TS転生した上に美少女の幼馴染までついてきたぜ! 勝ったな(勝っていない)   作:鐘楼

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安心だぜ! 差押

 「こんばんはリュッケ! いてっ」

 「アンタねぇ~! なにまんまとアイツの計画に乗せられてんのよ……!」

 

 レフバーちゃんとおやすみしてから、いつもの場所に浮上してきて早々、俺はリュッケに殴られた。殴られる理由には心当たりが多すぎて文句は言えないぞ!

 

 「いやでもぉ……他に選択肢なかったくない? 従わなきゃリュッケともう会えないっぽかったし」

 「それはっ……そうかもしれないけど……アタシなんかの為にアイツに良いように使われるくらいなら……!」

 「リュッケ」

 

 いつもより、真面目な声で。リュッケの言葉を強引に遮る。

 

 「それは、無理だよ。俺はそれを選べないし、選ばない」

 「っ……!」

 

 リュッケのいない選択肢など、最初からないも同然だ。ここで会う彼女は、こんなに可愛いんだから。

 

 「……ザラは! アンタは良いの!? 文句も言わないで……アンタのことを捕らえてたのはあのレフトオーバーなのよ!?」

 

 困ったリュッケは、話を目覚めた直後からずっと俺を後ろ抱きにしているザラに振った。

 

 「前提として、私の意思はハナビの意思です。なにも異論はありません」

 「アンタねぇ……!」

 「その上で、レフトオーバーという存在について……手段はともかく、目的は理解できます」

 「ザラさんそれって……」

 「えぇ、界喰みという存在は私の知識にもあります。少なくとも、その存在については嘘ではない」

 

 おぉ……これは貴重な裏取りだ。レフバーちゃんが、マジで一から十まで嘘をついている可能性はなくなった。ザラさんも地元の世界では上位者だから、そういう情報が回ってくるんだろうか。

 

 「リュッケ。貴方がその一部だというのは驚きましたが……」

 「そんなの! 私だって……」

 「そんな顔をしないでください。ハナビの味方である貴方は、私の味方です」

 

 ……リュッケの口ぶりから、立ち直ったと思っていたが、やっぱり自分の正体が世界の敵だったというのはリュッケにとっても受け入れがたいことなんだろう。後で寄り添ってあげなきゃ(使命感)。

 

 「そして、レフトオーバーがその手段として私や他の世界の強者を捕らえていることですが……私個人としては、あまり気にしていません」

 「なんで……」

 「自由を奪われ、冥葬族の有様を見せつけられたのは確かに不快でしたが……私の意識がこちらに宿ったのはせいぜい百年と少しです。元々自由などないようなものですし、その程度、ハナビと出会えたことに比べれば些細なことです」

 「えへへ~、ザラさん好きぃ~」

 「私もですよ、ハナビ」

 「アンタらねぇ……」

 

 ザラさん個人としては、レフトオーバーに対する恨みはあんまりないらしい。それも全部俺と会えたからだって。照れちゃうなぁ!

 

 「っと、起源書読まなきゃだったよな。どんなの受け取ったんだっけ」

 

 この時間の本来の目的。レフバーちゃんに貸して貰った起源書を読んで、強力な祝詞を使えるようにすることだ。早くやんないと目が覚める時間になってしまう。

 

 「あぁ、やんなくていいわよ」

 「え?」

 「あんなの、必要になったらその時にアタシが言うからそれを復唱すればいいでしょ」

 「あぁ、最初に助けて貰った時みたいに……できんの?」

 

 焔精族から逃げるとき、確かにリュッケの言葉を復唱して祝詞を使ったけども。

 

 「アンタの記憶のおかげでアタシも日本語が読めるようになってる。問題ないわ」

 「おう……それはまたお見苦しい教材ですみませんね……」

 「……曲がりなりにもアンタの人生なんだから、卑下するのはやめなさいよ」

 「いやぁ……ううん、そうだな。ごめん」

 

 前世の話をしようとして、踏みとどまる。今幸せなんだから、不幸自慢は良くない。

 

 「元々、アイツに一日貰ったのはこうしてアンタと話すためだしね。祝詞は方便よ」

 「リュッケ……」

 「でも、やっぱり役立つのは間違いないから使えそうなのを纏めておいたわ。これだけ覚えておきなさい」

 「あ、はい……」

 

 ページと行数が纏められた紙を渡される。実際、こうやって纏めてくれると凄まじい時短になる。めちゃくちゃ助かる。

 

 「……あと、ザラ。アンタ、腕のことは言わなくていいの?」

 

 言われるがまま俺が起源書を捲っていると、リュッケがザラさんに意味深な言葉を投げかけていた。

 

 「必要ないでしょう」

 「……そう」

 「え、なになに? なんの話?」

 「ハナビ」

 

 話を逸らすかのように、ザラさんが俺の名前を呼ぶ。

 

 「な、なんでしょう……」

 「どうか、気楽に臨んでください。既に実証は済んでいます。今ならたとえ貴方が命を落としたとしても、確実にその魂を連れていける」

 

 ごくり。それって……もし死んでもザラさんの世界で過ごせるってコト!?

 

 「え~、それは気楽だなぁ」

 「だから! そいつ甘やかさないでよ! もしいざという時に生き意地がなくなったらどうすんのよ!」

 「私は構いませんが」

 

 ……なんとなくだが、起きている間はザラさんが静かな理由が分かった。きっと、どう転んでも最後は俺を連れて冥界へ帰るつもりだから、干渉の必要をあまり感じていないんだろう。

 

 

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