終えており、右近が『仙法・水遁・水陣壁』を発動して、どういう攻撃をされても防ごうと考えていた。

 

 だが、右近が術を発動する直前に、ブゥンという音とチャクラの反応が、右近の足元から同時にした。音とチャクラに右近が反応するよりも早く、右近の右足に鋭い痛みが走り、その痛みに喘ぐ暇も無く右脇腹に衝撃を受けて、右近の体が左に倒れ込む。

 

 右近を攻撃した者の正体は、身動きを完全に封じられていたはずのアスマだった。なぜアスマが動けたのか、鍵となったのはアスマの出自と弟子のシカマルであった。

 アスマは戦国を生き抜いた猿飛一族の者として、そして何よりも三代目火影の息子として、幼い頃から毒への耐性を付けさせられていた。それにより、大蛇丸特製の毒を受けても少なからず動けた。

 そして呪印札については、アスマが人質に取られる直前の攻防の時に、既にシカマルの手で一度剥がされていた。シカマルはナルト達が前衛に立った一瞬だけ視界が切れた時に、アスマの額に貼り付けられた呪印札を剥がし、そのままだと新たに貼り直されると考えて、封印されていると誤魔化すために唾をつけてアスマの額に貼り直していた。その直後に『間欠泉の術』でシカマルは吹き飛ばされたものの、見事にアスマの封印を解くことに成功しており、右近を騙すことにも成功していた。

 

 意識を取り戻したアスマは、毒の影響でうまく動けないのもあって、右近に担がれながら周囲の状況を把握するのに努めていた。そこで、上忍二人が捕まったせいで状況が最悪に近いことを知ったアスマは、動けないふりをして機を窺っていたのだ。

 そして、桶の封印が解除された時を狙って動き、手に握ったままだったチャクラ刀で右近の右足を切断し、そのまま右近の右脇腹を蹴り飛ばして自力で脱出したのだ。

 

 誰が動こうとも対応するつもりで警戒していた右近だったが、絶対に動かないと考えていたアスマが動いたことで、完全に虚を突かれた。さらには密着するほどの超至近距離にいたうえに、印を結ぶ必要のないチャクラ刀と体術の攻撃だったせいで、何一つ反応が間に合わなかったのだ。

 

「ぐぅっ……!?」

(一体何がっ!?……おい右近!しっかりしろ!)

 

 突然の出来事に対応できなかった右近は、結果的に術を発動できなかった。何が起きたのか理解しきれず、右近を心の声で心配している左近だったが、その瞬間にも状況は動いていた。

 

「ぬうおっ!?」

「捕まえた……」

 

 右近が倒れ込んだ直後、右近が妨害し損ねた我愛羅の砂が次郎坊とガイに直撃した。我愛羅は砂の感覚を共有できるので、黒い霧で視界が潰されている中でも的確に砂を動かし、次郎坊とガイを引き剥がすことでガイの救出に成功する。

 さらに続けて、我愛羅が砂を操って音の四人衆を捕獲し、アスマを助けようとした。だが、アスマが右近から離れているのが砂との接触で分かったのと、次郎坊により砂から急速にチャクラが吸われていくのを感じたことで、捕縛を諦めてアスマの救出を優先した。

 

 黒い霧は自然のものではないためか、急速に薄れて消えていく。

 黒い霧の中での一瞬の攻防が終わり、その成果によりできた新しい状況が見えてきた。

 

 音隠れの側には呪印状態2となったサスケが立っているが、右近の右足が太ももの半ばから綺麗に切断されて倒れ込んでおり、人質になっていたガイとアスマの二人の姿は無く、その二人の姿は木ノ葉隠れと砂隠れの同盟の側にあった。

 

「形勢逆転だな」

 

 状況を把握したシカマルは、状況が一気に自分達に有利になったことを言葉にした。

 

 その一方で、霧が晴れたことで右近の惨状が目に入った音隠れの忍達は狼狽していた。自分達の中で最も強く、最も信頼されていた男の無惨な姿に、動揺を隠せずにいた。

 

