TS転生した上に美少女の幼馴染までついてきたぜ! 勝ったな(勝っていない)   作:鐘楼

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ややこいぜ! 設定の濁流

 すやすやと、持参していた寝袋のようなものを使いこなして眠るシャーリーの寝顔を眺める。眼福である。これ目当てに見張りを買って出た……というのもあるんだが。

 

 やっぱり微妙に信用できない、というのも正直ある。シャーリーが俺を騙そうとしているなんてことがないのは分かるんだが、急に「ハナビさんは神様への生け贄にぴったりです! なので手足を縛っておきました! これは名誉なんですよ!」とか言ってくる可能性はやっぱり否めない。や、別に美少女に裏切られる分には結構なんだけど、寝ている間にそれをやられるのは嫌なのだ。さすがに豹変シーンは見たい。

 

 ところで。この地底に逃げるために使っていた祝詞の第一節とシャーリーが鎌を具現化した時の祝詞のそれが一致していたわけだが。

 

 「リュッケは冥葬族のこと知ってたのか?」

 

 ──地底で繁栄している種族ってことくらいはね。こんなおかしな文化を持っているとは知らなかったけど。

 

 「あ、いけないんだー。他人の価値観にそんなこと言っちゃいけないんだー」

 

 ──はぁ? おかしいものはおかしいでしょ。

 

 たしかに思ったけど。でもそれを口に出すのは良くない。まっ、リュッケが俺のことを人に言うのは憚られることも共有できちゃう仲だと思ってくれてるのは嬉しいけどね。(ウインク)

 

 ──うざい。

 

 「思考盗聴された……って、なんか普通に話してるけどさ、どういう理屈? リュッケは俺の中にいるの?」

 

 ──いいえ、あくまでアンタの心に繋げているだけ。その心を通じてアタシはアンタが見聞きしたものや考えを認識している。

 

 あくまでリュッケ側が俺の感覚や内心を覗いているだけだから、逆に俺がリュッケの心の声を聞いたりはできないと。残念だ……もしかしたらこっちもツンデレな内心を覗いてニコニコできるかもと思っていたのに……。

 

 「っていうかそれマジでプライバシーもクソもないじゃん」

 

 ──存在力貸してあげてるんだから我慢しなさい!

 

 はい……ま、そもそも初手で記憶を見られているから本当に今更だな。リュッケがいなきゃ死んでたのは事実だし。

 

 「あ、でもさ。その存在力ってなんなの? 普通に生きてたら回復しないとか言ってたけど」

 

 存在力。祝詞を使う度に使っていたエネルギーで、俺はそれを知らずに使いすぎてたらしく死にかけだったらしい……いや、回復しないんだったら今でも死にかけなのか?

 

 ──ちょっとややこしいんだけど……いいわ。この機会に説明しておく。

 

 「頼んだ」

 

 ──まず、アンタは寿命みたいなものと思っていたようだけど、これは違うわ。あと、アタシが普通に生きてて回復することはないって言ったと思うけど、これも厳密には違う。

 

 「ほう」

 

 ──存在力はこの世界で存在を保つために必要なもの。本当は自然回復もしているんだけど、それと同時にただ生きているだけで消費もする。その回復量はその人間が五体満足で存在するために消費していく存在力と必ず釣り合うようになっているの。だから、祝詞を使って余分に削った分の存在力は戻らない。

 

 「ほう……?」

 

 五体満足でって部分が気になるが、寿命とは違うものなのは分かった。今の説明を聞く限り、祝詞さえ使わなければ一生枯渇することはない。肉体の限界とは関係がないんだろう。……アレ、じゃあなんで俺吐血したんだ。

 

 ──そんなの、総量より消費量が多い祝詞を無茶して使おうとして失敗したときぐらいにしかならないけど。

 

 あっふーん……じゃ、じゃあアレか? 祝詞に使える分の存在力の量は生まれ持って決まるのか? みんな同じなのか?

