千手最強の忍とうちは最強の忍は、個性と英雄が蔓延る世へと生まれ落ちる   作:天叢雲剣を捧げるスサノヲ

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お待たせ致しました!第四十九話となります!今話は林間合宿二日目の訓練から敵連合開闢行動隊の暗躍までとなりますので、よろしくお願いします!では、どうぞ!


第五十話:個性伸ばしと忍術制御、天空の猛禽たちと夏に潜む悪意

 

 

 

 

 

 

 

・長野県山岳地帯 林間合宿施設 早朝・

 

 

チュン……チュン……。

 

 

山間の朝は、都会よりも早い。

夜明け前まで辺りを包んでいた深い藍色は、東の山稜から差し込む淡い光によって少しずつ薄められていく。

 

木々の葉に残った朝露。

 

沢から届く清らかな水音。

 

土と草の匂い。

 

まだ完全には目覚めていない小鳥たちの囀り。

 

合宿施設の周囲には、都会の喧騒とはまるで異なる、澄み切った朝が広がっていた。

 

だが。

雄英高校ヒーロー科の生徒たちに、その静かな朝を楽しむ余裕は与えられなかった。

 

 

カァァァァァァァァン!!!!

 

 

広場に設置された鐘が、容赦なく打ち鳴らされる。

 

 

相澤『起床。5分以内に体操服へ着替えて、全員広場へ集合しろ。遅れた者は朝食抜きだ。』

 

 

館内放送から流れた相澤消太の声は、山の朝よりも冷たかった。

 

 

上鳴「うおおっ!?」

 

 

瀬呂「五分ってマジかよ!?」

 

 

峰田「昨日あんなに走ったのに、もう起こすのかよォ!!」

 

 

爆豪「朝から喚くな!!」

 

 

緑谷「か、かっちゃん、もう着替え終わってる!?」

 

 

爆豪「テメェらが遅ぇんだよ!!」

 

 

飯田「全員、急げ! 五分という時間は短い! しかし、規律ある行動を取れば決して不可能では――」

 

 

耳郎「飯田、説明してる時間が一番もったいない!」

 

 

飯田「その通りだ!」

 

 

芦戸「ヤオモモ! アタシの靴下知らない!?」

 

 

八百万「芦戸さん、それは葉隠さんの腕に掛かっておりますわ!」

 

 

葉隠「えっ、これ三奈ちゃんのだったの!?」

 

 

芦戸「見えないから分かんないよ!」

 

 

耳郎「いや、靴下は見えてるでしょ。」

 

 

女子部屋も。

 

男子部屋も。

 

早朝から壮絶な騒ぎとなった。

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

・林間合宿施設 中央広場・

 

 

5分後。

雄英高校指定の紺色と白色を基調とした体操服へ着替えた1年A組と1年B組の生徒たちは、どうにか広場へ集合していた。

 

寝癖が残っている者。

 

目を擦っている者。

 

昨日の疲労が抜けきらず、足元をふらつかせている者。

 

その様子は様々だったが、一人として集合時間には遅れていない。

 

A組の前には相澤。

 

B組の前にはブラドキング。

 

その周囲にはミッドナイト、パワーローダー。

 

そして。

ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツの四人が、今度こそ全員揃って並んでいた。

 

 

マンダレイ「煌めく眼でロックオン!!」

 

 

ラグドール「猫の手、手助けやって来る!!」

 

 

「どこからともなくやって来る……!」

 

 

ピクシーボブ「キュートにキャットにスティンガー!!」

 

マンダレイ・ピクシーボブ・ラグドール・虎「ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ!!!」

 

 

バァァァァン!!

 

 

朝日に照らされながら、四人が完璧なポーズを決める。

 

 

上鳴「朝からテンション高ぇ……。」

 

 

耳郎「でも、四人揃うと完成度すごいね。」

 

 

芦戸「かわいい! アタシたちも何か決めポーズ作らない!?」

 

 

八百万「今は訓練の説明を聞く時間ですわ、芦戸さん。」

 

 

物間「A組のように無計画なポーズを取る必要はないよ。我々B組なら、より統率された芸術的な――」

 

 

拳藤「朝から張り合わない。」

 

 

ゴスッ!!

 

 

物間「ぐっ!?」

 

 

相澤は、プッシーキャッツの四人へ軽く頭を下げる。

 

 

相澤「本日から、本格的な訓練をお願いします。」

 

 

マンダレイ「任せて、イレイザー!」

 

 

虎「一切の妥協なく鍛え上げよう。」

 

 

ピクシーボブ「昨日、私の土魔獣ちゃんを得点扱いした二人には、特別なメニューも用意してあるわよ!」

 

 

柱間「特別な修行とな!」

 

 

マダラ「少しは歯応えのあるもんにしろよ。」

 

 

ピクシーボブ「言ったわね、ボサボサ頭の仔猫ちゃん!」

 

 

マダラ「誰が仔猫だ。」

 

 

柱間「ガハハハ! マダラが仔猫とは、よい呼び名ではないか!」

 

 

マダラ「柱間ァ。朝からテメェで水切りしてやろうかァ!?」

 

 

柱間「まだ川へも行っておらぬぞ!?」

 

 

扉間「兄者、マダラ。説明中だ。黙れ。」

 

 

マダラ「チッ、わかってるよ扉間。」

 

 

ミト「マダラ様。返事をなさるのでしたら、最初から静かにしてください。」

 

 

マダラ「……悪かったって言ってんだろ。」

 

 

少し離れた場所。

うずまきミトの肩には、尾が九本に分かれた小さな橙色の獣が座っていた。

ミニサイズとなった九尾。

九喇嘛。

両腕を組み、朝から不機嫌そうに片目を細めている。

 

 

九喇嘛『朝っぱらから騒がしい連中だ。儂の眠りまで邪魔しやがって。』

 

 

波動「九喇嘛ちゃんも来た! 昨日はずっとミトちゃんの中にいたの? 寝てた? 夢を見る? 尾は枕になる? 不思議!」

 

 

九喇嘛『誰が九喇嘛ちゃんだ、小娘! 儂の尾を枕扱いするな!』

 

 

波動「でも柔らかそう!」

 

 

九喇嘛『触るなよ! 絶対に触るんじゃねぇぞ!』

 

 

波動「触っていいってこと?」

 

 

九喇嘛『何処をどう聞いたらそうなるんだ!!』

 

 

ミト「ねじれ。九喇嘛をあまりからかわないでください。」

 

 

波動「からかってないよ、ミトちゃん! 本当に触ってみたいだけ!」

 

 

九喇嘛『なお悪いわ!』

 

 

天喰「波動さん……朝から九尾まで追い詰めてる……。」

 

 

通形「皆、元気があって良いな、環!」

 

 

天喰「ミリオは何を見ても前向きだな……。」

 

 

ミッドナイトが、生徒たちの前へゆっくりと歩み出る。

朝の空気の中でも、その存在感は全く薄れない。

 

 

ミッドナイト「さあ、かわいい1年生たち。今日からは昨日の遠足とは比較にならないほど、激しく、苦しく、熱い時間が始まるわよ。」

 

 

峰田「ミッドナイト先生に“熱い時間”って言われると、何か期待しちゃ――」

 

 

相澤「峰田。朝食を食べる前に土へ埋まりたいか。」

 

 

峰田「オイラは何も言ってません!!」

 

 

耳郎「最後まで言ってたじゃん。」

 

 

相澤は、全員を見渡す。

 

 

相澤「今回の訓練の目的は単純だ。各自の個性を、今までより一段階上へ引き上げる。」

 

 

緑谷「個性を……一段階上へ。」

 

 

相澤「個性は、身体機能の一部だ。筋肉と同じで、使えば負荷が掛かる。限界を越えて使い続け、その負荷へ身体を適応させれば、出力、持続時間、範囲、精度の上限を伸ばせる。」

 

 

ブラドキング「つまり、貴様らには今から自分の個性を、吐き気がするほど徹底的に使い込んでもらう!」

 

 

一同「…………。」

 

 

虎「昨日の森程度で満足するな! あれは現在の能力を確かめるための試験に過ぎん!」

 

 

ラグドール「皆の弱点は、あちきが昨日たーっぷり見つけたからね!」

 

 

B組「やっぱり全部見られてた!!」

 

 

相澤「目標は、夏休み前の自分が見れば異常だと思うほどの成長だ。」

 

 

爆豪「上等だ。」

 

 

轟「やる。」

 

 

緑谷「僕も……もっとワン・フォー・オールを自分の力として扱えるように。」

 

 

相澤「言っておくが、千手とうちはも例外ではない。」

 

 

柱間「無論ぞ!」

 

 

マダラ「俺たちに普通の個性訓練が通用すんのか?」

 

 

相澤「だから、二人には俺が専用の訓練を考えた。」

 

 

マダラ「へぇ。」

 

 

相澤「単純な出力を上げる必要はない。これ以上上げれば周囲が迷惑だ。」

 

 

上鳴「正論すぎる。」

 

 

相澤「お前たちが伸ばすべきなのは、制御、精度、持続力、状況判断。そして何より、周囲と合わせて力を使う能力だ。」

 

 

柱間「む……。」

 

 

マダラ「また細けぇ力の使い方か。」

 

 

相澤「I・アイランドで必要だっただろ。」

 

 

マダラ「……否定はしねぇ。」

 

 

相澤「扉間もだ。飛雷神に頼って、全て自分一人で処理しようとする癖を矯正する。」

 

 

扉間「俺だけ、個性ではなく人格の矯正まで含まれていませんか。」

 

 

ラグドール「あちきも同じ弱点を見つけたよ!」

 

 

扉間「……承知しています。」

 

 

ミッドナイト「素直でかわいいわね、扉間君。」

 

 

扉間「かわいいは不要です。」

 

 

ミッドナイト「冷たい顔をしているのに、内側は案外熱い子なのね。」

 

 

扉間「朝から妙な分析をしないでください。」

 

 

ミッドナイト「教師としての観察よ。」

 

 

扉間「信用できません。」

 

 

相澤「話を進める。配置は既に決めてある。全員、担当教員の指示に従え。」

 

 

 

 

 

 


 

 

・第一訓練区域・

 

ドガガガガガガガガガッ!!!!