「右近!お前っ……足がっ!?」

「っ……大丈夫だ」

 

 次郎坊は捕まえていたガイを取り戻されたことへの後悔を抱きつつも、心配から右近に声をかけた。それに対して、右近は心配させまいと痛みを堪えながら気丈に振る舞っていた。だが、右近の言葉は痩せ我慢というわけでは無かった。

 

 右近は片足の状態で立ち上がった。さらに、切断され流血で真っ赤に染まった太ももから先の足を手に取り、それを切断面同士を押し付け合うように接触させた。

 その行動は、右近の気丈な振る舞いと言葉遣いとはほど遠いものであり、見ていた人間に気が狂ったのかと思わせた。そんな狂気に染まった突拍子も無い行動に、その場の全員が動けずにいた。

 

「ぬっ……ぐっ……」

 

 静まり返った森の中、右近の吐息混じりの声と粘り気に満ちた血液のぬちゅり、ぐちゅりという音だけが響き渡る。

 

「うっ……」「うえぇ……」

 

 その衝撃的で惨虐な様子を前にして、耐性の無い木ノ葉の忍の幾人かが吐き気を催していた。

 

 だが、そんなショッキングな様子にも耐性のあった我愛羅は、なぜ右近は突然こんな行動をしているのかという疑問と、この行動に意味があった場合の危機感を覚えていた。

 ゆえに、右近が手負いの今こそが好機と考えて、カンクロウとテマリに指示を出した。

 

「カンクロウ、テマリ、俺に続けて攻撃しろ」

「分かった!」

「了解じゃん」

 

 我愛羅が砂を礫にして弾丸のように放つ技である『砂時雨』を連続で撃ち出し、それに続くようにテマリが巨大扇子を一振りして『風遁・風切りの術』による風のカマイタイを放ち、カンクロウが傀儡であるカラスの口内に仕込んだ毒針を射出した。

 

 十分な殺傷能力を持つ砂隠れの三人の攻撃に対して、対応したのは右近であった。

 

「仙法・水遁・水陣壁」

 

 右足の切断という重傷を負っている状況で、攻撃されることを想定していた右近は、左近に再び印を結んでおいてもらっており、先ほどは発動できなかった『水陣壁』を今度こそ発動させた。

 

 水面から勢いよく立ち上がった水の壁を前にして、砂隠れの三人の連続攻撃はあえなく勢いを失い、標的の右近に届くことなく受け止められた。

 

 攻撃を防ぎ切った水の壁が再び水面に戻り、壁に隠されていた音の四人衆とサスケの姿が見えるようになる。

 

「なっ……!」「嘘だろ!?」

 

 再び見えた右近の姿にナルトとキバが驚愕の声をあげ、声を出さなかった者達ですら驚きから固まっていた。

 切断されていたはずの右足は綺麗に繋がっており、右近は両足で水面に立っていた。

 

 右近は切断された右足の接触面同士を付け合わせて、「双魔の攻」により骨、血管、神経、経絡系に至るまで完璧に融合することで、元どおりの状態に戻すことに成功していた。

 右近は元どおりの状態に戻った右足をぷらぷらと振ったり、水面で踏ん張ったりしながら調子を確認していく。

 

(うし、完璧に近いな。チャクラ刀の切れ味が鋭くて助かった)

 

 右近が心中でアスマのチャクラ刀の切れ味に感謝した。

 「双魔の攻」による治療は決して万能なものではない。大前提として、融合するための細胞が無ければ治療できないので、火遁や雷遁で細胞が焼け焦げたりするのは致命的だった。その代わりに、骨折や切断などの細胞が消失しにくい負傷の治療は得意であった。

 

(さて、とりあえず足は繋がったが……状況は大分悪いな)

(まぁ人質もいなくなったしなぁ。とは言え、ガイとアスマはもう戦闘ができる状態じゃあねぇだろうがな)

 

