千手最強の忍とうちは最強の忍は、個性と英雄が蔓延る世へと生まれ落ちる   作:天叢雲剣を捧げるスサノヲ

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長らくお待たせしました!第三十六話となります!作者は死んでおりませんのでご安心ください笑。では、どうぞ!


第三十六話:職場体験、開始

 

 

 

――雄英体育祭という名の「神話」が幕を閉じてから数日。

日本中が「神のごとき力」を持つ二人の少年の話題で持ちきりとなる中、雄英高校ヒーロー科の生徒たちは、次なるステップ――『職場体験』へと足を踏み出そうとしていた。

 

 

 

 

・とある都内の駅 大広場・

 

 

朝の通勤ラッシュ。人の波が押し寄せる駅の喧騒の中に、雄英の制服に身を包み、ヒーローコスチュームのケースを手にした生徒たちが集結していた。

 

 

相澤「……いいか。一度外に出れば、お前らは雄英の看板を背負ったヒーローの卵だ。不備や失礼のないよう、気を引き締めろ。特に……コスチュームの着用は現場のヒーローの指示に従え。勝手な判断での使用は厳禁だ。」

 

 

全身の包帯がようやく取れた相澤が、鋭い眼光でA組の面々を見渡す。

 

 

相澤「……飯田。分かっているな?」

 

 

飯田「……はい。承知しております。」

 

 

飯田天哉の返答は、いつもの彼らしい熱量に欠けていた。

眼鏡の奥の瞳には、かつての生真面目な輝きではなく、底の見えない暗い情念が揺らめている。

兄・インゲニウムを襲った「ヒーロー殺し」への復讐心。その危うい気配に、親友である緑谷と麗日は不安げな視線を交わし合った。

 

 

緑谷「(飯田君……。やっぱり、無理してるよ……。)」

 

 

麗日「(……かける言葉が見つからへん。でも、信じるしかないんやろうか。)」

 

 

重苦しい空気の中、相澤の指示で解散が告げられる。

 

 

爆豪「ケッ! 仲良しごっこかよ。……おい!ストレート長髪にボサボサ長髪!!」

 

 

爆豪勝己が、列を離れようとする柱間とマダラに吠えた。

 

 

爆豪「テメェら、職場で調子こいてんじゃねェぞ!! 次会う時は、そのデカい人形ごと纏めてブッ壊してやるからな!!」

 

 

柱間「ガハハハ!! 爆豪、元気があってよろしい!! お主もベストジーニスト殿の下で、その尖った性格を矯正してくるのだぞ!」

 

 

マダラ「フン。爆発頭の砂利が。……精々、糸に巻かれておとなしくしているがいい。」

 

 

爆豪「あぁ!!? 殺すぞテメェ!!」

 

 

爆豪の威嚇を涼しい顔で受け流し、柱間とマダラはそれぞれの方向へと歩き出した。

 

 

扉間「……兄者、マダラ。あまり目立ちすぎるなよ。特に兄者、その模型を振り回して暴れるな。」

 

 

駅の反対側に集合していたB組の扉間が、冷静に釘を刺す。

彼の隣には、同じくホークス事務所から指名を受けた常闇踏陰が、静かに佇んでいた。

 

 

常闇「……千手扉間。共に行く。闇を裂く速さ、見せてもらうぞ。」

 

 

扉間「ああ。合理的なパトロールを期待している。……緑(みどり)、お前もグラントリノ殿の下で精進しろ。」

 

 

緑谷「うん! 行ってきます、扉間君!」

 

 

こうして、それぞれの決意と、例の「究極の模型」を入れた巨大なジュラルミンケースを抱え、彼らは新たな戦場へと旅立っていった。

 

 

 

 

 


 

 

 

・東京都 リューキュウ事務所前・

 

 

高層ビルの立ち並ぶオフィス街。その一角にある、「Dragoir(ドラゴワール)」と刻まれたファッションモデルとなっているリューキュウの写真が掲げられている巨大な看板が目印のスタイリッシュな普通のオフィスビル。

うちはマダラは、その自動ドアの前に立っていた。

今日の彼の服装は、雄英高校の制服。

しかし、本人のこだわりか、ブレザーのボタンは全て外され、着崩された姿はどこか不良めいた、しかし圧倒的な色気を放っていた。

そして、その傍らには、自身の分身とも言える「完成体須佐能乎の模型」が収められたケース。

 

 

マダラ「(……フン。随分と小洒落た場所だな。あの龍の女、本当に俺に何を教えるつもりだ。)」

 

 

マダラは僅かに緊張を滲ませながらも、不敵な笑みを浮かべてドアを開けた。

 

 

ウィーン……

 

 

マダラ「……雄英高校1年A組、うちはマダラだ。今日から一週間の――」

 

 

マダラが言葉を言い切るより、それは早かった。

 

 

――パーーーーンッッ!!!!!

 

 

鼓膜を劈くような破裂音。

視界を埋め尽くす色鮮やかな紙吹雪。

 

 

「「「「「「いらっしゃいませぇーー!! マダラ君!!!」」」」」」

 

 

マダラ「…………っ!!?」

 

 

ピキィィィィッ……!!