 

早朝の静けさは、開始から五分で完全に消えた。

第一訓練区域では、爆豪勝己が両腕を湯気の立つ温水槽へ浸していた。

温めることで掌の汗腺を刺激し、ニトロのような汗の分泌量を増やす。

そこから間髪入れず、前方の標的へ爆破を連射する。

 

 

爆豪「オラァァァァァァッ!!!!」

 

 

ドドドドドドドドドドッ!!!!

 

 

相澤「威力だけで満足するな。爆発の中心を毎回同じ位置へ合わせろ。」

 

 

爆豪「分かってんだよ!!」

 

 

発目が用意した標的には、直径僅か5cmの赤い印が描かれている。

爆豪の爆破が、それを正確に捉え続ける。

発目「爆発温度、衝撃圧、中心誤差、全て記録中です!! 爆豪さん、もう少し右へ0.7度!」

 

 

爆豪「外野から細けぇんだよサポート女ァ!!」

 

 

発目「その細かさがベイビーを育てるんです!!」

 

 

パワーローダー「発目! 爆心地へ近づくな!」

 

 

その隣。

轟焦凍は、一方の身体を氷水へ浸しながら、反対側から高熱の炎を放っていた。

 

冷却。

 

加熱。

 

再び冷却。

 

互いの能力によって蓄積される身体の負担を、繰り返し相殺する。

 

 

轟「……まだ出力を上げられる。」

 

 

相澤「上げろ。ただし、左右の温度差で意識を失うな。」

 

 

轟「分かりました。」

 

 

炎が強くなる。

 

同時に氷も厚くなる。

 

その二つが衝突し、濃い蒸気が訓練場を覆った。

 

 

爆豪「蒸気こっちに寄越すな半分野郎!!」

 

 

轟「風向きは俺の責任じゃない。」

 

 

爆豪「テメェの炎と氷だろうが!!」

 

 

轟「爆破で飛ばせばいい。」

 

 

爆豪「指図すんなァ!!」

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

・第二訓練区域・

 

 

緑谷出久は、両腕と両脚へ発目製の負荷具を装着していた。

正面には、虎。

その後方には、複数の強化標的。

 

 

虎「来い、緑谷!」

 

 

緑谷「はい!」

 

 

ワン・フォー・オール。

 

フルカウル。

 

5%。

 

バチバチバチバチッ!!

 

緑色の稲妻を纏い、緑谷が走る。

虎の拳を回避。

背後へ回り込み、標的へ蹴りを放つ。

 

 

緑谷「スマッシュ!!」

 

 

ドゴンッ!!

 

 

虎「遅い!」

 

 

虎の軟体化した腕が、鞭のように伸びる。

緑谷の足首へ巻きつき、地面へ叩き落とした。

 

 

ズドンッ!!

 

 

緑谷「ぐっ!」

 

 

虎「動きを考えてから力を流すな! 判断と発動を一つにしろ!」

 

 

緑谷「はい!」

 

 

立ち上がる。

 

走る。

 

避ける。

 

蹴る。

 

何度も。

 

何度も。

 

腕を壊さず。

 

足を壊さず。

 

全身へ均一に力を流し続ける。

 

 

通形「緑谷君! 力を使う瞬間だけ身体を変えるんじゃない! 呼吸みたいに、常に自分の中へ置いておくんだ!」

 

 

緑谷「通形先輩!」

 

 

通形「俺も透過を意識して発動していた頃は、何度も地面へ落ちた! でも、繰り返せば考える前に身体が動くようになる!」

 

 

緑谷「はい! ありがとうございます!」

 

 

虎「話しながら止まるな!」

 

 

緑谷「はいっ!」

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

・第三訓練区域・

 

 

麗日お茶子は、複数の巨岩へ触れ、それらを無重力化していた。

巨岩は彼女の周囲を円を描くように回転している。

その中心で、お茶子自身も回転台へ固定されていた。

 

 

麗日「う、うう……気持ち悪い……。」

 

 

マンダレイ「まだ解除しちゃ駄目よ! 吐き気が限界へ達してから、さらに10秒!」

 

 

麗日「じゅ、10秒……!」

 

 

緑谷の姿が遠くに見える。

 

 

麗日「デク君も……頑張っとる……。ウチも……負けられへん……!」

 

 

隣では、蛙吹梅雨が舌へ重りを巻きつけ、湿った垂直壁を登っている。

 

 

蛙吹「舌が伸び切ってきついわ。ケロ。」

 

 

ピクシーボブ「まだまだ! 舌の射程と保持力を同時に伸ばすのよ!」

 

 

蛙吹「分かったわ。ケロ。」

 

 

さらにその横。

瀬呂範太は両肘からテープを放ち、巨大な巻き取り機の抵抗へ逆らって走る。

 

 

瀬呂「これ、腕ごと持ってかれるって!!」

 

 

発目「耐久性試験も兼ねています!!」

 

 

瀬呂「俺らの訓練か、テープの試験か、どっちだよ!?」

 

 

発目「両方です!!」

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

・第四訓練区域・

 

 

八百万百は、周囲に大量の高栄養食品を置かれながら、複雑な器具を次々と創造していた。

 

無線機。

 

救助用ワイヤー。

 

小型ジャッキ。

 

濾過装置。

 

指定された構造を、制限時間内に正確に作り出す。

 

 

ミッドナイト「次、油圧式切断機。設計を頭の中で組み立ててから、30秒以内。」

 

 

八百万「はい!」

 

 

隣では耳郎響香が、イヤホンジャックを巨大な岩へ突き刺している。

岩の反対側からは、複数の不規則な音が鳴らされていた。

小さな振動だけを識別し、その位置を答える訓練。

 

 

耳郎「右上2m……次は左奥……!」

 

 

ミッドナイト「もっと集中しなさい。戦場では悲鳴も爆音も同時に聞こえるわ。」

 

 

耳郎「分かってる……!」

 

 

芦戸三奈は、濃度の異なる酸を作り分け、複数の素材へ穴を開けていた。

 

 

芦戸「ヤオモモ! 次の耐酸容器お願い!」

 

 

八百万「今、作りますわ!」

 

 

耳郎「ヤオモモ、ウチのイヤホンジャックを保護する部品も後で頼める?」

 

 

八百万「もちろんです。ですが、お二人とも順番にお願いいたします!」

 

 

芦戸「ヤオモモ大人気!」

 

 

耳郎「作れる物が多すぎるんだよ。」

 

 

八百万「皆さんのお役に立てるのは嬉しいですが、脂質が……!」

 

 

砂藤「補給用の菓子なら作ってきた。」

 

 

八百万「ありがとうございます、砂藤さん!」

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

・第五訓練区域・

 

 

飯田天哉は、両脚へ重量器具を装着し、傾斜の激しい山道を走り続けていた。

エンジンの温度が上がれば、水を掛けて冷却。

再び走る。

 

 

飯田「まだだ! 委員長たる者、皆より先に音を上げるわけにはいかない!」

 

 

尾白猿夫は尻尾へ重りを括りつけ、岩を連続で打ち砕く。

 

 

尾白「はあっ! はあっ!」

 

 

切島鋭児郎は全身を硬化させたまま、虎の拳を受け続けていた。

 

 

虎「硬さだけではない! 持続時間を伸ばせ!」

 

 

切島「押忍!! もっと来てください!!」

 

 

ドゴンッ!!

 

 

切島「ぐおっ……まだだァ!!」

 

 

砂藤力道は砂糖を摂取し、巨大な岩を持ち上げて坂道を往復する。

糖分による強化時間を、少しでも長く保つための訓練。

 

 

砂藤「頭がぼんやりする前に……もう一往復!」

 

 

障子目蔵は複製腕を同時に幾つも生み出し、それぞれ異なる作業を続けている。

 

登攀。

 

索敵。

 

運搬。

 

防御。

 

 

障子「腕ごとに別の感覚を維持する……。」

 

 

口田甲司は、森に集められた多くの小動物を前にしていた。

 

小鳥。

 

兎。

 

栗鼠。

 

鹿。

 

 

口田「み、皆……あの印のところへ、行ってくれ。」

 

 

動物たちが一斉に動く。

しかし声量が小さく、遠くの動物には届かない。

 

 

マンダレイ「もっと腹から声を出して!」

 

 

口田「み、皆! あっちへ行って!お願い!」

 

 

小鳥たちが羽ばたく。

 

 

口田「……できた。」

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

・第六訓練区域・

 

 

上鳴電気は、複数の絶縁板と導電線の中央に立っていた。

指定された電圧だけを、それぞれ異なる標的へ流し込む。

 

 

上鳴「出しすぎたらウェーイになるし、弱いと届かねぇし……細かいの難しすぎんだろ!」

 

 

発目「だからこその訓練です!! 三番回路へ20%!」

 

 

上鳴「うおおおっ!」

 

 

電撃が走る。

三番だけでなく、四番の標的まで点灯した。

 

 

発目「誤差一系統です!」

 

 

上鳴「褒めてんの!?」

 

 

発目「全く褒めていません!!」

 

 

青山優雅は、腹部へ補助ベルトを巻きながら、ネビルレーザーを細く長く照射し続けていた。

 

 

青山「美しさとは……苦痛を越えた先にあるのさ……☆」

 

 

ギュイイイイイイイイイン!!

 

 

相澤「まだ切るな。」

 

 

青山「お腹が美しくない悲鳴を上げているよ……!」

 

 

葉隠透は、複数の照明と鏡が配置された区域で、光の進路を身体によって屈折させる訓練を受けていた。

 

 

葉隠「こっちの光を、あっちへ曲げる……えいっ!」

 

 

光線が僅かに逸れる。

 

 

ミッドナイト「今の感覚を覚えなさい。透明であることと、光を操ることは繋がっているわ。」

 

 

葉隠「何か必殺技できそう!」

 

 

峰田実は、自ら作った無数のもぎもぎ(粘着球)の間を、跳ねながら移動していた。

 

 

峰田「オイラの玉、いつもよりよく弾む! でも頭皮が痛ぇ!!」

 

 

ピクシーボブ「限界まで取って、再生速度と粘着力を上げるの!」

 

 

峰田「昨日、尊厳まで失ったのに、今日は頭皮まで失うのかよォ!!」

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

・暗所訓練洞窟・

 

 

洞窟の内部。

光をほとんど通さない暗闇。

その中央で、常闇踏陰が黒影と向き合っていた。

 

黒影「もっと出していいのかフミカゲ!?」

 

 

常闇「まだだ。力を膨らませながら、俺の命令を聞け。」

 

 

闇が濃いほど、黒影の力は強くなる。

だが、それに比例して制御も難しくなる。

洞窟の入口には、複数の可動式照明。

扉間がその明暗を不規則に切り替えていた。

 

 

扉間「暗闇だけで暴れるのでは意味がない。急激に光量が変わっても、出力を即座に調整しろ。」

 

 

常闇「承知した、扉間。」

 

 

照明が消える。

 

 

黒影「アイヨ!ウオオオオオッ!!」

 

 

巨体となった黒影が洞窟を満たす。

 

 

常闇「右の標的だけを砕け!」

 

 

黒影の腕が、正確に右側の標的へ叩き込まれる。

 

 

ドゴンッ!!

