千手最強の忍とうちは最強の忍は、個性と英雄が蔓延る世へと生まれ落ちる 作:天叢雲剣を捧げるスサノヲ
・I・アイランド 制御塔下層 メンテナンスルート入口・
科学の楽園は、鋼鉄の檻へと変貌した。
夜空に聳えるI・アイランド制御塔。
それは先ほどまで、白く美しい未来都市の象徴であった。
だが今、その外装は黒々とした金属に覆われ、配管、壁材、隔壁、防衛装置までもが歪に絡み合い、巨大な鋼鉄要塞のような姿へ変貌しつつあった。
ウォルフラムの個性。
金属操作。
そして、奪われたI・アイランドの中枢制御。
その二つが組み合わさったことで、島そのものが敵の武器へと変えられていた。
その要塞の下層。
非常灯の赤い光が明滅するメンテナンスルート入口に、緑谷出久たちは立っていた。
緑谷「……ここを突破すれば、制御塔の中層へ行けるんだよね?メリッサさん?」
メリッサ「はい。だけど、通常時でもここは技術者以外立ち入り禁止の区画です。今はシステムが敵に掌握されているので、どこに防衛機構が残っているか分かりません。」
飯田「つまり、道そのものが罠になっている可能性があるということか。」
轟「厄介だな。」
爆豪「罠ごと吹っ飛ばしゃいいだろうが。」
ミト「勝己、それでは制御塔の内部構造が損傷します。下手をすれば、この区画そのものが崩落します。」
爆豪「分かっとるわ!! 言ってみただけだ!!」
耳郎「今の言い方、絶対本気だったでしょ。」
瀬呂「うん。本気だった。」
峰田「オイラ、爆豪が味方で本当に良かったって今だけ思ってる……。」
爆豪「あ?」
峰田「すみませんでしたァ!!」
通形ミリオは、重い空気を吹き飛ばすように明るく笑った。
通形「大丈夫! 俺たちなら行ける! 一人じゃ無理でも、みんなでなら突破できる!」
天喰「ミリオ……その前向きさ、眩しすぎて俺は影になりたい……。」
波動「天喰君、影になったら常闇君と仲良くなれそうだね! 不思議!」
天喰「そういう意味じゃなくて……。」
ミト「環、あなたの個性はこの狭い通路でも非常に有効です。落ち着いて、必要な場面で支えてください。」
天喰「うずまきさん……うん。頑張る……。」
緑谷は、前方の暗い通路を見つめた。
壁面には無数の配線。
天井には監視カメラ。
床には、普段なら点検作業員が通るための狭い金属通路。
その奥からは、低く、不気味な駆動音が響いていた。
ギギギギギ……。
麗日「な、何の音……?」
蛙吹「機械が動いている音ね。ケロ。」
障子「複数の金属反応。前方、天井、壁面。囲まれている可能性がある。」
八百万「ならば、まずは索敵と防御を優先しましょう。私が防弾盾と照明具を創造します。」
ポンッ!!
八百万の腕から、折り畳み式の防弾盾と小型ライトが生み出される。
葉隠「じゃあ私、透明だから先に――」
相澤の通信音声『葉隠、一人で先行するな。透明でも赤外線や圧力センサーには引っかかる可能性がある。』
葉隠「先生、通信越しでも怖い!」
耳郎「でも正論。」
メリッサ「この区画には温度差センサーもあります。透明化だけでは完全には避けられません。」
葉隠「うう……透明なのに見つかる時代……。」
芦戸「科学ってすごいけど嫌だね!」
緑谷「まずは隊列を組もう。飯田君と切島君が前衛、防御。轟君とうずまき先輩が広範囲制御。耳郎さんと障子君が索敵。メリッサさんは中央で守る。かっちゃんは――」
爆豪「俺に指図すんなクソナード!!」
緑谷「でも、かっちゃんの爆破は接続部の破壊や敵の体勢崩しに向いてるから、なるべくピンポイントで――」
爆豪「言われるまでもねェ!!」
轟「つまり、緑谷の案に従うんだな。」
爆豪「半分野郎てめェも燃やすぞ!!」
飯田「爆豪君! 今は協力が最優先だ!!」
爆豪「うるせぇメガネ!!」
通形「うんうん、皆、元気で良いね!」
天喰「ミリオ……元気って言葉で片づけていいのか……?」
その瞬間。
通路奥の壁が開き、無数の小型防衛ユニットが姿を現した。
球状の機体。
下部には銃口。
側面には捕獲用ワイヤー。
その全てが、赤いセンサー光をこちらへ向けている。
メリッサ「防衛ドローン……! 敵に制御されています!」
緑谷「来る!」
ドドドドドドドドッ!!
一斉射撃。
切島「硬化ァ!!」
飯田「防御姿勢!!」
切島が前に出て弾丸を受ける。
飯田はメリッサの前に立ち、八百万の盾と共に弾道を遮る。
轟が一瞬で床に氷を走らせ、ドローンの下部を凍結させた。
轟「動きを止める。」
爆豪「邪魔だ半分野郎!!」
轟「今なら撃ち落とせる。」
爆豪「分かっとるわァ!!」
ドガガガガガッ!!
