千手最強の忍とうちは最強の忍は、個性と英雄が蔓延る世へと生まれ落ちる 作:天叢雲剣を捧げるスサノヲ
・東京都 エンデヴァー事務所前・
朝の通勤ラッシュを抜け、指定された最寄り駅から歩くこと数十分。
青空に向かってそびえ立つ、巨大なガラス張りのスタイリッシュな高層ビル群。その中でも一際目を引く、威風堂々たる近代的な超高層ビルが、No.2ヒーロー・エンデヴァーの拠点である『エンデヴァー事務所』であった。
千手柱間は、その巨大なビルのエントランスを前にして、豪快に口を開けて上を見上げていた。
今日の彼の服装は、雄英高校の指定制服。
マダラがボタンを全開にして着崩しているのとは対照的に、規律的な扉間ほどではないが、柱間は意外にも一番上のボタンまでしっかりと留め、ネクタイもキッチリと締めるという、驚くほど真面目な着こなしをしていた。
その逞しい背中には、例の「1/1000スケール 仙法・木遁・真数千手」の動く模型が収められた巨大なジュラルミンケースが背負われている。
柱間「おおおおお!! これはまた、とてつもなく巨大な建造物ではないか!! 雲を突くような高さぞ!! 忍界にあった俺の火影岩よりも遥かに高いのぉ!! ガハハハ!!」
轟「……千手、声がデカい。道行く人が見てるぞ。」
その隣で、同じく雄英の制服を着た轟焦凍が、少し呆れたようにため息をつく。
だが、柱間は気にする様子もなく、背中のジュラルミンケースをドスンと下ろした。
柱間「いやはや、この世界の建築技術には毎日驚かされてばかりぞ! ……よし轟! 今日から一週間、お主の父親殿の下で、共に熱い汗を流そうではないか!」
轟「……ああ。俺は俺の道を切り拓くためにここに来た。親父……エンデヴァーの力を、俺のものにするためにな。」
柱間「うむ! 良い目だ! 迷いを振り切った男の顔をしておるぞ!」
柱間がバンバンと轟の背中を叩く。その遠慮のない、しかし温かいスキンシップに、轟は少しむせながらも、不思議と嫌な気はしていなかった。
ウィーン……
自動ドアを抜け、エントランスから専用エレベーターでオフィスフロアへと上がる。
チーン。
エレベーターの扉が開くと、そこは巨大な『オフィススペース』だった。
体育館が丸ごと入りそうなほどの広大な空間に、無数のデスクとパソコンが規則正しく並び、数十人のサイドキックや事務員たちが、慌ただしく、しかし洗練された動きで業務をこなしている。
壁面は重厚な石造り風の装飾が施され、ただのオフィスというよりは「軍の司令部」に近い威圧感があった。
???「おっ! 来たね今年の雄英生!!」
オフィスの奥から、ひときわ目立つ黄緑色の炎の髪を揺らしながら、一人の女性プロヒーローが快活な声を上げて近づいてきた。
エンデヴァー事務所を支える凄腕のサイドキック、燃髪の『バーニン』である。
バーニン「私はバーニン!! 炎のサイドキックだ!! アンタたちがエンデヴァーが指名した、轟焦凍と……、噂の『センジュノヌシ』こと千手柱間だね!? ギャハハ!! 体育祭見たよー!! あの木遁? ってやつ、マジで凄まじかったじゃん!!」
柱間「おお!! 炎の髪の毛! 燃えておるな! 俺は千手柱間だ! 今日から一週間、よろしく頼むぞバーニン殿!! ガハハハ!!」
バーニン「いいねいいね、声がデカくて最高に暑苦しいね!! ウチの事務所にピッタリだよ!!」
初対面にも関わらず、柱間とバーニンは一瞬で意気投合し、ガッチリと握手を交わした。
その奥から、さらに二人のサイドキックが歩み寄ってくる。