 

 

照明が点灯。

 

黒影が縮む。

 

 

扉間「反応が0.3秒遅い。もう一度だ。」

 

 

常闇「望むところだ。」

 

 

その横では、黒色支配が壁面の影から影へ移動しながら、常闇の動きを観察していた。

 

 

黒色「常闇。闇へ力を任せるのではなく、闇を従えるのか。」

 

 

常闇「否。従えるのではない。黒影は俺の半身だ。共に歩む。」

 

 

黒影「そうだ!」

 

 

扉間「会話は後にしろ。次を始める。」

 

 

常闇「相変わらず容赦がないな、扉間。」

 

 

扉間「合宿へ遊びに来たわけではない。」

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

・特別訓練区域・

 

 

通常の生徒用区域から、さらに離れた場所。

柱間とマダラの訓練場には、発目とパワーローダーが徹夜で設置した巨大な複合装置が並んでいた。

 

無数の小型標的。

 

救助用人形。

 

細い管。

 

動く輪。

 

重量計。

 

感知器。

 

森を模した障害物。

 

 

相澤「千手。お前は、同時に千本の苗木を発芽させろ。」

 

 

柱間「千本ならば容易いぞ!」

 

 

相澤「全て高さ15cm。幹の太さ、葉の枚数、根の長さも指定値から誤差1%以内だ。」

 

 

柱間「む。」

 

 

相澤「さらに、発芽させた後も成長を止めず、1時間その状態を維持しろ。その間、救助人形を森の中から回収する。」

 

 

柱間「一体ずつ状態を変えずに維持しながら、別の行動を行うのか。」

 

 

相澤「そうだ。お前の木遁は大規模すぎる。救助現場で必要なのは、80mの木人より、倒壊寸前の壁を1cmだけ持ち上げる木の方かもしれない。」

 

 

柱間は、僅かに目を見開いた。

やがて、力強く頷く。

 

 

柱間「うむ! よい修行ぞ!」

 

 

相澤「始めろ。」

 

 

柱間は両手を組む。

地面から、千本の小さな芽が一斉に顔を出した。

 

ポポポポポポポポポポポポンッ!!

 

しかし。

一本だけ、高さが16cmとなる。

 

 

発目「732番、誤差1cmです!!」

 

 

柱間「ぬおっ!?」

 

 

相澤「最初からやり直し。」

 

 

柱間「厳しすぎぬか!?」

 

 

相澤「千人の内、一人だけ助けられなくても同じことを言うのか。」

 

 

柱間「……言わぬ。」

 

 

再び印を結ぶ。

 

一方。

 

マダラの周囲には、数百個の小さな金属球が飛び回っていた。

それぞれが不規則に動き、時折、救助人形へ接近する。

 

 

相澤「うちは。須佐能乎の部分展開で、救助人形へ接触する球だけを止めろ。」

 

 

マダラ「フン、この程度か。」

 

 

相澤「ただし、骨格一つの大きさは直径3cm以下。写輪眼は通常状態まで。万華鏡は禁止。火遁も併用し、赤い球だけを焼き落とせ。」

 

 

マダラ「チッ、面倒くせェ訓練を考えやがったな。」

 

 

相澤「嫌なら、全ての球を一気に破壊して救助人形も吹き飛ばせばいい。」

 

 

マダラ「誰がやるか。」

 

 

写輪眼が開く。

三つの勾玉が回転。

青いチャクラが、糸よりも細く伸びる。

小さな須佐能乎の指。

 

骨の盾。

 

掌。

 

それらが幾つもの球だけを正確に弾いていく。

 

カンッ! キンッ! カンッ!

 

同時に。

 

マダラは口元へ指を添えた。

 

 

マダラ「火遁・鳳仙火の術。」

 

 

針のような火球が、赤い球のみを撃ち抜く。

 

 

ボッ! ボボッ! ボッ!

 

 

発目「同時制御数127! 誤射ゼロです!!」

 

 

相澤「まだ半分だ。」

 

 

マダラ「分かってるよ。」

 

 

その直後。

背後から一つの球が救助人形へ迫る。

 

 

ナオリ『主様。』

 

 

マダラ「言うな。」

 

 

須佐能乎の小指だけが背後へ伸び、寸前で球を止めた。

 

 

マダラ「後ろに立たれっと小便が止まっちまう繊細なタイプなんだよ、俺は。」

 

 

相澤「それを言える余裕があるなら、球を倍にする。」

 

 

マダラ「冗談の通じねェ教師だな。ったく…。」

 

 

柱間「マダラ! 732番の苗木だけ、何故か何度やっても1cm伸びるぞ!」

 

 

マダラ「テメェの意識がそっちへ寄りすぎてんだよ!」

 

 

柱間「ならばどうすればよい!?」

 

 

マダラ「全部同じだけを見るんじゃねェ! 一本ずつ別の木として感じろ!」

 

 

柱間「……!おお!なるほど!」

 

 

相澤は、僅かに目を細めた。

 

口では競い。

 

すぐに喧嘩を始める。

 

それでも。

 

互いの力を最も理解しているのは、やはり互いだった。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

・B組専用訓練区域・

 

 

B組もまた、それぞれの個性を限界まで使い続けていた。

拳藤一佳は、個性「大拳」により巨大化させた両拳で無数の岩を連続して砕く。

 

 

拳藤「はああああっ!!」

 

 

鉄哲徹鐵は、全身を鋼鉄化したまま高熱と低温を交互に浴び、耐久力を上げる。

 

 

鉄哲「もっと熱くていいぞォ!!」

 

 

ブラドキング「調子に乗るな! 金属疲労を起こす前に解除しろ!」

 

 

骨抜柔造は、広大な地面を次々と軟化させながら走る。

 

再び硬化。

 

軟化。

 

硬化。

 

範囲と速度を同時に高める。

 

 

骨抜「これ、足元まで柔らかくすると自分も沈むなぁ……。」

 

 

取蔭切奈は、身体を細かく分裂させ、木々の間を飛び回らせていた。

分離した部位の数と、操作距離の限界を伸ばす。

 

 

取蔭「右手、もっと遠く! 左目は上空!」

 

 

小森希乃子は、湿度の異なる区域へキノコの胞子を散布。

 

 

小森「乾いた場所でも育つノコ〜!」

 

 

塩崎茨は、無数の蔓を伸ばし、複数の標的を同時に拘束する。

 

 

塩崎「この荊もまた、人を傷つけるためではなく、救うための御手に……。」

 

 

物間寧人は、複数のクラスメイトから個性を順番にコピーし、切り替え時間と保持時間を計測されていた。

 

 

物間「僕の個性は他者がいてこそ完成する! つまり、僕はB組全員の可能性を――」

 

 

拳藤「説明しながら時間切れになってる!」

 

 

物間「何っ!?」

 

 

扉間は、そのさらに奥。

森全体へ配置された百本以上の飛雷神クナイの間を、連続して移動していた。

 

シュンッ!!

 

シュンッ!!

 

シュンッ!!

 

各地点には異なる標的。

 

負傷者役の人形。

 

味方役の動く標的。

 

敵役の機械。

 

扉間は瞬時に状況を判断し、必要な地点だけへ移動する。

 

だが。

 

今回は、一人で全てを処理してはならない。

 

 

扉間「拳藤! 東側の倒木を頼む!」

 

 

拳藤「了解!」

 

 

扉間「骨抜、西の進路を軟化! 鉄哲は救助人形を運べ!」

 

 

鉄哲「任せろ!」

 

 

扉間「黒色は暗所の敵性機械を止めろ! 柳、落下物を保持!」

 

 

柳「了解。少し重くてウラめしい。」

 

 

ミッドナイトは、訓練区域全体を見下ろしながら笑う。

 

 

ミッドナイト「昨日より随分、仲間を頼れるようになったじゃない、扉間君。」

 

 

扉間「必要な戦力を適切に配置しているだけです。」

 

 

ミッドナイト「そういうことにしておいてあげる。」

 

 

扉間「何ですか、その言い方は。」

 

 

ラグドール『扉間君! 北西地点で味方役二人が孤立!』

 

 

扉間「物間! 俺の影分身をコピーしろ!」

 

 

物間「えっ?」

 

 

扉間「今は説明している暇がない! さっさと来い!」

 

 

物間「命令口調なのは気に入らないが、仕方ないね!」

 

 

扉間へ触れる。

影分身の術をコピー。

 

 

物間「影分身の術!」

 

 

ボンッ!!

