千手最強の忍とうちは最強の忍は、個性と英雄が蔓延る世へと生まれ落ちる 作:天叢雲剣を捧げるスサノヲ
・I・アイランド 制御塔上層 中央制御室前・
ゴォォォォォォォォォォッ!!!!
鋼鉄が唸った。
制御塔上層。
I・アイランドの心臓部とも言うべき中央制御室は、もはや研究施設でも管理区画でもなかった。
それは、金属の玉座。
あるいは、科学の楽園を内側から喰い破る、鋼鉄の怪物の胎内。
壁も、床も、天井も。
配管も、補強材も、隔壁も、防衛システムも。
その全てが、ウォルフラムの金属操作によって歪に絡み合い、巨大な外骨格へと変貌していく。
そして、その中心。
個性増幅装置を装着したウォルフラムが、塔そのものを鎧として纏い始めていた。
巨大な腕。
巨大な脚。
鋼鉄の胸郭。
無数の金属神経。
その奥には、拘束されたデヴィット・シールド。
そして、その前に立つ緑谷出久、爆豪勝己、轟焦凍、飯田天哉、麗日お茶子、蛙吹梅雨、八百万百、耳郎響香、芦戸三奈、葉隠透、峰田実、切島鋭児郎、瀬呂範太、砂藤力道、障子目蔵、青山優雅、尾白猿夫、口田甲司。
さらに、通形ミリオ、天喰環、波動ねじれ、うずまきミト。
そして、飛雷神によって駆けつけた千手扉間。
若き英雄たちは、鋼鉄の巨人を前にしていた。
ウォルフラム『さあ、英雄ごっこを終わらせようか。』
その声は、金属の内側で反響し、まるで制御塔全体が喋っているかのようだった。
緑谷「……終わらせない。」
緑谷出久は、拳を握った。
その手は震えていた。
恐怖ではない。
怒り。
そして、決意。
緑谷「デヴィットさんの研究も、メリッサさんの想いも、オールマイトの歩いてきた道も……あなたが奪っていいものじゃない!!」
ウォルフラム『綺麗な言葉だな。だが、綺麗な言葉で鉄は曲がらねぇ。』
ギギギギギギギギギギギッ!!!!
巨大な鋼鉄の腕が振り上がる。
それは、ただの拳ではない。
制御塔の壁材、柱、配管、防衛装置が圧縮され、組み上げられた、数十トン級の鉄塊。
振り下ろされれば、床ごと潰れる。
飯田「全員、防御姿勢!!」
切島「硬化ァァァ!!」
轟「氷結!!」
ミト「金剛封鎖!!」
ジャラララララララララッ!!!!
黄金の鎖が、鋼鉄の腕に絡みつく。
同時に、轟の氷が床から噴き上がり、腕の軌道をずらす。
切島は前へ飛び出し、硬化した身体で衝撃の余波を受け止めた。
ズガァァァァァァァァァン!!!!
轟「ぐっ……!」
切島「重っ……!! けど、まだ止められる!!」
ミト「完全には止まりません……! 押し潰されます!!」
爆豪「どけやァァァ!!」
ドガガガガガガガッ!!!!
爆豪の爆破が、鋼鉄の腕の関節部へ集中する。
広範囲ではない。
制御塔を壊さないよう、内部構造を読んで、接合部だけを的確に砕く爆破。
轟が急速冷却した部分へ、爆豪の爆破が食い込み、鋼鉄の腕に亀裂が走った。
緑谷「今だ!!」
緑谷が跳ぶ。
ワン・フォー・オール、フルカウル。
緑の稲妻を纏った少年が、鋼鉄の拳へ向かって突っ込む。
緑谷「セントルイス――スマッシュ!!」
ドゴォォォォッ!!!!
蹴りが鋼鉄の腕に叩き込まれた。
亀裂が広がり、巨大な腕が一度だけ弾かれる。
ウォルフラム『……やるじゃねぇか。』
だが、次の瞬間。
砕けた金属片が、まるで生き物のように蠢き、再び腕の形へ戻っていく。
メリッサ「再構成が早すぎる……! 増幅装置で金属操作の出力が上がってるんだ!」
扉間「予想通りだ。力任せでは埒が明かん。」
爆豪「じゃあ、再生する前に吹っ飛ばしゃいいだろ!!」
扉間「貴様の爆破で制御塔ごと落とす気か、爆発小僧。」
爆豪「誰が落とすかツンツン銀髪!!」
轟「でも、再生を止める必要はある。」
ミト「装置との接続部を断てば、増幅は止められるはずです。」
メリッサ「個性増幅装置は、ウォルフラムの身体に直接接続されています! ただ、今は金属外骨格の内側に埋もれていて……!」
耳郎「待って……音がある。」
耳郎響香が、床へイヤホンジャックを伸ばす。
赤い非常灯の下で、彼女の表情が鋭くなる。
耳郎「金属の動きの中に、一定のリズムがある。多分、装置から出てる制御音。場所は……胸の奥、少し右!」
扉間「よくやった。」
八百万「ならば、そこへ到達するための道を作る必要がありますわ……いえ、作ります!」
八百万百が、深く息を吸った。
彼女の肌から、次々と道具が生み出される。
耐熱ワイヤー。
衝撃吸収盾。
簡易通信機。
閃光弾。
電磁妨害用の小型装置。
八百万「皆さん、これを!」
瀬呂「サンキュー、ヤオモモ!」
峰田「オイラの出番も来たな!!」
蛙吹「峰田ちゃん、今は真面目にね。ケロ。」
峰田「今日のオイラは真面目だァ!!」
葉隠「私も行くよ! センサー潰しなら任せて!」
障子「後方は俺が見る。敵の金属片が回り込んでいる。」
砂藤「糖分、まだ残ってる。押し戻すぞ!」
芦戸「酸は床じゃなくて、関節だけ! 慎重にいく!」