 

 

マダラの思考が、完全に停止(フリーズ)した。

 

 

目の前には、クラッカーの紐を引いたまま満面の笑みを浮かべる女たちの姿。

 

 

リューキュウ「ふふ、驚いたかしら? ようこそ、うちはマダラ君。」

 

 

ドラグーンヒーロー・リューキュウ。

今日は私服ではなく、あのスリットの入ったワインレッドの気高きチャイナドレス式のヒーローコスチュームに身を包んだ彼女が、優雅に歩み寄ってくる。

 

 

波動「わあぁぁー! 来た来たマダラ君! 凄い凄い、制服似合ってるね! 不思議!! そのデカいケース何!? 例の模型!? 見せて見せてー!!」

 

 

その隣には、青と白を基調としたボディスーツ式のヒーローコスチュームを纏った雄英高校ヒーロー科3年生の波動ねじれ。

彼女は「不思議!」を連発しながら、マダラの周りを高速でフワフワと旋回し始めた。

 

 

ミト「マダラ様。お待ちしておりましたよ。……ふふ、素敵な歓迎でしょう?」

 

 

そして、落ち着いた和風のコスチューム(設定画:

【挿絵表示】

)を纏った雄英高校ヒーロー科3年生のうずまきミトが、肩に乗った九喇嘛と共に、どこか楽しげに微笑んでいた。

 

 

九喇嘛「ケッ!相変わらずマヌケな面晒してやがんな、マダラァ!! クックックッ…」

 

 

マダラ「…………き、貴様ら……っ!!」

 

 

マダラはプルプルと震えながら、顔を真っ赤にして後退った。

忍界最強と恐れられた男が、クラッカー一つでこれほどまでに動揺するなど、誰が想像できただろうか。

 

 

マダラ「……何を、ふざけた真似を……っ!! 俺を馬鹿にしているのか…!? このような浮ついた歓迎など、戦士の……忍の誇りが――」

 

 

???「失礼いたしました。リューキュウ事務所所属のサイドキックです。初めまして、うちはマダラ様。」

 

 

マダラの怒鳴り声を遮るように、一人の女性が前に出た。

黒いマスクで口元を覆い、くノ一を彷彿とさせるクールな佇まいの銀髪ショートヘアのプロヒーロー。

 

 

リューキュウのサイドキック1「貴殿の体育祭での『武』、そして『覚悟』……感銘を受けました。この一週間、リューキュウの下で共に励めることを、光栄に存じます。敬具。」

 

 

マダラ「(……忍だと? この世界の忍びモドキか。だが、気配の練り方は悪くない。)」

 

 

彼女の丁寧かつ事務的な敬語に、マダラは僅かに毒気を抜かれる。

だが、もう一人のサイドキックはさらに強烈だった。

 

 

???「そして私も同じくリューキュウのサイドキックです!! マダラ君、よろしく頼みますね!! 一見無表情って言われるけど、心の中は今のクラッカーみたいにパチパチ燃えてるんだから!!」

 

 

道化師のようなオフショルダー式のコスチュームに、高い位置で結ばれたポニーテール。

一見無表情に見えるが、その声は驚くほど明るい女性ヒーローが、マダラの目の前で大袈裟な身振りを披露する。

 

 

リューキュウのサイドキック2「それとその長い髪、すごくかっこいいですね! 後で私がもっと素敵にセットしてあげましょうか!? あ、敬語はリューキュウさんの教えなので完璧なのでご安心を!!」

 

 

マダラ「ッ!?……触るな砂利が!! 俺の髪にいきなり触れるな!!」

 

 

リューキュウのサイドキック2の異様なテンションに、マダラはさらに後退る。

そんな彼を見て、リューキュウは一歩歩み寄ると、マダラの火照った頬を覗き込んだ。

 

 

リューキュウ「うちは君。ここでは貴方は『生徒』であり、私たちの『仲間』よ。……そんなに肩肘張らなくていいの。……ね?」

 

 

マダラ「…………っ。……フン。好きにしろ。ただし……修行は手加減せんと言ったな。……それを忘れるなよ、リューキュウ。」

 

 

マダラは顔を背け、ぶっきらぼうに言い放った。

しかし、その耳たぶが僅かに赤くなっているのを、事務所の女性陣が見逃すはずもなかった。

 

 

ねじれ「あー! マダラ君、さては照れてるなー!? 不思議!!」

 

 

ミト「フフ、マダラ様。やはり貴方は、この世界でも愛され体質のようですね。」

 

 

マダラ「ミトも黙っていやがれ!! 貴様まで一緒になって……!!」

 

 

リューキュウ「ふふ、賑やかになりそうね。……それじゃあうちは君、まずは事務所の案内から始めましょうか。私のサイドキックたち、案内をお願い。」

 

 

リューキュウのサイドキック2「了解ですリューキュウさん!! さあマダラ君、こっちがトレーニングルームで、こっちが私の特等席ですよ!!」

 

 

マダラ「おい、引っ張るなと言っているだろうが…!!」

 

 

リューキュウ「(うちは君……。その大きな力に相応しい、暖かな居場所を、ここで見つけてほしいわ。)」

 

 

嵐のような歓迎を受け、リューキュウのサイドキック2に強引に連れて行かれるマダラ。

その背中を見送りながら、リューキュウは満足げに目を細めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

・東京都 エンデヴァー事務所・

 

 

 

一方その頃、No.2ヒーロー・エンデヴァーの事務所では、文字通り「炎」のような熱気が渦巻いていた。

 

 

エンデヴァー「……来たか、焦凍。それに……千手。」

 

 

轟「ああ。」

 

 

柱間「うおおお!! 燃えておるなエンデヴァー殿!! 実に素晴らしい闘志ぞ!! 部屋の中まで熱気でムンムンしておるわ!!」

 

 

柱間は全く物怖じすることなく、土足でズカズカと部屋の中央へ進み出る。

エンデヴァーは眉間を深く寄せた。

 

 

エンデヴァー「……騒がしい男だ。相澤から『扱いには気をつけろ』と言われていたが……、貴様、本当にあの『1000メートルの仏像』を操っていた本人か?」

 

 

柱間「ガハハハ!! 疑っておるのか? ならば、ちょうど良いものを持ってきたぞ!」

 

 

柱間は背負っていた巨大なジュラルミンケースを、高級なローテーブルの上にドォン!と置いた。

 

 

エンデヴァー「な、なんだそれは。爆発物か。」

 

 

轟「……いや、親父。それは……」

 

 

プシューッ……パカッ!!!