 

 

だが。

現れた分身は一体。

しかも物間本人と同じように、自信満々の顔で腕を組んでいる。

 

 

物間(分身)「さあ、称賛したまえ!」

 

 

拳藤「分身まで物間だ……。」

 

 

扉間「一体でも構わん。北西へ向かえ!」

 

 

物間「人使いが荒いな!?」

 

 

扉間「貴様の分身だ!」

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

・3年生特別訓練区域・

 

 

3年生組も、後輩たちを指導するだけではない。

通形ミリオは、地中、壁、障害物を連続して透過しながら、複数の救助人形を回収していた。

透過中は呼吸も視界も失われる。

全てを感覚と計算だけで繋げる。

 

 

通形「POWER!!」

 

 

地面から飛び出し、最後の人形を抱き上げる。

 

天喰環は、朝食で摂取した蛸、貝、鶏、植物の特徴を同時に再現していた。

 

蛸の触手。

 

甲殻。

 

翼。

 

蔓。

 

 

天喰「同時に出す数を……もっと増やす……。」

 

 

ミト「環。全てを強く発現させようとしないでください。それぞれの役割を分けるのです。」

 

 

天喰「役割……。」

 

 

ミト「防御には甲殻。捕縛には触手。移動には翼。全てを一つへ混ぜるのではなく、必要な部分へ必要な性質を。」

 

 

天喰「……うん。やってみる、うずまきさん。」

 

 

波動ねじれは空中へ浮遊しながら、巨大な波動を放つのではなく、針の穴ほどの輪へ極細の波動を通していた。

 

 

波動「細くすると、いつもよりぐるぐるが速い! 不思議!」

 

 

通形「波動さん、右へ逸れてるぞ!」

 

 

波動「本当だ! 通形君、見ててくれたの?」

 

 

通形「もちろん!」

 

 

波動「じゃあ、次はもっと細くするね!」

 

 

天喰「波動さん……張り切りすぎると、また出力が上がる……。」

 

 

ミトは、広場中央。

複数の小さな封印札を空中へ浮かせていた。

そこへ金剛封鎖の黄金の鎖を伸ばす。

 

札を壊さず。

 

触れず。

 

鎖の先端だけを、僅かな隙間へ通していく。

 

 

九喇嘛『右から三枚目、鎖が僅かに揺れたぞ。』

 

 

ミト「分かっています。」

 

 

九喇嘛『分かっているなら直せ。』

 

 

ミト「九喇嘛。教えてくださるのはありがたいのですが、もう少し穏やかにお願いします。」

 

 

九喇嘛『儂は優しく教えてるだろうが。』

 

 

波動「九喇嘛ちゃん、すっごく先生みたい!」

 

 

九喇嘛『ちゃんを付けるな!!ちゃんを!!』

 

 

ミトの周囲に、薄い橙色のチャクラが現れる。

 

九喇嘛のチャクラ。

 

だが、巨大化はしない。

 

僅かな量だけを全身へ均一に纏い、鎖と封印術の精度を高める。

 

 

九喇嘛『出しすぎるなよ、ミト。お前は細けェ制御になると、他人を気にして自分の負担を後回しにしやがる。』

 

 

ミト「……はい。」

 

 

九喇嘛『別に心配してるわけじゃねぇ。お前が倒れたら、儂まで面倒なことになるだけだ。』

 

 

ミト「分かっております。」

 

 

ミトは、僅かに微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

・林間合宿施設 調理広場 夕刻・

 

 

朝から始まった個性強化訓練は。

 

昼食を挟んでも。

 

午後になっても。

 

一切、終わらなかった。

 

生徒たちは限界を迎える。

 

そこからさらに個性を使う。

 

倒れれば水を掛けられ。

 

筋肉が悲鳴を上げれば、別の部位を動かし。

 

個性の反動が現れれば、回復するまで基礎体力を鍛えた。

 

そして。

 

日が沈み始めた頃。

 

ようやく訓練終了が告げられた。

 

 

一同「つ、疲れた……。」

 

 

緑谷は地面へ座り込み。

 

飯田はエンジンから湯気を上げ。

 

麗日は青い顔で口元を押さえ。

 

切島の硬化は所々剥がれ。

 

上鳴は完全な放心状態となっている。

 

 

上鳴「ウェーイ……山……ウェーイ……。」

 

 

耳郎「完全に放電しすぎてる。」

 

 

峰田「オイラ、もう玉一個も取れねぇ……頭が寒い……。」

 

 

爆豪「情けねぇ面してんじゃねぇぞ!!」

 

 

轟「爆豪も手が震えている。」

 

 

爆豪「震えてねぇ!!」

 

 

轟「箸を持てるのか。」

 

 

爆豪「テメェより上手く持てるわ!!」

 

 

相澤「夕食を作れ。」

 

 

一同「…………。」

 

 

相澤「聞こえなかったか。今日の夕食は、お前たち自身でカレーを作る。」

 

 

一同「今からァァァァァッ!?」

 

 

ピクシーボブ「合宿なんだから当然でしょ!」

 

 

マンダレイ「食材と道具は準備してあるわ。クラスを越えて協力しなさい。」

 

 

虎「食事の準備もまた、集団行動の訓練だ!」

 

 

ミッドナイト「疲れ切った身体で誰かのために動けるか。ヒーローには大切なことよ。」

 

 

物間「A組の雑な調理によって、B組の夕食まで破壊されないことを祈るよ。」

 

 

拳藤「だったら口じゃなくて手を動かす。」

 

 

料理担当。

 

火起こし担当。

 

米担当。

 

野菜担当。

 

食器担当。

 

生徒たちは疲れ切った身体を引きずりながら、役割を決めていく。

 

 

飯田「包丁を扱える者は、野菜の切り分けを!」

 

 

爆豪「貸せ。」

 

 

飯田「爆豪君?」

 

 

爆豪は包丁を掴む。

 

人参。

 

玉葱。

 

じゃがいも。

 

凄まじい速さで。

 

しかも大きさを完全に揃えて切り始めた。

 

 

トトトトトトトトトトトトッ!!

 

 

切島「すげぇ! 爆豪、めちゃくちゃ上手いじゃねぇか!」

 

 

上鳴「家庭的だな、爆豪!」

 

 

爆豪「殺されてェのか!!」

 

 

轟は、隣でじゃがいもの皮を剥いていた。

 

ただし。

 

皮と一緒に、実の三分の一ほどが消えている。

 

 

爆豪「半分野郎!! 剥きすぎだ!!」

 

 

轟「皮は取れている。」

 

 

爆豪「食うところまで取ってんだよ!! 貸せ!!」

 

 

轟「俺も練習する。」

 

 

爆豪「そのじゃがいもが消滅する前にやめろ!!」

 

 

麗日「爆豪君、何だかんだで教えてあげとる。」

 

 

緑谷「かっちゃん、昔から何でも器用だから。」

 

 

麗日「デク君も手ぇ止まっとるよ。玉葱お願い!」

 

 

緑谷「あっ、うん!」

 

 

芦戸と耳郎は、八百万が作った大型鍋を運んでいた。

 

 

芦戸「ヤオモモ! こっちの鍋、もう一個欲しい!」

 

 

耳郎「B組の分も一緒に作るなら、これじゃ足りないよ。」

 

 

八百万「分かりましたわ。ですが、先ほどから創造を続けておりますので、少し食事を――」

 

 

砂藤「これを食え。高カロリーのクッキーだ。」

 

 

八百万「助かります、砂藤さん!」

 

 

耳郎「ヤオモモの個性、料理でも便利すぎる。」

 

 

芦戸「一家に一人ヤオモモ!」

 

 

八百万「家電のように扱わないでください!」

 

 

柱間は、森から大量の薪を抱えて戻ってきた。

 

 

柱間「薪を持ってきたぞ!」

 

 

ミト「柱間様。多すぎます。」

 

 

柱間「足りぬよりよかろう!」

 

 

マダラ「柱間ァ。テメェ、森ごと持ってきてねェだろうな。」

 

 

柱間「落ちていた枝だけぞ!」

 

 

扉間は、水の量を正確に測って鍋へ入れている。

 

 

扉間「兄者。木遁で鍋の下を支えろ。火床が傾いている。」

 

 

柱間「うむ!」

 

 

マダラ「火は俺が点ける。」

 

 

ミト「マダラ様。通常の火打ち石を使ってください。」

 

 

マダラ「火遁の方が早ェだろ。」

 

 

ミト「鍋まで消し炭になります。」

 

 

マダラ「加減くらいできるってんだよ。」

 

 

柱間「先ほどの訓練で、赤い球を一つだけ焼いておったからの!」

 

 

マダラ「見てたのか。」

 

 

柱間「俺の苗木の横でやっておったではないか!」

 

 

扉間「会話は後だ。玉葱を持ってこい。」

 

 

マダラ「テメェ、最近兄貴に対する使いが荒くなってねぇか、扉間。」

 

 

扉間「働いていない者へ仕事を割り振っているだけだ。」

 

 

マダラ「俺は火を点けようとしてただろうが!」

 

 

ミト「口論している間に、ミリオが点けてくださいました。」

 

 

通形「火起こし完了!」

 

 

マダラ「…………。」

 

 

柱間「マダラ、仕事を取られたぞ!」

 

 

マダラ「柱間ァ!!」

 

 

少し離れた場所。

九喇嘛は岩の上へ座り、調理風景を眺めている。

 

 

波動「九喇嘛ちゃんは手伝わないの?」

 

 

九喇嘛『儂のこの身体で、何をしろってんだ。』

 

 

波動「火を吐くとか!」

 

 

九喇嘛『儂を竈扱いするな!!』

 

 

天喰「波動さん……九尾へ頼む仕事じゃない……。」

 

 

九喇嘛『それに、あのマダラがいるだろ。火なら奴にやらせろ。』

 

 

マダラ「聞こえてんぞ九喇嘛。」

 

 

九喇嘛『だったらさっさと働け。』

 

 

マダラ「テメェまで言うか。」

 

 

やがて。

複数の大鍋から、香辛料の豊かな香りが立ち上った。

 

炊き上がった白米。

 

肉。

 

人参。

 

玉葱。

 

じゃがいも。

 

クラス全員で作り上げたカレー。

 

 

一同《large》「いただきます!!」《/large》

 

 

緑谷「美味しい……!」

 

 

麗日「訓練の後やから、余計に美味しく感じるなぁ!」

 

 

飯田「自分たちで協力して作った成果でもある!」

 

 

爆豪「当然だ。俺が切った野菜だからな。」

 

 

轟「俺も切った。」

 

 

爆豪「テメェが切った分は、ほとんど消えただろうが!!」

 

 

轟「一つは残った。」

 

 

爆豪「誇るな!!」

 

 

通形「皆で作るカレーは最高だな、環!」

 

 

天喰「うん……美味しい。」

 

 

波動「ミトちゃん、九喇嘛ちゃんも食べる?」

 

 

九喇嘛『ちゃんを付けるな。だが、肉は多めにしろ。』

 

 

ミト「素直に食べたいと仰ればよいのではありませんか。」

 

 

九喇嘛『うるせェ。儂は味を確認してやるだけだ。』

 

 

ミト「はいはい。」

 

 

九喇嘛『子供扱いするな!』

 

 

その時。

マンダレイが、食卓の周囲を見回した。

 

 

マンダレイ「洸汰がいないわね。」

 

 

ピクシーボブ「また秘密基地じゃない?」

 

