TS転生した上に美少女の幼馴染までついてきたぜ! 勝ったな(勝っていない)   作:鐘楼

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詰んだぜ! 地底サバイバル

 暗い……が、周りが全く見えないわけではない。それが俺の落ちてきた場所なんだが、まずそれが俺の常識をガン無視していた。

 

 上を見上げれば、太陽どころか月も星さえも見当たらない。無論俺が落ちてきたはずの穴も視認できない。そんな状態なのにぼんやりと周りの地形が分かるくらいには明るい。ほの暗い、といったところで。いや、光源はどこやねん。

 

 「……うぉっ」

 

 人魂だ。あの、火の玉みたいなビジュアルの霊魂。そうとしか思えない光るふよふよした何かが、気づけば俺を取り囲んでいた。あれだろうか、やっぱり生者の身体を狙ってお越しになられたのだろうか。となると、やはり戦闘か。

 

 ……あれ、でもこのいかにも霊体ですみたいな奴らに炎とか電撃って効くのか? まさか割とピンチか?

 

 相手が対人戦闘の常識が通用しないということに思い当たり、逃げの一手を前提とした祝詞の準備を仕掛けたその時。

 

 「あ……?」

 

 手を伸ばせば届くくらいの距離に人魂が接近してきたかと思えば、次の瞬間には人魂たちが凄い勢いで逃げていった。すたこらさっさ~と、そんな音をつけてやりたいくらいには気持ちの良い逃げっぷりだったが、何だったんだ。

 

 「……! 今度は何だ!?」

 

 物音。かちゃり、かちゃりと気味の悪い音に振り返ると、ガイコツ。スケルトンとも言われる骨の化け物が、人骨同士が触れあう音を鳴らしてこちらを見ていた。どんな力で動いてるんだ、アレ。

 

 「……まぁでも、細切れにすればなんとかなるか……?」

 

 さっきの人魂と違って、こいつはちゃんと質量を持っていそうだ。粉々にしてしまえば勝てそう……と、こっちが戦闘態勢を整えていたというのに、ガイコツも背中を向けて逃げていってしまった。

 

 「えぇ」

 

 なに……? マジで。ってか、そもそもここはどこなんだ。リュッケは地底とだけ言っていたけど。……ここに逃げるときに使った祝詞。《冥閻の利鎌》。《死の浸食》。《冥現の逆転》。文字通り死ぬほど不吉なんだが、冥だの死だの言ってるんだから素直に解釈すれば死後の世界に繋がる穴を開けて飛び込んだ、というのがしっくりくる。それなら人魂やガイコツもTPOに適していることになって納得だ。え、つまり俺結局死んでね? という疑問に目をつむれば非常に納得できる。

 

 けれども、俺は生きている。脈も息もあるし、焔精族から逃げる途中に負った傷は未だに痛む。さすがに死んだなら疲労や苦痛から解放してくれなきゃ意地悪だろう。つーか、こちとら一回死んでるんやぞ。絶命非童貞の意見として言うが、こんな場所は知らない。ここは死後の世界じゃない。

 

 ……リュッケが地底って言ったのが全てだろって? うっせーな、考え事してないと保たないんだよこっちは。

 

 「……やっぱ、どうやっても腹は減るな」

 

 腹の音。意味があるのか怪しい考察で気を紛らわせるのにも限界はある。朝にいつもと同じ量の飯を食って、そこから尾行、連戦、逃走、落下。あの朝飯からどれくらい時間が経っているのかも分からない。飢餓状態は初めてじゃないが、どうしたってパフォーマンスは落ちる。いつ戦闘になるかも分からないのにこの状況は普通に死ねる。

 

 「つーかここ水あんのか……? 助かってなくない? 俺全然助かってなくない?」

 

 今まで暮らしていた地上が蓋になっているのなら、雨なんかが降る道理はない。どっかには地上から滝みたく水が供給されてる場所があるのかもしれないが、少なくとも俺の視界には見当たらない。

 

 普通に絶望的な状況で、俺は歩みを早める。前世でのパンピーの遭難だったら大人しく助けを待つのが教科書通りなんだろうが、そんなものは一ミリも期待できない。むしろ世界観的には異種族と見れば問答無用で殺してくる手合いである可能性の方が高いだろう。よって俺は動く。

 

 しばらく歩いていると、ぼんやりと不思議な光が一つ。近くに寄ってみれば、それは植物だった。そして、その植物には見たことのない紫色の果実が実っていた。

 

 「なんこれ……悪魔の実……?」

 

 こんな果物は見たことがない。もちろん、前世で刷り込まれたサバイバル知識が異世界の地底で役に立つわけがないんだけども。え、大丈夫か? 毒とかもそうだけど、こういう場所の果物って食ったらアカンのが定説では……? リュッケさん。リュッケさ~ん! 命に関わる事くらい助言をくれてもいいと思います!

 

 ──何?

 

 コレクッテモイイカナ? ほら、なんか見た目とか雰囲気が黄泉戸喫とかペルセポネのアレとかを想起させて不安なんですが……。

 

 ──それって、死後の世界の食べ物を食べたらもう取り返しがつかない、みたいな話のことを言ってる?

 

 はいそうです。

 

 ──最初に言ったでしょ? ここはあくまで地底。さっきからアンデッドもどきが湧いてるのも、ここが気味の悪い薄暗さなのもこの場所に影響を与えてる起源書の影響。だから……。

 

 だから?

 

 ──……その起源書の内容によっては、土地の植物におかしな影響を与えてる可能性も否定できない……。

 

 「ダメじゃん!」

 

 全然ダメですやん! 助かってないですやん!

 

 ──うっさいわね! 地底以外にアンタを逃がす方法を思いつかなかったの! あと有害って決まったわけじゃないでしょ! パクッと行っちゃいなさいよパクッと!

 

 「無責任な!」

 「そ、そこの人! 止ま……って……くだ……」

 「っ……!」

 

 脳内からではない、知らない少女の声。戦闘を想定して振り返れば、死神風の衣装に身を包んだ少女が俺を見たまま固まっていた。その周りにはついさっき見たような人魂が浮かんでいて、アレが告げ口して連れてきたのか……とか、そんなことはどうでもいい。

 

 「なんて……濃厚な……」

 

 そう、そんなことよりも……美少女だーっ! やったぜ。お前に殺されるなら悔いはないさ。(イケボ)

 

 「あなたは……神様、ですか……?」

 「え、それは多分違う……」

 

 あれ? 流れ変わったな?

 

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