爆豪の小規模爆破が、氷で固定されたドローンの銃口だけを的確に破壊する。
広範囲爆破ではない。
壁も床も壊さない。
制御部分と武装だけを吹き飛ばす、明らかに抑えた爆破。
耳郎「爆豪、ちゃんと精密にやってる。」
瀬呂「やればできるじゃん。」
爆豪「うるせェ!!」
ミト「良い判断です。」
爆豪「褒めんな!!」
波動「爆豪君、褒められると怒るんだ! 不思議!」
緑谷は壁を蹴り、フルカウルで跳躍した。
緑谷「ワン・フォー・オール、フルカウル!」
彼の蹴りが、最後のドローンの制御核を打ち抜く。
墜落するドローンを、麗日が無重力化して受け止めた。
麗日「落ちたら音鳴るかもしれんし、浮かせとくね!」
蛙吹「ナイスよ、お茶子ちゃん。ケロ。」
峰田「よし! じゃあオイラも――」
瀬呂「ハイハイ、お前は敵が来るまで待機な。」
峰田「扱いがひどい!!」
砂藤「でも妥当だ。」
障子「前方、さらに大型反応。敵兵ではない。自律型の金属兵器だ。」
メリッサ「そんな……防衛用の重装甲ユニットまで……!」
ズシン……ズシン……ズシン……!!
通路の奥から、二体の大型警備ロボットが現れた。
全身が厚い合金で覆われ、腕部には電磁拘束砲。
背部には小型ミサイルポッド。
本来なら暴走個性者や外部襲撃者を鎮圧するための最高級防衛ユニットである。
爆豪「ハッ、ようやく歯応えありそうなのが来たじゃねェか。」
ミト「破壊しすぎないでください。制御を奪われているだけなら、元は島の設備です。」
爆豪「注文多すぎんだろ!!」
緑谷「うずまき先輩、武装を封じられますか?」
ミト「できます。ただし、動力部に直接触れる必要があります。」
通形「なら、俺が通る!」
通形ミリオが床へ沈む。
透過。
次の瞬間、彼は大型ユニットの背後へ抜けた。
通形「POWER!!」
背部装甲へ拳を叩き込む。
しかし、重装甲ユニットは揺らぐだけで止まらない。
通形「硬いね!」
天喰「ミリオ、下がって……!」
天喰の腕が巨大な甲殻へ変化し、さらに蛸の触手が絡みつく。
天喰「食環・蛸甲殻拘束……!」
ユニットの片腕を押さえる。
その隙にミトの金剛封鎖が飛んだ。
ミト「金剛封鎖。」
ジャララララララッ!!
黄金の鎖が装甲の隙間に滑り込み、内部の駆動部へ絡みつく。
火花が散った。
メリッサ「すごい……! その鎖、物理拘束だけじゃなくて、エネルギーの流れも抑えているんですか!?」
ミト「チャクラの流れを縛る術ですが、機械の動力にもある程度干渉できます。完全ではありませんが、動きを鈍らせることは可能です。」
緑谷「今だ!」
爆豪「言われなくても!!」
轟「接続部を冷却する。」
爆豪と轟が同時に動く。
轟が関節部を急速冷却し、爆豪がその一点だけを小規模爆破で砕く。
バキィィン!!
一体目の脚部が機能停止。
そこへ飯田が突撃する。
飯田「レシプロバースト!!」
強烈な蹴りが、ユニットの胸部装甲を打ち抜く。
内部制御核が露出した瞬間、緑谷が跳んだ。
緑谷「デラウェアスマッシュ・エアフォース!」
圧縮された空気弾が制御核だけを破壊する。
大型ユニットは沈黙した。
麗日「あと一体!」
八百万「電磁拘束砲が来ます!」
ギィィィン!!
二体目の砲口が光る。
だが、その前に耳郎が床へイヤホンジャックを突き刺した。
耳郎「そこ、配線あるでしょ……!」
耳郎「ハートビートファズ!!」
振動が内部配線へ流れ込み、ユニットの照準が乱れる。
葉隠「今なら見えないパンチ!」
葉隠が透明のまま懐へ潜り込み、センサー部へ強烈な一撃を叩き込む。
芦戸「酸で足元だけ!」
酸が床との接地部を溶かし、ユニットのバランスが崩れる。
瀬呂「固定する!」
瀬呂のテープが両腕を壁へ縛りつけ、峰田のモギモギが脚部へ貼り付く。
峰田「オイラ、今日ほんとに働いてる!! 見てる!? 世界の美女ヒーローたち!!」
蛙吹「峰田ちゃん、集中。ケロ。」
口田「メンテナンスロボさんたちよ、停止信号を……!」
小型メンテナンスロボたちが、口田の声に応じてユニットの足元へ集まり、非常停止ポートを開く。
メリッサ「そこです! そのポートにアクセスできれば!」
八百万「端末を!」
八百万が即席の接続端末を創造し、メリッサへ渡す。
メリッサ「ありがとう!」
メリッサが端末を繋ぐ。
数秒。
SYSTEM OVERRIDE
二体目の重装甲ユニットが停止した。
緑谷「やった……!」
メリッサ「皆さん……すごいです。本当に、全員が自分の役割を分かって動いている……。」
爆豪「感心してる暇ねェぞ。上行くぞ。」
轟「同感だ。敵は時間を稼いでいる。」
ミト「制御塔の上層で、何か大きな準備をしている可能性があります。」
通形「なら急ごう! 皆、行くぞ!」
彼らは再び走り出した。
若き英雄たちは、鋼鉄の要塞の腹の中を、確かに前へ進んでいた。
・I・アイランド 技術展示区画・
同時刻。
技術展示区画では、千手扉間と発目明、常闇踏陰、そしてB組の面々が補助回線の奪還と維持に奔走していた。
非常灯の赤。
壁面モニターのノイズ。
時折響く警報音。
そして、端末を叩く発目の異常な速度のタイピング。
発目「敵の侵入ルート、複数確認!! 制御塔だけではなく、データサーバー区画にもアクセスが走っています!!」
扉間「目的は島の制御だけではないな。研究データの奪取も並行している。」
常闇「科学の宝物庫を狙う盗賊か。」
物間「ふふ……しかし残念だったね! ここには雄英B組がいる! A組だけが事件を解決すると思ったら大間違い――」
拳藤「物間、後ろ。」
物間「え?」
天井パネルが弾け、敵の小型ドローンが降下してくる。
バシュッ!!