 

緑谷「秘密基地?」

 

 

マンダレイ「森の少し奥に、自分で見つけた洞窟があるの。あの子、気分が沈むとよくそこへ行くのよ。」

 

 

緑谷は、昨夜聞いた話を思い出す。

 

洸汰の両親。

ウォーターホース。

 

人々を救うために戦い。

 

ヴィランに命を奪われた、二人のプロヒーロー。

 

周囲は二人を英雄と称えた。

 

けれど。

 

幼い洸汰にとって、それは。

両親が帰ってこないという現実に、立派な名前を付けただけだった。

 

 

緑谷「……僕、持って行きます。」

 

 

マンダレイ「いいの?」

 

 

緑谷「はい。食べないと、明日もつらいと思うので。」

 

 

麗日「デク君、ウチも一緒に――」

 

 

緑谷「大丈夫。多分、大勢で行ったら、もっと嫌がると思う。」

 

 

麗日「……そっか。気をつけてね。」

 

 

緑谷「うん。」

 

 

緑谷は、カレーを一人分よそい。

水筒と一緒に盆へ載せた。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

・森の洞窟 洸汰の秘密基地・夜・

 

 

月明かりの差し込む森。

緑谷は、マンダレイに教えられた道を進んでいた。

 

少し開けた岩場。

 

その奥に、小さな洞窟がある。

 

入口には木の枝で作られた簡素な柵。

 

内部には毛布。

 

木箱。

 

小さな照明。

 

子どもが自分一人の世界を作るために集めた物が、幾つも置かれていた。

 

 

緑谷「洸汰君。」

 

 

洞窟の奥。

 

洸汰が膝を抱えて座っている。

 

 

洸汰「……何で来た。」

 

 

緑谷「夕食、食べてないって聞いたから。カレーを――」

 

 

洸汰「勝手に入るな!」

 

 

鋭い声。

緑谷の足が止まる。

 

 

洸汰「ここは俺の場所だ! ヒーロー志望の奴が、勝手に入ってくんな!」

 

 

緑谷「ご、ごめん。」

 

 

洸汰「カレーもいらねぇ。持って帰れ。」

 

 

緑谷「でも、何も食べないと――」

 

 

洸汰「余計なお世話だ!」

 

 

洸汰は立ち上がる。

 

緑谷を睨む。

 

その瞳にあるのは。

 

子どもらしい我が儘だけではない。

 

悲しみ。

 

怒り。

 

諦め。

 

 

洸汰「個性なんか持って、ヒーローとかヴィランとか名乗って、力を見せびらかして……皆、頭おかしいんだよ。」

 

 

緑谷「……。」

 

 

洸汰「誰かを助けるとか言って、結局は死んだら終わりじゃねぇか。残された奴のことなんか、誰も考えてねぇ。」

 

 

緑谷は、すぐに反論できなかった。

 

ヒーローを夢見る自分。

 

オールマイトを追い続けた自分。

 

救われた人々。

 

けれど。

 

救うために戦った者が帰らなかった時。

 

その家族に残るものを。

 

自分は、本当に理解しているのか。

 

 

緑谷「……ごめん。」

 

 

洸汰「何でお前が謝るんだよ。」

 

 

緑谷「勝手に入ったこと。それから……君が嫌がってるのに、僕の考えを押しつけそうになったこと。」

 

 

洸汰「……。」

 

 

緑谷は、盆を洞窟の入口近くへ置いた。

 

緑谷「カレーは、ここへ置いていくね。食べたくなかったら、食べなくてもいい。」

 

 

洸汰「持って帰れって言っただろ。」

 

 

緑谷「うん。でも、冷めるまでは置かせて。君が食べなかったら、後で僕が片づけるから。」

 

 

洸汰「……変な奴。」

 

 

緑谷「よく言われる。」

 

 

緑谷は、無理に笑いかけなかった。

静かに背を向ける。

 

 

洸汰「おい。」

 

 

緑谷が振り返る。

 

洸汰「俺は、ヒーローなんか好きにならねぇからな。」

 

 

緑谷「……うん。」

 

 

洸汰「お前らが何をしたって、好きにならねぇ。」

 

 

緑谷「分かった。」

 

 

それ以上は言わず。

 

緑谷は洞窟を出た。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

・秘密基地付近 森の上空・

 

 

緑谷が合宿所へ戻っていく。

その背を。

高い木の枝に留まっていたナオリが、静かに見送っていた。

 

現在は極縮小化状態。

 

夜間の巡回と周辺警戒を行っていたのだ。

 

だが。

その時。

 

風向きが変わった。

 

ヒュウウウウウウ……。

 

ナオリの瞳が開く。

 

 

ナオリ『……この匂い。』

 

 

土。

 

夜露。

 

樹木。

 

カレー。

 

人間。

 

様々な匂いの奥に。

 

極めて微かな。

 

懐かしい匂いが混ざっていた。

 

 

ナオリ『間違いございません。』

 

 

翼を広げる。

 

だが、飛び立つ前に。

 

下方から声がした。

 

 

マダラ「行くのか。」

 

 

木の根元。

 

マダラが腕を組んで立っていた。

 

 

ナオリ『主様。』

 

 

マダラ「昨日の連中だろ。」

 

 

ナオリ『はい。距離が急速に縮まっております。』

 

 

マダラ「俺も行く。」

 

 

ナオリ『危険はないと思われます。』

 

 

マダラ「会ったこともねぇ奴を、どう判断した。」

 

 

ナオリ『気配に悪意はございません。』

 

 

マダラ「なら、俺は邪魔しねぇ。だが――」

 

 

写輪眼が、一瞬だけ赤く灯る。

 

 

マダラ「お前が嫌な思いをするなら、連れて帰る。」

 

 

ナオリは数秒、黙った。

 

やがて。

 

静かに頭を下げる。

 

 

ナオリ『ありがとうございます、主様。』

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

・林間合宿地より北西 3km地点・

 

 

木々の途切れた小さな岩場。

月光が降り注ぐ。

 

その中央に。

一羽の巨大な猛禽が佇んでいた。

 

全高8m強。

 

翼幅16m強。

 

逞しい体躯。

 

鋭い鉤爪。

 

ハルパゴルニスオウギワシ特有の、圧倒的な威厳。

 

だが。

その頭部には。

 

猛禽の姿とあまりにも不釣り合いな、洒落たつば付きハットが載せられていた。

 

猛禽は地面へ嘴を近づけ。

何度も匂いを嗅いでいる。

 

 

???『近ぇ……! 間違いねぇ!』

 

 

顔を上げる。

 

 

???『この匂いはよォ~~~!! 嵐の後に残る澄んだ空気! 高い山の頂でしか嗅げねぇ誇り! そして何より、俺を拾い上げてくれたあの日と何一つ変わらねぇ、優しい匂いだァ!!』

 

 

背後の四次元空間ポケットへ嘴を入れる。

何かを取り出そうとする。

 

 

???『再会の贈り物を……これじゃねぇ!』

 

 

出てきたのは。

巨大な銀色の鍋。

 

 

???『何で鍋が先に出るんだァ!?』

 

 

もう一度、嘴を入れる。

今度は、赤い傘。

 

 

???『これでもねぇ!!』

 

 

三度目。

古びた木製の玩具。

猛禽の動きが止まる。

 

それは。

幼い雛が遊ぶために作られた、小さな鳥の玩具だった。

 

 

???『……まだ、残ってやがったのか。』

 

 

その時。

木々の奥から、羽音が聞こえた。

 

バサッ……。

 

猛禽が顔を上げる。

月明かりの下。

 

弱縮小化状態となったナオリが、ゆっくりと降り立った。

 

全高5m強。

 

翼幅10m強。

 

青白い瞳。

 

気高き翼。

 

長い年月を経ても、決して見間違えるはずのない姿。

 

 

ナオリ『……イーグルワゴン。』

 

 

つば付きハットの猛禽は。

 

動かなかった。

 

声も出なかった。

 

ただ。

 

大きく目を見開き。

 

ナオリを見つめている。

 

 

ナオリ『お久しぶりでございます。』

 

 

イーグルワゴン『…………。』

 

 

ナオリ『大きくなりましたね。』

 

 

その一言で。

 

猛禽の眼から。

 

大量の涙が溢れた。

 

 

イーグルワゴン『ナオリさァァァァァァァァァァァァァァァん!!!!』

 

 

ドドドドドドドドドドドドドッ!!!!

 

 

イーグルワゴンが突進する。

 

 

マダラ「おい。」

 

 

ナオリ『問題ございません。』

 

 

巨大な翼がナオリを包み込む。

 

抱擁。

 

猛禽同士でありながら。

 

それは、長く離れていた親子が再会する姿そのものだった。

 

 

イーグルワゴン『生きてた……! 本当に生きてたんですねぇ、ナオリさん!! 俺ァ……俺ァよォ!! あんたが日本へ行ったって聞いてから、空を飛ぶたびに探してたんだ!!』

 

 

ナオリ『申し訳ございません。私は、自らの事情を整理することに時間を要し、故郷へ連絡することができませんでした。』

 

 

イーグルワゴン『謝らねぇでくれ!! あんたが生きてた! それだけでいいんだ!!』

 

 

ナオリ『イーグルワゴン。』

 

 

イーグルワゴン『あの日、親に捨てられて! 腹を空かせて! 蛇や獣に食われるのを待つしかなかった俺を! あんたは拾ってくれた!!』

 

 

声が震える。

 

 

イーグルワゴン『“生きなさい”って言ってくれた! 飛び方も! 戦い方も! 仲間を守る方法も! 全部、ナオリさんが教えてくれたんだ!!』

 

 

月光の中。

 

遠い昔の記憶が蘇る。

 

まだ小さかった、一羽の雛。

 

巣から捨てられ。

 

雨に打たれ。

 

泥の中で震えていた。

 

その前へ。

 

一羽の気高き天空の女王が降り立った。

 

当時のナオリもまた。

 

愛する夫を事故で失い。

 

深い悲しみの中にいた。

 

それでも。

 

目の前の小さな命へ、翼を差し伸べた。

 

 

ナオリ『あなたは、私が救ったのではありません。』

 

 

イーグルワゴン『え……?』

 

 

ナオリ『生きることを諦めなかったあなた自身が、私の翼を掴んだのです。そして――』

 

 

