TS転生した上に美少女の幼馴染までついてきたぜ! 勝ったな(勝っていない)   作:鐘楼

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寛解だぜ! 心的外傷

 「えーなに? 俺のこと知ってるの? ってかキヌの知り合い?」

 「当たり前でしょう! 私は焔精族の巫女キヌさんのライバル、ホノカなんですから!」

 「え、キヌ巫女になったんだ……」

 

 ここで再び衝撃の事実。俺のいない間にキヌは巫女になっていたらしい。激動過ぎるだろ……まだ俺が去って二週間経ってないんだぞ。あ、二週間で腕が崩れて生えた奴のセリフじゃなかったわ。

 

 「それで? 巫女の側近のホノカちゃんはなんでこんなところにいるのかな?」

 「それは……あ、あなたなんかに言うことはなにもありません! 放しなさい!」

 「ダメでーす」

 

 今更自分が拘束されていることに気づいたのか、なんとか脱しようともがくホノカ。しかし残念なことに、素人の少女が考え無しに暴れて抜かれるような締め方はしていない。

 

 「くっ……! こうなったら祝詞で……!」

 「それはやめてほしいかな。さすがに外の魔獣にバレる」

 「ぁ……魔獣……」

 

 魔獣、と。その言葉を耳にした途端、気丈だったホノカの顔が青くなった。

 

 「そ、そうです……あの時……仲間も敵もみんな……魔獣に……ぁぁ……!」

 「……」

 

 うーん……これはPTSDですわ。言葉の断片から考えるなら、戦闘か偵察か分からないが創獣族の領域に来ていた焔精族だったが、その最中に例の界喰みと繋がった巫女が味方を全員魔獣にする暴挙を慣行。それに巻き込まれた焔精族の部隊はホノカ以外全滅……ってところだろうか。

 

 「落ち着け。静かにしてれば大丈夫だ。もし見つかっても俺が守ってやるから」

 「え……」

 「だから、なにがあったのか詳細に話してくれ」

 

 トラウマを解決するには避けるのではなく向きあって受け入れるようにするのが肝要……なんて優しい目的ではなく、普通に情報収集のためにホノカを落ち着かせてその時のことを話させる。

 

 「わ……わかりました。わたくしたちは……新たな巫女となったキヌさんの覇道の一歩目として、創獣族へ先日の報復を行うことを決定したのです」

 「俺が助けたやつね」

 

 焔精族の炎に耐性を持った巨大魔獣。キヌたちは俺がいなければ普通にやられていたであろうあの件の報復を試みていたらしい。

 

 「っ……助け……とにかく、それはキヌさんにわたくしの優秀さを知っていただくチャンスだったのです。ですから、わたくしは真っ先に先遣隊に立候補しました。キヌさんはわたくしに側にいて欲しかったのか渋りましたが……なんとか押し切って先遣隊のメンバーになったのです」

 「キヌと仲が良いんだねぇ」

 「えぇ! あなたより……」

 「キヌに友達ができて俺も嬉しいよ」

 「……!」

 

 まぁ、キヌの近況も少しは気になるが、今は聞いておきたいのはそんなことじゃない。

 

 「それで? この場所で何があった?」

 「あ……えっと、わたくしたちは手はず通りに創獣族の土地へと潜入しました。そこで敵と遭遇して戦闘になったのですが……そこまでは良かったのです。創獣族は直接戦闘の分野に劣っていて、遭遇戦においては負ける要素がありませんでしたから」

 「ふむ……」

 「しかし……その戦闘の途中で……敵の託士が突然苦しみだして……わたくしたちはこれを好機と捉えて攻撃を加えて……それなのに……敵は焼けただれた身体で仲間の足を掴んで……あぁぁ……!」

 

 回想がトラウマシーンに近づくにつれて、どんどんとホノカの精神が安定しなくなっていく。呼吸は荒く、脈も早い。このままでは喋れなくなると判断した俺は拘束を緩めて、ホノカの手を握った。

 

 「ふぇ……」

 「落ち着け。俺がいる」

 「あ……ご、ごめんなさい。少し……取り乱してしまいました」

 「良いって。仲間を失ったシーンを思い出すのが辛いのは当たり前だろ」

 

 一般的には。

 

 「それに、もう怯える必要はないぞー。俺めちゃくちゃ強いから、もう安心だ」

 

 具体的には、日本語が読めることとザラさんの腕がくっついているところが強いぞ! もらい物最強!

 

 「お、怯えてなんか……! と、とにかく! その……掴みかかられた仲間は当然回避を試みたのですが……敵の腕が異形と化して伸び……その方は魔獣と……なって、しまいました」

 

 強がるホノカだったが、語るほどに彼女の手は汗ばんでいた。震えもあったが、それは俺が手を握り返すとやがて治まったようだ。

 

 「それで、恐慌状態に陥って連鎖的に魔獣にされて……ホノカちゃんは運良く、と」

 「はい……ですが、触れただけで魔獣にされるだなんて情報、聞いたことが……!」

 「でしょうねぇ」

 

 おそらくそれは、界喰みがなんやかんやして覚醒した能力だろうし。これまで通りレフバーちゃんの管理下であったならば、そんな一人勝ち間違い無しの壊れ能力は許されないだろう。

 

 うん。聞きたいことは聞けたな。もし、他種族だろうと無条件で魔獣化が有効という判定だったなら、レフバーちゃんには悪いけど即刻撤退が視野に入っていた。そんなの防ぎようがないし。

 

 けれども、話を聞いた感じおそらく魔獣化の条件は配下となっている魔獣を含めた接触。それくらいならまぁやりようはある。ってか、じゃあ俺がテストと称してザラさんの腕で魔獣に触れたのも危なかったか? いや……《アナライズ》の結果じゃそんな警告は出なかったし……例の巫女が魔獣化の技を使用している間だけ付与されている力……とかか? もしそうだとしても、ザラさんの即死の方が優先されると信じたいが……。

 

 「さて、と」

 

 ま、今はいい。レフバーちゃんには悪いけど、急用ができてしまった。だいたいレフバーちゃんだけで勝てそうなんだし、俺はこっちを優先させて貰おう。

 

 「行こっか、ホノカ」

 「あ……その……行く、とは……」

 「こんなとこ居たら危ないだろ? とりあえず創獣族の土地の外まで連れてくよ」

 「……」

 

 拘束を解いて、ホノカに手を差し伸べる。もちろん、送り届けたらもっかい戻ってくる予定なので、できるだけ早くして欲しい。

 

 「その……わたくし、あなたのことを誤解していました……」

 

 そんな俺の思いに反して、ホノカは差し伸べた手から目を逸らし、そんな言葉を呟く。

 

 「会ったことない人間相手の認識なんてみんなだいたいそんなもんだろ?」

 「でも……わたくしはあなたのことを……! なんで、そこまでしてくれるんです……?」

 「んー……」

 

 なんで、と来たか。ふふ、見くびるなよ。俺は自分の行動理由の言語化に窮する人間ではない。そんなものは決まっている。俺は再びホノカへと距離を詰め、差し伸べていた手をホノカの頬に当てた。

 

 「ホノカがかわいいから。特別サービスだよ」

 「かわ……っ!?」

 

 さて、さっさと送り届けてレフバーちゃんに加勢するぞー!

 

 

 




(ここでホノカに行かせて万が一があったら復讐計画終わるナリ……)
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