鎌切が腕の刃でドローンの射出口だけを切り落とす。
鎌切「おっと、今のは峰打ちみたいなもんだぜ。」
円場「空気壁!」
円場の空気壁が銃弾を止める。
鉄哲「オラァ!!」
鉄哲が鋼鉄化した拳でドローンを叩き落とす。
宍田「後方より二体! 私が抑えますぞ!」
宍田がビースト化して敵の進路を塞ぐ。
小森「キノコちゃん、配線には生やさないように……でも敵の足元には生やすノコ!」
足元に一気にキノコが生え、武装兵たちが滑る。
敵部下「うわっ!? 何だこれ!?」
柳「その銃、少しウラめしいから浮かせる。」
柳レイ子がポルターガイストで銃器を宙へ浮かせ、黒色支配が非常灯の影へ潜って背後から拘束する。
黒色「黒の中なら、俺の領域だ。」
泡瀬「武器を床に接合!」
凡戸「足元、固めるよ!」
庄田「追撃、遅れて来るぞ。」
庄田のツインインパクトが、先ほど叩いた壁面へ遅れて衝撃を起こし、敵の逃げ道を塞ぐ。
取蔭「右奥、まだ一人隠れてる!」
取蔭の分離した目が、物陰の敵を見つける。
角取「角砲(ホーンホウ)、行きマース!」
角取ポニーの角が飛び、敵の手元の端末を弾き飛ばした。
小大「ん……、障害物、大きくする。」
小大唯が小さな箱を巨大化させ、敵の進路を完全に塞ぐ。
鱗「鱗射出!」
鱗飛竜の鱗が、敵の脚部装甲の関節だけを撃ち抜く。
塩崎「争いを広げることは望みません。ですが、悪しき行いを止めるためならば。」
塩崎の蔓が、敵を優しく、しかし逃れられないように拘束した。
拳藤「よし、制圧完了!」
物間「ふふん! どうだ、これがB組の総合力――」
扉間「物間、喋る暇があるなら敵の端末を拾え。」
物間「はい。」
拳藤「素直だ。」
発目「扉間さん!! 敵が抽出しているデータの中に、デヴィット・シールド博士の研究データがあります!! それと……オールマイトさんの身体補助関連資料!!」
常闇「平和の象徴を支えるための秘宝か。」
扉間「やはりそれが本命か。」
発目「さらに、柱間さんのチャクラ治癒記録、柱間細胞の解析情報、マダラさんの写輪眼出力記録、ナオリさんの神通力測定資料も狙われています!!」
物間「待ちたまえ。それはもう世界の危機では?」
骨抜「悪用されたら洒落にならないな。」
取蔭「ナオリの大自然操作データとか、絶対盗ませちゃ駄目でしょ。」
小森「大隕石とか大津波とか、名前だけで怖いノコ……。」
柳「そんなものまで盗まれたら、全然ウラめしくない。」
扉間の目が鋭くなる。
扉間「発目。敵のデータ抽出経路を特定しろ。」
発目「もうやってます!! ただ、主回線が敵に握られているので完全遮断は難しいです!!」
扉間「ならば偽データを混ぜる。」
発目「偽データ?」
扉間「敵が欲しがる情報に見せかけた罠を流す。術式構造を真似た無意味な数列、チャクラ理論に見せかけた逆流コード、ナオリの熱線制御式に見せかけた自己破壊性の暗号だ。」
発目「うわぁ!! 卑劣で合理的です!! 最高です!!」
物間「褒め言葉なのか、それは?」
拳藤「扉間にはたぶん褒め言葉。」
常闇「闇に毒を流す策……まさに忍。」
扉間「敵に渡る情報は、こちらが選ぶ。戦とはそういうものだ。」
彼は指を組み、冷静に告げた。
扉間「B組、ここからは防衛ではなく逆侵攻だ。技術区画から敵の情報網を食い破る。」
鉄哲「おう!!」
拳藤「了解。」
骨抜「やろうか。」
小森「キノコちゃんたちも頑張るノコ!」
柳「敵の端末、ウラめしいくらい壊してあげる。」
物間「ふふ……いいだろう。A組だけに良いところは持っていかせない!」
扉間「その意気は良い。だが暴走するな。」
物間「……努力するよ。」
・I・アイランド ウェルカムパーティー会場・
ウェルカムパーティー会場は、依然として鋼鉄の檻だった。
招待客たちは、柱間の木遁によって作られた避難樹壁と、マンダレイのテレパス誘導、トップヒーローたちの支援によって、少しずつ安全区画へ移動していた。
しかし、会場内の防衛システムは断続的に起動し続ける。
金属アーム。
拘束リング。
警備ドローン。
自動砲台。
それらが、ウォルフラムの金属操作によって歪に強化され、一般客へ向かうたび、ヒーローたちは全力を出せないまま防ぎ続けていた。
クラスト「シールド!!」
ガギィン!!