 

 ──それは……年々増えていく、が正解よ。

 

 「え……それ回復してるくない?」

 

 ──なんて言えば良いのかしら……基本的に祝詞で消耗した分は戻ってこないんだけど、器の方は歳と共に成長していくの。だから、歳を重ねるほどに総量も増える。

 

 「あーん……?」

 

 つまり、なんだ。自然回復量と自然消耗量が釣り合っているから実質的に回復はしないけど、加齢という名のレベルアップで最大HPが増えていく。増えた最大HPの分残存HPも増えるタイプのシステムだから、長生きするほど祝詞は多く使える……と。途中からゲームの話になっちゃったが、こういうことだろうか。

 

 ──その認識で良いわ。

 

 「それやっぱり回復してない?」

 

 ──うっさいわね! 言葉の綾よ! 撤回すれば良いんでしょ! ごめんなさいね!

 

 「ごめんて」

 

 さすがに簡潔に説明したに過ぎない一言をネチネチ責めるのは意地が悪かった。すまん。

 

 そういえば、さっき気にも留めずに爺の祝詞使いを殺したけども、何気に希少な存在だったのだろうか。焔精族の巫女候補隊にもあの年代は見当たらなかったし。普通、戦争でバンバン祝詞を使っていたら存在力切れで死ぬから老いた祝詞使いは珍しいんだろう。

 

 「って、存在力がなくなったら死ぬって認識で良いんだよな?」

 

 ──えぇ。でも、必要な分は自然回復量で賄えるから、ほんの少しでも残っていればなんの支障もきたさないわ。一応言っとくけど、アンタはそのほんの少しで保ってるんだからね。余程じゃない限り貸してあげるけど、アタシが間違っていると思うようなことに自分の存在力を使って祝詞を使ったら本当に死ぬから。覚えておいて。

 

 「はーい」

 

 二度目の死を恐れるわけじゃないが、どうやら俺はマジでギリギリらしい。こりゃ、リュッケの気を損ねるような真似は軽々しくできないな。

 

 「あ、そういえばさ。繋げてるって言ってたけど、どこから? どっかにリュッケの本体があんの?」

 

 ──アタシはその世界に存在していない。存在力も消耗しないし……アンタと夢で話したあの部屋。アタシは気づいたらあそこにいて、ずっとそのまま。

 

 あの、地球儀とか望遠鏡とか本棚があった部屋か。記憶の限り、あそこから出たことがないと……ん?

 

 「あそこから出たことがないなら、リュッケの知識はどこ由来なんだ? それ以前の記憶はないんだろ?」

 

 ──アンタの前に繋がった人間が見聞きした情報よ。ここにある起源書も前の人たちが触れたもの。だから……その、アンタよりは詳しいけど、アタシの情報の信憑性も絶対じゃないってことは覚えておいて。

 

 「え……」

 

 なんてことだ……信じていたのに。

 

 ──何でも知ったような口をきいたのはあやま……

 

 「リュッケ……俺が初めてじゃなかったのか……!」

 

 ──…………もうアンタに頼むのやめようかな……。

 

 「冗談ですやん」

 

 ──本当、すぐふざけるのは直して欲しいんだけど。アタシもアンタを簡単に切り捨てたりできないから。永く変わらなかった状況を変えられるかもしれないチャンスなの。

 

 「あ、やっぱ俺はリュッケの中でも特別な感じ?」

 

 ──ねぇ、ふざけるの直してって言ったわよね? ……祝詞をつかえることよ。特別なのは。

 

 「……そうなのか? 巫女候補って言うほど珍しくないんじゃ……」

 

 ──アタシが繋がることのできた人達には二つ共通点があるわ。どこの種族でもないことと、異世界の記憶があること。この二つにどういう因果があるかは分からないけど……どこの種族でもないってことは、どの起源書も感じることができないってこと。

 

 ……まず前世持ちに前例がいることがさらっと明かされたことに気をとられそうだが、たしかに俺も起源書の内容を感じ取るって感覚がさっぱり理解できない。ってか、結局俺はどこの種族でもない、が正解なのか。

 

 ──異世界の記憶って言っても、本当に色んな世界がある。アンタみたいにこの文字が読める、起源書の制作者と同郷の奴なんて、千載一遇のチャンスなの。分かる?

 

 「なるほど……」

 

 リュッケが繋がることができたとしても、その相手は起源書を読めず、祝詞を使うことができないこの世界に於いて無力な存在。むしろそんな人間を窓にしてよくここまで情報を集めたものだ。

 

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