 

 

柱間が嬉々としてケースを開けると、そこには先日ホビーアライアンスから贈呈された『仙法・木遁・真数千手 パーフェクトリアルリモートコントロールモデル(1/1000スケール)』が、圧倒的な造形美を放って鎮座していた。

 

 

柱間「ジャジャーン!! 日本の職人たちが作ってくれた、俺の真数千手の模型ぞ!! よくできているであろう!!」

 

 

様子を見に部屋に入ってきていたバーニン、オニマー、キドウも、その精巧さに目を丸くした。

 

 

バーニン「ギャハハハ!! 何だこれウケる!! めちゃくちゃ精巧じゃん!! すごい木の香りがする! これならエンデヴァーの『加齢臭』も、この木の香りで完全に消えちゃうんじゃないの!? 最高じゃん、センジュノヌシ!」

 

 

バーニンが腹を抱えて笑いながら、模型の腕をツンツンと突く。

 

 

エンデヴァー「おいバーニン!! 貴様、今俺をなんと呼んだ……!! 誰が加齢臭だ!!」

 

 

オニマー「ギャハハ! まあまあ、落ち着いてくださいよエンデヴァーさん! ……しかしこの模型の構造、実に興味深いな。木目まで完璧に再現されている……。キドウ、お前はどう思う?」

 

 

キドウ「……精密だ。それに、よく見ると構造が複雑だ。……千手、この像は、一体どういう配分になっているんだ?」

 

 

キドウの問いに、柱間は得意げに胸を張った。

 

 

柱間「うむ! よくぞ聞いてくれた! この真数千手はな、身長が1000m(1km)あるのだが、実はただの巨大な像ではないのだ! その内訳は、本体である『仏像部分』が推定600m、そして背中にある『千手部分』が推定400mとなっておる!」

 

 

エンデヴァー「……なんだと? 一体化しているわけではないのか?」

 

 

柱間「その通りぞエンデヴァー殿! この仏像部分は、背中の千手部分を自ら切り離して、独立行動することが可能なのだ! さらには……」

 

 

柱間がコントローラーを操作すると、模型の頭頂部に乗っていた『木人(8cm)』と『木龍』が、ウィィィンという微かなモーター音と共に分離し、ローテーブルの上に着地した。

 

 

柱間「このように! 頭上の木人も、真数千手から分離して完全に独立行動が可能なのだ! つまり、戦場においては、千手を固定砲台としつつ、仏像本体と木人が遊撃隊として敵を蹂躙するという、完璧な陣形が組めるというわけぞ!! ガハハハ!!」

 

 

「「「「…………」」」」

 

 

そのあまりにも理不尽かつ絶望的な戦術の全貌を聞かされ、エンデヴァーたちは一瞬、絶句した。

1kmの質量が分離し、それぞれが独立して襲ってくる。

それはもはや、「個人の個性」という次元を逸脱した、国家転覆レベルの広域制圧兵器であった。

 

 

エンデヴァー「(……恐ろしい力だ。もしこの男がヴィランであれば、日本のヒーロー社会は一日で崩壊していたかもしれん。……だが、それほどの力を持ちながら……)」

 

 

エンデヴァーは、無邪気に模型の木人を歩かせている柱間の、全く濁りのない純粋な笑顔を見つめた。

 

 

エンデヴァー「(……この男の瞳には、微塵の邪悪さもない。あるのは、果てしない包容力と、底抜けの明るさだけだ。)」

 

 

エンデヴァーは小さく息を吐き、立ち上がった。

 

 

エンデヴァー「……模型の自慢はそれくらいにしておけ。千手、そして焦凍。着替えてこい。これよりパトロール……の前に、まずは貴様らの基礎能力を俺が直々に測ってやる。ジムへ来い。」

 

 

エンデヴァーのサイドキックたちも、柱間の持ち込んだ「伝説の縮図」に釘付けになっていたが、エンデヴァーの一言で瞬時に気を引き締める。

だが、かつては「力」のみで支配していたエンデヴァーの事務所が、千手柱間という「太陽」の介入により、徐々に、しかし確実に変わり始めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

・福岡県 ホークス事務所・

 

 

 

そして、No.3ヒーロー・ホークスの事務所では。

 

 

ホークス「いやー、扉間くん。君、マジで合理的だねぇ。俺の『剛翼』より速いんじゃない?」

 

 

扉間「飛雷神は移動距離をゼロにする術だ。物理的な速度とは理屈が違う。……だが、貴殿の羽による情報収集能力は、感知忍術に匹敵するな。」

 

 

扉間はホークスと並んで、高速で街を見下ろしていた。

その後ろでは、常闇が影を纏い、扉間の冷静な立ち振る舞いを目に焼き付けていた。

 

 

ホークス「いいね、その冷徹な分析。俺、君みたいなタイプ大好きだよ。……さて、次は保須市の方まで足を伸ばしてみようか。あそこ、最近なんかキナ臭いんだよね。」

 

 

扉間「……保須か。たしか兄者も向かうと言っていたな。……行こう。」

 

 

扉間の赤い瞳が、遠く保須の空を射抜く。

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

・東京都 リューキュウ事務所・

 

 