屈強な体格に、角の生えた鬼のようなマスクを被った『オニマー』と、顔を包帯で覆い、手から軌道を描くようなエネルギーを漂わせている『キドウ』だ。
オニマー「よう! ようこそエンデヴァー事務所へ! 俺はオニマーだ! 千手柱間……、君のあの圧倒的な力、直接見られるのをこの事務所の全員が楽しみにしていたぜ!!」
キドウ「……俺はキドウ。……体育祭での戦い、見事だったな。……無駄のないチャクラというエネルギーの循環……、軌道が全く読めない動きだったよ。」
柱間「オニマー殿にキドウ殿だな! うむ! お主らもなかなかの猛者と見た! 一緒に修行できるのが楽しみぞ!」
轟「……親父は、奥の部屋か?」
轟が静かに問うと、バーニンが親指でオフィスの最奥にある、一際重厚な両開きの扉を指差した。
バーニン「ああ、エンデヴァーなら『執務室』で待ってるよ。……さ、行きな! 初日から気合い入れてこーぜ!!」
・エンデヴァーの執務室・
重厚な扉を開けると、そこはダークブラウンを基調とした、威厳と静寂に包まれた空間だった。
高級な黒革のソファが向かい合い、部屋の奥には巨大な木製のデスク。
そして、そのデスクの奥の社長椅子に、燃え盛る炎の髭と眼光を持つ男――No.2ヒーロー・エンデヴァーが、腕を組んで鎮座していた。
エンデヴァー「……来たか、焦凍。それに……千手。」
轟「ああ。」
柱間「うおおお!! 燃えておるなエンデヴァー殿!! 実に素晴らしい闘志ぞ!! 部屋の中まで熱気でムンムンしておるわ!!」
柱間は全く物怖じすることなく、土足でズカズカと部屋の中央へ進み出る。
エンデヴァーは眉間を深く寄せた。
エンデヴァー「……騒がしい男だ。相澤から『扱いには気をつけろ』と言われていたが……、貴様、本当にあの『1000メートルの仏像』を操っていた本人か?」
柱間「ガハハハ!! 疑っておるのか? ならば、ちょうど良いものを持ってきたぞ!」
柱間は背負っていた巨大なジュラルミンケースを、高級なローテーブルの上にドォン!と置いた。
エンデヴァー「な、なんだそれは。爆発物か。」
轟「……いや、親父。それは……」
プシューッ……パカッ!!!
柱間が嬉々としてケースを開けると、そこには先日ホビーアライアンスから贈呈された『仙法・木遁・真数千手 パーフェクトリアルリモートコントロールモデル(1/1000スケール)』が、圧倒的な造形美を放って鎮座していた。
柱間「ジャジャーン!! 日本の職人たちが作ってくれた、俺の真数千手の模型ぞ!! よくできているであろう!!」
様子を見に部屋に入ってきていたバーニン、オニマー、キドウも、その精巧さに目を丸くした。
バーニン「ギャハハハ!! 何だこれウケる!! めちゃくちゃ精巧じゃん!! すごい木の香りがする! これならエンデヴァーの『加齢臭』も、この木の香りで完全に消えちゃうんじゃないの!? 最高じゃん、センジュノヌシ!」
バーニンが腹を抱えて笑いながら、模型の腕をツンツンと突く。
エンデヴァー「おいバーニン!! 貴様、今俺をなんと呼んだ……!! 誰が加齢臭だ!!」
オニマー「ギャハハ! まあまあ、落ち着いてくださいよエンデヴァーさん! ……しかしこの模型の構造、実に興味深いな。木目まで完璧に再現されている……。キドウ、お前はどう思う?」
キドウ「……精密だ。それに、よく見ると構造が複雑だ。……千手、この像は、一体どういう配分になっているんだ?」
キドウの問いに、柱間は得意げに胸を張った。
