平和の白い鳥   作:ジュネープ

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第1話

宇宙世紀0080 1月5日

ジオン公国は地球連邦に対して降伏文書に調印した。

その数日前、サイド3のドックから1隻のチベ級重巡洋艦が平和の運び手となって出向した。

 

チベ級重巡洋艦【フォックス】は今回受けた特別な任務に際して艦の名前を【ホワイトバード】と変更、チベ級のデフォルトカラーである赤ではなく白色に塗装された艦は進路をア・バオア・クーに向けて航行していた。周囲にはホワイトバードを途中まで護送する任を受けた本土防衛隊の白い塗装の高機動型ザク6機が重武装で飛行しており、物々しい雰囲気に包まれていた。

 

「何事もなければ良いが・・」

 

ホワイトバードのブリッジにて、一人のジオン軍将校が呟く。

彼こそがホワイトバードの艦長である、ジョン・コンラッド准将だ。30代半ばに差し掛かる彼の軍服には複数のバッジが付けられており、お飾りの将校でない事が伺える。

ルウム戦役と地球降下作戦、また、哨戒任務で多大なる功績を残した彼はジオン公国の総督府勤めとなり、様々な作戦立案を実施。ザビ家の派閥争いに介入せず、あくまでも1人の軍人として任務にあたっていた彼は、本来であれば中将になれる能力を有している傑物である。

後方勤務である彼が何故チベの艦長としてア・バオア・クーに向かっているのか?

 

それは1月1日の政変まで遡る。

 

ザビ家全員が死亡した事で、傀儡となっていたサイド3首相ダルシア・バハロが国名をジオン共和国として、連邦政府に休戦協定を打診。未だ継戦の意思があるザビ家派閥の妨害を危惧した連邦政府は、共和国の許諾を得て連邦軍第16独立戦隊をサイド3近郊に派遣。

国民や一部を除く軍、政府官僚にはソロモンにて交渉を実施すると宣言。

バハロ首相と連邦政府官僚はグラナダで秘密裏に会合を行う事となった。

 

「最後の最後に平和の使者としての役目を全うする事になるとは・・数奇な運命だ」

「ジョン准将。この航海、共和国、連邦双方が安全に会合を行うため、ひいてはこの悲惨な戦争を終わらせるためのブラフであることを肝に銘じていただきたい」

 

一人自嘲気味に呟いた艦長にサイド3の外交官は窘める。本命の首相はホワイトバードの出航に紛れて出航した客船に紛れて航行している。

今回の会合はどちらか一方が死亡した場合、片方が本来の役割を全うする手筈となっている為、ブラフと言えども極度の緊張感をもって乗組員は動いているのだ。

 

ジオン共和国とア・バオア・クーの中間地点そろそろ先導しているザク部隊が帰投する地点に近づいてきた。

 

「艦長!ホワイトバード下方20km地点より複数のザク2が接近しています!」

「・・・来たか。総員!第一種戦闘配備急げ!!モビルスーツ隊を発進させて艦の防衛に回せ!」

 

レーダー員の緊迫した声を聴き、指示を出す。先導していた白色の高機動型ザク6機が移動する。

3分後にホワイトバードから飛び出すは純白の高機動型ゲルググが12機。

白い艦隊に対するは緑色のザクⅡが10機にゲルググが6機。数的にはやや優勢とは言え油断できない状況である。

 

「管制員!奴らの照会を!!」

「・・・出ました!この識別コードはギレン親衛隊です!!」

「クソ!・・・死してなおスペースノイドの安寧を邪魔するか!!」

 

苦虫を嚙み潰したような顔で吐き捨てる官僚を尻目に次の一手を指示する。

 

「船体下方に向けて機雷を散布!散布完了後、継続的に砲撃を行え!!」

 

指示通り機雷を散布したホワイトバードは船体を90度傾けて一斉射を実施。ザクⅡには当たらなかったが、2機のゲルググに砲撃が命中し、爆散。

 

その直後、先行していた高機動型ザクが交戦距離まで一直線に接近し、マシンガンを掃射。

その後、すれ違いざまにヒートホークで切り裂いて離脱。4機のザクⅡが宇宙の塵と化し、残りの敵機は10機。

 

後方に離脱した高機動型ザクを追いかけようとホワイトバードに背を向けた彼らに対して遅れて発進した純白の暴力が襲い掛かる。

実弾兵器とは違う黄色い閃光に貫かれ、ナギナタで切り裂かれて散ってゆくザクⅡとゲルググ。

このままでは全滅する事を悟った4機のザクⅡが敵を置き去りに此方に突っ込んでくる。

 

「さすがは親衛隊。自身の命を顧みない行動は素晴らしいが、思想の押し付けで何人の善良な国民が死んでいった事か・・・機雷を散布されていない個所に対空射撃を行え!主砲のみ敵を狙い撃て」

 

濃密な対空砲火が機雷散布区域外に向けて飛んでいく。向かってくるザクⅡパイロットは考えた。

被弾確率が高く、ダメージが蓄積する対空防御が行われている個所よりも主砲のみでカバーされている個所が到達できる確率が上がるのでは?