尾白「近接で隙を作る!」
青山「僕の輝きの狙撃で、道を照らすよ☆」
口田「メンテナンスロボさんたち……お願い、危ない配線を教えて……!」
小型メンテナンスロボたちが、口田の声に反応し、足元を走る。
それぞれが、自分にできることを見つけていた。
メリッサは、その光景を見ていた。
科学では測れない。
個性の強さだけでもない。
彼らは、恐怖の中で、誰かを守るために動いている。
メリッサ「……これが、雄英。」
緑谷「メリッサさん!」
緑谷の声で、メリッサは我に返る。
緑谷「装置への最短ルート、分かりますか!?」
メリッサ「はい! 金属外骨格の制御ラインは、右胸部から中央へ集まっています! でも、そこへ近づくには三層の装甲と、ウォルフラム本人の金属防御を抜かないと……!」
通形ミリオが、にっと笑った。
通形「なら、一層目は俺が抜ける!」
天喰「ミリオ、また一人で……!」
通形「一人じゃないよ、環!」
天喰環は、一瞬だけ目を伏せた。
そして、決意する。
天喰「……分かった。俺が、ミリオの通り道を守る。」
波動「じゃあ私は上から押さえるね! 天喰君、通形君、いくよ!」
ミト「私が金剛封鎖で敵の反応を遅らせます。」
扉間「俺がマーキングを打つ。緑、爆豪、轟。二層目以降は貴様らが破れ。」
緑谷「分かった!」
爆豪「言われなくてもやるわ!!」
轟「合わせる。」
扉間「そして最終接続部は、俺と義姉上で止める。」
メリッサ「私は、装置の停止コードを送ります!」
飯田「ならばメリッサさんの護衛は僕が務める!!」
麗日「私も! 機材を浮かせて運ぶよ!」
蛙吹「お茶子ちゃんと一緒に補助するわ。ケロ。」
作戦は決まった。
だが、ウォルフラムも待たない。
ウォルフラム『相談は終わったか?』
ギュガガガガガガガガッ!!!!
金属巨人の背中から、無数の鋼鉄槍が伸びる。
それは、若き英雄たちを串刺しにするためではない。
天井。
壁。
床。
逃げ道を潰すために、空間そのものへ突き刺さっていく。
扉間「まずい。空間を狭める気だ。」
ミト「全員、中央へ寄ってください!」
障子「後方からも来る!」
切島「なら俺が受ける!!」
ガギィィィン!!
切島が鋼鉄槍の一本を身体で受ける。
砂藤がその根元を殴り、芦戸が接合部を溶かす。
瀬呂がテープで槍の向きを逸らし、麗日が破片を浮かせる。
一つ一つは小さな動き。
だが、それが重なって、全員が潰される未来を防いでいく。
ウォルフラム『いい動きだ。だが、いつまで持つ?』
その時。
制御塔の外側。
夜空を裂く影があった。
・I・アイランド 制御塔外壁上空・
ナオリは、強縮小化状態で制御塔外壁を旋回していた。
全高3m強。
翼幅5m強。
本来の神鳥としての姿に比べれば小さい。
だが、その機動性は凄まじい。
塔の外壁から伸びる金属槍、対空ドローン、レーザー照準、捕獲網。
その全てを、ナオリは大暴風も大落雷も使わずに避け続ける。
翼のわずかな角度。
テレキネシスによる誘導弾の軌道逸らし。
望遠眼による制御塔内部の構造観測。
地獄耳による金属の振動解析。
未来予知の断片による攻撃予測。
ナオリ『主様。内部で金属圧縮が進行しています。緑谷様たちが閉じ込められるまで、推定七十二秒。』
マダラ「十分だ。」
ナオリ『ウォルフラムの接続部は、右胸部奥の増幅装置。ですが、内部にデヴィット様がおられます。広域破壊は不可です。』
マダラ「分かっている。」
マダラの永遠の万華鏡写輪眼が、赤く輝く。
写輪眼は動きを読む。
チャクラを読む。
殺意を読む。
そして今、マダラは、金属の流れを読んでいた。
マダラ「金属操作とはいえ、奴の意思は一本ではない。装置で増幅されたせいで、逆に制御が荒い。」
ナオリ『つまり、細く裂ける隙があるということでございますね。』
マダラ「そうだ。」
ウォルフラムの外部スピーカーから、嘲るような声が響く。
ウォルフラム『うちはマダラ。外から眺めているだけか? 神話の修羅も随分と丸くなったな。』
マダラ「貴様、勘違いしているな。」
マダラは、ナオリの背で大軍配を構えた。
マダラ「俺が大技を使わぬのは、貴様を倒せぬからではない。」
ナオリの翼が、塔の外壁すれすれを滑る。
マダラ「この島に、貴様より価値のあるものが多すぎるからだ。」
ウォルフラム『……ッ。』
その瞬間、制御塔の外壁から巨大な金属の顎が開いた。
マダラとナオリを噛み砕くように迫る。
ナオリ『主様。』
マダラ「抜けろ。」
ナオリ『承知いたしました。』
バサァッ!!!!
ナオリは翼を畳み、金属の顎の隙間を縫う。
ほとんど紙一重。
風圧が羽毛を揺らす。
だが、ナオリは美しく抜けた。
その背から、マダラが跳ぶ。
外壁へ足裏のチャクラで着地。
そのまま壁を駆ける。
マダラ「火遁・鳳仙火の術。」
小さな火球が連続で放たれる。
それは塔を焼く火ではない。
外壁の制御センサーだけを焼き切る、針のような火遁。
ボボボボボボンッ!!!!