クラストの盾が銃撃を受け止める。
ウォッシュ「ウォッシュ!!」
泡が子どもたちを包み、衝撃から守る。
ベストジーニスト「焦りは糸の乱れ。落ち着きたまえ。」
彼の操る繊維が、逃げ遅れた招待客の身体を優しく支え、安全な場所へ運ぶ。
エッジショット「内部機構、破壊。」
紙のように薄くなったエッジショットが金属アームの隙間へ潜り込み、内部から停止させる。
エンデヴァー「炎熱、収束。」
エンデヴァーは巨大な炎を放たない。
火力を一点に絞り、金属装置の接続部だけを焼き切る。
ホークス「いつもより繊細ですね、エンデヴァーさん。」
エンデヴァー「黙れ。」
ホークス「はいはい。」
ミルコ「チッ、思いっ切り蹴れねェのが腹立つな!」
リューキュウ「ミルコ、天井と床を壊さない範囲でお願い。」
ミルコ「分かってるって!」
ドゴォッ!!
ミルコの蹴りが、金属ユニットの脚部だけを粉砕する。
Mt.レディ「私、大きくなれないの本当にストレスなんだけど!」
シンリンカムイ「ならば小回りで支援を。私の樹木で避難路を補強する。」
ギャングオルカ「音波で威嚇するにも一般客が近すぎる。面倒な状況だ。」
デステゴロ「拳で殴れねぇ位置に人がいると、やりづれぇな。」
ヨロイムシャ「守る戦こそ、ヒーローの真価よ。」
ピクシーボブ「ねこねこねこ! こういう時こそ、皆で支えるのね!」
ラグドール「あちきのサーチで逃げ遅れ確認! 右奥、親子が二人!」
虎「我が行く。」
マンダレイ『右奥の親子、虎が向かいます! 周囲の方々は道を開けてください!』
混乱は続いている。
だが、絶望ではなかった。
なぜなら、そこにはヒーローがいた。
柱間は会場中央で両手を合わせたまま、周囲に木遁を展開し続けていた。
柱間「木遁・連柱家の術!!」
床を破壊しないよう、既存の隙間から木材を組み上げ、簡易避難小屋を生み出す。
衝撃避け。
休息所。
子どもたちの一時避難場所。
その全てを、彼は一瞬で作り上げた。
リカバリーガール「まったく、便利すぎるねぇ。だが助かるよ。」
柱間「ガハハハ!! 俺は壊すより作る方が得意ぞ!!」
オールマイト「千手少年……君の力は、本当に人を安心させる。」
柱間「おお! オールマイト殿にそう言われると照れるぞ!」
しかし、その隣でデヴィット・シールドは、顔色を失っていた。
オールマイト「デイブ。」
デヴィット「トシ……私は……。」
オールマイト「今は皆を守る。話は後で聞く。」
デヴィット「違うんだ……聞いてくれ、トシ……。」
柱間は静かに振り向いた。
柱間「デヴィット殿。今、言わねばならぬことか?」
デヴィット「……ああ。」
オールマイトの表情が変わる。
デヴィットは、震える手で自分の胸を押さえた。
デヴィット「この事件は……私が招いた。」
空気が、凍った。
リューキュウ「……どういうこと?」
エンデヴァー「説明しろ。」
ホークス「それ、かなり重い言葉ですよ。」
デヴィットは目を伏せた。
デヴィット「私は……トシの身体を、どうにかしたかった。彼の力が衰えていくことを、ただ見ていることができなかった。かつて彼を支えた科学者として、友人として……。」
オールマイト「デイブ……。」
デヴィット「私は新型の個性増幅装置を開発した。だが、危険性が高すぎるとして、研究は封印された。スポンサーも、島の管理側も、これ以上の使用を認めなかった。」
リカバリーガール「当然だね。増幅装置なんて、使い方を誤れば身体が壊れる。」
デヴィット「分かっていた……分かっていたんだ。それでも、私は諦められなかった。」
彼の声は、罪悪感に沈んでいた。
デヴィット「装置を外部から奪われたように見せかけ、後で回収する。そんな芝居を計画した。誰も傷つけない。ただ、装置を取り戻すだけのはずだった。」
ホークス「……協力者は?」
デヴィット「助手のサムだ。だが……彼が接触した相手が、ウォルフラムだった。彼らは、ただの請負人ではなかった。」
エンデヴァー「愚かな。」
その一言は、鋭かった。
デヴィットは何も言い返せない。
オールマイト「デイブ……なぜ、私に相談してくれなかった。」
デヴィット「君は、いつも笑っていた。身体が壊れても、平和の象徴であろうとしていた。私は……その君を、見ていられなかった。」
柱間は、静かにデヴィットを見つめた。
柱間「友を救いたい気持ちは分かる。」
デヴィット「……。」
柱間「だが、友に黙って道を誤れば、その友を最も傷つけることになる。」
オールマイトは、拳を握った。
オールマイト「デイブ。君の気持ちは嬉しい。だが、私は、君に罪を背負わせたかったわけじゃない。」
デヴィット「トシ……。」
リューキュウ「話は後でちゃんと聞く。今は、あなたも守る対象よ。だけど、逃げないで。自分がしたことから。」
デヴィットは、ゆっくりと頷いた。
デヴィット「……分かっている。」
その瞬間、会場のモニターが再び起動した。
ウォルフラム『いい告白だったな、博士。』
デヴィット「ウォルフラム……!」
ウォルフラム『だが遅ぇ。装置はもう俺の手の中だ。あとは最終認証だけだ。博士、お前の生体キーをもらいに行く。』
オールマイト「させん!!」
ウォルフラム『動くなよ、オールマイト。会場の空調制御を人質に取っていることを忘れるな。』
モニターが切れる。
デヴィットの顔が蒼白になる。
相澤「博士を守れ。敵はここへ来るか、あるいは拉致用の機構を送る。」
柱間「任せろ。」
彼の声は静かだった。
だが、その奥にある怒りは、先ほどまでより遥かに深い。
柱間「友の想いを弄ぶ者は、俺が許さん。」
・I・アイランド 外壁上空・
夜空。
黒い海。
鋼鉄化する制御塔。
そして、それを取り巻く防衛ドローンの群れ。
その空を、ナオリが舞っていた。
現在の姿は強縮小化。
全高3m強。
翼幅5m強。
本来の全高10m、翼幅20mという神話級の姿からすれば小さい。
だが、空中機動にはむしろ適した姿だった。
その背に立つのは、うちはマダラ。
黒い正装風和装の袖が風に靡き、永遠の万華鏡写輪眼が夜の中で赤く輝いている。
ナオリ『主様。右方より高速誘導弾六。左方より捕獲網三。上方よりレーザー照準。下方に一般居住区のガラス面がございます。大きく回避すると破片被害が発生する可能性があります。』
マダラ「ならば、避けずに落とす。」
ナオリ『承知いたしました。』
ナオリの瞳が青白く輝く。
テレキネシス。
誘導弾の軌道が、ほんの数度だけずれる。
それだけで、六発のミサイルは互いに衝突し、空中で爆発した。
ドドドドドォン!!