 

もう少し戦場慣れしている隊員がいたのなら罠である事に気づけたはずだが、彼らは経験が足りなかった。その考えがジョンの術中に嵌っている事に気づかず機雷散布区域に入り込んだ。

 

「・・・よし、全対空砲を掃射して機雷を誘爆させろ!!連鎖爆発で奴らを一網打尽にする!!」

「対空砲、打ち方はじめ!!」

 

砲術長の号令と共に放たれた砲弾は漂っている1つの機雷に命中。大爆発を起こし、その爆発が連鎖となってザクⅡに襲い掛かった。

その時になって罠にかかった事に気づき、離脱しようとする機体もあったが、既に散布区域の深くまで入りこんでおり、その機体も爆発に巻き込まれて散っていった。

 

「接近している敵機は全滅です。交戦中のモビルスーツから通信。敵は全滅した模様」

「よし。全機帰投せよ。それと1番機から6番機までをア・バオア・クーまでの即応要員として護衛任務に就かせろ。7番機から12番機は格納庫に運んで修理だ。第一種戦闘配備から第二種に移行し、引き続き警戒を行え」

 

そこまで言うとジョンは肩の力がどっと抜けて椅子にもたれ込んだ。

 

その後、戦闘を行った高機動型ザクはサイド3に帰投。それから数時間近く何も発生する事なくア・バオア・クーに到着した。

 

『こちらは連邦軍第98哨戒部隊である。貴艦の所属を述べよ』

「こちらはジオン共和国交渉団旗艦、ホワイトバードである。平和を届けに来た」

 

高圧的な、そしてどこか緊張感を含んだ通信が届き、それに対してジョンはほんの少しばかりの洒落を含めて返答。その直後、連邦の哨戒部隊のブリッジクルーの歓声が聞こえてきた。

 

『静かにしろ!!・・・貴艦と護衛のモビルスーツの色から判断するに、総司令部からの通達を遵守している事を確認した。補給ハブまで先導する・・・平和の使者の先導役になった事を誇りに思う』

 

その後、補給ハブで燃料を補給したホワイトバードはソロモンに向けて出港した。

船の後方にいる連邦船のブリッジに目を向けると、誰しもが笑顔で平和の白い鳥を見送っていた。

 

「ここからの宙域は連邦の支配領域だ。第二種戦闘配備から通常配備に移行。哨戒に出ているモビルスーツ隊を帰投させろ」

「それはリスクが大きすぎます。連邦だって我が国と同じく一枚岩ではないはず、どんな事態になっても動けるようにしなければ!」

 

「外交官殿。あなたの仰ることはごもっともですが、わが軍は連邦に負けたんです。仮に本艦が連邦の派閥に攻撃されて反撃したとしても、官軍の言う事を正しい情報として処理されてしまうでしょうね」

 

そう言って外交官を見ると彼はバツが悪そうにして視線をそらした。

 

「因果なものです。今までは連邦憎しで団結していたスペースノイドが今では仲間内で争っているなんて・・」

「何をおっしゃるかと思えば、今回の戦争でどれほどのコロニー居住者を殺してきたのかご存じでない?・・・フフッこれは失礼。官僚は大義でしか物事を測らないのでしたね」

「ッ!!・・・失礼する!」

 

ジョンの言葉に怒りを覚えたのか、艦橋から退出する外交官。それを見届けると副長席に座っているWACが苦言を呈する。

 

「准将。このような態度で挑むから昇進できなったんですよ」

「・・・ふん。私は本来コロニーの住人を外敵から防衛する為の組織に属していたんだ。昇進なんて望んでいないさ」

「お上の命令でもNOと言える艦長だからこそ、私たちは今まで生き残れてきたのでこれ以上は言いません。結果論ですがジオン軍は無くなる可能性があるのでこれ以上昇進しなくて良かったです」

「おや?いつも冷静な副長からこんな言葉を聞くことができるとは。どうかね?この後自室で一杯飲もうではないか」

「いえけっこうです」

「・・・・・」

 

即座に否定されて不貞腐れるジョン。

そんな彼を見て艦橋クルーの誰しも笑っている。周りの笑いにつられて自分の事なのにジョン自身も笑ってしまい、艦橋内は和気藹々とした雰囲気が流れていた。

 