ナオリ『外壁右側、防衛反応低下。内部への視界が開けます。』
マダラ「扉間へ繋げ。」
ナオリ『はい。』
ナオリのテレパシーが、制御塔内部へ届く。
ナオリ『扉間様。右胸部外装、第三区画の防衛反応を落としました。飛雷神の干渉地点として使用可能です。』
・I・アイランド 制御塔上層 中央制御室・
扉間の脳裏に、ナオリの声が届く。
扉間「……便利な鳥だ。」
爆豪「何一人で納得してんだツンツン銀髪!!」
扉間「外側に穴が空いた。進路ができる。」
ミト「マダラ様とナオリさんですね。」
緑谷「マダラ君たちが……!」
ウォルフラム『外側から何をしたところで、中には入れねぇよ!!』
鋼鉄巨人の胸部が、さらに厚くなる。
だが、その一瞬。
ほんの一瞬だけ、右胸部の外装に情報の乱れが生まれた。
扉間はそれを見逃さない。
扉間「通形。」
通形「うん!」
扉間「第一層を抜けろ。だが、戻る地点は俺の印へ合わせろ。」
通形「了解!」
ミト「私が反応を鈍らせます。」
ミト「金剛封鎖。」
黄金の鎖が、金属巨人の胸部へ走る。
鋼鉄はそれを拒むようにうねる。
しかし、金剛封鎖はただの鎖ではない。
封じる。
縛る。
流れを止める。
ウォルフラムの金属操作が、一瞬だけ鈍った。
通形「行くよ!!」
通形ミリオが走る。
鋼鉄の槍が降る。
だが、彼は透過する。
床を抜け、壁を抜け、鋼鉄の第一層を抜ける。
次の瞬間、扉間が投げた飛雷神クナイが光った。
シュンッ!!
通形の身体が、最適な位置へ戻される。
彼の拳が、第一層内部の固定軸を叩く。
通形「POWER!!」
ドゴォッ!!!!
第一層の金属が歪む。
天喰「ミリオ、そこ……支える……!」
天喰環の腕が、巨大な蛸の触手と甲殻へ変わる。
彼は、崩れようとする金属の隙間へ触手を差し込み、無理やりこじ開けた。
天喰「食環……開けるだけ……!」
波動「ねじれる波動、グリングウェイブ!!」
波動ねじれの黄金の波動が、開いた隙間へ流れ込み、金属の再構成を押し返す。
ミト「今です!!」
緑谷「かっちゃん!! 轟君!!」
爆豪「言われなくてもォ!!」
轟「合わせる。」
轟が右腕から炎を、左側から氷を放つ。
急熱。
急冷。
金属が軋む。
爆豪が爆破を集中。
緑谷がフルカウルで踏み込む。
緑谷「デラウェア――」
爆豪「榴弾――」
轟「穿て。」
三方向からの衝撃が、第二層を砕いた。
バキィィィィィィィン!!!!
ウォルフラム『ぐっ……!?』
初めて、ウォルフラムの声に苦痛が混ざった。
メリッサ「装置の制御音が近い……! あと一層です!!」
八百万「メリッサさん、停止コードの準備を!」
メリッサ「はい!」
飯田「僕が端末を守る!!」
麗日「端末、浮かせて安定させるね!」
蛙吹「近づく金属片は私が弾くわ。ケロ。」
耳郎「装置の音、強くなってる……でも、同時に不安定!」
扉間「奴も増幅装置を完全には制御できていない。」
ミト「なら、今が好機です。」
ウォルフラム『舐めるなァァァァ!!』
ギュオオオオオオオオオオッ!!!!
金属巨人が暴れる。
床が裂ける。
天井が歪む。
デヴィットを拘束する金属がさらに締まり、彼が苦悶の声を漏らす。
デヴィット「ぐっ……!」
メリッサ「パパ!!」
緑谷「デヴィットさん!!」
ウォルフラム『動けば博士を潰す。さあ、どうする英雄ども。』
場が止まる。
ほんの一瞬。
全員が、デヴィットを見る。
ウォルフラムは笑った。
人質。
それは、力ある者を縛る最も卑劣な鎖。
だが。
その瞬間、白い閃光が走った。
シュンッ!!
扉間の姿が消える。
次に現れたのは、デヴィットの足元。
すでに、そこには小さな飛雷神の印が刻まれていた。
デヴィット「え……?」
扉間「喋るな。」
扉間の手が、デヴィットの拘束具に触れる。
ミトの金剛封鎖が、その一点へ伸びる。
ミト「扉間様!!」
扉間「義姉上、合わせてください。」
ミト「はい。」
黄金の鎖が、拘束具を縛る。
扉間は雷神の剣を抜いた。
だが、刃を振るうのではない。
雷を流す。
接続部だけを焼き切る。
扉間「雷神剣・断絡。」
バチィィィン!!!!
デヴィットの拘束が一瞬だけ緩む。
その瞬間。
シュンッ!!
デヴィットの身体が消えた。
次に現れたのは、飯田と麗日の背後。
飯田「デヴィットさん!!」
麗日「受け止める!!」
麗日がデヴィットを無重力化し、飯田が支える。
メリッサ「パパ!!」
デヴィット「メリッサ……!」
ウォルフラム『なっ……!?』
扉間は、金属巨人の胸部付近に戻っていた。
扉間「人質を取るなら、まず空間を支配することだ。貴様は詰めが甘い。」
爆豪「ハッ!! やるじゃねぇかツンツン銀髪!!」
扉間「褒められても嬉しくない。」
緑谷「今なら……!」
ウォルフラム『クソがァァァァァァ!!』
金属巨人が咆哮する。
だが、もう人質はいない。
それでも、制御塔がある。
一般区画がある。
I・アイランドそのものがある。
まだ、緑谷たちは全力を出せない。
その時。
通信が繋がった。
発目『聞こえますか皆さん!! 補助回線、最大出力で繋げました!!』
扉間「発目。」
発目『敵の主回線へ偽データを流し込みました!! ウォルフラムの金属制御が、約十秒だけ乱れます!! 十秒です!! 十秒しかありません!!』
物間『ふふん!! ちなみにその十秒は、我々B組の総力で稼いだ十秒でもあるからね!! 感謝したまえA組!!』
拳藤『物間、今は余計なこと言わない。皆、こっちは任せて!』
鉄哲『ぶちかませぇぇぇ!!』
小森『頑張るノコ〜!!』
柳『ちょっとだけウラめしいけど、応援してる。』
緑谷「皆……!」
扉間「十秒あれば十分だ。」
ミト「私が金剛封鎖で装置の外部接続を止めます。」
通形「俺が道を開ける!」
天喰「俺が支える……!」
波動「私は再生を押し戻すね!」
爆豪「俺が装甲を剥がす!!」
轟「俺が熱差で脆くする。」
緑谷「僕が、装置へ届かせる!」
メリッサ「停止コードを送ります!!」
飯田「皆、準備を!!」
耳郎「制御音、乱れるまで……三、二、一!」
発目『今です!!』
ジジジジジジジジジジッ!!!!