柱間「うむ! よくぞ聞いてくれた! この真数千手はな、身長が1000m(1km)あるのだが、実はただの巨大な像ではないのだ! その内訳は、本体である『仏像部分』が推定600m、そして背中にある『千手部分』が推定400mとなっておる!」
エンデヴァー「……なんだと? 一体化しているわけではないのか?」
柱間「その通りぞエンデヴァー殿! この仏像部分は、背中の千手部分を自ら切り離して、独立行動することが可能なのだ! さらには……」
柱間がコントローラーを操作すると、模型の頭頂部に乗っていた『木人(8cm)』と『木龍』が、ウィィィンという微かなモーター音と共に分離し、ローテーブルの上に着地した。
柱間「このように! 頭上の木人も、真数千手から分離して完全に独立行動が可能なのだ! つまり、戦場においては、千手を固定砲台としつつ、仏像本体と木人が遊撃隊として敵を蹂躙するという、完璧な陣形が組めるというわけぞ!! ガハハハ!!」
「「「「…………」」」」
そのあまりにも理不尽かつ絶望的な戦術の全貌を聞かされ、エンデヴァーたちは一瞬、絶句した。
1kmの質量が分離し、それぞれが独立して襲ってくる。
それはもはや、「個人の個性」という次元を逸脱した、国家転覆レベルの広域制圧兵器であった。
エンデヴァー「(……恐ろしい力だ。もしこの男がヴィランであれば、日本のヒーロー社会は一日で崩壊していたかもしれん。……だが、それほどの力を持ちながら……)」
エンデヴァーは、無邪気に模型の木人を歩かせている柱間の、全く濁りのない純粋な笑顔を見つめた。
エンデヴァー「(……この男の瞳には、微塵の邪悪さもない。あるのは、果てしない包容力と、底抜けの明るさだけだ。)」
エンデヴァーは小さく息を吐き、立ち上がった。
エンデヴァー「……模型の自慢はそれくらいにしておけ。千手、そして焦凍。着替えてこい。これよりパトロール……の前に、まずは貴様らの基礎能力を俺が直々に測ってやる。ジムへ来い。」
・エンデヴァー事務所 トレーニングジム・
事務所内にある、壁面が特殊な強化ガラスと耐熱タイルで覆われた巨大なジム。
そこには、青と白を基調とした(公式の)ヒーローコスチュームに着替えた轟と、そして――。
柱間「うむ! やはりこの甲冑が一番しっくりくるのぉ!」
深紅の重厚な甲冑、濃紺の忍装束。背中には巨大な巻物を背負った「千手柱間」の正装。
その姿は、まるで歴史絵巻から抜け出してきた本物の武将のようであった。
バーニン「おぉ〜! 千手、和風でマジかっこいいじゃん! それもサポートアイテム?」
柱間「いや! これは俺が前世の忍界にいた頃から愛用している、己のチャクラが最も馴染む防具ぞ! サポートアイテム会社の手は一切借りておらん!」
エンデヴァー「……フン。形はどうあれ、動けなければ意味がない。焦凍! 千手! かかってこい! 俺が直々に相手をしてやる!!」
エンデヴァーの全身から、凄まじい炎が噴き出す。
ジムの温度が一気に跳ね上がり、空気が陽炎のように揺らめいた。
轟「行くぞ、千手。」
柱間「うむ!! お手合わせ願おう!!」
轟が右足を踏み込み、巨大な氷壁『穿天氷壁』をエンデヴァーに向けて放つ。
しかし、エンデヴァーは一歩も動かず、ただ炎の熱量だけでその巨大な氷結を一瞬にして蒸発させてしまった。
轟「なっ……! 一瞬で蒸発……!」
エンデヴァー「遅いぞ焦凍! そんな氷では俺の炎は超えられん!! 赫灼熱拳!!」
エンデヴァーの拳から、圧縮された超高熱の炎が放たれる。
轟が咄嗟に氷で防御しようとするが、それよりも早く、柱間が動いた。
柱間「木遁・木錠壁!!」
ドゴォォォォン!!!