「フフフ・・おっと、そろそろソロモンに到着する時間だ。通信手、ソロモン駐在の連邦軍に通信してくれ」

 

和気藹々とした空気から一変、艦長の命令にテキパキと応じる乗組員。暫くした後に駐在舞台とコンタクトが取れ、ソロモンに入港することができた。

 

ソーラーシステムにより半壊状態となっている嘗ての宇宙要塞。復旧されたドックに入港した。

ホワイトバードから降り立った艦長、副長、外交官を迎えたのは軍楽隊の音楽と見物している連邦兵士の歓声だった。

 

「よく来てくれました。地球連邦政府交渉団のアーセナスですこっちは・・」

「ソロモン駐留部隊の責任者、ジャミトフ・ハイマンだ」

 

「丁寧なもてなし感謝します。私はジオン共和国交渉団ホワイトバード艦長、ジョン・コンラッドです」

 

出迎えたのは金髪白人のアーセナスと、敵意の籠った眼をしているジャミトフの2人だった。

ここから私たちの出番は終わったとばかりにジョンと副官は船に戻る。

 

「艦長・・あの軍人の目見ましたか?・・何も無ければ良いのですが」

「大丈夫・・とは言えない目をしていたな。取り敢えずモビルスーツ隊には何時でも出発できるよう指示を出しておこう」

 

そう言って、ジョンはその足でパイロットの控室に向かった。

 

「おいおい、また俺の負けかよ!!もってけドロボー!!」

「へへへ、ありがとよ」

 

控室に入って真っ先に目に入ったのはギャンブルで負けて悪態をついている隊員と金を巻き上げる隊員だった。

 

「おまえも運が・・?!艦長殿に敬礼!!」

 

巻き上げている隊員がジョンの存在に気づき、脱兎のごとき速さで敬礼する。数泊遅れて他の隊員も慌てて敬礼する。

 

「ご苦労・・諸君らの遊びについて一々言う事は無いから安心してくれ。さて、今回のここに来た理由だが、オフレコで頼む」

 

「オフレコ・・・ですか。いったいどのような内容ですか?」

「うむ。ソロモン駐留部隊の司令官の瞳に隠しようのない悪意と敵意が見えたのでな?念の為諸君にはいつでも出撃できる体制でいてほしい。現在通常配備中だが、ここで大々的に第二種戦闘配備に移行したら、連邦軍に対する敵対行為と捉えかねん」

「了解です。取り敢えず我が第一分隊と第二分隊は何時でも出撃できるようにしておきます」

 

その言葉を聞いたジョンは無言でうなづくと、控室から退出した。

 

「副長・・話がある。私の自室に来てくれないか?」

「・・・はい、わかりました」

 

いつもの冗談ではない声音でただ事ではないと理解している副長はジョンと一緒に彼の居住エリアに入室した。

 

「さて、彼・・・ジャミトフについてだが、副長としての意見を求める」

「彼は・・おそらくスペースノイド根絶派か、ジオン軍に辛酸をなめる事になったかのどちらかでしょう。どちらにせよ碌な事にはならないはずなので妨害工作に注意すればよいかと・・」

「私と同じ意見か・・・そうだな。とりあえず相手に何かあると悟らせないように通常通りに行こうじゃないか」

 

それから交渉が終了し、外交官がホワイトバードに戻ってくると、多くの見送りに見守られながら船を発進させた。

 

「航海長。予定ではソロモンから再度ア・バオア・クーで補給して帰投するとあったが、無補給でサイド3に帰投する事は可能か?」

「はい、燃料の残量を見る限り後1往復しても問題なく帰投できます」

「そうか、では無補給で帰投する旨ア・バオア・クーにいる連邦軍に通達してくれ。

暗礁宙域を通ってショートカットを実施する。いけるな?」

「・・いけますがリスクが高いです。本当に行くんですね?」

「あぁ。そうしてくれ」

「・・・了解しました。取り舵20度!、暗礁宙域に向けて移動します」

 

 

それから数時間は問題なく過ごすことができた。しかし、暗礁宙域に入ってから想定通りだが起きてほしくない事態が発生した。

 

「艦長!こちらに近づいてくる機影。4機です!・・早い!あと4分で本艦の攻撃範囲に入ります!」

「来たか・・第一種戦闘配備に移行しろ!!」

 

間髪入れずに第一種戦闘配備にすると、オフレコでいつでも行動できるように待機していたモビルスーツ隊が1分もかからずに出撃した。

 

「敵の信号は?!」

「・・・・未知の信号です!」

「くそ・・・モニターに出せるか!?」

 