 右近と左近は心中で会話しながら木ノ葉隠れの上忍二人の様子を見ていた。

 ガイは付着していた鬼童丸の糸をネジの柔拳で外してもらえたものの、次郎坊にチャクラを吸収されすぎたせいで、もはや立つことも難しいほど疲労していた。

 そして、アスマも猛毒により手足の痺れや発熱しており、まともに戦える状態では無かった。いくら毒に耐性があっても、大蛇丸特製の毒を防ぎきるほどでは無かったのだ。

 

 右近と左近は冷静に敵戦力を見極めて次の動きを決めようとしていた。

 

(人数差はあっても、動けない上忍二人を抱えてだったらこっちが勝てそうではあるが……)

(まぁ……人柱力二人がどう動くかだな)

 

 人数差はいまだにあるものの、上忍二人が動けずに足手纏いになっているうえに、戦力の多くが下忍である木ノ葉隠れと砂隠れの忍達が相手ならば、仙人状態の右近と左近の力があれば勝つことは十分に可能であった。ただし、人柱力の二人が尾獣の力をどこまで解放するかによっては、その勝敗の行く末は大きく変わってくることも確かであった。

 

 その二人いる人柱力の片割れであるナルトが、封印から解放されても動こうとしないサスケに対して苛立ちを隠せずに叫んだ。

 

「サスケェッ!!」

 

 封印から解放されサスケは、呪印が体に馴染んだことで新たな力を得た高揚感に酔いしれていたが、ナルトに叫ばれたことで意識が向いたのか、ナルトの方向に目線を送った。

 だが、それだけだった。サスケは何一つ語ることはなく、黙ったままだった。

 

「何してんだよサスケ!そんな奴らぶっ飛ばしてさっさと帰ろうってばよ!」

「ナルト……俺は帰らない」

「は?」

 

 ナルトの再びの呼びかけを冷静に拒否するサスケ。その素っ気ない返答を聞いたナルトから思わず疑問の声が漏れた。

 呆気に取られた様子のナルトを気にすることなく、サスケは話しだす。

 

「これ以上木ノ葉にいても、俺は強くなれない。俺は大蛇丸のところへ行く」

「何言ってんのか分かんねえってばよ!なんでわざわざ大蛇丸のところになんか……!?」

「お前には関係無い」

 

 サスケは冷たい声で言い切り、ナルトとの会話を放棄した。

 

「なんだとっ……サスケェッ!!」

「おいナルト!無闇に突っこむんじゃねぇ!!!」

 

 サスケのあまりの言い草に激怒したナルトは九尾のチャクラで活性化した肉体でサスケに向かって飛びかかった。それをシカマルが注意するが、もはや遅い。

 かなりの速度で飛びかかったナルトに対して、素早く反応した右近の右足での踵落としがナルトの胴体に炸裂し、水面に向かって蹴り落とされた。

 

「グエッ!?」

「次郎坊、そいつからも吸え」

「了解!」

 

 ナルトは潰れたカエルのような声を出しながら水面に落下し、迎撃した右近は次郎坊に指示を出した。右近の指示により次郎坊はナルトからチャクラを吸収しようとしたが、それを止める人間がいた。

 

「やめろ。そいつは俺が相手をする」

 

 そう言ったのはサスケであった。サスケは呪印が体に馴染んだ今の状態を試してみたかった。そのうえで、ナルトとはライバルというだけでなく、つい先日に戦っていたので、試す相手としてはもってこいだと考えていた。

 

「……」

「……了解ですサスケ様」

 

 次郎坊は無言で右近を見て、サスケの言葉をどう判断するかを視線で問いかけていた。そして、その視線を向けられた右近はサスケの言葉を肯定した。

 右近は原作のことを考えてサスケの意見を聞いたわけではない。サスケがナルトと戦ってくれるのならば、この場の人数差が少しだけマシになると考えたからだった。

 

 こうして、サスケとナルトの決闘は原作どおりにおこなわれることとなったが、サスケを行かせる前に伝えることがあった右近は、サスケに近づいて耳打ちした。

 

「サスケ様、アジトの場所はここから終末の谷を越えたさらに奥にあります。アジトは結界で隠されていますが、アジトの中に感知能力の優れた者がいるので貴方様が近づけば案内されます」