ウォルフラムの金属巨人が、一瞬だけ軋んだ。
ウォルフラム『何だこれは……!?』
扉間「行け。」
通形が飛び出す。
透過で金属の隙間を抜け、拳で内部軸を打つ。
天喰が触手で道を固定。
波動が波動で再構成を押し返す。
ミトの金剛封鎖が、増幅装置から伸びる金属神経を絡め取る。
轟が凍らせ、熱し、脆くする。
爆豪が吹き飛ばす。
ドガガガガガガガガガッ!!!!
緑谷が走る。
一歩。
二歩。
三歩。
緑色の稲妻が、制御塔の闇を裂く。
緑谷「メリッサさん!!」
メリッサ「コード送信、準備完了!!」
メリッサが端末を操作する。
だが。
ウォルフラム『させるかァァァ!!』
乱れた金属の中から、巨大な刃がメリッサへ向かって伸びた。
飯田「させるものか!!」
飯田が立ちはだかる。
だが間に合わない。
その瞬間。
バサァッ!!
小さな影が割り込んだ。
極縮小化したナオリ。
ナオリは、テレキネシスで金属刃の軌道をほんの少し逸らす。
それだけで、刃はメリッサを外れた。
メリッサ「ナオリさん……!」
ナオリ『続けてください。あなたの技術は、人を救うためにあるのでしょう。』
メリッサ「……はい!!」
停止コードが送信される。
AUTHORIZATION INTERRUPTION
AMPLIFIER LINK ERROR
増幅装置の光が乱れた。
ウォルフラム『クソッ……!!』
緑谷「届いた!!」
緑谷の拳が、増幅装置へ向かう。
だが、ウォルフラムは最後の抵抗として、金属の腕を緑谷へ叩きつける。
その時。
外壁側から、赤い眼が覗いた。
マダラ「緑谷。」
緑谷「マダラ君!?」
マダラ「ここから先は、貴様ら二人の物語だ。」
マダラは、大軍配を振るう。
うちは返し。
金属腕の衝撃が、逸らされる。
完全に跳ね返すのではない。
内部にいる者を傷つけないよう、上空へ逃がす。
ナオリがその衝撃波を風圧でさらに流し、外洋へ拡散させた。
マダラ「行け、緑谷。」
マダラ「平和の象徴の後継者を名乗るなら、ここで示せ。」
緑谷「……はい!!」
緑谷の拳が、増幅装置の外装を打ち砕いた。
バキィィィィン!!!!
だが、装置はまだ完全には壊れない。
ウォルフラム『まだだ……まだ終わらねぇ!!』
装置は暴走を始める。
金属巨人がさらに巨大化する。
制御塔全体が、今度こそ崩れ始めた。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!!!
メリッサ「まずい……! 装置の制御が壊れたまま、出力だけが残ってる!!」
扉間「中途半端に断ったせいで暴走したか。」
爆豪「だったら完全に潰す!!」
轟「だが、あの規模だと……!」
ウォルフラム『全部潰れろォォォォォォ!!!!』
鋼鉄の巨人は、制御塔の上部を突き破り、夜空へ姿を現した。
・I・アイランド ウェルカムパーティー会場・
その振動は、会場にも届いた。
天井の照明が揺れる。
招待客たちが悲鳴を上げる。
柱間は、木遁で支柱を増やしていた。
柱間「まだ崩れぬ!! 皆、落ち着くのだ!!」
リューキュウ「柱間君、上は!?」
柱間「緑谷たちが戦っておる!! だが、敵の出力がさらに上がった!!」
オールマイトは、制御塔の方向を見た。
その目が、鋭くなる。
オールマイト「緑谷少年……!」
デヴィットは、メリッサに支えられながら通信映像を見ていた。
デヴィット「トシ……駄目だ。あの出力は、あの子たちだけでは……!」
オールマイト「分かっている。」
相澤「オールマイト。」
オールマイト「相澤君。すまない。」
相澤「……止めても行く顔ですね。」
リカバリーガール「まったく、無茶ばかりするんじゃないよ。」
オールマイト「だが、行かねばならない。」
柱間が、オールマイトの前に立った。
柱間「オールマイト殿。」
オールマイト「千手少年。」
柱間「俺が、少しだけ背を押そう。」
オールマイト「……君の身体に負担は?」
柱間「ガハハハ!! 俺を誰だと思っておる!!」
だが、その笑顔の奥にある真剣さを、オールマイトは見逃さなかった。
柱間は手を伸ばし、オールマイトの背に触れる。
柔らかいチャクラが流れ込む。
全盛期を取り戻すわけではない。
失われた時間を完全に戻すわけでもない。
ただ、一瞬。
たった一瞬だけ。
平和の象徴が、もう一度、少年と並び立つための力。
柱間「掌仙術・命脈補助。」
リカバリーガール「無茶な補助だねぇ……でも、これなら数分だけは持つ。」
ミトの通信が入る。
ミト『オールマイト様、こちらからも封印術で負荷を分散します。無理をすれば身体が壊れます。どうか一撃で決めてください。』
オールマイト「ありがとう、うずまき少女。」
リューキュウ「オールマイト、私が道を開ける。」
ホークス「俺も羽根で補助します。」
エンデヴァー「俺は外壁の邪魔な金属を焼く。」
ミルコ「蹴り飛ばすのは任せろ!」
ベストジーニスト「繊維で落下防止を。」
エッジショット「先導する。」
クラスト「盾は私が!」
ウォッシュ「ウォッシュ!!」
ヨロイムシャ「老骨も、まだ退く時ではない。」
ギャングオルカ「進路の敵性機構を音波で止める。」
シンリンカムイ「支柱補強は任せてください。」
Mt.レディ「外なら大きくなれるわよね! 行くわ!」
デステゴロ「ようやく殴れる場面か!」
ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツも動く。
マンダレイ『皆さん、制御塔方面へヒーローが向かいます! 会場内の方はその場で待機してください!』
ピクシーボブ「にゃにゃ! 支援するのね!」
ラグドール「あちきのサーチで落下危険区域を確認!」
虎「我が道を開く!」
オールマイトは、一歩を踏み出した。
その背中を、柱間が見た。
柱間「行ってこい、オールマイト殿。」
柱間「あの子の隣へ。」
オールマイト「……ああ!!」
・I・アイランド 制御塔外壁・
鋼鉄の巨人が、夜空へ立ち上がった。
増幅装置の暴走によって、ウォルフラムの金属操作はもはや本人の意思を超えつつある。
制御塔の上部は捻れ、巨大な腕が島の居住区へ向かって振り下ろされようとしていた。
ナオリが翼を広げる。
ナオリ『主様。あの腕が落ちれば、居住区へ甚大な被害が出ます。大暴風を使用すれば逸らせますが、周辺建造物へ被害が及びます。』
マダラ「使うな。俺が止める。」
マダラの瞳が、さらに深く赤く輝く。
青白い骨格。
そして、深い青色のチャクラ。
須佐能乎。
だが、完成体ではない。
第一形態でも、第二形態でもない。
局所展開。
巨人の腕を受けるためだけの、巨大な須佐能乎の片腕。
マダラ「須佐能乎・片腕顕現。」
ガギィィィィィィィィィン!!!!