柱間の足元から半ドーム状の木製の壁が瞬時に隆起し、轟を覆い隠してエンデヴァーの炎を完全に防ぎ切った。
エンデヴァー「(俺の炎を、ただの木で防いだと!? 燃え尽きないというのか!?)」
柱間「おおおお熱い熱い!! さすがはNo.2ヒーローの炎!! 乾燥した木では少々分が悪いな! ならば!!」
柱間は印を結ぶ。
柱間「木遁・皆布袋(ほてい)の術!!」
地面のタイルを突き破り、巨大な木の手が複数出現し、エンデヴァーを四方から捕獲しようと迫る。
エンデヴァー「小賢しい!! 『ヘルスパイダー』!!」
エンデヴァーの指先から放たれた極細の炎のレーザーが、襲い来る木の手を次々と細切れに切断していく。
柱間「ガハハハ!! お見事!! 実に洗練された技ぞ!! だがエンデヴァー殿! 少々息が上がっておるのではないか!?」
エンデヴァー「ッ……!!」
柱間の指摘通り、連続して高火力の炎を放ったエンデヴァーの体温は急激に上昇し、その動きに僅かな鈍りが生じていた。
自身の炎による「熱の蓄積(オーバーヒート)」。それこそが、エンデヴァーというヒーローの持つ最大の弱点。
柱間「……轟よ! 今ぞ!!」
轟「……! 膨冷熱波!!」
轟が左半身の炎と右半身の氷を同時に放ち、空気を膨張させて爆発的な衝撃波を生み出す。
熱が蓄積していたエンデヴァーは、その衝撃を躱しきれず、後方へと大きく滑り退いた。
エンデヴァー「……ぐっ……!!」
柱間「そこまで!!」
柱間が両手をパンッと叩き、戦闘終了を宣言する。
ジム内の熱気が徐々に収まっていった。
エンデヴァー「……ハァ……ハァ……。なぜ止めた、千手。」
柱間「これ以上は、エンデヴァー殿の体に障るからな! ……エンデヴァー殿、お主の炎は確かに最強クラスぞ。だが、その力は自身の細胞をも焼き尽くしかねない諸刃の剣だ。」
柱間は真剣な眼差しでエンデヴァーに歩み寄り、その肩にポンと手を置いた。
柱間「忍界にも、お主のように強力な火遁を操るうちは一族(マダラなど)がおったが、彼らは皆、自身の『チャクラ(内なるエネルギー)』と『外の自然エネルギー』を調和させる術を知っておった。……エンデヴァー殿、お主も、ただ熱を放出するだけでなく、周囲の空気を吸い込み、己の中で循環させる『仙術』の概念……つまり、呼吸法とエネルギーの還流を意識してみてはどうだ?」
エンデヴァー「……エネルギーの、還流……?」
柱間「うむ! 全てを燃やし尽くすのではなく、熱を体内に留めず、自然の気と調和させるのだ! ……まあ、言葉で言うほど簡単ではないがな! ガハハハ!」
No.2ヒーローに対し、堂々と、しかし理にかなったアドバイスを送る柱間。
エンデヴァーは、その底知れない器の大きさと、武術の深淵を知る言葉に、言い返すことができなかった。
そして柱間は、今度は轟の方を向いた。
柱間「轟よ。お主の氷と炎の連撃、実に見事であったぞ! 体育祭の時よりも、さらに炎への迷いが消えておる!」
轟「……ああ。緑谷が気づかせてくれた。これは、俺の力だと。」
柱間「その通りぞ!! 親父殿の炎を恨む必要はない! あれはお主自身の『熱』であり、お主の魂を燃やす炎だ! 氷の冷たさと炎の熱さ、相反する二つの力を己の内で循環させ、一つの大きな『力』として昇華させるのだ!!」
柱間の言葉は、轟の心にスッと染み込んでいった。
轟「……循環。……わかった、やってみる。」
エンデヴァー「(……俺が何年もかけて教えられなかったことを、この男は、いとも容易く……。)」
エンデヴァーは、複雑な思いを抱きながらも、どこか憑き物が落ちたような顔で、二人の少年を見つめていた。
・市街地 午後 パトロール・
午後になり、エンデヴァー、バーニン、轟、そして柱間の四人は市街地のパトロールへと出ていた。
炎を纏う巨漢のエンデヴァーと、深紅の甲冑を鳴らして歩く柱間のコンビは、街中で異様なほどの存在感を放っていた。
「おい見ろ! エンデヴァーだ!」
「隣にいるの、体育祭の千手柱間じゃないか!?」
「すげぇ! マジでデカい!!」
柱間「おお! 皆の者、こんにちはぞ!! 平和な良き日だな!! ガハハハ!!」
柱間は道行く人々に満面の笑みで手を振り、時には握手に応じている。
その気さくすぎる態度は、近寄りがたいオーラを放つエンデヴァーとは対照的だった。
エンデヴァー「……千手。貴様、少しは緊張感を持て。いつどこからヴィランが襲ってくるか分からんのだぞ。」
バーニン「いいじゃんエンデヴァー! 千手は愛想が良くてファンサービスもバッチリだよ! 私も負けてらんないね!」
そんな和やかな(?)空気が流れていた、その時。
ドゴオオオオオン!!!!!