「分かった」

 

 右近が語った内容にサスケが小さく頷いた。

 右近の言う感知能力に優れた者とは香燐の事だった。右近は様々な理由から香燐をアジトに呼び出していた。

 

 まず右近は、大蛇丸が万全ではない状態で、音の四人衆全員がアジトから出払うことは危険だという考えから、アジトを隠すための結界を張ることを大蛇丸に提案していた。だが、結界でアジトを隠してしまうと、他の音忍達もアジトの場所が分からなくなってしまう。そこで、アジトの中から香燐に味方の帰還を感知させ、味方の帰還に合わせてアジトから案内役を出す方法を取っていた。

 そして、香燐は優れた感知能力を持ちながら、優れた治癒能力も持ち合わせている。万が一、サスケと音の四人衆の中で重症者が複数名でた場合に、カブトだけでは手が足りなくなるかも知れないと考えた右近は、予備の医療忍者としての役目を香燐に与えていた。

 

「ご武運を」

「ああ……ついてこいナルト」

 

 右近の言葉に適当に返したサスケは、一方的にナルトに告げてから終末の谷方面へ向けて去って行った。

 

「待てってばよ!サスケ!!」

 

 そして、サスケを追いかけてナルトもこの場を離脱した。それを木ノ葉の忍達は止めようとしたが、右近が殺気を飛ばして睨んだことで、右近を警戒して動くことができなかった。

 

「さて……」

 

 サスケとナルトが走り去ったのを見送った右近が呟いた。今すぐにでも戦闘が始まりそうな緊張感がその場に漂っていたが、右近は両手をあげて戦闘の意思が無いことを示した。

 

「木ノ葉と砂の君達、ここらで手打ちにしないか?」

「なんだと?」

「今見ただろうがサスケ様は木ノ葉に帰る気は無い。そのうえで、そっちは怪我人もいることだし、この辺で撤退してもいいんじゃないか?」

 

 そう言いながらも右近はこの提案が断られる前提で動いていた。左近が右近の背中から手を出して、ハンドサインで音の四人衆に向けて指示を出した。その指示の内容は、戦闘準備をしながら待機して、戦闘が始まったら森から退避することであった。

 その指示を理解した次郎坊、鬼童丸、多由也は、意識を緩めないように気を引き締め、いつでも戦闘に移行できるようにした。

 

 指示を出した右近は、我愛羅と森の中で戦闘するのは不利だと考えていた。我愛羅は中遠距離戦闘を得意とする忍だが、広範囲かつ多角的な攻撃も可能であり、森のような障害物の多い場所で戦う場合は、木を隠れ蓑にして意識外から攻撃される危険性があった。右近は、そういう攻撃をされるぐらいであれば、広くて見晴らしのいい場所で戦ったほうが有利に戦えると考えたのだ。

 

 そうやって戦闘意欲を途切れないようにしていた音の四人衆達とは裏腹に、木ノ葉と砂の忍達はこれ以上戦闘を続けるべきか悩んでいた。

 

 まず、砂の忍達は、木ノ葉への賠償と同盟締結の証として木ノ葉隠れの里へと出向したところを綱手に依頼されてここまで来ていた。その依頼内容は木ノ葉の忍の援護であり、木ノ葉の忍がここで引くのならば、これ以上の戦闘行動は不要と考えていた。

 

 一方で、木ノ葉の忍達はサスケの奪還が任務であり、それが叶っていない現状ではサスケを追うために、音忍達を突破することを優先したかった。だが、音忍の力は強力であり、特に右近を相手に上忍が動けない状態で戦うのは自殺行為であると言えた。

 

 現状、木ノ葉の忍達の中で唯一の中忍であるシカマルは、その優れた頭脳で何が最善かを高速で思考していた。

 

(面倒クセェが考えろ俺。まず、この戦力で音の忍に勝てるのかどうか……砂の忍が化け物みてぇに強いのはよく知ってるが、相手も相当な化け物だ。特にあの白髪のリーダー格がヤベェ。さっきの霧の中じゃあ俺達のほぼ全員があいつ一人に足を止めさせられた。