ナオリの翼が、イーグルワゴンの背を優しく包む。

 

 

ナオリ『あなたを育てることで、私もまた救われておりました。』

 

 

イーグルワゴン『ナオリさん……!』

 

 

イーグルワゴンは、さらに泣いた。

 

 

マダラ「……随分と泣き虫な鳥だな。」

 

 

イーグルワゴン『あァ!?』

 

 

初めて。

 

イーグルワゴンが、ナオリの後方に立つマダラへ気づいた。

 

涙を拭い。

 

鼻を鳴らす。

 

 

イーグルワゴン『この匂いは……!』

 

 

マダラ「何だ。」

 

 

イーグルワゴンは、大きく鼻を動かす。

 

 

イーグルワゴン『血と戦場! 古い怒り! 誰よりも強ぇ自尊心! だが、その奥に隠してやがるのは、仲間を失うことへの馬鹿みてぇな恐怖!!』

 

 

マダラ「…………。」

 

 

イーグルワゴン『善人か悪人かで分けりゃ、どっちの匂いもする! だが、ナオリさんが安心して背中を預けてる!! なら、答えは一つだ!!』

 

 

イーグルワゴンは、深く頭を下げた。

 

 

イーグルワゴン『あんたが、マダラの旦那ですね!!』

 

 

マダラ「旦那?」

 

 

ナオリ『イーグルワゴン。こちらが、現在私がお仕えしている主様、うちはマダラ様です。』

 

 

イーグルワゴン『やっぱりかァ!! ナオリさんが主と認める男なんざ、世界中探したって何羽……いや、何人もいねぇ!!』

 

 

マダラ「声がでけェ。」

 

 

イーグルワゴン『すいやせん、マダラの旦那!!』

 

 

マダラ「謝る声もでけェ。」

 

 

イーグルワゴン『こいつァ生まれつきでして!!』

 

 

マダラ「面倒な奴を育てたな、ナオリ。」

 

 

ナオリ『幼少期は、もう少し静かでございました。』

 

 

イーグルワゴン『ナオリさん!?』

 

 

その時。

遠くの空が光った。

 

ピカッ!!

 

続いて。

雷鳴ではない。

 

何百もの翼が同時に空気を打つ、巨大な羽音。

 

バサァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!

 

月が隠れる。

 

空一面を。

 

猛禽の大軍団が覆っていた。

 

 

イーグルワゴン『あ。』

 

 

マダラ「あ?」

 

 

ナオリ『この気配は……。』

 

 

上空から。

山々を震わせるほどの声が降ってきた。

 

 

???『イーグルワゴォォォォン!! 貴様ァァァ!! 勝手に先行してナオリとの再会を独占するとは何事だァァァァァァァ!!!!』

 

 

イーグルワゴン『げっ。』

 

 

マダラ「何だ、あれは。」

 

 

雲を突き破り。

一羽の超巨大なハルパゴルニスオウギワシが降下する。

 

全高30m強。

 

翼幅60m強。

 

頭部には軍帽。

 

胸部、翼、脚部から。

 

金属装甲。

 

砲身。

 

刃。

 

機械式アーム。

 

無数の高次元武装が展開していた。

 

 

???『待たせたなァ、ナオリ!!』

 

 

ズドォォォォォォォォォォォン!!!!

 

 

着地。

 

大地が揺れる。

 

木々が大きく傾く。

 

 

ナオリ『ハーストハイム。』

 

 

ハーストハイム『フハハハハハハハハハハッ!! その通り!! オウギワシ一族におけるハルパゴルニス一族、旧族長!! ハーストハイム親衛財団団長兼総帥!!』

 

 

胸を張る。

 

 

ハーストハイム『ルドル・フォン・ハーストハイムであるゥゥゥゥゥゥ!!!!』

 

 

ドォォォン!!

 

 

背後の空。

数百羽の巨大猛禽類が、軍隊のように整列する。

 

 

ハーストハイム『前方戦闘親衛隊!!』

 

 

前列の猛禽たちが翼を広げる。

 

 

親衛隊員『『『キィィィィィィィン!!!!』』』

 

 

ハーストハイム『後方戦闘親衛隊!!』

 

 

第二列が旋回。

 

 

ハーストハイム『戦闘支援財団隊!! 戦闘教育財団隊!! 戦闘司令総合隊!!』

 

 

全軍が一斉に隊列を変える。

 

 

バサァァァァァァァァァァァァァッ!!!!

 

 

ハーストハイム『これぞォ!! 猛禽類によって構成された、世界最高峰の支援・研究・戦闘・救助大財団!! ハーストハイム親衛財団であるゥゥゥゥゥゥ!!!!』

 

 

マダラ「…………。」

 

 

イーグルワゴン『相変わらず、初対面で全部説明しやがる。』

 

 

ナオリ『相変わらずでございますね。』

 

 

ハーストハイム『ナオリ!!』

 

 

ナオリ『はい。』

 

 

ハーストハイム『貴様ァ!! 永遠の好敵手であるこのハーストハイムへ、一言も告げず日本へ渡るとは何事だ!!』

 

 

ナオリ『申し訳ございません。』

 

 

ハーストハイム『だが、生きていたッ!!!』

 

 

ナオリ『はい。』

 

 

ハーストハイム『ならば全て良しィィィ!!!』

 

 

ナオリ『ありがとうございます。』

 

 

ハーストハイムの眼にも。

 

僅かに涙が浮かんでいた。

 

だが。

 

彼はそれを隠すように、さらに胸を張る。

 

 

ハーストハイム『決して泣いてなどおらん!! これは高度10000m飛行時に蓄積した眼球保護液である!!』

 

 

イーグルワゴン『普通に涙って言えやァ!!』

 

 

ハーストハイム『貴様に言われたくないわァ!! 先ほど山一つ向こうまで聞こえる声で泣いていただろうが!!』

 

 

イーグルワゴン『ナオリさんとの再会だぞ!? 泣くだろうが普通!!』

 

 

ハーストハイム『このハーストハイムとて泣きたかったわァ!!』

 

 

イーグルワゴン『やっぱ泣いてんじゃねぇか!!』

 

 

ハーストハイム『泣いておらん!!』

 

 

マダラ「本当に騒がしいな。」

 

 


 

 

 

 

 

 

 

・林間合宿施設 中央広場・

 

 

大地の振動。

 

山を覆う巨大な影。

 

そして。

 

遠くから聞こえる、あまりにも大きな叫び声。

 

当然。

 

合宿所にいた者たちが気づかないはずがなかった。

 

 

マンダレイ『全員、広場へ集合! 北西方向から巨大な飛行生物の集団が接近中!』

 

 

テレパスによる声が、全員の脳内へ届く。

 

 

爆豪「敵か!?」

 

 

相澤「まだ判断するな! 戦闘準備だけ整えろ!」

 

 

A組。

 

B組。

 

3年生組。

 

教師陣。

 

プッシーキャッツ。

 

全員が広場へ飛び出してくる。

 

 

常闇「夜空を埋め尽くす翼……闇の軍勢か。」

 

 

黒影「デカい鳥がいっぱいだぜフミカゲ!」

 

 

上鳴「説明そのまんま!!」

 

 

緑谷「翼幅10m以上と思われる猛禽が数百羽!? しかも全個体が一定間隔の編隊飛行を維持している! 軍事訓練を受けてるのか!? 装備らしき物も――」

 

 

飯田「緑谷君! 分析は後だ!」

 

 

葉隠「月が見えないよ!」

 

 

芦戸「何あれ!? 鳥の空軍!?」

 

 

耳郎「叫び声までここに届いてるんだけど。ウチの耳、塞いでも意味ない……!」

 

 

八百万「生体と機械が一体化しておりますわ……。あの中央の個体、体内から武装を生成しているのでしょうか。」

 

 

発目「ベイビーですゥゥゥゥ!!!」

 

 

パワーローダー「発目、待て!!」

 

 

発目は、巨大な工具箱を担いで空へ手を伸ばしている。

 

 

発目「あの巨大鳥さんそのものが、究極の生体型ベイビーです!! 一度でいいので内部構造を!!」

 

 

パワーローダー「分解する気で近づくな!!」

 

 

通形「でも、ナオリさんと似ているな。」

 

 

天喰「似てるけど……数が怖い……。空から見下ろされてる……俺は石になりたい……。」

 

 

波動「大きい! いっぱい! 帽子被ってる! 武器が生えてる! 何で? どうやって? 中は機械? 鳥? 不思議!!」

 

 

ミトの肩。

 

九喇嘛が毛を逆立てる。

 

九喇嘛『何だ、あのやかましい羽根の群れは。数だけは多いな。』

 

 

ミト「九喇嘛。悪意は感じますか?」

 

 

九喇嘛『今のところ、殺気は薄い。だが、中央のデカブツは儂より声がうるせぇ。』

 

 

ミッドナイト「巨大な猛禽の軍団……しかも軍帽に武装。随分と刺激的な来客ね。」

 

 

相澤「刺激で済ませないでください。」

 

 

マンダレイ「ナオリさんとマダラ君の姿も一緒に確認できたわ!」

 

 

相澤「なら、敵ではない可能性が高い。全員、先制攻撃は禁止だ。」

 

 

虎「だが警戒は解かん!」

 

 

ピクシーボブ「私の管轄の森へ、あんな大軍で来るなら事前連絡くらいしてほしいんだけど!?」

 

 

ラグドール「あちきのサーチ、情報が多すぎて頭がいっぱい!」

 

 

やがて。

 

マダラとナオリ。

 

イーグルワゴン。

 

強縮小化によって全高5m強となったハーストハイム。

 

さらに超縮小化や強縮小化によって大きさを抑えた親衛財団員たちが、広場へ降り立った。

 

 

バサァァァァァァァッ!!!!