爆風が広がる直前、ナオリが翼を軽く振る。
大暴風ではない。
ごく小さな風圧操作。
爆風だけを上空へ逃がす。
マダラ「上出来だ。」
ナオリ『ありがとうございます。ですが、まだ多く残っております。』
マダラ「面倒だな。」
彼はナオリの背から跳び、外壁に着地する。
足裏にチャクラを纏わせ、垂直の壁面を疾走。
迫る捕獲網を写輪眼で読み、最小限の体捌きでかわす。
マダラ「火遁・鳳仙火の術。」
小さな火球が複数放たれる。
それは豪火滅却のような広域破壊ではない。
ドローンの制御部だけを焼き切る精密な火遁。
ボボボボンッ!!
防衛ドローンが次々と沈黙していく。
だが、ウォルフラムの通信が割り込む。
ウォルフラム『うちはマダラ。随分と器用な真似をするじゃねぇか。もっと派手に燃やしたらどうだ?』
マダラ「安い挑発だ。」
ウォルフラム『お前の力なら、この塔ごと俺を吹き飛ばせるんだろ? 何故やらない? 人質が怖いか?』
マダラ「恐怖ではない。」
彼は外壁を蹴り、空中へ跳ぶ。
マダラ「これは選択だ。」
ナオリが滑るように下へ入り、マダラを背で受け止める。
マダラ「壊すことしかできん貴様には分からんだろうがな。」
ウォルフラム『ハッ。悪党が説教か?』
マダラの瞳が冷たく細まる。
マダラ「悪党だから分かるのだ。貴様は悪ではない。ただの盗人だ。欲に従い、人質を盾に取り、力ある者に勝った気でいる小物に過ぎん。」
ウォルフラム『……言ってくれる。』
マダラ「気に障ったか? ならば覚えておけ。悪には美学がいる。貴様にはそれがない。」
通信が一瞬沈黙した。
ナオリ『主様。敵の通信波に乱れが発生しました。感情の揺れと推測します。』
マダラ「心が狭いのだろう。」
ナオリ『ウォルフラムという者は、主様をかなり警戒しております。挑発により判断を鈍らせることは有効かと。』
マダラ「貴様、やはり扉間に似てきたな。」
ナオリ『合理的なだけでございます。』
その時、制御塔外壁から巨大な金属槍が無数に伸びた。
ギュガガガガガガッ!!!!
マダラ「来たか。」
ナオリ『主様、上昇します。』
マダラ「いや、下へ潜れ。」
ナオリ『承知いたしました。』
巨大な金属槍が空を裂く。
ナオリはそれを上ではなく下へ潜り込むことで避け、翼の端で金属槍の側面を軽く叩く。
天魔の剣羽根。
金剛石以上の硬度を誇る翼骨が、金属槍のバランスを崩す。
マダラは大軍配を振るった。
ガギィィン!!
金属槍の根元が砕け、海へ落ちる前にナオリのテレキネシスで軌道を変え、無人の外洋へ投げ捨てられる。
マダラ「島へ落とすな。」
ナオリ『はい。』
彼らは圧倒的だった。
だが、決して大技は使わない。
大暴風も、大落雷も、大津波も、大火災も、大地震も、大吹雪も、大隕石も。
発熱器官による4000℃熱線も、広域火炎放射も。
全て封じている。
それでも、空は少しずつ解放されていく。
ウォルフラム『……面倒な鳥だ。』
マダラ「籠の鳥ではなかったな。」
ナオリ『空は、私の領域です。』
・I・アイランド 制御塔中層・
緑谷たちは、制御塔中層へ辿り着いた。
だが、そこはすでにウォルフラムの個性によって迷宮と化していた。
壁が動く。
床がせり上がる。
天井から金属杭が降る。
通路が閉じ、別の通路が開く。
メリッサ「こんな構造、元の制御塔にはありません……!」
轟「金属で内部を作り替えているのか。」
爆豪「鬱陶しい。」
飯田「隊列が崩れる! 全員、互いの位置を確認しよう!」
耳郎「右、敵! 左、壁が動いてる!」
障子「後方にも金属反応。挟撃される。」
ミト「私が壁を止めます。」
ミト「金剛封鎖。」
黄金の鎖が左右の壁へ突き刺さり、閉じようとする金属壁を力ずくで固定する。
ギギギギギギギッ!!