 そのうえで、厄介な音の幻術を使う奴……多分笛を握ってる女がそうだが、アイツも含めて三人がかりで、どうやったかは霧で見えなかったが、ほぼ無傷の状態でガイ先生を止められちまってる。

 そんでもって、頼りの上忍二人はこれ以上の戦闘は難しそうだ。特にアスマは毒が回ったのか、さっきから荒い息ばっかでほとんど動けてねぇ。ガイ先生は多少休めば動けるようになるかもしれねぇが……)

 

 木ノ葉の忍達は思考を深めるシカマルが結論を出すのを待っていた。そして、一分近い時間をかけて、やがてシカマルが一つの結論を出した。

 

「撤退はしねぇ!俺達は必ずサスケを連れて帰る!」

 

 大声でそう宣言したシカマル。音忍達に勝てるかどうかは分からないが、一番重要だったのはナルトの存在だった。

 ナルトは今、一人でサスケを追っている。いや、追ってしまったというべきだった。ここでシカマル達が撤退することを選択すれば、音忍達は確実にサスケの下へ向かう。そうなれば、ナルトはサスケとの戦いの勝敗に限らず殺されるか連れ去られてしまう。

 それを阻止するためには、シカマル達は音の四人衆と戦うしかないのだ。

 

「最善はこいつらを全員倒してナルトとサスケを木ノ葉へと連れ帰ること!勝てなくても、こいつらを足止めしてサスケの事をナルトに託す!」

「うん!」「おう!」「オッス!」「そうだな」

「ああ」「やるしかねぇじゃん?」「ハッ!ぶっ飛ばしてやるよ!」

 

 シカマルが戦闘における条件を語り、シカマルの決断を聞いた木ノ葉と砂の忍が戦闘体勢に入る。

 

「交渉は決裂で良いんだな?じゃあ死ね……仙法・水遁・水龍弾の術!」

 

 交渉の時間が終わったことを確認した右近が術を発動し、足元の水面が大きく盛り上がり、やがて人を一飲みにできそうなほど巨大な水の龍となり、木ノ葉と砂の忍達に襲いかかった。

 『水龍弾』に対応するためにいち早く動いたのは、やはりと言うべきか“絶対防御”の異名を持つ我愛羅だった。

 

「流砂漠流!!」

 

 我愛羅が印を結びながら叫ぶとともに足元の地面が大きく盛り上がり、砂の大津波となって水龍を迎え撃った。

 砂の津波に飲み込まれる水龍。だが、水龍は砂ごときに負けるものか言わんばかりにのたうち回り、大暴れする。巨大な水の塊である水龍が暴れるごとに砂の津波は崩され、弾け飛び、その度に砂飛沫が舞う。

 

 水龍の予想以上の強さに、我愛羅はさらにチャクラを込めて砂を操り、味方を砂で覆って防御しながら水龍を砂の海に沈めていく。

 

 やがて『水龍弾』に込めた右近の仙術チャクラが切れたのか、水龍は砂に埋もれて動けなくなり、それを確認した我愛羅も砂を動かすのを止めた。

 

 我愛羅の砂の防御が解かれて、外の光景が見えるようになった木ノ葉と砂の忍達が見たのは、二人の大技のぶつかり合いにより元の面影が一切なくなった森の姿であった。

 水龍と砂津波のぶつかり合いに巻き込まれた木々は、その全てが薙ぎ倒され、破壊されていた。木々が無くなったことでかなり見晴らしが良くなった元森は、我愛羅の砂の津波の影響でほとんど砂漠となっており、そこには木の破片と水により泥と化した場所がところどころに見受けられた。

 

 その光景に圧倒された木ノ葉の忍達。これほどの攻撃なら音忍達も倒したかと淡い期待を一瞬だけした。だが、それほどまでに破壊し尽くされた場所にあって、音の四人衆達は健在であり、無傷の状態のまま砂漠に立っていた。

 

「なるほど……“砂漠”の我愛羅とはよく言ったもんぜよ。遊びがいがあるぜよ」

 