そして場所はまたリューキュウ事務所へと戻る。リューキュウ事務所の外観は、「Dragoir」と刻まれた巨大な看板が掲げられたスタイリッシュなビル。

その内部は、外観の現代的な雰囲気とは裏腹に、どこかオリエンタルで荘厳な空気が漂っていた。

赤い絨毯、そして天井を支える太い柱には、中華をイメージしているのか、見事な黄金の「竜」の意匠が彫り込まれている。

壁一面には分厚い専門書が並ぶ本棚が設置されており、トップヒーローの知性と歴史を感じさせる内装だ。

 

 

リューキュウ「ここが今日から、うちは君が使っていい個室よ。」

 

 

リューキュウのサイドキック2によるマダラへのリューキュウ事務所の案内がほぼ終わった後、リューキュウが直々に、応接室の奥にある広々とした部屋を案内した。

高級なソファ、広々としたデスク、そして仮眠用のベッドまで完備されている。

 

 

マダラ「……フン。一介の学生に与えるには、無駄に広いな。」

 

 

マダラは素っ気なく答えながらも、肩に担いでいた例の「完成体須佐能乎(1/1000スケール)」の動く模型が入ったジュラルミンケースを、デスクの横に丁寧に置いた。

 

 

リューキュウ「ふふ、遠慮しないで。うちは君は体育祭の準優勝者なのだし、これくらいは当然の待遇よ。……さて、パトロールの前に、まずはコスチュームに着替えてきてもらえるかしら? 更衣室はあちらよ。」

 

 

マダラ「……分かっている。」

 

 

数分後。

更衣室から出てきたマダラの姿に、事務所にいた女性陣の空気が一変した。

 

 

波動「わあぁぁぁ!! すごい!! 何その服、めちゃくちゃかっこいいよ!! 本物のサムライみたい!! 不思議!!」

 

 

彼が纏っていたのは、サポートアイテム会社が作ったような現代の素材のスーツではない。

深紅の重厚な甲冑、その下に潜ませた漆黒の装束。背には誇り高き「うちは」の団扇の家紋が白と赤でくっきりと描かれている。

そして、手には己の身の丈ほどもある巨大な「軍配団扇」と、鎖で繋がれた「大鎌」。

それは、第四次忍界大戦終結後、忍界からこのヒロアカ世界へ転生した際、最初から所持していたもの。

メンテナンスなど一切していないにも関わらず、かつての戦場の記憶を宿したまま、一切の劣化なく凄みを放ち続けている「最強の忍」の正装であった。

 

 

リューキュウのサイドキック2「わぁー!! かっこいい!!純粋たる THE和風って感じですね!! 似合ってますよ、うちは君!!」

 

 

リューキュウのサイドキック1「……凄まじい威圧感ですね。実戦に特化した、無駄のない武具……。私から見ても確かに感服いたしました。」

 

 

リューキュウのサイドキックたちも、その圧倒的な存在感に息を呑む。

 

 

ミト「……懐かしいですね。やはりマダラ様には、その深紅が一番よく似合いますよ。」

 

 

黒と灰を基調とした、現代風のシックな忍装束コスチュームに身を包んだ「ウズマキノヒメ」こと、うずまきミトが、優雅に微笑む。

その肩に乗ったミニサイズの九喇嘛が、欠伸をしながらニヤリと笑った。

 

 

九喇嘛「ケッ。形から入るタイプなのは、前世から相変わらずだな。」

 

 

マダラ「黙れ九尾。……それよりリューキュウ、これで文句はあるまい。サポートアイテム会社の脆弱な玩具など、俺には不要だ。この武具は俺のチャクラが通る、俺自身の体の一部も同然だからな。」

 

 

リューキュウ「ええ。とても似合っているわ、うちは君。……なんだか、本当に歴史の教科書から飛び出してきたみたいね。」

 

 

リューキュウは、頼もしくも危うい少年の姿に、優しく目を細めた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

・リューキュウ事務所 会議室・

 

 

着替えを終えた一行は、竜の柱が鎮座する会議室のテーブルを囲んでいた。

リューキュウがホワイトボードの前に立ち、真剣な表情で語りかける。

 

 

リューキュウ「それじゃあ、今日の活動についてのミーティングを始めるわ。……まずは、職場体験生のうちは君に、ヒーローという職業の成り立ちと、最も現実的な『お金』の話をしておくわね。」

 

 

プロとしての心構えを説くための、重要な座学。

リューキュウは丁寧に説明を始める。

 

 

リューキュウ「ヒーローは公務員に近い立場だけれど、その収入源は少し特殊なの。基本的には、国からの助成金。そして、解決した事件の難易度や貢献度に応じた歩合制の報酬。さらには知名度に応じた副次的な広告収入……これらが事務所の運営資金となり、そこからサイドキックたちにお給料が支払われるわ。ちなみに、ヒーローの副業は原則として禁止されているのよ。公的な権力を持つ以上、利益相反を防ぐためにね。まあ勿論、例外的なものもあるけど。因みに私はとあるブランド物のファッションモデルなどを時々行ったりしてヒーロー活動の費用を稼いだりしているわ。」

 

 

波動「そうそう! だから私たちは、パトロールして皆の平和を守るのが一番のお仕事なんだよー!」

 

 

ミト「なるほど。忍の里における任務の報酬体系と、根本的な部分は似ていますね。」

 

 

皆が真剣に聞き入る中、マダラ――「ウチハノミコト」だけは、頬杖をついて窓の外の景色を眺めていた。

 

 

マダラ「(……くだらん。)」

 

 

彼にとって「力」とは己の信念を示すためのものであり、それを金銭で換算するというシステム自体が、ひどく矮小なものに感じられたのだ。

金のために戦うなど、有象無象の傭兵と何が違うのか。

 

 