ミト「……重いですね。」
波動「ミトちゃん、大丈夫!?」
ミト「問題ありません。ですが、長くは止められません。」
緑谷「急ごう!」
敵の強化兵が三方向から現れる。
装備は先ほどの部隊よりも重い。
腕部に金属盾。
背中に推進装置。
脚部には衝撃吸収機構。
完全に雄英生の接近戦を想定した装備である。
敵隊長「これ以上は進ませねぇ!」
爆豪「何度も同じこと言ってんじゃねェよ!!」
爆豪が飛び込む。
だが、敵の盾が爆破の衝撃を吸収した。
爆豪「チッ!」
敵隊長「爆破対策済みだ!」
轟「なら、熱差で歪ませる。」
轟が盾の片側を氷結させ、反対側へ炎を当てる。
急激な温度差で金属盾が軋む。
緑谷「かっちゃん!」
爆豪「分かってんだよ!!」
爆豪の爆破が、歪んだ盾の接合部を吹き飛ばす。
バキィィン!!
敵隊長「なっ……!」
緑谷が踏み込み、蹴りで敵を壁へ叩きつけた。
通形「いい連携!」
天喰「ミリオ、右……!」
天喰の触手が右から迫る敵を絡め取り、通形が透過して背後から拳を入れる。
通形「POWER!!」
波動は上空からねじれる波動を放ち、敵の推進装置を乱す。
波動「飛ばさないよー!」
八百万「捕縛具、創造します!」
瀬呂「俺が巻く!」
八百万が作り出した強化拘束具を、瀬呂がテープで敵へ巻き付ける。
峰田「そしてオイラのモギモギで固定!!」
敵兵「取れねぇ!?」
芦戸「床の金属だけ溶かす!」
蛙吹「上から来る敵は任せて。ケロ。」
蛙吹が舌で天井から降りてきた敵の腕を絡め、尾白が体術で膝を崩す。
尾白「ここだ!」
切島「漢の盾!!」
敵の突進を切島が受け止める。
砂藤「糖分全開!!」
砂藤の拳が敵の装甲をへこませる。
葉隠「透明奇襲!」
葉隠の見えない一撃がセンサーを叩き割る。
青山「輝きは、暗闇でも道を示す☆」
青山のレーザーが、奥の罠センサーを焼き切る。
口田「小型ロボさんたちよ、非常停止レバーをお願いします……!」
メンテナンスロボたちがちょこちょこと走り、閉じかけた隔壁の停止レバーを引いた。
メリッサ「皆さん、本当にすごい……!」
緑谷「メリッサさん、次はどっちですか!?」
メリッサ「左の非常階段……でも、そこは今、金属で塞がれて……!」
ギギギギギギッ!!
目の前の非常階段が、巨大な金属塊で塞がれていた。
爆豪「邪魔だ。」
轟「待て爆豪。爆破だと階段ごと崩れる。」
ミト「ならば、中心だけを固定し、周囲を剥がします。」
ミトの金剛封鎖が金属塊へ絡みつく。
そこへ緑谷が構える。
緑谷「出力を抑えて……中心だけ!」
爆豪「クソデク、合わせろ。」
緑谷「うん!」
轟「俺が冷やす。」
三人の視線が合った。
轟の氷が金属塊の表面を急冷する。
爆豪の小爆破が外側に亀裂を入れる。
緑谷の圧縮空気弾が中心を撃つ。
バキィィィィン!!
金属塊が崩れ、ミトの鎖が破片を押さえ、誰にも当てずに床へ落とす。
飯田「見事だ!」
爆豪「褒めてんじゃねェ!! 早く行け!!」
緑谷「うん!」
彼らは非常階段へ雪崩れ込む。
上層は、もう目前だった。
・I・アイランド 地下制御区画・
ウォルフラムは、モニターを睨んでいた。
外周防衛網は、マダラとナオリによって次々と沈黙。
技術区画の補助回線は、扉間と発目、B組によって食い破られつつある。
パーティー会場では、トップヒーローたちと柱間が一般客を守り続けている。
制御塔内部では、緑谷たちが予想以上の速度で上がってきている。
ウォルフラム「……面倒な連中だ。」
部下A「ボス! データ抽出に異常! 偽装データが混入しています!」
部下B「チャクラ理論ファイルが開いた瞬間、逆流コードが走りました! 端末が三台焼けました!」
部下C「ナオリ測定資料にも罠が! 熱線制御式に見せかけたデータが自己破壊します!」
ウォルフラム「千手扉間か……!」
彼の声には苛立ちが混じっていた。
部下A「デヴィット博士の生体認証がなければ、増幅装置の最終ロックは解除できません!」
ウォルフラム「なら、予定通り博士を連れてくる。」
部下B「会場には柱間とトップヒーローがいます!」
ウォルフラム「だから何だ。」
ウォルフラムは片手を上げた。
制御塔の壁面に埋め込まれた巨大な金属管が蠢く。
「会場へ直接取りに行く必要はねぇ。」
彼の個性が、島の金属構造へさらに深く浸透する。
パーティー会場の床下。
デヴィットの立つ場所の真下。
そこへ向けて、金属の触手が伸びていく。
ウォルフラム「博士だけを引きずり出す。」
・I・アイランド ウェルカムパーティー会場・
デヴィットが、突然足元に違和感を覚えた。
デヴィット「……?」
次の瞬間。
ガギィィィン!!