 

 

相澤「うちは、説明しろ。」

 

 

マダラ「俺に聞くな。俺もさっき会ったばかりだ。」

 

 

ナオリ『皆様。ご心配をお掛けして、申し訳ございません。』

 

 

マンダレイ「ナオリさんの知り合いなの?」

 

 

ナオリ『はい。こちらは、私が故郷パナマで暮らしていた頃の育て子、ロバート・M・S・イーグルワゴン。』

 

 

イーグルワゴンは、超縮小化状態。

 

全高1m強。

 

翼幅2m強となって、洒落た帽子を整えた。

 

 

イーグルワゴン『お初にお目にかかるぜ、雄英高校の皆さんよォ!! 俺はロバート・M・S・イーグルワゴン!! ナオリさんに命を拾われ、育てられた男……じゃねぇ、ハルパゴルニスオウギワシだ!!』

 

 

上鳴「鳥なのに、喋り方が人間より濃い!」

 

 

耳郎「声も濃い。」

 

 

イーグルワゴン『そっちの金髪の兄ちゃん! 善人の匂いはするが、軽率な電気と女好きの匂いもするぜェ!!』

 

 

上鳴「匂いでそこまで分かるの!?」

 

 

耳郎「当たってる。」

 

 

イーグルワゴン『耳にジャックのある嬢ちゃんは、口は辛ぇが仲間思いの匂いだ!!』

 

 

耳郎「勝手に嗅がないでくれる!?」

 

 

イーグルワゴン『ピンクの嬢ちゃんは明るい! だが、時々空気を読まずに踏み込む匂い!』

 

 

芦戸「匂いで性格診断してる!」

 

 

八百万「科学的原理が全く分かりませんわ……。」

 

 

緑谷「嗅覚による感情、ホルモン、発汗成分の分析!? それとも神通力による精神情報の補完!?」

 

 

イーグルワゴン『緑の兄ちゃん! 分析癖が強すぎて、口より先に頭が走る匂いだァ!!』

 

 

緑谷「匂いに出てる!?」

 

 

爆豪「うるせぇクソ鳥!!」

 

 

イーグルワゴン『おおっとォ!! 爆薬の匂い! 短気! 負けず嫌い! だが誰よりも勝つことへ真っ直ぐな少年だなァ!!』

 

 

爆豪「燃やすぞ!!」

 

 

マダラ「やめとけ爆豪。話が長くなる。」

 

 

イーグルワゴン『そしてマダラの旦那!!』

 

 

マダラ「呼ぶな。」

 

 

イーグルワゴン『ナオリさんの現在の主!! 強さは底知れず!! 態度はデカい!! 口も悪い!! だが、ナオリさんへの信頼は本物だァ!!』

 

 

マダラ「最後以外、喧嘩売ってんのか。」

 

 

柱間「ガハハハ! よく見ておるではないか!」

 

 

イーグルワゴンは、柱間へ鼻を向ける。

 

 

イーグルワゴン『こっちは……何だァ!? 森! 大地! 命! とんでもなく濃い生命の匂い!! だが、警戒心が薄すぎる!!』

 

 

柱間「俺は千手柱間ぞ! よろしくな!」

 

 

イーグルワゴン『マダラの旦那と正反対なのに、根っこの匂いは似てやがる!!』

 

 

マダラ「俺を柱間と一緒にすんな。」

 

 

柱間「根は似ておるらしいぞ!」

 

 

マダラ「嬉しそうにすんなァ!」

 

 

ナオリ『そして、こちらが――』

 

 

ハーストハイムが、一歩前へ出る。

 

ガシャガシャガシャガシャッ!!

 

胸部装甲が開く。

 

翼から砲身。

 

脚部から刃。

 

背から巨大な機械式アーム。

 

全身が瞬時に、移動要塞のような姿へ変貌した。

 

一同「!?」

 

相澤が捕縛布を構える。

 

爆豪が掌を開く。

 

轟が右半身へ炎を灯す。

 

だが。

 

 

ハーストハイム『紹介用礼砲形態である!!』

 

 

マダラ「今すぐ戻せ。」

 

 

ハーストハイム『何故だ!?』

 

 

マダラ「全員、攻撃だと思ってる。」

 

 

ハーストハイム『む。』

 

 

武装が全て収納される。

 

ガシャンッ!!

 

 

ハーストハイム『そいつは失礼したァァ!!』

 

 

相澤「失礼で済む規模じゃない。」

 

 

ハーストハイムは軍帽を整え、翼を大きく広げた。

 

 

ハーストハイム『我こそがァ!! ルドル・フォン・ハーストハイム!! ハルパゴルニス一族の旧族長にして、ハーストハイム親衛財団団長兼総帥!!』

 

 

上鳴「説明がイーグルワゴンよりうるせぇ!!」

 

 

ハーストハイム『我が肉体には、高次元武装化を可能とする究極重厚城塞機関!! さらに、特殊重油を永久生成する究極重質禽骨油永久生成機関が内蔵されている!!』

 

 

八百万「きゅ、究極重厚……?」

 

 

発目「もっと詳しくお願いします!!」

 

 

ハーストハイム『良いだろう、発明の小娘!!』

 

 

パワーローダー「説明しなくていい!」

 

 

ハーストハイム『近距離!! 中距離!! 遠距離!! あらゆる兵器を肉体から生成し、攻防支援の全てを一羽で完結!! これこそ――』

 

 

大きく息を吸う。

 

 

ハーストハイム『我がパナマの科学力は世界一ィィィィィィィィ!!!!』

 

 

ドォォォォォォォォン!!!!

 

 

山彦が、何度も反響した。

 

 

山彦『世界一ィィィ……一ィィィ……。』

 

 

耳郎「耳が痛い!!」

 

 

上鳴「プレゼント・マイク先生よりうるせぇ!!」

 

 

常闇「闇すら退ける声量……。」

 

 

口田「……鳥たち、びっくりしてる。」

 

 

森中の小鳥が、一斉に飛び立っていた。

 

 

ピクシーボブ「私の管轄の動物を驚かせないで!!」

 

 

ハーストハイム『何!?そいつは申し訳ない!!』

 

 

ピクシーボブ「謝る声も大きい!!」

 

 

イーグルワゴン『だから俺が静かにしろって言っただろうが!!』

 

 

ハーストハイム『貴様にだけは言われたくないわァ!!』

 

 

九喇嘛『……何だ、この羽根ども。』

 

 

ハーストハイムが、九喇嘛を見る。

 

 

ハーストハイム『ほう!! 小さいながらも、極めて高密度のエネルギー!! 貴様が九尾か!!』

 

 

九喇嘛『儂を小さいと言うな。今はこういう姿を取ってるだけだ。』

 

 

イーグルワゴン『こいつァ凄ぇ!! 身体は小さくても、匂いだけで山が震えそうだ!!』

 

 

九喇嘛『鼻を近づけるな!!』

 

 

波動「九喇嘛ちゃんと大きい鳥たち、仲良くなれそう!」

 

 

九喇嘛『何処を見たらそう思えるんだ!!』

 

 

通形は、笑顔で一歩前へ出る。

 

 

通形「俺は通形ミリオ! ナオリさんの大切な仲間なら、俺たちも歓迎するよ!」

 

 

天喰「ミリオ……警戒が薄い……。」

 

 

通形「ナオリさんが信じてるからな!」

 

 

ハーストハイム『見事な胆力!! 金色の若者よ、俺はお前を気に入った!!』

 

 

通形「ありがとう!」

 

 

天喰「すぐ仲良くなってる……。」

 

 

波動「私は波動ねじれ! ハーストハイム君の中、どうなってるの? 兵器は何種類? 翼で飛べるのに推進器もある? 重油は飲める? 固まる? 匂いは? 不思議!」

 

 

ハーストハイム『フハハハハ!! 良い質問量だ!! 一つずつ説明しよう!!』

 

 

天喰「説明したら朝になる……。」

 

 

ミトは、丁寧に一礼する。

 

 

ミト「うずまきミトと申します。ナオリさんの大切なご縁であるならば、私からも歓迎いたします。」

 

 

イーグルワゴン『礼儀正しい嬢ちゃんだ! それに、この匂い……生命力と封印の気配が混ざってやがる!』

 

 

九喇嘛『ミトを勝手に嗅ぐな、帽子鳥。』

 

 

イーグルワゴン『おっと、すまねぇ九尾の旦那!』

 

 

九喇嘛『旦那はやめろ!』

 

 

扉間は、親衛財団の編成を静かに観察していた。

 

 

扉間「指揮系統は五つ。前衛、後衛、支援、教育、総合司令。大軍でありながら、着地後も隊列が乱れていない。」

 

 

ハーストハイム『銀髪の若者!! 貴様は戦術を見る眼を持っているな!!』

 

 

扉間「千手扉間だ。」

 

 

ハーストハイム『マダラより聞いている!! 高速時空間移動と冷徹な戦術判断を扱う者!!』

 

 

扉間「マダラ、何処まで話した。」

 

 

マダラ「何も話してねぇ。」

 

 

イーグルワゴン『俺の地獄鼻と、ハーストハイムの地獄感で分かるんだ!!』

 

 

扉間「鼻と触覚だけで、術まで見抜くな。」

 

 

ハーストハイム『説明しよう!! 我が地獄感は、空気、地面、音波、熱、電磁的変動、極微細な圧力差を統合し――』

 

 

扉間「説明は不要だ。」

 

 

ハーストハイム『何ィィィィィ!?まだ序章だぞ!?』

 

 

扉間「なお不要だ。」

 

 

ミッドナイトは楽しそうに、二羽を見比べる。

 

 

ミッドナイト「熱血解説鳥が二羽。合宿がさらに賑やかになりそうね。」

 

 

相澤「賑やかで済めばいいんですが。」

 

 

相澤はナオリへ向き直る。

 

 

相澤「ナオリさん。この方々は、日本での活動許可や入国手続きを済ませていますか。」

 

 

ハーストハイム『無論だ!!』

 

 

相澤「あなたには聞いていない。」

 

 

ハーストハイム『何故だ!?』

 

 

ナオリ『国際空域通過および大型生物入国に関する正式申請は、親衛財団の事務局を通じて行われているようです。』

 

 

イーグルワゴン『書類だけで四次元ポケット一個埋まったぜ!!』

 

 

相澤「なら、後で確認します。それまでは全員、施設周辺で待機。勝手な飛行と武装展開は禁止です。」

 

 

ハーストハイム『了解した、眠たげな指揮官!!』

 

 

相澤「相澤です。」

 

 

ハーストハイム『了解した、相澤!!』

 

 

相澤「声量を半分に。」

 

 

ハーストハイム『了解した!!』

 

 

相澤「それで半分か……。」

 

 

ブラドキング「根津校長へ連絡を入れる必要があるな。」

 

 

数分後。

 

通信端末の画面に、根津の姿が映った。

 

状況を聞いた根津は、驚きながらも興味深そうに目を細めている。

 