リューキュウ「……うちは君? 聞いているかしら?」

 

 

マダラ「聞いてはいる。……だが、俺には関係のない話だ。俺は俺のやり方で敵を捻じ伏せるだけだ。」

 

 

相変わらずの傲岸不遜な態度。

だが、リューキュウは怒るどころか、困ったような、しかし慈愛に満ちた笑みを浮かべた。

 

 

リューキュウ「ふふ、まあそう言うと思ったわ。でもね、霞を食っては生きていけないの。事務所を維持し、皆の生活を守るのも、トップヒーローの務めなのよ。……さて、お勉強はここまで! お昼にしましょうか。」

 

 

リューキュウのサイドキック2「はいはーい!! 今日のランチは、私たちサイドキックが総力を挙げて発注した、特製幕の内弁当ですよー!!」

 

 

リューキュウのサイドキック1「……栄養バランス、カロリー計算、全て完璧に調整済みです。午後のパトロールに備え、存分に英気を養ってください。」

 

 

テーブルの上に、豪華な漆塗りの重箱が並べられる。

蓋を開けると、そこには色とりどりのおかずが所狭しと並んでいた。

高級な焼き魚、美しく飾り切りされた煮物、天ぷら、そして色鮮やかな炊き込みご飯。

その豪華さに、波動とミトが歓声を上げる。

 

 

波動「わあー! すごいすごい! 美味しそう! いっただきまーす!」

 

 

マダラも無言で箸を手に取る。

一口食べると、その繊細な味付けと完璧な火通しに、わずかに目が開かれた。

 

 

マダラ「(……悪くない。忍界の兵糧丸とは雲泥の差だ。)」

 

 

マダラが黙々と箸を進めていると、リューキュウが自室の冷蔵庫から「あるもの」を取り出してきた。

 

 

リューキュウ「それと、これ。私からの差し入れよ。……特別に注文しておいたの。」

 

 

ドンッ!!

 

 

マダラの目の前に置かれたのは、ガラスの器に入った巨大な物体。

黄金色に輝き、プルプルと震えるその正体は――。

 

 

マダラ「ッ……!? こ、これは……!!」

 

 

リューキュウ「都内の最高級ブランドが手掛ける、『王室御用達特選ジャンボカスタードプリン』よ。……うちは君、こういうの好きでしょう? ちゃんと『固め』のやつを選んでおいたわ。」

 

 

雄英体育祭の日の女子会で、彼が「黄金プリン」に陥落したという情報は、既にリューキュウの耳に入っていたのだ。

最高級ブランドの、しかもジャンボサイズ。

マダラはゴクリと喉を鳴らし、震える手でスプーンを握った。

 

 

マダラ「……貴様、何故俺の好みを……。」

 

 

リューキュウ「ふふ、頑張る君への、歓迎のご褒美よ。……さあ、食べて?」

 

 

マダラ「……いただきます。」

 

 

一口食べた瞬間。

マダラの背後に、幻覚の花が咲き乱れた。

至福。濃厚な卵の風味と、ほろ苦いカラメルソースの絶妙なハーモニー。

戦場での鬼神の顔は完全に消え去り、そこにはただの「甘党の少年」がいた。

 

 

波動「あはは! マダラ君、顔がとろけてるー! かわいいー!!」

 

 

ミト「フフフ、やはりマダラ様は甘味には勝てませんね。」

 

 

九喇嘛「ギャハハ!! この儂から見ても実に傑作だなァ!! あのマダラがたかがプリン如きで完璧に手懐けられてやがる!!」

 

 

マダラ「う、うるさい!! 食事中は静かにしろ!!」

 

 

顔を真っ赤にして怒鳴るマダラだが、プリンを掬うスプーンの動きは止まらない。

リューキュウはそんな彼を、母のような、姉のような、温かい眼差しで見守っていた。

 

 

リューキュウ「(……よかった。少しは緊張が解けたみたいね。)」

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

・東京都 港区 午後のパトロール・

 

 

腹ごしらえも済み、一行は午後のパトロールへと繰り出した。

先頭を行くのはリューキュウ。

その両脇を固めるのは、ねじれとミト。

そして、少し離れた後方を、マダラが不機嫌そうに歩いている。

街は平和そのものだった。

人々が行き交い、笑い声が溢れる。

だが、No.9ヒーローであるリューキュウたちの姿が見えると、その空気は一変した。

 

 

「あ!! リューキュウだ!!」

 

 

「ネジレチャンもいるー!! かわいいー!!」

 

 

「あれ? あの着物の人、体育祭に出てた『ウズマキノヒメ』じゃない!?」

 

 

「うわっ! あのデカい鎧の人、うちはマダラだ!! 『ウチハノミコト』だ!! 本物だ!!」

 

 

あっという間に人だかりができ、即席のサイン会&撮影会が始まってしまった。

 

 

リューキュウ「皆さん、道を開けて。今日も応援ありがとう。この平和に感謝を。」

 

 

波動「やっほー! みんな元気ー? 写真? いいよー! ピース!」

 

 

ミト「ごきげんよう。……あら、九喇嘛の頭を撫でたいのですか? 少しだけですよ?」

 

 

三人は慣れた手つきでファンに対応していく。

笑顔を絶やさず、一人一人に丁寧に言葉をかけるその姿は、まさにプロ。

一方、マダラは――

 

 

マダラ「…………」

 

 

腕を組み、仁王立ちで虚空を睨んでいた。

その周囲には、目に見えない「近寄るなオーラ」が展開されている。

 

 

マダラ「(……くだらん。何がファンサービスだ。俺たちは見世物ではない。)」

 

 