床を突き破り、金属の触手が伸び上がった。
オールマイト「デイブ!!」
リューキュウ「危ない!!」
ミトは別ルートへ向かっており、この場にはいない。
マダラも外壁。
扉間も技術区画。
瞬間的に反応したのは、柱間だった。
柱間「木遁・木錠壁!!」
木の壁が金属触手を受け止める。
だが、ウォルフラムの金属操作はそれを回り込み、複数方向からデヴィットへ伸びる。
柱間「むう……!」
オールマイトが踏み込む。
オールマイト「DETROIT――」
相澤「待て! 一般客が近い!」
オールマイトは拳を止める。
その一瞬の遅れを、金属触手は逃さなかった。
ガシィッ!!
デヴィットの身体が拘束される。
デヴィット「ぐっ……!」
柱間「デヴィット殿!!」
柱間の木龍が伸びる。
だが、金属触手はデヴィットを包み込み、床下へ引きずり込もうとする。
ホークスの羽根が飛ぶ。
エンデヴァーが接続部を焼く。
リューキュウがドラゴン化しかける。
ベストジーニストが繊維でデヴィットを掴む。
それでも、金属触手はしぶとい。
デヴィット「トシ……!」
オールマイト「デイブ!!」
その時、デヴィットは叫んだ。
デヴィット「行かせてくれ!!」
オールマイト「何を言っているんだ!!」
デヴィット「私が行けば、少なくとも人質への攻撃は止まる! ロック解除に私が必要なら、まだ時間を稼げる!」
柱間「馬鹿を言うな!!」
デヴィット「これは私の罪だ!! 私が向き合わなければならない!!」
金属触手が一気に床下へ引き込む。
オールマイトが手を伸ばす。
だが、届かない。
ガシャン!!
床が閉じた。
デヴィット・シールドは、ウォルフラムに奪われた。
会場に沈黙が落ちる。
オールマイト「デイブ……!」
柱間は、拳を握り締めた。
柱間「……すまぬ、オールマイト殿。」
オールマイト「いや……千手少年のせいではない。」
リューキュウ「すぐ追うわ。場所は?」
ホークス「羽根で追跡しています。地下制御区画方面です。」
相澤「だが会場を空にするわけにはいかない。」
柱間「ここは俺が守る。」
オールマイト「私も――」
柱間「オールマイト殿。」
柱間の声は強かった。
柱間「今、お主が動けば、敵は会場の人々を盾にする。ならばここで人々を安心させるのが、お主にしかできぬ役目ぞ。」
オールマイトは、悔しさに歯を食いしばった。
オールマイト「……分かっている。」
リューキュウ「私が地下へ行く。ホークス、案内できる?」
ホークス「できます。ただし、敵の金属操作が道を変えてます。少人数で行く方がいい。」
エンデヴァー「俺も行く。」
相澤「待て。火力が高すぎる。地下で暴れれば構造が崩れる。」
エンデヴァー「……。」
リューキュウ「私とホークス、エッジショットで行く。柱間君、会場をお願い。」
柱間「任せろ!!」
その時、外壁上空のマダラにも、ナオリを通じて情報が届いた。
ナオリ『主様。デヴィット様が地下制御区画へ連行されました。』
マダラ「……そうか。」
その声は、ひどく低かった。
ナオリ『追跡いたしますか?』
マダラ「いや。緑谷たちが上から迫っている。リューキュウも地下へ向かう。俺たちは外側から退路を潰す。」
ナオリ『承知いたしました。』
マダラは、制御塔を睨んだ。
マダラ「ウォルフラム。貴様は友の情を利用した。その報いは高くつくぞ。」
・I・アイランド 制御塔上層前・
緑谷たちは、ついに制御塔上層前の巨大扉へ辿り着いた。
だが、その扉は黒い金属で覆われ、脈打つように蠢いている。
メリッサ「この先が、中央制御室です……!」
緑谷「ここに、ウォルフラムが……!」
爆豪「ようやくだな。」
轟「まだ油断するな。中に何があるか分からない。」
ミト「この扉、ただの金属ではありません。個性で常に形状を変化させています。破壊しても再生する可能性があります。」
通形「透過で中を確認する!」
ミリオが扉へ触れようとした瞬間、ミトが止める。
ミト「ミリオ、待ってください。内部に電磁拘束フィールドがあります。透過解除の瞬間を狙われる可能性があります。」
通形「おっと、危なかった。ありがとう、うずまきさん!」
天喰「ミリオ……突っ込むの早い……。」
耳郎「中、音が多い。金属の動く音。あと……人の声?」
メリッサ「パパ……?」
緑谷「デヴィットさんが中にいるの!?」
その時、扉の向こうからウォルフラムの声が響いた。
ウォルフラム『よく来たな、雄英のガキども。』
爆豪「誰がガキだ!!」
ウォルフラム『博士はここにいる。装置のロックも、もうすぐ開く。お前らが来たところで遅ぇよ。』
メリッサ「パパを返して!!」
ウォルフラム『娘か。親父に似て、甘い声を出すな。だが、甘さは金にならねぇ。力と技術は、奪う者のものだ。』
緑谷「違う……!」
緑谷の拳が震える。
緑谷「デヴィットさんの研究も、メリッサさんの技術も、オールマイトの想いも……奪うためのものじゃない!! 誰かを助けるためのものだ!!」
ウォルフラム『綺麗事だな。だが嫌いじゃねぇ。壊し甲斐がある。』
ギギギギギギギギギギギ……!!