 その光景を見た鬼童丸は我愛羅の“絶対防御”と並ぶ異名の一つを思い出し、納得の意を示した。

 

「敵を褒めてんじゃねぇよ!下衆チンヤロー!」

「多由也……そういう言葉遣いはや「テメーは黙ってろデブ!!」」

「はぁ……お前らなぁ……」

 

 相手を褒めた鬼童丸に怒る多由也と、それに対しての次郎坊による言葉遣いに関してのいつものやり取りが起き、こんな緊迫した場面ですらいつもどおりな様子を崩さない仲間に対して右近が大きなため息を吐いた。

 

 そんな余裕そうな態度を見た木ノ葉と砂の忍達は、隙を晒したと見て攻撃をしかける。

 木ノ葉と砂の忍達は、敵戦力を分析して得た情報をシカマルが共有して作戦を考えていた。ゆえに、今この場にいる忍達の連携は、即興であることと里が違うことを考えれば非常に良くできたものだった。

 

「風遁・大鎌いたちの術!」

「仙法・水遁・水陣壁」

 

 初手はテマリの『大鎌いたちの術』だった。テマリが手に持つ巨大な扇子を大きく振りかぶって薙ぎ払い、それに合わせて大小無数の風の刃が音の忍に向かって放たれた。

 その攻撃は範囲も広いうえに、風の刃の数も多く、右近は回避は難しいと考えて再び『水陣壁』を発動した。この場には『爆水衝波』で生み出されていた水が無くなっていたため、今回の『水陣壁』は先ほどまでよりは小さい壁になったが、それでも音の四人衆の身を守るのには十分な壁であった。

 

 だが、その壁を生み出させることがシカマルの狙いであった。

 

「よし今だ!キバ!リー!」

「「牙通牙!!」」

「行くぞー!!」

 

 テマリの『大鎌いたちの術』と同時に動き出していたキバと赤丸、リーの二人と一匹は、シカマルの合図により『水陣壁』を迂回するように回り込み、壁の後ろにいる音の忍達を挟撃した。

 右近から見て壁を正面にした場合、キバと赤丸が右側、リーが左側から迫って来ていた。

 

「次郎坊は右!鬼童丸は左!」

「おう」

「分かったぜよ」

 

 キバと赤丸とリーに対して誰が対応するべきかを素早く指示を出した右近。その指示に従った二人は、向かってくる敵に対して有効な対抗手段を披露した。

 キバと赤丸の『牙通牙』は次郎坊が『土遁・土矛』で硬化した肉体が受け止めて、リーの優れた体術は鬼童丸の六本腕が完璧に受け止めた。

 止められたキバ、赤丸、リーは捕まって人質にされないように素早く後ろに下がった。

 

 だが、この攻撃が止められるのもシカマルの中で想定内だった。

 

「チョウジ!」

「うん!倍化の術!からの……肉弾戦車!!」

 

 シカマルの隣にいたチョウジが『倍化の術』により肉体を風船のように巨大化させ、そのまま右近の『水陣壁』に向けて勢いよく転がりだした。

 その動きを壁越しに感知していた右近は、わざと『水陣壁』のチャクラを少なくした。

 

 チャクラの少なくなった『水陣壁』は、チョウジの『肉弾戦車』により吹き飛ばされた。

 『水陣壁』の水を飛沫として飛ばしながら迫る肉の塊に、右近は忍術を発動しなかった。

 

「ふん!!」

「えええっ!?」

 

 右近は高速回転して迫るチョウジの巨体を仙術チャクラで強化された身体能力で以て蹴り飛ばした。

 『倍加の術』で大きくなったチョウジはかなりの重量を誇るが、仙術チャクラによる身体能力の強化はその程度を物ともしない強さがあった。

 

 右近により蹴飛ばされたチョウジは、上空を舞いながら驚きの声をあげていた。

 