そう思ってポツンと一人で立っていた時。

一人の小さな男の子が、母親の手を振り払って、恐る恐るマダラに近づいてきた。

 

 

男の子「あ、あの……。お兄ちゃん……。」

 

 

マダラ「……あ? 何だ、砂利。」

 

 

リューキュウ「ッ!?(こら、うちは君! 砂利って言わないの!)」

 

 

リューキュウが表情によるジェスチャーでマダラを注意するが、そんなこと知ったことではないマダラがギロリと見下ろす。

母親が「ひっ!」と悲鳴を上げそうになるが、男の子は震える手で色紙とペンを差し出した。

 

 

男の子「僕……体育祭見たよ……! 青い大きなロボット……すっごく強くて、かっこよかった……! サイン……ください……!」

 

 

純粋な憧れの瞳。

一点の曇りもない、ヒーローへの敬意。

マダラは一瞬、言葉に詰まった。

かつて弟・イズナが自分に向けていた無垢な眼差し。

そして、少年期、まだ柱間と共に平和な里を夢見ていた頃の、義理人情に厚かった自分自身の記憶が蘇る。

 

 

マダラ「…………フン。物好きだな。」

 

 

マダラは面倒くさそうに軍配を地面に置くと、筆を受け取った。

色紙に、達筆な文字で『ウチハノミコト(うちはマダラ)』と記す。

そして、マダラはふと思いついたように、その余白にペンを走らせた。

 

 

マダラ「……これもおまけだ。持って行け。」

 

 

驚くべき速さと画力で描き添えられたのは、デフォルメされた「可愛い完成体須佐能乎(深い青色)」のイラストだった。

 

 

男の子「わぁぁ……!! 絵まで!? すごい!! ありがとう、お兄ちゃん!! 頑張ってね!!」

 

 

男の子が満面の笑みで母親の元へ駆け戻っていく。

その一部始終を見ていた周囲の群衆が、一瞬の沈黙の後、爆発した。

 

 

「「「「「ギャアアアアア!! マダラ様がサインしたァァァ!! しかも絵付き!!?」」」」」

 

 

「俺も!! 俺もお願いします!!」

 

 

「さっきのギャップ何!? 萌える!!」

 

 

「私にも!! 握手してください!!」

 

 

「抱いてください!!!ていうか砂利って言って罵ってください!!!」

 

 

怒涛の勢いで押し寄せる群衆。

 

 

マダラ「なっ……!? き、貴様ら……!! 寄るな!! 離れろ砂利共ォォォ!!!」

 

 

マダラは揉みくちゃにされる。

ファンサービスという名の、逃げ場のない無間地獄。

遠くでリューキュウたちが「ふふ、大人気ね、うちは君」と笑っているのが見え、マダラの精神的疲労は限界に達しようとしていた。

その時。

 

 

 

 

ドゴオオオオオオオン!!!!!

 

 

 

 

突如、数ブロック先の交差点で、凄まじい爆発音が響いた。

悲鳴が上がり、人々がパニックに陥って逃げ惑う。

 

 

リューキュウ「ッ!?ヴィラン発生!! みんな、直ちに現場へ急行するわよ!!」

 

 

マダラ「……チッ。ようやく仕事か。」

 

 

マダラは群衆を掻き分け、瞬身の術で一気に加速した。

その表情は、先ほどまでの困惑から一変、獲物を狩る修羅のそれへと変わっていた。

 

 

 

 

 

 

 

・事件現場・

 

 

 

現場では、薬物か何かで個性を暴走させ、身体を巨大化させた複数のヴィランが暴れまわっていた。

ビルを破壊し、車を投げ飛ばす。

警察が規制線を張るが、巨大ヴィランの暴走を止められない。

そこへ、空からリューキュウたちが降臨する。

 

 

リューキュウ「そこまでよ!!」

リューキュウが自身の個性を発動し、巨大なドラゴンへと変身する。

ヴィランの一体を押さえ込み、強靭な顎と爪で動きを封じる。

 

 

ヴィランA「ぐあぁぁ!! ドラゴンだとぉ!?」

 

 

波動「チャージ満タン出力30…、ねじれる波動 グリングウェイブ!!」

 

 

波動が空を飛びながら衝撃波を放ち、別のヴィランの足元を崩す。

 

 

ミト「金剛封鎖!!」

 

 

ミトの背中からチャクラの鎖が無数に伸び、ヴィランの手足を雁字搦めに拘束する。

完璧な連携。

だが、一番奥にいた最も巨大なヴィラン(推定30m)が、最後の悪あがきとして、周囲の一般人が避難しているビルに向かって、口から破壊光線を放とうとした。

 

 

ヴィランボス「てめェらも道連れにしてやるぅぅぅ!!」

 

 

リューキュウ「いけない!! 間に合わない!!」

 

 

絶望が走った、その瞬間。

 

 

ズオオオオオオオオオッ!!!!!

 

 

深い青色のチャクラが、ヴィランとビルの間に、巨大な壁となって割って入った。

 

 

マダラ『須佐能乎!!』

 

 

ゴゴゴゴゴ……!!

 

 

まず出現したのは、巨大な肋骨の鎧――『第一形態』。

ヴィランの放った破壊光線を、青い助骨の盾が完全に弾き返す。

 

 

ヴィランボス「なっ!? なんだこの光る骨は!!」

 

 

マダラ「……どこを見ている。貴様の相手は俺だ。」

 

 

マダラの瞳が永遠の万華鏡写輪眼へと変わり、チャクラが肉付けされる。

巨大な腕が生える『第二形態』へと進化し、その腕がヴィランの首ぐらを鷲掴みにした。

 

 

マダラ「市街地で暴れるなど、美学のかけらもない。……少し、躾をしてやる。」

 

 

マダラはさらに印を結ぶ。

 

 

マダラ『完成体須佐能乎。』

 

 

ズオオオオオオオオオオオッ!!!!!

