TS転生した上に美少女の幼馴染までついてきたぜ! 勝ったな(勝っていない)   作:鐘楼

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詰み展開だぜ! 負けでいいです

 ホノカと別れ、このまま来た道を引き返す。

 

 「……流石に捕捉されたままか」

 

 しかし、最初に透明化して侵入したときとは違って、こちらの動きは完全に把握されているようだった。その証明として、俺の進路には結構な数の魔獣がひしめき合っていた。

 

 既にレフバーちゃんに指示されたプランは破綻したわけだが、だからと言ってここで引く選択肢はない。こうなれば、レフバーちゃんとは逆方向の裏から標的に接近して挟撃作戦に打って出るしかあるまい。

 

 その為にはこの魔獣たちを突破しなければならないわけだが……はっきり言って、ホノカを逃がした今こんな奴らは障害にならない。はらりと、浮かぶように左腕に巻かれた布が解けていく。

 

 「《いかづちのさえずり》《飛燕の電光》《迅閃》」

 

 露わになったザラさんの腕を前に出し、突貫。反応すらできていなかった魔獣に左腕を掠らせれば、それだけで力なく倒れていく。これなら、いける。

 

 迫り来る魔獣の数々を、飛び越え、捌き、受け流し、貫く。どれだけの耐久があろうと、また電撃に耐性があろうと、腕に触れれば魔獣は例外なく死んでいく。全てを殺し尽くす必要はない。道を邪魔する最低限の敵だけを葬り、とにかく前へ。

 

 やがて見えてきたのは、人の暮らしの痕跡が残る集落だったであろう場所。当然、暮らしていた人間はもう既に魔獣になった後で、人間は見当たらない。が、その代わりに先ほどまでとは格が違うように見える魔獣がいくつか居座っていた。こいつらの役目はおそらく、本拠地の防衛。ここが本丸で間違いない。

 

 気になるのは、レフバーちゃんがいないことと、集落に破壊の跡が見られること。流石に一度引き返した俺よりは先にレフバーちゃんは着いているはずであるし、あのド派手な戦い方だ。近づけばすぐに分かるはず……悪い考えが脳裏をよぎる。

 

 しかし、既に屋内でレフバーちゃんが戦っている可能性も残っている。今から隠密に徹するのは無理がある以上、このまま迅閃を維持して突貫するのがベターと見て、防衛の魔獣の息の根を止めながら一番大きい建物へと突入する。

 

 その建物の内装は典型的な邪教の神殿といった印象で……いた。その中心に、少女と犬のような魔獣の後ろ姿が見える。くっ、やっぱり話の通り美少女なのか……! だがしかし、ここで躊躇したら死ぬのは俺の方だと覚悟を決め、電光石火の即死貫手を放とうとして。

 

 「……見つけた」

 

 横から割り込んできた大型の魔獣に阻まれた。ザラさんの左腕が思いっきり刺さったその魔獣も例外なく死に至るが、その巨体に腕が深く突き刺さったことで迅閃のスピードと勢いもまた完全に殺されてしまった。

 

 「あなたのこと、待ってたの」

 「……マジ? 記憶にないけど付き合ってたりする?」

 「“わたしたち”の匂いがするあなたのことを」

 

 巫女と思しき目の焦点が合っていない美少女相手に軽口を叩いてみるが、こっちは内心冷や汗だらだらだ。左腕を引き抜き、銃に手をかけ、次の祝詞を考える。

 

 「……待ってたって、随分余裕っすね」

 「余裕だよ。ほら」

 

 そう言って、少女が指さした先には。

 

 倒れ伏す、レフバーちゃんの姿があった。

 

 「……マジぃ……?」

 

 もう、ってかまた負けたのかあのポンコツ!? え……マジで死んでる? 窺える倒れたレフバーちゃんの顔色は完全完璧な死人のもので……いや、でも人間じゃないし……いやいやそれよりこれ詰んでね!? 一人でもほぼ勝てるって話はなんだったんだよ!?

 

 「そんなことより、ひどいよ。“わたしたち”を始めたのはあなたなのに」

 

 密かに戦慄している俺をよそに、少女は要領を得ない話を語りかける。一見、無防備だ。動きも素人。今ここでガンマンみたく早撃ちすれば殺せると、経験が言っている。が、本当にそれで倒せる相手ならレフバーちゃんがやられるはずがない。

 

 「なのになんでそこで楽しそうにしているの? “わたしたち”を捨てたの? それって……許されるの?」

 

 ……つか、さっきからこの子はなんの話を……。

 

 ──ぁ……あ、あぁ……!

 

 「ッ!」

 

 漏れ出たような呻きが脳に響いたことで、ようやく気づく。俺じゃない。こいつが語りかけているのは、リュッケだ。匂いだのわたしたちを始めただのも、全部リュッケのこと。これ以上、こいつに話をさせるのはマズいと、一瞬でそう判断した俺はほとんど反射で最速の早撃ちを実行した。正確に脳幹を狙ったその弾丸に、少女は反応できず……否。するまでもなく、無から現れた刃によって弾かれた。

 

 「なっ……」

 

 その刃の持ち主は、間違いなく先ほどまで存在してなかった長身の美女。そして、その足下には赤い水たまりのようなものが存在していて、美女はそこから出てきたかのようにその液体で濡れていた。その上、よく見回してみればその赤い水たまりはそこかしこに点在していて。

 

 「こいつは……」

 

 その赤い水たまりの数々から、次々と人影が現れていく。

 

 「“わたしたち”はソレが界喰みと呼ぶ存在」

 

 巫女の少女が、レフバーちゃんの死体? を一瞥しながら語る。

 

 「ここにいるみんな、あなたの怒りに共感した同志。同じ痛みを持つ仲間」

 

 ──……理不尽な世界を壊す、共犯者……。

 

 「っ! リュッケ! おい、まさか……!」

 

 ──……ごめん、ハナビ。

 

 その言葉を最後に、脳内でリュッケの声は聞こえなくなり。

 

 同時に、赤い水たまりから夢で会った姿のままのリュッケが現れた。

 

 「……ただいま、みんな」

 「初めまして、リーダー」

 

 リュッケと、巫女の少女が言葉を交わす。彼女らのやり取りはそれで十分らしく、それ以上の会話はなかった。となると、必然。二人と、それとあと水たまりから現れた方たちの目が一斉に俺へと向いた。

 

 ……あの、ここから入れる保険とかってあります?

 

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