数ブロック先の交差点で、凄まじい爆発音が響いた。
悲鳴が上がり、黒煙が立ち昇る。
エンデヴァー「ヴィランか!! 行くぞ!!」
轟「わかってる!」
四人は一斉に現場へと急行した。
・事件現場・
現場では、薬物で身体を異常に巨大化させた「巨大ヴィラン(推定20m)」が、交差点のど真ん中で暴れ回っていた。
しかも厄介なことに、ヴィランの巨大な手の中には、逃げ遅れた数人の市民が人質として握られている。
巨大ヴィラン「ぐおおおお!! 近寄るなヒーロー共!! 近寄ったらこのゴミ共を握り潰すぞォ!!」
人質「ひぃぃぃ!! 助けてぇぇぇ!!」
エンデヴァー「チッ……! 人質を取られたか。俺の炎では、人質ごと焼きかねん……!」
バーニン「私も飛び込んで助け出すには、少し距離がありすぎる……!」
轟「俺の氷結なら……いや、ヴィランを刺激すれば握り潰される……。」
プロヒーローですら手出しができず、膠着状態に陥りかけたその時。
柱間が一歩前に出た。
柱間「案ずるなエンデヴァー殿! このような時は、力技ではなく『気を逸らす』のが一番ぞ!」
エンデヴァー「気を逸らすだと? 一体どうやって……」
柱間はニヤリと笑い、おもむろに印を結んだ。
柱間「忍法・ハーレムの術!!!」
ボフンッ!!! ボフンッ!!! ボフンッ!!!
交差点に、大量の白煙が巻き起こる。
煙が晴れた後、そこに現れたのは――。
「「「「うっふ〜ん♡ こっち見てぇ〜ん♡」」」」
なんと、黒いストレート長髪の「超絶妖艶な美女(全裸に見えるが煙で絶妙に隠れている)」が、数十人も出現したのだ!
美女たちは、巨大ヴィランを取り囲むように宙に舞い、とびっきりの色仕掛けポーズを決めた。
巨大ヴィラン「ブッフォォォォォォ!!!??? な、なんだこの美女軍団はァァァ!!!?」
巨大ヴィランは鼻血を噴き出し、完全に思考が停止した。
人質を握っていた手の力が、ふっと緩む。
エンデヴァー「なっ……!? き、貴様、白昼堂々公衆の面前でなんという破廉恥な術を……!!?」
轟「(……千手、またあれをやったのか。)」
バーニン「ギャハハハハ!! なにコレ最高!! 千手、アンタ馬鹿なの!? 天才なの!!?」
柱間「今ぞ轟!! 人質を!!」
轟「……わかってる!!」
轟が氷の滑り台を瞬時に作り出し、力が緩んだヴィランの手から人質たちを安全な場所へと滑り降ろした。
エンデヴァー「(人質は確保した……! ならば!)」
エンデヴァーがヴィランにトドメを刺そうと構えた瞬間。
柱間「俺に任せよ!! ここからは俺の真骨頂ぞ!!」
柱間は美女の術を解き、両手を力強く合わせた。
顔に仙人モードの隈取が浮かび上がる。
柱間「仙法・木遁・真数千手!!!」
ズズズズズズズズズズズズズ!!!!!!
交差点のアスファルトを突き破り、大地が鳴動する。
そして現れたのは、先ほど模型で見たあの姿。
だが、今回はその「圧倒的な実物」であった。
推定1000m。背中に千の手を持つ超巨大な千手観音像。
その巨体が、周囲のビル群を遥かに見下ろし、天を突く。
20mの巨大ヴィランが、まるで豆粒のように見えた。
巨大ヴィラン「ひぃっ……!? なんじゃこりゃあぁぁぁ!!?」
柱間「安心せい! 街は壊さん!」
柱間は真数千手の頭上から、分離ギミックを作動させた。
柱間「木人! 木龍! 行けェ!!」
ズゴォォォン!!