 

 

港区の空に、青き破壊神が降臨した。

当初は頭巾を被ったような「修験者」の姿。

しかし、マダラが腕を組むと同時に、チャクラの鎧が変形し、大天狗の面を被った「鎧武者」の姿へと完全な変容を遂げた。

身長100m。

先ほどまで巨大に見えていた30mのヴィランが、文字通り「子供」のように見える。

周囲の人間たちは、体育祭の映像でしか見たことのなかったその規格外の巨体を目の当たりにし、恐怖よりも畏敬の念で言葉を失った。

 

 

ヴィランボス「ひぃっ……!? バ、バケモノ……!!」

 

 

マダラ「森羅万象を砕く神の力……貴様ら如き有象無象では測れん。……消えろ。」

 

 

完成体須佐能乎が、腰に差していた巨大な太刀を抜く。

振り下ろされれば、街ごと両断されかねない一撃。

だが、マダラの制御は完璧だった。

太刀の峰(背の部分)を使い、衝撃波が一般人や建物に一切向かないよう、チャクラの流動をミリ単位で操作する。

「有象無象の砂利共」に被害を出さないための、マダラなりの極限の配慮。

 

 

ドゴオオオオオオオン!!!!!

 

 

一振り。

ただそれだけで、ヴィランボスは白目を剥いて地面に叩き伏せられ、気絶した。

被害は、ヴィランが自ら壊した道路のアスファルトのみ。

伝説の忍による、圧倒的かつ精密な「一方的な蹂躙」だった。

 

 

リューキュウ「(凄い……。あの巨体を、あそこまで精密にコントロールするなんて……!)」

 

 

事件は解決した。

マダラは須佐能乎を解除し、気絶したヴィランを見下ろして鼻を鳴らす。

 

 

マダラ「……準備運動にもならんな。」

 

 

歓声が爆発する。

「ありがとうウチハノミコト!!」「すげぇ!!」「流石はウチハノミコトだ!!」

マダラは今度こそ、その称賛を背中で受け止め、静かにその場を去ろうとした。

 

 

リューキュウ「待って、うちは君。」

 

 

人間の姿に戻ったリューキュウが、マダラに歩み寄る。

 

 

リューキュウ「お疲れ様。……素晴らしい活躍だったわ。被害ゼロ、完璧よ。」

 

 

マダラ「フン。当然だ。俺を誰だと思っている。」

 

 

リューキュウは少し足を止め、夕陽を背にして、マダラの方を向いて優しく微笑んだ。

 

 

リューキュウ「ねえ。……今日一日で、随分と打ち解けられた気がするわ。……だから、これからは『うちは君』じゃなく、親しみやすさと、さらに仲良くなった証も込めて……『マダラ君』って呼んでも良いかしら? ふふ……、どう?。」

 

 

マダラ「…………っ!?」

 

 

マダラは一瞬、硬直した。

柱間以外に、これほど親しげに下の名で呼ばれることなど、前世でも滅多になかった。

しかも、相手は自分が「高潔な大人の女性」と認めた相手。

マダラは顔を真っ赤にして、そっぽを向く。

 

 

マダラ「……す、好きにしろ。名前など、ただの記号だと言ったはずだ……!」

 

 

それは、彼なりの最大の「照れ隠し」であり、実質的な了承だった。

 

 

波動「あー! マダラ君、また照れてるー!! 不思議!!」

 

 

ミト「フフフ、青春ですねぇ。」

 

 

夕陽に照らされた東京都 港区の街。

二人の影が並んで歩く。その距離は、朝よりも確実に縮まっていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

・リューキュウ事務所 個室・

 

 

一日の激務を終え、夜になっている頃、マダラは与えられた個室でくつろいでいた。

テーブルには、リューキュウが用意してくれた豪華な夕食と、食後の質の高いデザート(抹茶パフェ)が置かれている。

マダラはデザートを口に運びながら、スマホを操作し、ビデオ通話のアプリを起動した。

 

 

 

《prrrr……》

 

 

 

画面が三分割され、それぞれの顔が映し出される。

 

 

柱間『おおおお!! マダラか!! 扉間も!! 元気にしておるかー!!?』

 

 

画面の向こうの柱間は、何故か轟家の豪華な食卓にいた。

満面の笑みで寿司を頬張っている。

 

 

扉間『……兄者、声がデカい。マイクの音量を下げろ。』

 

 

マダラ「フン。相変わらず騒がしい奴らだ。……柱間、貴様は一体何をしに行っているんだ。」

 

 

柱間『うむ! 今、轟家で夕餉をご馳走になっておるところぞ! いやぁ〜、冬美殿の料理は絶品でな! 夏雄殿ともすっかり意気投合したわ! ガハハハ!』

 

 

画面の端に映る轟家。

最初は氷のように冷え切っていたはずの家庭が、柱間という「空気を読まない純粋無垢な天然」の介入により、見事に温かい空気へと変貌していた。

 

 

冬美『あはは! やっぱり面白いね千手君!おかわりあるからね!』

 

 

夏雄『千手ってすげぇ面白い奴だな! 雄英体育祭の時のあの仏像、マジでヤバかったよ!』

 

 

轟『……おい千手、俺の蕎麦食うな。』

 

 

そして、その奥で頭を抱えている男が一人。

 

 

エンデヴァー『(……胃が痛い……。胃薬はどこだ……。何故、この男はこんなにも俺の懐に土足で踏み込んでくるのだ……。だが……俺を見捨てるどころか、父親としての在り方を正面から説いてくる……。焦凍も、笑っている……。……悪くない、のか……?)』