須佐能乎の片腕が、鋼鉄の腕を受け止める。
島全体が揺れた。
マダラ「ぐっ……!」
ナオリ『主様!』
マダラ「騒ぐな……! これくらい、どうということはない!!」
だが、完成体を出さずに局所展開で巨大質量を止めることは、極めて精密で、極めて負荷の高い操作だった。
広げれば楽だ。
完成体須佐能乎なら、一刀で終わる。
だが、それをしない。
壊すためではなく、守るために力を絞る。
それは、うちはマダラにとって、ひどく不慣れな戦い方だった。
ウォルフラム『うちはマダラァァァ!! その程度で止められるかよォォ!!』
鋼鉄の巨人がさらに力を込める。
須佐能乎の腕に亀裂が入る。
その時。
炎が走った。
エンデヴァーの収束炎が、鋼鉄の腕の関節部を焼く。
ホークスの羽根が、内部の隙間へ入り込み、制御ラインを切る。
ミルコの蹴りが、外装の一点を砕く。
Mt.レディが巨大化し、反対側の崩落を押さえる。
シンリンカムイが樹木で支える。
リューキュウがドラゴン化し、翼で落下物を弾く。
リューキュウ「マダラ君、今!」
マダラ「言われなくても分かっている!!」
ナオリがテレキネシスで鋼鉄腕の重心をずらす。
マダラの須佐能乎の片腕が、鋼鉄腕を外洋側へ押し返す。
ゴガァァァァァァァァァン!!!!
巨大な金属腕が、居住区を外れ、海へと崩れ落ちた。
ナオリ『外洋落下確認。津波発生を抑えます。』
ナオリは大津波ではなく、逆に海面の乱れを抑える神通力を使った。
波が膨らむ前に、静かに押さえ込まれる。
ギャングオルカ「海面まで制御するのか……。」
ホークス「いやー、本当に規格外っすね。」
マダラ「感心している暇があるなら、上を見ろ。」
鋼鉄巨人の胸部。
その中心に、緑谷たちがいた。
・I・アイランド 制御塔上層 崩壊する中央制御室・
ウォルフラムの暴走は止まらない。
増幅装置は壊れかけている。
だが、出力はまだ残っている。
中央制御室は崩れ、足場はほとんど失われていた。
緑谷たちは、ミトの金剛封鎖、瀬呂のテープ、麗日の無重力、蛙吹の舌、八百万の補助具で、何とか足場を維持していた。
ウォルフラム『潰れろォォォォ!!!!』
鋼鉄巨人の核が、緑谷へ向かって突進する。
爆豪「デク!!」
轟「緑谷!!」
緑谷は避けようとする。
だが、その背後にはメリッサとデヴィットがいる。
避けられない。
緑谷「くっ……!」
その瞬間。
金色の影が飛び込んだ。
オールマイト「私が来た!!」
ドォォォォォォォォォン!!!!
