TS転生した上に美少女の幼馴染までついてきたぜ! 勝ったな(勝っていない)   作:鐘楼

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スルーだぜ! 信仰の自由

 「こんなにも濃厚な死の匂いがする人は見たことがないです……冥葬族にもここまでの人は……」

 「……一応聞くけど、それって血の臭いとかじゃなく? 洗ったら取れるやつ?」

 「そんな……! その程度で薄れるようなものじゃないです!」

 

 キヌを助けるために突っ込んでから、一度も身体を洗えていない。匂い匂いって言うから、原因はそれかなぁと一抹の希望をかけて聞いたが、違うらしい。体臭の問題じゃないという点では良かったかもしれないが、死の匂いが洗っても取れないってそれ悪口じゃん。そんな「自分を卑下しないでください!」みたいなノリで言うことじゃないやん。

 

 「えーっと、もうちょっと詳しく話してくんない? ほら、俺冥葬族の文化とか知らないからさ」

 「あ……そうですよね、ごめんなさい」

 

 俺の言葉で一旦冷静さを取り戻したらしいシャーリーは、その身を一歩引く。一歩だとまだ近いな……美少女だからいいけど。

 

 「冥葬族には、尊ばれる五つの“死”があるんです」

 「ほう」

 「一つ目、自死。自分で自分の生を終わらせること。二つ目、与死。他人の生を終わらせること。三つ目、殉死。目的のために生を使い果たすこと。四つ目、送死。親しい人の死をその場で見送ること。五つ目、往生。天寿を全うすること」

 「………………お、おう……」

 

 この人何言ってんの?(素面)

 

 「冥葬族は、この五つの“死”をどれだけ経験したかで神様との距離が決まって、より起源書の力を引き出せるようになる……そう言われているんです」

 「どカルトやん……あ、じゃなくて、冥葬族ってすてきだね」

 

 うっかり出かけた本音を、慌てて否定する。他人の信仰はとりあえず相づち、これは鉄則だ。

 

 ……いや、待ってくれ。ツッコミどころが多すぎる……あれだ。まず一番細かいところから行こう。リュッケさん、リュッケさん! そんなことで起源書の力を引き出しやすくなるってあり得るんですか!?

 

 ──……アタシにも整理する時間が欲しいんだけど……そうね、起源書とのシンパシーが祝詞に影響する可能性は十分ある……かも。

 

 な、なるほどですね……。

 

 「えーっと……シャーリー。言ってること無茶苦茶じゃないか? だってそれ三回死んでるぞ? 命が四つないと極められなくない?」

 「はい。だからこそ、冥葬族はその死を擬似的に体験したりして工夫しているんですが……やっぱり本当に体験するのとは違くて、一番死に近い巫女様でもまだ道は遠いんですけど……だからこそハナビさんは凄いんです! 巫女様よりもずっと……!」

 「あー……」

 

 心当たりは……ある。前世だ。自死……自殺未遂ならあった。通りすがりのおっさん(後の親父)に止められなかったら普通に死んでたから、結構ガチのやつ。与死……まぁ、割とある……というか、さっき殺ったばっかだ。殉死……目的のため、ってのが曖昧だけども、俺は殺されて死んだ。まぁ因果応報なんだが、当てはまってもおかしくない。送死……あったな。親父は俺の腕の中で死んだ。PCのデータ消してくれってゴミみたいな遺言もしっかり聞き届けた。処理したのしっかりデータ覗いた後だったけど。往生……いや、これは違うだろ。天寿なんて……あー、いや……前の俺の身体の耐久年数がゴミだった可能性が微レ存……?

 

 「まぁ……心当たりはある、かも……?」

 「やっぱり……! 神様なんですか!?」

 「それは絶対違う」

 

 ……うん。そもそも、普通ガチで死ぬのは皆一回しかできないのだ。冥葬族が本当に死の匂いってのを感じ取れるなら、俺という存在が際立って見えてもおかしくはない。だって一回マジで死んでるしな。

 

 「ところで、死を擬似的に体験する工夫ってなに……? 半殺し祭り……?」

 「そういう人もいますけど……一番はやっぱり送死ですね。冥葬族の子供はみんな遺言ごっこをして造詣を深めるんです」

 「もうそれ迷走族だよ……」

 

 なにその生態……こわい……。

 

 「だから、ハナビさん!」

 「うぉっ」

 

 ぐいっ、と顔を近づけてくるシャーリー。俺はあぁ~良い匂いするんじゃぁ、と軽く現実逃避するしかない。

 

 「教えてください、自分に“死”を……! さぁ……!」

 

 シャーリーはそう言いながら、俺の手を取って自らの首に這わせる。え……締めろってこと……?

 

 期待の眼差しを向けるシャーリーの表情は上気していて、やっぱり可愛かった。まぁ、かわいいから……いっか。

 

 ぎゅっ。

 

 ……命を掌で転がされて悦ぶ少女。なんというかその……良かったです。(正直)

 

 ──……サイテー。

 

―――――――――――――

 

 「ゴホッ……ッ……ぁ、ありがとうございました……」

 「あぁうん……いいよそんな……」

 「本番の前に……こんな体験が、できるなんて……」

 「え、本番?」

 

 なんだ、首締めックスの予定があるのか、そんな考えがよぎった俺だったが、シャーリーの次の言葉に絶句した。(本日n度目)

 

 「自分は、一週間後の儀式で、殉死できることが決まっているので……」

 

 

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