扉が開いた。
その奥。
中央制御室は、完全に金属の玉座と化していた。
壁も、床も、天井も、全てがウォルフラムの個性で変形し、巨大な鋼鉄の鎧のような空間を作っている。
その中央に、デヴィット・シールドが拘束されていた。
そして、その前に立つウォルフラム。
片手には、個性増幅装置。
ウォルフラム「ここからが本番だ。」
デヴィット「逃げろ……メリッサ……!」
メリッサ「パパ!!」
ウォルフラムが笑う。
ウォルフラム「見せてやるよ。科学者が作った希望が、悪党の手でどう化けるかを。」
彼は個性増幅装置を、自らの身体へ装着した。
デヴィット「やめろ!! それは、人体への負荷が大きすぎる!!」
ウォルフラム「知るか。」
ギュオオオオオオオオオオッ!!!!
金属が鳴動する。
制御塔全体が震える。
ウォルフラムの身体を中心に、周囲の鋼鉄が雪崩のように集まり始めた。
巨大な腕。
巨大な脚。
鋼鉄の外骨格。
塔そのものを鎧とするような、巨大な金属巨人が形成されていく。
緑谷「これは……!」
轟「規模が違う……!」
爆豪「ハッ、やっと親玉の面になったじゃねェか!!」
ミト「全員、下がってください!!」
通形「これはまずい……!」
波動「すごい圧……!」
天喰「俺、もう壁になっても潰される……。」
ウォルフラムの声が、金属巨人の奥から響く。
ウォルフラム『さあ、英雄ごっこを終わらせようか。』
その瞬間、制御塔の外壁上空。
ナオリの背に立つマダラが、ゆっくりと顔を上げた。
マダラ「……出たか。」
ナオリ『主様。制御塔上層に巨大金属反応。緑谷様たちが直面しております。』
マダラ「須佐能乎を出せば塔ごと斬れる。だが、それでは緑谷たちも巻き込む。」
ナオリ『精密介入が必要でございます。』
マダラ「ならば行くぞ。」
ナオリ『はい、主様。』
ナオリの翼が広がる。
空が震えた。
同じ頃、技術区画の扉間も異常を察知していた。
扉間「増幅装置を使ったな。」
発目「制御塔の金属反応が急増!! このままだと、塔全体が武器になります!!」
扉間「緑たちへ通信を繋げ。」
発目「ノイズが酷いです!!」
扉間「ならば、直接行く。」
物間「え、行くって――」
扉間「飛雷神のマーキングは、既に緑の装備に仕込んである。」
拳藤「いつの間に!?」
常闇「忍の備え……恐るべし。」
扉間「B組は発目を守り、補助回線を維持しろ。俺は制御塔へ跳ぶ。」
鉄哲「気をつけろよ、扉間!」
扉間「当然だ。」
シュンッ!!
千手扉間の姿が消えた。
そして、制御塔上層。
緑谷たちの前に、白髪の忍が現れる。
扉間「遅くなったな、緑。」
緑谷「扉間君!」
爆豪「ツンツン銀髪、勝手に出てくんな!!」
扉間「貴様らだけでは荷が重い。現実を見ろ。」
轟「扉間、助かる。」
ミト「扉間様、来てくださったのですね。」
扉間「義姉上。状況は?」
ミト「敵は増幅装置を使用。金属巨人化が進行中。デヴィット様は拘束されています。」
扉間「ならば、装置と敵の接続部を断つ。緑、爆豪、轟。貴様らは時間を稼げ。」
緑谷「分かった!」
爆豪「命令すんな!! だがやる!!」
轟「了解。」
その瞬間、金属巨人の巨大な腕が振り下ろされた。
ゴォォォォォォッ!!!!
緑谷、爆豪、轟、ミト、扉間、ビッグ4。
若き英雄たちは、その圧倒的な鋼鉄の暴力を前に構えた。
そして、上空のガラス壁を突き破らず、外壁に沿って滑るように、ナオリが接近する。
マダラの写輪眼が、金属巨人の内部構造を見抜く。
マダラ「ウォルフラム。」
彼の声は、戦場の底冷えするような声だった。
マダラ「その程度の鉄屑で、神話に届くと思うなよ。」
鋼鉄の巨人が咆哮する。
科学の罪。
悪党の欲望。
若き英雄たちの勇気。
忍界の神話。
天空の女王。
全てが、制御塔上層で交差した。
I・アイランド奪還戦は、ついに最終局面へ突入する。
はい、ということで、第四十六話でした!如何でしたでしょうか?ウォルフラムが相変わらずマダラの地雷を踏みまくっていて正に常時戦犯状態となっていましたね笑。とりあえず、ご愁傷様です。ウォルフラムさん…。
さて、次話の第四十七話についてですが、次話は2人の英雄編がついにクライマックス、になるとは思いますので、楽しみにお待ちください!
また、お気に入り登録や質問、評価も是非お待ちしておりますが、特に感想を、無理にとは言いませんが、時間があれば頂けると、作者の小説制作のやる気向上などへと変わりますので、よろしければ是非よろしくお願いします!ですが、理不尽な誹謗中傷などの行為は流石にやる気やモチベーションが下がりますのでそれらは御法度です。何卒ご理解よろしくお願いします!では、第四十七話にて!