 

 

エンデヴァーは、柱間の純粋無垢さに振り回されながらも、彼を「唯一無二の戦友」であり「カウンセラー」として、少しずつ心を開き始めていた。

 

 

マダラ「……まあいい。平和そうで何よりだ。扉間、そっちはどうだ。」

 

 

画面が切り替わり、ホークス事務所の静かな個室が映る。

扉間は、常闇と共に夕食の弁当を食べ終え、書類に目を通していた。

 

 

扉間『こちらは順調だ。今日は保須市の視察と情報収集が主だった。ホークスの情報網は驚異的だな。……常闇とも、連携の確認を済ませた。』

 

 

常闇『……千手扉間の指導、そしてホークスの指導、合理的かつ的確だ。深淵の知恵……精一杯学ばせていただく。』

 

 

マダラ「……なるほどな。で、本題だ。」

 

 

マダラの声が一段低くなる。

空気が引き締まった。

 

 

マダラ「最近、保須市に出没しているという『ヒーロー殺し』……ステイン。情報は掴めたか?」

 

 

扉間『ああ。ホークスと共に視察したが、街は不気味なほど静かだった。だが、路地裏に残された微かな殺気……間違いない。奴は、この街に潜んでいる。』

 

 

柱間『うむ。飯田もこの近くにおるはずだ。マニュアル殿の事務所だったな。……今朝のあやつの瞳、少し気にかかる。』

 

 

扉間『……危ういな。奴の殺気、隠しきれていない。兄の仇……復讐に走る可能性が高い。』

 

 

マダラ「フン。あの真面目眼鏡が私情で動くか。……青いな。」

 

 

柱間『マダラ、そう言うな。家族を傷つけられた痛み……俺たちもよく知っておるだろう。』

 

 

その言葉に、マダラは沈黙する。

イズナのこと。戦乱の世で失った兄弟たちのこと。

復讐の連鎖が何を生むか、彼らは誰よりも知っている。

 

 

マダラ「……チッ。分かっている。……おい柱間、扉間。もし飯田が暴走し、奴と接触したら……」

 

 

柱間『うむ! 俺が止める! エンデヴァー殿と共に、必ず守り抜くぞ!』

 

 

扉間『俺も近くにいる。飛雷神のマーキングは市内の要所に済ませてある。すぐに駆けつける手筈は整っている。』

 

 

マダラ「……いいだろう。俺も、有事の際はリューキュウを連れて向かう。……あの『ヒーロー殺し』とやらが語る信念……、一度拝んでみたい気もするしな。」

 

 

三人の忍の間で、意思が統一される。

現代のヒーロー社会を揺るがす悪意に対し、伝説の忍たちが静かに牙を研ぐ。

 

 

マダラ「……じゃあな。切るぞ。」

 

 

通話を切り、マダラは窓の外を見る。

東京の夜景。平和な光。

だが、その光の届かない場所で、確実に闇が蠢いている。

 

 

マダラ「……ステイン、か。……俺の前に立った時、貴様は何を語る。」

 

 

マダラは残っていた抹茶パフェを口に放り込み、不敵に笑った。

その瞳は、来たるべき激闘を予見し、紅く輝いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

・静岡県 保須市 路地裏・

 

 

静寂に包まれた夜の路地裏。

街灯が点滅する不気味な暗がりに、一人の男が立っていた。

紅いマフラーをなびかせ、背には数多の刀。

歪んだ正義でヒーローを裁く「ヒーロー殺し」ステイン。

 

 

ステイン「……偽物……。欲に塗れたヒーローの偽物ばかりが、この街を闊歩している……。正さねばならん。……オールマイトのような、真の英雄だけが……」

 

 

ステインは手に持った新聞を見る。

そこには、雄英体育祭で完成体須佐能乎を顕現させたマダラの写真が大きく載っていた。

 

 

ステイン「……うちは、マダラ。……千手、柱間。……貴様らは、どちらだ。……『力』を持つ者の驕りか、それとも……」

 

 

ステインの殺気が、夜の闇を一層深く沈める。

最強の忍たちと、最凶の信念。

三日後に訪れるその激突は、この世界の「正義」の意味を、根底から問い直すことになる。

職場体験、初日。

嵐の前の静けさは、ゆっくりと終わりを告げようとしていた。

 

 

 

 

 

 




ということで、第三十六話でした。如何だったでしょうか?告知していた通り、リューキュウ事務所での職場体験がメインという形で進行させて頂きましたが、途中で準メインであるエンデヴァー事務所での職場体験、サブであるホークス事務所での職場体験にも最低限の描写もしっかりと入れる形で執筆させて頂きました!あと、リューキュウのサイドキック二人についてはヒロアカアニメに良く登場していたあのヒーロー名が不明の、リューキュウのサイドキック二人のことです!わかりにくいかもしれませんが笑。
さて、次話についてですが、次話はまだ内容で少し迷っておりますが、基本的には、職場体験編のストーリーをそのまま進行させるか、今度は柱間視点によるエンデヴァー事務所での職場体験の初日を主に描写して行くかのどちらかになるとは思いますのでまあ楽しみにお待ちして頂けると幸いです!
また、お気に入り登録や質問、評価も是非お待ちしておりますが、特に感想を、無理にとは言いませんが、時間があれば必ず頂けると、作者の小説制作のやる気向上などへと変わりますので、よろしければ是非よろしくお願いします!ですが、理不尽な誹謗中傷などの行為は流石にやる気やモチベーションが下がりますのでそれらは御法度です。何卒ご理解よろしくお願いします!では、第三十七話にて!
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