真数千手の頭頂部から、80mの『木人』が分離して交差点へと着地。
その首に巻き付いていた『木龍』が、凄まじいスピードで巨大ヴィランに絡みつき、チャクラ(エネルギー)を吸収し始めた。
巨大ヴィラン「力が……抜ける……!!」
さらに、木人が巨大ヴィランを片手で優しく、しかし絶対に逃げられない力で押さえ込む。
柱間「火影式耳順術・廓庵入鄽垂手(ほかげしきじじゅんじゅつ・かくあんにってんすいしゅ)!!」
木人の掌に「座」の文字が浮かび上がり、巨大ヴィランの背中にピタリと当てられた。
強制的なエネルギーの沈静化。
暴走していたヴィランは、まるで魔法にかけられたようにスヤスヤと眠りに落ち、元のサイズへと戻っていった。
「「「「…………(絶句)」」」」
エンデヴァー、バーニン、轟。
そして、周囲で見ていた市民たちも、言葉を失っていた。
シリアスブレイカーな「お色気の術」からの、神話級の「仙法・木遁・真数千手」による、一切の被害を出さない完璧な制圧劇。
圧倒的な温度差と実力差に、誰もが唖然とするしかなかった。
柱間「ガハハハ!! 終わったぞエンデヴァー殿! 街への被害も最小限だ!!」
エンデヴァー「……あ、ああ……。……見事だ……。(胃が……痛い……。)」
エンデヴァーは、頭を抱えながらも、柱間の規格外の実力を認めざるを得なかった。
・エンデヴァー事務所 宿泊施設・
夕方のパトロールを無事に終え、夜になった頃。一行は事務所内のホテルのような立派な廊下を歩いていた。
エンデヴァー「……千手。今日の働き、悪くなかったぞ。……だが、明日はもっと厳しい現場へ連れて行く。覚悟しておけ。」
柱間「ガハハハ!! 望むところぞエンデヴァー殿!! ……ところで!!」
柱間が、ピタリと足を止め、満面の笑みでエンデヴァーを振り返った。
柱間「今日の夕餉(夕食)は、何ぞ!? 腹が減って力が出んわ!!」
轟「……千手。ここは事務所だ、食事は食堂で……」
柱間「いやいや! せっかくお主の親父殿の下に来たのだ! 職場体験とはいえ、寝食を共にするのも修行の内! ……エンデヴァー殿! よろしければ、お主の家で、家族皆で飯を食おうではないか!!」
エンデヴァー「はぁ!!? き、貴様、何を言っている……! 俺の家だと!?」
轟「……おい、千手。俺の家は……そんな、和気藹々としたものじゃない。……やめておけ。」
轟の顔が僅かに曇る。
冷え切った家庭環境。長兄の不在、母の入院、そして兄弟たちの父への複雑な感情。
だが、柱間はそんな空気を「読まない(あえて読まない)」男だった。
柱間「何を言うか轟!! 飯というものは、大勢で、家族で囲んで食うのが一番美味いのだ!! 忍界でも、里の皆で火を囲んで飯を食う時が一番幸せであったぞ! なあエンデヴァー殿、良いだろう!?」
エンデヴァー「……断る。俺は忙しい……」
柱間「よし! 決まりだな!! 案内してくれ轟!!」
エンデヴァー「おい貴様ァ!!人の話を聞けェ!!俺の家だぞ!!? 己の家のように勝手に決めるなァ!!」
・轟家 食卓・
――そして、現在。
立派な日本家屋である轟家の、広い和室の食卓。
そこには、あり得ない光景が広がっていた。
「チーン……」
空気が、文字通り凍りついている。
食卓には、豪華な寿司や、長女・冬美が作った手料理が並んでいるのだが、誰一人として口を開こうとしない。
仏頂面で腕を組むエンデヴァー。
目を合わせようとしない夏雄。
困惑顔の冬美。
そして、無言で箸を見つめる焦凍。
「轟家」が長年抱えてきた、深く冷たい断絶。それがこの食卓の重苦しい空気の正体だった。
しかし、その完全な氷点下の沈黙を、一人の男が、まるで空気を読まない純度100%の天然ギャグで、平然とぶち壊した。
