もしも柚鳥ナツが黒服の実験体だったらの話   作:GGenbuu

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【エピローグ】

それから後のことについて。

 

私が暴走した廃墟の爆発や火災は、出所が完全に不明なこともあり、放置されたガス管から漏れたガス爆発ということで処理された。

多分、あそこにあった大量の駄菓子たちは、大半がダメになってしまっただろう。

哀しいし、あそこを知っている人には申し訳ない気持ちでいっぱいだ。今後、また少しずつ駄菓子をおいていくとしよう。

 

ゲマトリアの部下として出頭した私は、ゲマトリアという存在が絡むだけに公の公表はされず、秘密裏にトリニティ上層部に引き渡され、判断を仰ぐこととなった。そしてそれが、ある意味逆に功を奏していた。

 

上層部というのは、正確には様々な派閥のトップのことだった。

ティーパーティーの三人、桐藤ナギサ、百合園セイア、聖園ミカ。

シスターフッドの歌住サクラコ。

救護騎士団の蒼森ミネ。

そして、正義実現委員会の剣先ツルギなどだった。

 

普段は知らないように装っていたが、黒服の元で仕事をしていた際に本当は知っていたこともあって、さすがに私も肝を冷やしていた。

 

 

しかし、彼女たちの眼前に立った時──意外にもその対応は非常に丁寧かつ温厚だった。

 

各派閥同士の多少の軋轢こそあれど、私という罪人に対する反応は何故だか統一して好意的だったのには非常に面食らって、思わず理由を訪ねてしまった。

 

 

 

ティーパーティーの三人は、「かつて自分たちも各々の独断や不十分な会話がきっかけで、瓦解しかけた過去があり、私にその面影を感じていた」という。

 

桐藤ナギサは、「今後は大事な人を裏切らないように努めてほしい」と、何故か顔色が悪そうに私に告げた。過去に何か、裏切られたトラウマでもあったのだろうか。

 

百合園セイアは、ゲマトリアという存在を知っていたことらしく、彼らの脅威を踏まえたうえで「周りの劣悪な環境と統制の中から抜け出すために抵抗したのは、賞賛に値する」と、私の最後の契約改定に対する姿勢を評価してくれた。

 

聖園ミカは、「私自身もあなたと同じように罪を犯した人間だし、あなたのように理不尽に抵抗した強い人を知ってる。だから、あなたも許されてほしいと私は思ってる」と言ってくれた。

彼女が三人の中でも、人一倍私に好意を持っていたのは、どこか私にシンパシーを感じていたのだろう。

 

 

 

歌住サクラコは「本人が悔い改める意思があり、かつ直前の行動がそれを証明している」と言い、蒼森ミネは「自らを救護する意志を持つ者に、これ以上問いただす必要性はない」と、こちらもそれぞれ私のことを肯定してくれた。

ただし、私がまた何か悪事を働いた際は、全力で「救護」すると言っていた。怖い。

 

 

 

最後に、一見凄まじい圧力を放つように見える剣先ツルギだったが──非常に冷静に分析したうえで「現状の脅威になるとは考えにくい」と断定したらしい。ギャップが凄まじすぎて脳が混乱しかけるのだが、彼女が正義実現委員会のトップであることが、その思考回路から頷けた。

 

 

 

以上を踏まえたうえでの私への判決は──「執行猶予をつけた上で、自由な活動を許可する。ただし、トリニティの有事の際に、治安維持のために必ず助力すること」だった。

 

随分と温情が多すぎる気もするが──上層部の方も、エデン条約の際に大きく動きがあったからかもしれない。

とはいえ、神秘はなくとも培われた戦闘能力は確かにあるので、その内容には寧ろこちらから願い出たいものだった。

 

できるならば──誰かの「ロマン」を守りたい。

先生と交わした言葉の上での、私が自分で決めた「契約」だから。

 

 

 

 

 

 

生活については、放課後スイーツ部としてよく通りがかったお菓子の店を、働き口として紹介してもらった。店主は非常に親切で、貸部屋までしてくれるという気前の良さだから本当にありがたい。その恩義に応えようと、今では手伝いながら少しずつレシピを覚え始めている。

前に比べればお金は少ないというのは事実かもしれないが──正直、今となってはそんなことはどうでもよかった。

求めるものは、そこにはないと今は知っているから。

 

 

因みに、店で会計をしていた際に──例の『三人』がやってきたのだが──彼女たちが幸せそうだったのは、語るまでもない。それなりに幸せというのなら──私はそれでよかった。

 

 

 

 

 

 

そうして──晴れて本当の意味で『日常』を手に入れた私は──一週間後に、部室でみんなと集まった。

その理由は──

 

「宇沢・・・結構高めなの買ったんだねあんた・・・」

「金額のことは野暮ですよ杏山カズサ!友達のためなら、手を抜きたくないんですよ!」

「あぁぁレイサそこ動くな!あたしのクッキー潰れる!」

「あはは・・・ヨシミちゃん、私の変えてあげるから」

「おーい、今日はおじさんもいるんだよ。ちゃんと残しておいてよぉ」

 

「・・・ふふ。ここはいつでも賑やかだね」

そうして、私は部室のドアを開ける。そこにいけば、いつもみんなは待っていてくれる。

今日は集まる理由がちょっと違って──もう一人増えているけれどもね。

 

「あ、やっと来たわよ主役が!遅いわよ!」

「ささ、早く始めましょう!」

「ふあ~待ちくたびれたよぉ~」

「OK──準備できてるよ。アイリ」

「うん、それじゃ──」

 

 

そうして、パーティークラッカーのパンパン、という音が部室に響く。

 

 

 

「「「「「お誕生日おめでとう(ございます)、ナツ(ちゃん)!」」」」」

 

 

 

そうして、本当の意味で『柚鳥ナツ』は誕生する。

その祝福に、意味に、言葉に応えるように。

 

 

いつも通り、私はにへらと笑ったのだった。

 

 

 

「──これもまた、ロマンだね」

 

 

 

Fin…




【おまけ】執筆中によく聞いていた曲

BUMP OF CHICKEN
「太陽」
「トーチ」
「望遠のマーチ」
「青の朔日」

LISA
「ブラックボックス」

Mrs.Green Apple
「インフェルノ」

PELICAN FUNCLUB
「ディザイア」
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