未知の敵の見た目で判断しようと、敵が近づいてきている方角に向け、望遠モニターを起動する。

ミノフスキー粒子のノイズ交じりに映し出される画面には全身黒のジム系統の機体が猛スピードで接近していた。

 

「これは・・連邦の特殊部隊だというのか?!」

「おそらくそうなのかと・・どうしますか?艦長」

「・・・・特殊部隊を出すという事はこの艦を秘密裏に処理したいと言う事・・そのまま撃破しても連邦は素知らぬ顔をするだろうよ!全員気張っていけ!ここを抜けたら戦争は終わりだ!!」

 

副官の質問に答えたジョンは艦橋クルーに喝を飛ばすとダミーバルーンと機雷を周囲一帯に散布させた。

 

「奴らに向けて1番主砲を旋回!、一泊遅らせて2番主砲、3番主砲は敵の回避予測地点に叩き込め」

 

そういうと、砲術長が指示通りに主砲を発射、1発目の砲撃は当たる直前にジムが綺麗に分散して回避、しかし、2番3番主砲から放たれた主砲が彼らの回避した地点を通り過ぎる。これにより1機のジムを撃破した。

 

『こちら1番機、接敵します!』

「機動力は黒いジムが上・・通信手!、1撃離脱先方は使用しないようモビルスーツ隊に通達!

砲術長!ジムが味方モビルスーツ隊から離れないように周囲に弾幕を張るんだ!抜けさせるな!」

 

 

『なんだこのジムは、出力もパワーも俺らの倍以上ある?!・・来るな!くる・・・』

『アンジー!なんなんだこいつは?!ヤバい!弾詰まりだ!近接武器に切り替え・・・』

 

「3番、4番機、ロスト!」

「残り味方機は10機・・・か副長、艦の指揮を一時的に預けた。砲術長、3番対空砲座は少しの間私が使用する」

 

「ちょ・・ちょっと待ってください!艦長。そんな危険なことをして戦死したら艦内の士気に関わります!!」

「大丈夫だ。将たるもの、後方でくすぶっているよりもほかの兵士の模範となるように動く時が来る。今がその時だ・・・後生だ。行かせてくれ」

 

目を吊り上げて必死に説得する副長にジョンが反論した。

 

「・・・わかりました。必ず無事に帰ってきてください」

 

折れた副長は許可を出し、ジョンは急いで3番対空砲座に向かって席に座ると黒いジムをモニターで探した。

 

「・・こいつか。ブリッジで見るのと大違いだ」

 

一人呟くと10発程度試し打ちを行う。通り過ぎた弾と敵機との距離ををおおよそつかむと1秒毎に射撃を行った。

 

バルカン法から発砲炎がほとばしり、高速で移動しているジムの片足に命中、破壊した。

 

「こちら艦長だ。モビルスーツ隊に片足が損傷したジムを優先的に攻撃させろ」

 

備え付けの内線で無線主に連絡すると次の獲物に狙いを定めた。

 

「・・・ここか!!」

 

先ほどとは違い、対空砲を連射する。すると片足を失ったジムに群がる味方モビルスーツ隊を後ろから狙撃しようとしたジムに命中、爆散した。

 

「こんなもんでいいか・・こちら艦長だ。今からブリッジに戻って指揮を執る」

 

相手の返答を聞かず内線を切ると、そのままブリッジに戻った。

 

「・・艦長!ご無事ですか?!」

「あぁ、大丈夫だ。諸君らには言っていなかったが艦長になる前は砲座主として活躍していてね」

「そんなことは早めに言ってください!!艦長が戦死したら・・私、わたし・・」

 

情緒がおかしくなっているのか、怒ったり泣いたりしている副官をいったんブリッジから退出させると引き続き指揮を執った。

 

「状況は?」

「はい、艦長が片足を破壊したジムは撃破しました。残り1機です」

「そうか・・残り1機になっても10機相手にここまで大立ち回りするパイロット・・尊敬するよ」

「いえ・・味方モビルスーツ隊は残り7機です・・・」

「・・・・そうか」

 

どんなに性能が良いとしても一部の化け物以外は押しつぶされるのが戦争。程なくして残り1機のジムも撃破されて戦闘は無事終了した。

その後は特に何事もなく、平和ほ鳥はサイド3に帰還した。これにより1年間にも及んだ戦争は終結したが、納得できない一部部隊はジオンから離反、デラーズフリートやアクシズ、暗礁宙域に潜伏。

スペースノイド至上主義の思想は今後数十年・・数百年に渡って続くことになる。




船メインは初めて書きましたが、ガバガバ設定なので教えてくださると幸いです。
それと、誤字脱字指摘お待ちしております!
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