柱間「うおおおおお!!! この『すし』という食べ物!! 魚がピチピチで実に美味いぞ!!! ガハハハハ!!!」
「「「「ビクッ!?」」」」
あまりのデカい声に、轟家の全員が肩を跳ねさせた。
柱間は全く気にする様子もなく、次々と寿司を口に放り込んでいく。
柱間「おお! この黄色い四角いのは何ぞ!? 甘くて美味い! ……なんだと? 『卵焼き』だと!? 忍界の卵焼きとは随分違うのぉ! 冬美殿! これはお主が作ったのか!? 絶品ぞ!!」
冬美「え? あ、はい……! 口に合ってよかったです……!」
柱間「うむ! 料理が美味い家庭は良い家庭ぞ!! ……おっ、そこの夏雄殿! お主、なかなか良いガタイをしておるな! 何かスポーツでもやっておるのか!?」
夏雄「え、俺? 俺は大学で少し……。ってか、アンタよくこの空気でそんな普通に……」
轟「……おい千手。俺の分の蕎麦まで食うな。」
柱間「すまんすまん! あまりにも美味くてな! ほれ、お主ももっと肉を食え!」
最初は氷のように冷え切っていたはずの轟家の空気が、柱間という「空気を読まない純粋無垢な天然」の暴力的なまでの陽のオーラによって、見事に解凍され、温かい食卓へと変貌していた。
冬美「あはは! やっぱり面白いね千手君! おかわりあるからね!」
夏雄「千手ってすげぇ面白い奴だな! 雄英体育祭の時のあの仏像、マジでヤバかったよ!」
エンデヴァー『(……胃が痛い……。胃薬はどこだ……。)』
食卓の端で、一人仏頂面で腕を組んでいるエンデヴァー。
彼の心境は複雑極まりなかった。
エンデヴァー『(何故、この男はこんなにも俺の懐に土足で踏み込んでくるのだ……。俺が家族に作った溝は、こんなに簡単に埋まるものではないはずだ。……だが……)』
エンデヴァーは視線を向ける。
楽しそうに笑う冬美。
自分には決して向けないような無邪気な笑顔を見せる夏雄。
そして、少し呆れながらも、不満のない顔で食事を進める焦凍。
エンデヴァー『(……俺を見捨てるどころか、父親としての在り方を、言葉ではなくその背中で説いてくる……。焦凍も、笑っている……。……悪くない、のか……?)』
エンデヴァーは、柱間の純粋無垢さに振り回されながらも、彼を「唯一無二の戦友」であり「唯一無二の専属カウンセラー」として、少しずつ心を開き始めていた。
柱間「おお!そうだ! この際だ!マダラと扉間にも連絡してみるか!」
柱間がふと、ポケットからスマートフォンを取り出し、ビデオ通話のアプリを起動した。
《prrrr……》
画面が三分割され、それぞれの顔が映し出された。
柱間「おおおお!! マダラか!! 扉間も!! 元気にしておるかー!!?」
マダラ『……フン。相変わらず騒がしい奴らだ。……柱間、貴様は一体何をしに行っているんだ。』
画面の向こうのマダラは、どこか見知らぬ豪華な個室(リューキュウ事務所)で、抹茶パフェを食べていた。
扉間『……兄者、声がデカい。マイクの音量を下げろ。』
そして扉間は、ホークス事務所の静かな部屋で、常闇と共に真面目に書類を整理しているようだ。
柱間「うむ! 今、轟家で夕餉をご馳走になっておるところぞ! いやぁ〜、冬美殿の料理は絶品でな! 夏雄殿ともすっかり意気投合したわ! ガハハハ!」
マダラ『(……エンデヴァーの野郎、胃薬でも飲んでそうな顔だな。)……まあいい。平和そうで何よりだ。扉間、そっちはどうだ。』
扉間『こちらは順調だ。今日は保須市の視察と情報収集が主だった。ホークスの情報網は驚異的だな。……常闇とも、連携の確認を済ませた。』
常闇『……千手扉間の指導、そしてホークスの指導、合理的かつ的確だ。深淵の知恵……精一杯学ばせていただく。』
柱間のスマホ越しに、三人の伝説の忍による情報交換が始まる。
マダラ『……なるほどな。で、本題だ。最近、保須市に出没しているという「ヒーロー殺し」……ステイン。情報は掴めたか?』