オールマイトの拳が、鋼鉄の突進を受け止めた。
緑谷「オールマイト!!」
メリッサ「オールマイトさん!!」
デヴィット「トシ……!」
オールマイトの身体は、完全ではない。
柱間のチャクラ補助。
ミトの封印術による負荷分散。
それでも、長くは持たない。
だが今。
緑谷の前に立つその背中は、間違いなく平和の象徴だった。
オールマイト「緑谷少年。」
緑谷「はい!!」
オールマイト「行けるか?」
緑谷「はい!!」
オールマイト「ならば、共に行こう。」
緑谷の目が潤む。
だが、泣いている暇はない。
彼は、オールマイトの横に並んだ。
かつて、遠くから見上げるだけだった背中。
今、彼は、その隣に立っている。
ウォルフラム『オールマイト……! 緑谷出久……! まとめて潰してやる!!』
鋼鉄巨人の胸部が開き、無数の金属槍が二人へ向かう。
爆豪「邪魔なんだよォォォ!!」
爆豪が跳ぶ。
榴弾砲着弾(ハウザーインパクト)。
爆破が金属槍を吹き飛ばす。
轟「道を作る。」
氷と炎が、槍を歪ませる。
通形「俺たちも!」
通形が前方の金属壁を打ち抜く。
天喰が触手で二人の足場を支える。
波動が上から圧力をかける。
ミトが金剛封鎖でウォルフラムの動きを縛る。
扉間が影分身を展開し、飛雷神で落下する仲間を次々と安全位置へ移動させる。
飯田がメリッサとデヴィットを守る。
八百万が最後の補助具を創造する。
麗日が瓦礫を浮かせる。
蛙吹が子どもたちを引き寄せる。
耳郎が制御音の乱れを伝える。
芦戸、葉隠、瀬呂、峰田、切島、砂藤、障子、青山、尾白、口田。
全員が、二人のために道を作った。
外側では、マダラが須佐能乎の片腕で巨人の外装を押さえる。
ナオリが風と念動力で崩落を抑える。
リューキュウが飛び、ホークスの羽根が舞い、エンデヴァーの炎が金属を切り、トップヒーローたちが島を支える。
技術区画では、B組と発目が最後の妨害コードを流し込む。
発目『今です!! 出力が一瞬落ちます!!』
扉間「行け、緑!! オールマイト!!」
マダラ「叩き込め。」
柱間の通信が響く。
柱間『オールマイト殿!! 緑谷!!』
柱間『二人で、未来を開くのだ!!』
オールマイトと緑谷が、同時に踏み込む。
緑の稲妻。
黄金の筋肉。
継承された力。
受け継がれた意志。
師と弟子。
二人の英雄。
オールマイト「DETROIT――」
緑谷「DETROIT――」
二人の拳が、同じ軌道を描く。
ウォルフラム『やめろォォォォォォォォ!!!!』
オールマイト・緑谷「SMASHHHHHHHHHHHHH!!!!」
ドッッッッッゴォォォォォォォォォォォォォォォン!!!!!!!!
衝撃が走った。
だが、それは破壊のためだけの衝撃ではなかった。
扉間の飛雷神が衝撃の逃げ道を作る。
ミトの封印術が余波を縛る。
マダラの須佐能乎が外装を抑える。
ナオリの風圧操作が衝撃を上空へ逃がす。
柱間の木遁が制御塔の基部を支える。
トップヒーローたちが島全体の被害を受け止める。
そして、オールマイトと緑谷の拳は、ウォルフラムの増幅装置を完全に打ち砕いた。
バキィィィィィィィィィィィィィン!!!!
金属巨人が崩れる。
ウォルフラムの悲鳴が夜空に消えた。
ウォルフラム『があああああああああああああああ!!!!』
鋼鉄の鎧が砕ける。
増幅装置が破片となって散る。
制御塔を覆っていた金属が、一斉に力を失う。
勝った。
だが。
勝利の直後、制御塔が崩れ始めた。
・I・アイランド 制御塔 崩落開始・
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!!!
メリッサ「制御塔の上部構造が崩れます!!」
飯田「全員、退避!!」
緑谷「オールマイト!!」
オールマイトの身体が限界を迎え、膝をつく。
オールマイト「問題……ない……!」
緑谷「問題あります!!」
爆豪「デク!! ぼさっとしてんじゃねぇ!!」
轟「緑谷、オールマイトを支えろ!」
通形「皆、出口へ!」
扉間「飛雷神で順次退避させる。だが人数が多い。時間を稼げ!!」
ミト「金剛封鎖で瓦礫を止めます!」
波動「上から押さえる!!」
天喰「足場、作る……!」
崩落する金属。
落ちる瓦礫。
裂ける床。
そこへ、ナオリが本来に近い姿へ戻った。
弱縮小化。
全高5m強。
翼幅10m強。
それでも、塔内部では限界に近い大きさ。
ナオリ『皆様、私の背へ。可能な者は飛雷神および避難路へ。負傷者を優先してください。』
マダラ「ナオリ、上の瓦礫を抑えろ。」
ナオリ『承知いたしました。』
ナオリの瞳が青白く輝く。
テレキネシス。
落下する鋼鉄塊が空中で止まる。
同時に、治癒の神通力が、負傷した生徒たちの浅い傷を包み込む。
緑谷「温かい……!」
ナオリ『応急処置です。完全治癒には後ほど時間を要します。』
マダラ「説明は後だ。飛べ。」
ナオリ『はい。』
ナオリは翼を広げる。
大暴風ではない。
人を吹き飛ばさない、柔らかな上昇気流。
瓦礫を逃がし、人だけを支える、精密な風。
麗日「すごい……落ちる感じがしない……!」
蛙吹「風で支えられているのね。ケロ。」
八百万「この精度……信じられません。」
扉間は飛雷神を連続発動する。
シュンッ!!
シュンッ!!
シュンッ!!
緑谷、オールマイト、メリッサ、デヴィット、飯田、八百万、耳郎、麗日、蛙吹。
次々と安全圏へ飛ばす。
その間、ミトは金剛封鎖で崩落する柱を縛り、通形と天喰、波動が足場を維持する。
爆豪と轟は、最後まで崩落する金属片を弾き続けた。
爆豪「クソが!! しつけぇんだよ鉄屑がァ!!」
轟「爆豪、右。」
爆豪「見えてんだよ!!」
轟「ならいい。」
爆豪「腹立つ返しすんな半分野郎!!」
緑谷「かっちゃん! 轟君! 早く!!」
爆豪「命令すんなクソデク!!」
轟「今行く。」
扉間「最後だ。飛ぶぞ。」
シュンッ!!!!
