TS転生した上に美少女の幼馴染までついてきたぜ! 勝ったな(勝っていない)   作:鐘楼

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強めだぜ! 思い込み

 「ふーっ……」

 

 圧倒的なスピードで魔獣たちを振り切り、創獣族の土地から脱出。すっかり俺にしがみついて震えていたホノカを優しく下ろして一息つく。実のところ、超万能Tier1祝詞に思える《迅閃》にも欠点はある。速すぎて精密動作性に欠けるというか小回りが利かない。俺はそこを前世由来の反射神経で誤魔化してるわけだが、割と疲れるのだ。脳が。

 

 「し、死ぬかと思いました……」

 「ごめんて。ここは死なずに死ぬような思いができた貴重な経験だと思って……」

 

 絶叫系アトラクション乗った後みたいに涙目になっているホノカ。遊園地とか行ったことないから本当かは分からんけど。

 

 にしても、焔精族は《迅閃》本来の使い手である青雷族を滅ぼしてるはずなんだよな。この様じゃそれも真偽が怪しくなってくるんだが……『いかづちのさえずり』の祝詞って大抵優秀だし。なにか理由が……って、よく考えたらこれもレフバーちゃんに聞けば一発だわ。考えるのやめよ。

 

 「んじゃ、ここからなら帰れるか?」

 「あ……はい。この先を行けばわたくしたちの土地ですが……その」

 

 そう言って言葉を切ったホノカは、俺を思いやるような眼差しでこちらを見る。

 

 「あなたは……どうするのですか?」

 

 なんとチョロ……心優しいホノカは俺の心配をしてくれているらしい。心があったまるね。

 

 「戻って創獣族の巫女を倒す」

 「それは……危険では……!」

 「だからこそ、他の種族じゃ歯が立たないような相手だからこそ、俺みたいな強者がやらなきゃならない……みたいな?」

 

 というよりは、このままだと界喰みに世界を乗っ取られるから対処したいってのがレフバーちゃんの意向だろうけど。そこらへんは説明するのも面倒だしな。俺の本来の動機であるレフバーちゃんにお願いされて……ではなく、リュッケの存在を消されないためってのもまた説明しにくいし。

 

 「強者の、務め……」

 「そうそ。俺が強いのは目の当たりにしたろ?」

 

 なんて、ホノカを撫でながら大嘘をつく。俺は大いなる責任をいくらでも放棄できるヴィランメンタルの持ち主である。だから平気で見栄を張れるんですね。

 

 「それに……随分俺を心配してくれてるみたいだけど、俺が誰だか忘れてるのかな~?」

 「え……?」

 「俺は巫女候補隊のリーダーを殺して祝詞使いも大量に葬った焔精族の敵だぞー?」

 

 あまりにチョロすぎて気になっていたことをホノカに告げると、彼女は数秒フリーズした後、顔を青くして俺の手を振り払った。

 

 「っ! そ、そうでした……!」

 「……え、いやマジで忘れてたん?」

 

 ちょっとポンコツ過ぎないか……? じゃあ最初俺のことを敵視していたのはなんだったんだ。

 

 「いや、じゃあ俺のことなんだと思ってたの?」

 「それは……キヌさんの心に居座る邪魔者だとばかり……」

 「大事なのそっち?」

 

 どうやらホノカにとって、俺に敗れていった先輩たちの命よりもキヌの好感度の方が重要だったらしい。キヌに想ってくれる人が出来たのは良いけど……この子大丈夫なんだろうか。

 「ま、そういうわけだから。さっさと行きなよ。俺と居たらホノカまで悪者になっちゃうぞー」

 「……なにか……あの時はなにか理由があったのですよね?」

 「いや……理由もなにも殺されそうになったからやっただけだけど」

 「あ……」

 

 あの時、リュッケも居ない俺では手加減なんか到底無理だった。ヒョウヤの助けがなければ普通に死んでいたので、殺しの正当化をする気はないが身を守るために戦わざるを得なかったのは紛れもない事実である。

 

 「確かに……脅威だった魔獣を倒した貴方を問答無用で攻撃したわたくしたちにも問題がありました……」

 「……いや、ホノカに反省されてもな……」

 

 なんか随分と物分かりの良い……というか、好感を持った俺を正当化するための理屈に乗っかった……みたいな? 世界が違えば詐欺にまんまと引っかかりそうな思考パターンだ。守護らねば……!

 

 「とにかく、もう行きなって。変に俺を庇ったら今度はホノカが悪く言われるだろ」

 「いえ……! 今の巫女はキヌさんです! わたくしが口添えすればきっとキヌさんも分かってくれます」

 「……別にホノカに言われるでもなくキヌは俺のこと誤解してないだろ……」

 

 多分。いや、それにしたって今はそれどころじゃないし、今更キヌと顔を合わせるのもなんだかむず痒い気がしてくる。

 

 「いやほら、もう言ったと思うけど、俺今忙しくて……」

 「はい。ですから、ここで待っています。あなたの勝利を」

 「ホノカ……」

 

 危ないから割と普通に帰って欲しい。

 

 「なので、行く前に教えてください。あなたの名前を」

 「あれ、言ってなかったっけ」

 「はい。キヌさんの口から聞いたことはあるはずなのですが、失念してしまい……」

 「あ、そう……ハナビだよ」

 

 俺の名を聞いたホノカは、花が咲いたような笑みを浮かべる。

 

 「ハナビ……ハナビさん。では……行ってらっしゃいハナビさん。ご武運を」

 「お、おう……」

 

 ホノカに送り出されて、俺はレフバーちゃんのもとへ救援に向かう。

 

 ……いや、急に正ヒロインですみたいな顔するな!?

 

 

 

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