扉間『ああ。ホークスと共に視察したが、街は不気味なほど静かだった。だが、路地裏に残された微かな殺気……間違いない。奴は、この保須市に潜んでいる。』
柱間「うむ。飯田もこの近くにおるはずだ。マニュアル殿の事務所だったな。……今朝の駅でのあやつの瞳、少し気にかかる。」
扉間『……危ういな。奴の殺気、隠しきれていない。兄の仇……復讐に走る可能性が高い。』
マダラ『フン。あの真面目眼鏡が私情で動くか。……青いな。』
柱間「マダラ、そう言うな。家族を傷つけられた痛み……俺たちもよく知っておるだろう。」
その言葉に、画面越しのマダラと扉間が、一瞬沈黙した。
かつての戦国時代。憎しみの連鎖の中で、互いの兄弟を殺し合った血塗られた歴史。
復讐が何を生むか、彼らはこの世界の誰よりも深く、痛いほどに知っているのだ。
マダラ『……チッ。分かっている。……おい柱間、扉間。もし飯田が暴走し、奴と接触したら……』
柱間「うむ! 俺が止める! エンデヴァー殿と共に、必ず守り抜くぞ!」
扉間『俺も近くにいる。飛雷神のマーキングは市内の要所に済ませてある。すぐに駆けつける手筈は整っている。』
マダラ『……いいだろう。俺も、有事の際はリューキュウを連れて向かう。……あの「ヒーロー殺し」とやらが語る信念……、一度拝んでみたい気もするしな。』
三人の間で、明確な意思が統一される。
現代のヒーロー社会を揺るがす悪意に対し、伝説の忍たちが静かに牙を研ぐ。
柱間「ではな! 明日も気をつけて励むのだぞ!」
通話を切り、柱間は再び食卓へと向き直った。
柱間「さて! 飯の続きぞ!! 轟、その天ぷら一つ貰うぞ!」
轟「……おい千手、それは俺が楽しみに取っておいた……」
エンデヴァー「……千手。」
不意に、エンデヴァーが重い口を開いた。
柱間が箸を止め、彼を見る。
エンデヴァー「……貴様ら、何か厄介事に首を突っ込むつもりか?」
柱間はニカっと笑い、エンデヴァーの目を真っ直ぐに見つめ返した。
柱間「エンデヴァー殿。ヒーローとは、助けを求める者がおれば、厄介事であろうと何であろうと、真っ先に飛び込んでいく者のことではないのか?」
エンデヴァー「……フン。」
エンデヴァーは鼻を鳴らし、少しだけ口角を上げた。
エンデヴァー「……もしその時が来たら、俺も出るぞ。貴様だけに、良い格好はさせん。」
柱間「ガハハハ!! 頼もしいぞ、No.2ヒーロー!!」
木漏れ日のような温かな笑い声が、夜の轟家に響き渡る。
復讐の闇が迫る保須市。
だが、この太陽のような男がいる限り、どんな絶望も、決して彼らを飲み込むことはできないだろう。
ということで、第三十七話でした!如何でしたでしょうか?悩みに悩んだ結果、柱間視点の職場体験の深掘りも欲しかったため、エンデヴァー事務所での職場体験初日の回を別で執筆してみた限りです!あと、冬美や夏雄、バーニン、オニマー、キドウのセリフの言い回しが原作と照らし合わせて合っているかが余りわからないため、もしも食い違いがありましたら遠慮なく作者へお伝えください!まあ辛口は流石に駄目ですが笑。
さて、次話の第三十八話についてですが、次話の内容は基本的には職場体験2日目とステイン戦がある保須市の動乱が起こる前の不気味な静けさ的なものを執筆すると思いますので、次話も楽しみにしてお待ちください!
また、お気に入り登録や質問、評価も是非お待ちしておりますが、特に感想を、無理にとは言いませんが、時間があれば必ず頂けると、作者の小説制作のやる気向上などへと変わりますので、よろしければ是非よろしくお願いします!ですが、理不尽な誹謗中傷などの行為は流石にやる気やモチベーションが下がりますのでそれらは御法度です。何卒ご理解よろしくお願いします!では、第三十八話にて!