全員が、制御塔上層から脱出した。
直後。
制御塔上部は、大きく崩落した。
しかし、I・アイランドは沈まなかった。
柱間の木遁が基部を支えた。
シンリンカムイの樹木が補強した。
ナオリのテレキネシスが瓦礫を外洋へ運んだ。
リューキュウが空中で落下物を弾いた。
ホークスが細かい破片を回収した。
エンデヴァーが危険な金属片を焼き切った。
ウォッシュが泡で衝撃を和らげた。
クラストが盾となり、ベストジーニストが繊維で人々を繋ぎ止め、エッジショットが内部機構を停止させた。
トップヒーローたち。
雄英生たち。
忍界の神話。
科学の子ら。
天空の女王。
全てが噛み合って、科学の楽園を守った。
・I・アイランド 外周避難区画 夜明け前・
戦いが終わった。
赤い非常灯は、少しずつ白い照明へ戻っていく。
外部通信が回復し、島の管制システムも復旧を始めた。
ウォルフラムは、意識を失った状態で拘束された。
その拘束具には、ミトの封印札、扉間の飛雷神マーキング、ベストジーニストの繊維拘束、そしてマダラの幻術による簡易精神封じまで施されている。
ウォルフラムは、もはや指一本動かせなかった。
マダラ「小物の末路としては上等だな。」
相澤「やりすぎだ。」
扉間「いや、妥当だ。金属操作と増幅装置の相性を考えれば、これでも足りん。」
相澤「お前ら基準で話すな。」
ナオリは、超縮小化状態に戻り、静かに止まり木へ降りた。
ナオリ『皆様、ご無事で何よりでございます。』
波動「ナオリちゃん、すっごくかっこよかったよ!! 不思議なくらい優しくて強かった!」
ミト「本当に助かりました。ありがとうございます、ナオリさん。」
ナオリ『恐縮です、ミト様。』
九喇嘛『ケッ。鳥にしては上出来だったな。』
ナオリ『九喇嘛様にそう仰っていただけるとは、光栄です。』
九喇嘛『調子に乗るな。』
マダラ「どの口が言う。」
リューキュウが、マダラの前に立った。
リューキュウ「マダラ君。」
マダラ「何だ。」
リューキュウ「よく我慢したわね。」
マダラ「……俺は子どもか。」
リューキュウ「たまにね。」
マダラ「貴様……。」
ナオリ『主様は、よく耐えられました。大技を使えば一瞬で勝てた場面でも、守るために力を絞っておられました。』
波動「そうそう! マダラ君、すっごくヒーローっぽかったよ!」
ミト「ええ。マダラ様は、不器用ですが、確かに守っていました。」
マダラ「勝手に解釈するな。」
リューキュウ「でも、私は嬉しかったわ。」
マダラは、顔を背けた。
マダラ「……チッ。」
その耳が、ほんの少し赤かった。
一方。
オールマイトは、デヴィット・シールドと向き合っていた。
デヴィット「トシ……私は、本当に取り返しのつかないことをした。」
オールマイト「デイブ。」
デヴィット「君を救いたかった。だが、私は君を傷つけ、メリッサを危険に晒し、島の人々まで巻き込んだ。」
メリッサ「パパ……。」
デヴィットは、深く頭を下げた。
デヴィット「すまない。」
オールマイトは、しばらく黙っていた。
その沈黙は重い。
怒りがないわけではない。
悲しみがないわけでもない。
だが、やがてオールマイトは、静かに言った。
オールマイト「君が私を想ってくれたことは、分かっている。」
デヴィット「……。」
オールマイト「だが、私は君に罪を背負ってほしかったわけじゃない。私は、君と共に未来を見たかった。」
デヴィット「トシ……。」
オールマイト「だから、償おう。逃げずに。メリッサ少女にも、島の人々にも、そして自分自身にも。」
デヴィットは、涙を堪えながら頷いた。
メリッサは父の手を握る。
メリッサ「パパ。研究は、人を救うためにあるんだよね。」
デヴィット「……ああ。」
メリッサ「なら、もう一度そこから始めよう。」
デヴィット「メリッサ……。」
緑谷は、その光景を見ていた。
オールマイトの過去。
デヴィットの罪。
メリッサの強さ。
そして、自分が見た、二人の英雄。
緑谷「オールマイト……。」
オールマイトは振り返る。
緑谷は、拳を握った。
緑谷「僕……まだまだです。でも、今日、少しだけ分かった気がします。」
オールマイト「何をだい?」
緑谷「誰かを守るって、ただ強いだけじゃ駄目なんだって。力を出すことより、力をどう使うかが大事なんだって。」
その言葉に、オールマイトは静かに微笑んだ。
オールマイト「君は、確かに前へ進んでいるよ。緑谷少年。」
爆豪が横から舌打ちする。
爆豪「馴れ合ってんじゃねぇクソデク。次は俺がもっと先に行く。」
緑谷「かっちゃん……うん。僕も負けない。」
轟「俺もだ。」
爆豪「あ?半分野郎まで混ざってくんな!!」
轟「同じ戦場にいたんだ。混ざるだろ。」
爆豪「そういう意味じゃねぇ!!」
通形「いやー、皆いい顔してるね!」
天喰「ミリオ……俺はもう疲れた……床になりたい……。」
波動「天喰君、床になったら皆に踏まれちゃうよ! 不思議!」
天喰「それは嫌だ……。」
ミト「皆さん、本当にお疲れ様でした。」
扉間「まだ終わってはいない。復旧作業、負傷者確認、情報漏洩の確認、敵の尋問、やることは山ほどある。」
物間が通信越しに割り込む。
物間『ふふん! その情報漏洩防止には、我々B組の活躍が大きかったことを忘れないようにね!!』
拳藤『物間、今はそれくらいにしな。』
鉄哲『でもマジで頑張ったよな俺ら!!』
小森『キノコちゃんたちも頑張ったノコ〜!』
柳『ちょっと疲れてウラめしい。』
塩崎『皆が無事であることが、何よりの恵みです。』
宍田『うむ。良き戦いぶりでありましたな。』
扉間「……よくやった、B組。」
一瞬、通信の向こうが静かになった。
物間『……え?』
拳藤『扉間が素直に褒めた。』
鉄哲『録音したか!?』
扉間「二度と言わんぞ。」
取蔭『やっぱ扉間って面白いよね。』
柳『少しウラめしいくらい嬉しい。』