 だが、チョウジの攻撃を防いだ右近の目の前には次の脅威が迫っていた。チョウジの『肉弾戦車』を隠れ蓑にしてカンクロウの二つの傀儡、『烏』と『黒蟻』が迫っていたのだ。

 その動きを右近ははっきりとは感知できていなかった。カンクロウのチャクラの糸が動いていたのは感知していたが、肝心の傀儡は人工物であり、自然エネルギーの力を借りて行う仙人状態の感知では完全に感知するのは困難であった。

 だからこそ、右近はわざと『水陣壁』をチョウジに破壊させ、視界を開けさせたのだ。

 

「黒秘技・機々一発!」

 

 カンクロウの巧みな傀儡操作により、『黒蟻』がその腹部を開いて右近を捕獲しようと素早く接近し、『烏』は右近が隙を晒したらいつでも攻撃できるように準備していた。

 

 原作での右近と左近の死因となった連携攻撃に対して、右近は怒りを覚えていた。

 いくらチョウジを隠れ蓑にしたとはいえ、正面から堂々と攻撃されて反撃できないと考えられたと、右近は思ったのだ。

 

「舐めるなっ!!」

「なんだと……!?」

 

 右近の怒りとチャクラが込められた右の正拳突きが『黒蟻』に直撃し、捕縛用の傀儡として硬く頑丈に作られたはずの『黒蟻』は木っ端微塵に砕け散った。

 

「ちくしょうじゃん!!」

 

 つい最近、せっかく新しく得た傀儡の『黒蟻』を完全に粉砕されたカンクロウは、様々な感情に苛まれながらも残った傀儡の『烏』を操作し、右近から距離を取らせながら毒煙玉を飛ばした。

 『烏』から放出された毒煙玉は右近に向けて迫る中、『黒蟻』を破壊して少しだけ冷静になった右近は素早く新しい術を発動した。

 

「水遁・水牢の術」

 

 『水牢の術』は、本来は水球を作り出してその中に人を捕まえて、水の中で窒息させる術だが、右近はそれを毒煙玉を捕らえるために使用した。

 毒煙玉は、突如として前に現れた水球に捕らえられ、水の中で爆発して毒煙を吐き出したものの、毒煙は水球を紫色に濁すばかりであり、煙として音の四人衆の視界を塞ぐことは一切できなかった。

 

(この人数での連携もなんなく防ぎやがった!これじゃあ無理だ)

 

 シカマルが心中で驚愕しながら伸ばしていた自身の影を元に戻した。毒煙玉を右近が吸えば最善、吸わなくても視界が潰れたところを『影真似の術』で動きを封じるというのがシカマルの作戦であった。だが、毒煙玉が『水牢の術』により完璧に対処されたのを見て、今のままでは『影真似の術』は避けられるだけと判断して、影を元に戻したのだ。

 

 一連の動きを完璧に防いで見せた右近は、余裕たっぷりな態度でシカマルに向けて言葉を発した。

 

「まだやるか?それとも死ぬか?」

 

 その言葉はまるで、死神による死の宣告のようだった。

 

以下が候補になります。

  • 至高の細胞!全身柱間細胞兄弟爆誕!
  • 偉大なる六道仙人の力!輪廻眼開眼!
  • 当たれば最強!二代目土影の塵遁!
  • 霧で翻弄せよ!二代目水影の幻術と水化!
  • 電光石火!三代目雷影の圧倒的な雷!
  • 汎用性の塊!三代目風影の磁遁!
  • 時空間忍術こそ最速最強!四代目火影の力!
  • 最強の盾にも矛にもなる!君麻呂の屍骨脈!
  • 高速移動と絶対零度の両立!白の氷遁!
  • 眩い力が敵を照らす!嵐遁の力で輝け!
  • 地球の力!熔遁の力で大噴火!
  • 思いと力を受け継げ!音の四人衆推参!
  • 青春!熱血!最強!体術を極めろ!
  • 一切の死角無し!武器術と忍術!
  • 四代目火影を超えろ!螺旋丸を完成させろ!
  • 不殺こそ究極の勝利!封印術で完封しろ!
  • 戦いは数だよ!仙術と影分身で数の暴力!
  • 大怪獣進撃!三尾の人柱力!
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