TS転生した上に美少女の幼馴染までついてきたぜ! 勝ったな(勝っていない)   作:鐘楼

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貴重だぜ! 最後の抱擁

 「……もしかして勧誘?」

 「うっさい。答えなさい」

 

 前世で唯一の家族を殺されてる、か。リュッケが言ったこの言葉は事実といえば事実なのだが、物はいいようレベルの話だ。

 

 「……なんて答えて欲しい?」

 「アタシ、あんたのこと分かってるつもりだから。ちゃんと正直に答えて。嘘をついたと思ったら殺すから。……こんなの、ただの確認よ」

 

 一度は俺の記憶を読んだ身だ。薄々俺の答えは分かっているけれど、一応聞いているのだろう。

 

 「じゃあまぁ……別に俺は世界を憎まなかったな。分かってると思うけど」

 「……なんで?」

 「そりゃ……親父はキモオタである前に殺し屋だった。そんな仕事をしてる奴が死ぬのは理不尽でも何でもない。因果応報だ。憎まれてる身で何かを憎む資格なんかないんだよ」

 「……」

 

 親父は知らないが、その親父に拾われた俺も、向いていたから人を殺した。親父と一緒に、半殺し屋半傭兵みたいな仕事で金を稼いだ。一般人に手を出したことはないはずだが、そんなことで正当化はしない。娯楽も何も知らなかった俺に親父が趣味を布教しまくったり、温かい時間もあったが、本来それが許されるような人間じゃなかった。だから、開き直った。誰の許しも要らないと。その結果としてその温かみを失っても、それは仕方のないことだ。

 

 「だから……俺は元から加害者だから。リュッケたちを哀れむことはできても、共感してあげることはできない」

 

 その資格がない。彼女たちの中には俺みたいな人間に何もかも奪われた子もいるだろう。そんな俺が仲間に入るとか、あまりにも烏滸がましいだろう。

 

 ……でも、よく考えたらこの方たち世界たくさん滅ぼしたんだよな。俺なんかよりずっとキルスコア高いのでは……? いや、ここで問題なのは順番だ。正しいかはともかくとして、彼女たちは被害者だから何をしてもいいという考えで繋がっている(多分)わけで……じゃあやっぱり、先に加害者だった俺は場違いだ。

 

 「……そ。残念だわ」

 「え、リュッケデレた?」

 「今すぐ死にたいの?」

 「いや、リュッケとハグしてからがいい!」

 「……」

 

 マズい。最後だからとはっちゃけていたらリュッケの目がどんどん冷めていくぞ!いよいよ死を覚悟したが、リュッケは大きなため息をつくと、静かに腕を広げた。

 

 「ん」

 「え……?」

 「……するんでしょ。ぎゅって……はやく」

 「あ……お、おう……えっと……あ、左腕仕舞った方がいいよな……」

 「……別にいいわよ。アタシもこの子たちもそれじゃ死なないわ」

 「え……そうなの?」

 「その子……ニコ以外のここにいる“アタシたち”は生きているわけじゃないから。漏れ出てるくらいのザラの気に当てられたりしないわ」

 

 そうだったのか……ザラさんの即死って生き物限定なタイプか……幽霊や神様は殺せない系の。って、そんなことはどうでもよくて。

 

 「じゃ……お邪魔します……」

 「ん……」

 

 面と向かって会えるのは夢の中だけで、しかも常日頃ツンケンしているのがリュッケだ。こんなスキンシップは初めてで、しかもリュッケがめちゃくちゃかわいい顔をするものだから緊張がヤバい。ギャラリーが多数いるのも相まって、辺りに微妙な空気が流れる。いや、広義にはここにいる全員リュッケなのかもしれないけど。

 

 意を決して、リュッケを抱きしめる。これが最後だと思うと、茶化す気も失せてくるものだ。夢で最初に会った頃は俺の方が若干背が低かったが、ザラさん効果で謎に背が伸びたいまでは俺の方が若干高い。リュッケの頭が俺の肩に乗って心地良い……けど、最後か。

 

 「ねぇ……ハナビ」

 「なにー?」

 「その、アタシ……」

 

 しばらくハグを楽しんでいると、リュッケが少し震えた声で話しかけてきた。身体の方も、少し震えている。

 

 「……いや、なんでもない」

 「そう?」

 

 言いかけたであろう言葉を、リュッケは結局のみ込んだ。その真意を知ることはできないが……本当は、心のどこかで、俺に自分を止めてほしかったのではないか……という考えがよぎった。

 

 「……はい! 終わり! 離れなさい!」

 「あと二時間~!」

 「バカ!」

 

 リュッケはそう切り捨て、俺を軽く突き飛ばした。

 

 「じゃ……アンタはアタシが殺してあげる」

 「……無理してない?」

 「うっさい」

 

 そして、リュッケは掌を俺の方へ向ける。気功波かな?

 

 「……さよなら、ハナビ」

 「あぁ──」

 

 そこで……()()()()()()()()()()()()、俺の意識は埋没した。

 

――――――――――――――――――――――――――

 

 創獣族巫女の館にして、この世界に侵入した界喰みが巣くう場所。

 

 そこに、数多の世界を滅ぼしてきた彼女たちですら身がすくむほどに濃密な『死』が満ちる。

 

 「話は終わりましたね」

 

 その場に、先ほどまでハナビと呼ばれていた少女はもういなかった。

 

 「ザラ……!」

 

 そこに立っているのは、異なる世界にて死を司る冥王《誅戮の利鎌》クリムサイズ=ザラ=グラエール。

 

 「……アンタと戦う理由はないはずだけど」

 

 リュッケの知る限り、ザラの目的はハナビの魂を連れて帰ること。この場でハナビが死ぬ分には、彼女の目的は達成されるはずだった。

 

 「貴方の為です、リュッケ」

 「アタシの……? 何を……」

 「自分では止まれないのでしょう?」

 

 睨むでもなく、敵意でもなく。慈悲を帯びた殺意が、冥王の怜悧な瞳に帯びる。

 

 「これも縁です。私が、貴方がたの終着点になりましょう」

 




なんか日刊載ってたからしばらく毎日あげちゃう
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