制御塔の向こうから、夜明けの光が差し始めていた。
海上人工都市I・アイランド。
科学の楽園は、深く傷ついた。
だが、壊れなかった。
そこには、科学があった。
神話があった。
ヒーローがいた。
忍がいた。
生徒たちがいた。
そして、二人の英雄がいた。
・I・アイランド 海上展望デッキ 夜明け・
事件後の一時避難が落ち着いた頃。
マダラは、一人で展望デッキに立っていた。
海の向こうから、朝日が昇る。
黒い海が、少しずつ金色へ染まっていく。
ナオリは、彼の隣で超縮小化した姿のまま佇んでいた。
ナオリ『主様。お疲れではございませんか。』
マダラ「疲れるほどの戦いではない。」
ナオリ『嘘でございますね。力を絞る戦いは、力を振るう戦いより難しいものです。』
マダラ「……知ったような口を利く。」
ナオリ『相棒ですので。』
マダラは、ふんと鼻を鳴らす。
しばらくして、緑谷がやってきた。
緑谷「マダラ君。」
マダラ「何だ、緑谷。」
緑谷「さっき……“ここから先は僕たち二人の物語だ”って言ってくれたよね。」
マダラ「言った覚えはない。」
緑谷「えっ、言ってたよ!?」
ナオリ『主様は確かに仰っていました。』
マダラ「ナオリ。」
ナオリ『事実でございます。』
緑谷は、少し笑った。
緑谷「ありがとう。」
マダラ「礼など要らん。」
緑谷「でも、言わせて。マダラ君たちが道を作ってくれたから、僕とオールマイトは届いたんだ。」
マダラは、朝日を見たまま黙る。
やがて、低く言った。
マダラ「勘違いするな。俺は貴様を助けたのではない。」
緑谷「うん。」
マダラ「ウォルフラムが気に入らなかっただけだ。」
緑谷「うん。」
マダラ「それに……。」
一拍。
マダラ「貴様が届かねば、あの男が悲しむ。」
緑谷「……オールマイトが?」
マダラは答えない。
だが、それで十分だった。
緑谷は、深く頭を下げた。
緑谷「ありがとう、マダラ君。」
マダラ「しつこいぞ。」
そこへ、柱間、扉間、ミト、波動、リューキュウもやってくる。
柱間「おお! ここにおったかマダラ!! 朝日が綺麗ぞ!!」
マダラ「朝から五月蝿い。」
扉間「兄者、声を落とせ。負傷者もいる。」
柱間「む、すまぬ!」
波動「でも本当に綺麗! 不思議! 戦いの後なのに、ちゃんと朝が来るんだね!」
ミト「はい。だからこそ、守る意味があります。」
リューキュウは、マダラの横に立った。
リューキュウ「マダラ君。」
マダラ「今度は何だ。」
リューキュウ「今回、ちゃんと皆を守ってくれてありがとう。」
マダラ「だから礼など――」
リューキュウ「言わせて。」
マダラ「……。」
リューキュウ「ありがとう。」
マダラは、顔を背ける。
マダラ「……勝手にしろ。」
ナオリ『主様、照れておられます。』
マダラ「ナオリ、後で説教だ。」
波動「ナオリちゃん、マダラ君いじり上手になってる!」
ミト「とても良い関係ですね。」
九喇嘛『ケッ。面倒な主従だな。』
柱間「ガハハハ!! 良いではないか!! マダラにも新しき相棒ができた!!」
マダラ「柱間。テメェから海へ落とすぞ。」
柱間「何故だァァァ!?」
扉間「平常運転だな。」
朝日が昇る。
I・アイランドの傷跡を照らす。
崩れた制御塔。
修復に動くヒーローたち。
支え合う生徒たち。
謝罪する科学者。
未来を見つめる少女。
そして、受け継がれる力。
緑谷出久は、朝日を見ながら思った。
この島で見たものは、ただの戦いではなかった。
科学の強さ。
科学の危うさ。
神話の力。
神話の孤独。
ヒーローの責任。
人を守るために力を絞る難しさ。
そして。
自分が、いつか本当に、誰かの隣に立てる英雄になるための一歩。
緑谷「……僕、もっと強くなります。」
オールマイトが、少し離れた場所からその言葉を聞いていた。
オールマイト「期待しているよ、緑谷少年。」
爆豪「チッ。先に行くのは俺だ。」
轟「俺も、まだ足りない。」
飯田「我々全員、成長せねばならないな!」
麗日「うん。もっと強くならなあかん。」
蛙吹「林間合宿も近いものね。ケロ。」
耳郎「今回よりキツいことになるとか、考えたくないんだけど。」
芦戸「でも、皆でならいけるっしょ!」
八百万「ええ。必ず。」
切島「燃えてきたぜ!!」
瀬呂「その前に休ませてくれ……。」
峰田「オイラも頑張ったから美女ヒーローに褒め――」
耳郎「はい黙る。」
ビシッ!!
峰田「ぎゃん!!」
笑い声が広がった。
戦いは終わった。
2人の英雄編。
科学の楽園を襲った鋼鉄の悪意は、若き英雄たちと、平和の象徴と、神話の忍たちと、天空の女王によって打ち砕かれた。
だが、夏はまだ終わらない。
むしろ、始まりに過ぎない。
林間合宿。
森。
鍛錬。
成長。
そして、まだ見ぬ敵連合の影。
I・アイランドの朝焼けの向こうで、次なる戦いの気配が、静かに揺れていた。
二人の英雄の物語は、ここに幕を下ろす。
だが、若き英雄たちの夏は、まだ始まったばかりだった。
はい、ということで、第四十七話でした!如何でしたでしょうか?クライマックスのところの大部分がオリジナル展開寄りになりましたが、決めるべきところはちゃんと原作沿いにはしたはずなので、何とか大目に見てください。よろしくお願いします!
さて、次話の第四十八話についてですが、次話はいよいよ本編にまた戻って林間合宿編がスタート致しますので、楽しみにお待ちください!
また、お気に入り登録や質問、評価も是非お待ちしておりますが、特に感想を、無理にとは言いませんが、時間があれば頂けると、作者の小説制作のやる気向上などへと変わりますので、よろしければ是非よろしくお願いします!ですが、理不尽な誹謗中傷などの行為は流石にやる気やモチベーションが下がりますのでそれらは御法度です。何卒ご理解よろしくお願いします!では、第四十八話にて!