 

根津『なるほど。ナオリ君の故郷から来た、組織化された知性ある大型猛禽の財団か。非常に興味深いね。』

 

 

相澤「校長。楽しそうにしないでください。」

 

 

根津『正式書類を確認したところ、入国手続きは済んでいる。救助・研究財団として国際的な活動実績もあるようだ。ただし、合宿への参加は現場責任者の判断へ任せるよ。』

 

 

相澤「帰すと言っても、帰らないでしょうね。」

 

 

ハーストハイム『ナオリを見つけたばかりで帰れるものか!!』

 

 

イーグルワゴン『俺も帰らねぇぜ!!』

 

 

相澤「でしょうね。」

 

 

マンダレイ「施設の周囲なら、広い訓練用空地があるわ。ただし、森と動物を傷つけないこと。」

 

 

ピクシーボブ「土魔獣ちゃんへ勝手に兵器を試さないこと!」

 

 

虎「生徒の訓練へ無許可で介入しないこと!」

 

 

ラグドール「あちきのサーチへ一度に何百羽も情報を流し込まないこと!」

 

 

ハーストハイム『全条件、了承した!!』

 

 

相澤「なら、暫定的に滞在を許可します。」

 

 

イーグルワゴン『ありがてぇ!!』

 

 

ナオリ『皆様。寛大なご判断に感謝いたします。』

 

 

ハーストハイムは、マダラの前へ進む。

 

 

ハーストハイム『うちはマダラ。』

 

 

マダラ「何だ。」

 

 

ハーストハイム『ナオリが貴様を主と認める理由、このハーストハイム自身の眼と感覚で確認させてもらった。』

 

 

マダラ「一度会っただけで何が分かる。」

 

 

ハーストハイム『全ては分からん!!』

 

 

マダラ「堂々と言うな。」

 

 

ハーストハイム『だが、ナオリが貴様の隣で、かつてより穏やかな目をしている!! それで十分だ!!』

 

 

ナオリ『ハーストハイム。』

 

 

ハーストハイム『故に、このハーストハイムと親衛財団は、ナオリの選択を尊重する!! 必要とあらば、貴様の戦いにも力を貸そう!!』

 

 

イーグルワゴン『俺もだ、マダラの旦那!! ナオリさんがあんたの相棒なら、俺にとっても無関係じゃねぇ!!』

 

 

マダラは。

 

二羽を静かに見た。

 

そして。

 

鼻を鳴らす。

 

 

マダラ「勝手にしろ。」

 

 

柱間「おお! 仲間が増えたぞマダラ!」

 

 

マダラ「柱間。テメェが仕切るな。」

 

 

柱間「よいではないか! 俺は千手柱間ぞ! 二羽とも、よろしくな!」

 

 

イーグルワゴン『生命の旦那!! よろしく頼むぜ!!』

 

 

柱間「生命の旦那!?」

 

 

ハーストハイム『木遁を使うという巨大生命体の如き男!! 実に興味深い!!』

 

 

柱間「俺は巨大生命体ではないぞ!」

 

 

扉間「兄者は大差ない。」

 

 

柱間「扉間まで!?」

 

 

ミト「賑やかになりましたね。」

 

 

九喇嘛『賑やかどころじゃねぇ。儂の耳が持たん。』

 

 

波動「明日から質問する相手が二羽も増えた! 不思議!」

 

 

天喰「俺は、さらに人……鳥の多い場所で訓練するのか……。」

 

 

通形「楽しくなりそうだな、環!」

 

 

天喰「ミリオだけだと思う……。」

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

・林間合宿施設周辺 親衛財団臨時野営地 深夜・

 

 

ハーストハイム親衛財団は。

僅か15分で。

訓練用空地へ巨大な臨時野営地を完成させた。

縮小化した猛禽たちが、規律正しく並ぶ。

 

医療区画。

 

整備区画。

 

食料区画。

 

通信区画。

 

警戒塔。

 

全てが、恐ろしい速度で設置されていく。

 

 

ハーストハイム『説明しよう!! 我が親衛財団の野営地展開速度は――』

 

 

耳郎「説明しなくていい!! もう寝る時間!!」

 

 

イーグルワゴン『静かにしろハーストハイム!! 生徒たちが寝られねぇだろうが!!』

 

 

ハーストハイム『貴様の声も同じだけ大きいわァ!!』

 

 

相澤「二羽とも、喋るな。」

 

 

二羽『『はい。』』

 

 

初めて。

同時に静かになった。

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

・林間合宿地より離れた山中・同時刻・

 

 

生徒たちの笑い声。

 

巨大猛禽たちの羽音。

 

臨時野営地の光。

 

それらが、木々の隙間から僅かに見える。

 

遠く離れた山の斜面。

 

複数の人影が、森の奥へ集まっていた。

 

黒い外套。

 

焼け爛れた皮膚を持つ男。

 

荼毘。

 

 

荼毘「やっと見つけた。」

 

 

その隣。

制服姿の少女が、頬を赤らめながら森の向こうを覗く。

 

 

トガヒミコ「出久君がいるんですよね。それに、血を見てみたい人がいっぱい。」

 

 

ボロボロのローブのような上着を頭まで被せるように身に纏った大男。

 

 

マスキュラー「巨大な鳥までいやがる。あいつらも強ぇのか?」

 

 

マグネ「余計なのが随分増えてるじゃない。」

 

 

スピナー「関係ない。俺たちがすることは変わらねぇ。ステインの意志を偽物の英雄どもへ示す。」

 

 

Mr.コンプレス「舞台へ役者が増えたのなら、演目を少し豪華にすればよいだけでしょう。」

 

 

ムーンフィッシュ「肉……硬い肉……鳥の肉……。」

 

 

マスタード「馬鹿じゃないのか?あの数を正面から相手にするつもり?」

 

 

トゥワイス「最高の状況だ! 最悪だ、帰ろう!」

 

 

荼毘は、炎の灯った指先で一枚の地図を照らす。

 

合宿所。

 

訓練区域。

 

森。

 

避難経路。

 

 

荼毘「予定通りだ。狙いを間違えるな。」

 

 

トガヒミコ「殺していい人は?」

 

 

荼毘「好きにしろ。ただし、仕事を邪魔するな。」

 

 

その後方。

 

誰も意識を向けていない木の上。

 

小さな黒い影が留まっていた。

 

瞳も。

 

呼吸も。

 

心音すら。

 

限りなく抑えられている。

 

データ解析と収集だけに特化した、潜伏型脳無。

 

その眼が。

 

遠くの訓練場に残された痕跡を読み取る。

 

マダラの写輪眼。

 

柱間の木遁。

 

扉間の飛雷神。

 

影分身。

 

封印術。

 

神通力。

 

収集すべき情報は、あまりにも多い。

 

解析開始。

 

観測対象、複数確認。

 

最優先対象――千手、うちは、時空間忍術使用者。

 

闇の中。

 

誰にも見つからないまま。

 

その眼が、僅かに赤く灯った。

 

 

荼毘「明日の夜。」

 

 

青い炎が。

 

小さく揺れる。

 

 

荼毘「雄英の夏を、燃やす。」

 

 

遠く離れた合宿所では。

 

生徒たちが、疲労の中で眠りへ落ちようとしていた。

 

柱間とマダラは。

 

扉間とミトは。

 

ナオリと、再会した二羽の猛禽たちは。

 

まだ知らない。

 

笑い声に満ちた林間合宿。

 

新たな仲間との再会。

 

限界を越えるための訓練。

 

その全てを踏みにじる悪意が。

 

既に。

 

森の中へ入り込んでいることを。

 

天空の女王は、失われた家族と再会した。

 

だが同じ夜――若き英雄たちを狙う捕食者もまた、獲物の居場所を見つけていた。

 

《large》林間合宿の夜は、静かに悪夢へ近づいていく。《/large》

 

 

 

 




ということで、第五十話でした。如何でしたでしょうか?文字数が24000文字ちょっとという途方もない文字数となってしまいましたが、それでもご愛読して頂けるなら大変執筆した甲斐があります!
さて、次話の第五十一話についてですが、次話もこのまま林間合宿編の続きを執筆して行くので、楽しみにお待ちください!次話からが敵連合開闢行動隊との交戦となりますが。
また、お気に入り登録や質問、評価も是非お待ちしておりますが、特に感想を、無理にとは言いませんが、時間があれば頂けると、作者の小説制作のやる気向上などへと変わりますので、よろしければ是非よろしくお願いします!ですが、理不尽な誹謗中傷などの行為は流石にやる気やモチベーションが下がりますのでそれらは御法度です。何卒ご理解よろしくお願いします!では、第五十一話にて!
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ブルアカの世界にペルソナ3の召喚機をもった生徒を追加してみました。あ、全てのペルソナが使えて、能力もガチです。▼ペルソナとブルアカどっちもにわかです。▼違うところがあったらどんどんご指摘お願い致します。▼圧倒的駄作、文章力壊滅的、設定とんでもないことになってますが、それでも良かったらどうぞ。▼曇らせかもしれない


総合評価:233/評価:5.55/連載:18話/更新日時:2026年06月26日(金) 11:43 小説情報

不思議な力を持つ伝説のヒーローアカデミア(作者:十六夜冬歌・読9書1)(原作:僕のヒーローアカデミア)

▼擬人化カービィでヒロアカ▼イメージ画像▼【挿絵表示】▼タイトルはアニメカービィOP「カービィ☆マーチ」の歌詞より引用▼2番だと無限の力を持つ伝説のヒーローになる▼※本作ではカービィの性別が分からないので男女両無の可変式となっております。読者の好きな性別でイメージしてください。▼また本作に登場するカービィ世界の住人たちは全て並行同位体的なやつ(つまりほとんど…


総合評価:257/評価:7.57/連載:3話/更新日時:2026年07月01日(水) 20:09 小説情報

いや、人ん家の前で何やってんの?(作者:ライムミント)(原作:僕のヒーローアカデミア)

いや、本当に家の前で何やってんの?よそでやってくれない?▼オールマイトと緑谷君の秘密を偶然知ってしまった、そんな主人公のお話。▼そして時にはハジけ、時には真面目に、時にはスケベして頑張っていく、そんなお話。▼


総合評価:29644/評価:8.54/連載:77話/更新日時:2026年07月18日(土) 00:00 小説情報


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