TS転生した上に美少女の幼馴染までついてきたぜ! 勝ったな(勝っていない)   作:鐘楼

59 / 86
地雷だぜ! バトンタッチ

 リュッケたち界喰みと、レフトオーバー・ザラさんタッグの戦い。俺の予感とは裏腹に、戦況は現状微有利といったものだった。

 

 レフトオーバーのインチキ祝詞連射が封殺されたのは、どうやらリュッケが空間を掌握というか、レフトオーバーがあの魔法を使えないよう先んじて占有しているかららしい。なんかそう分析していた。確かにあの祝詞乱発はチートだが、その起点となっている音声読み上げ魔法はおそらく平凡なもの。だから意外と簡単に潰せたんだろう。

 

 だが、あれがなくとも口頭での祝詞は機能するらしい。最初にレフトオーバーはザラさんをメタっていたシスターらしき界喰みを倒し、ザラさんを動きやすくした。そして、基本的にリュッケたちが立ち入れない冥界フィールドが展開されているのも大きい。安全地帯での防御寄りの戦いで、ザラさんたちは五十人ほどいた界喰みを三十人あまりに削っていた。

 

 このままいけば、勝てるかもしれない。

 

 「……勝ちきれませんでしたか」

 

 そう、このままいけば。

 

 「あと二分です。ハナビ」

 

 ……あっ俺!? と、完全にギャラリーになっていたので面食らったものの、まぁ分かっていたことだ。ザラさんの交代は時間制限がある。

 

 「彼女たちと戦うかどうか。それはハナビに委ねます。戦うのであれば、私の言葉を聞いてください」

 

 俺に語りかけながら、ザラさんは冥界フィールドの範囲を動かし、霊を操り、鎌を振るって界喰みと戦う。

 

 「まず一つ。祝詞の為の存在力ですが、おそらく私でもリュッケの代役ができるでしょう。彼女のように無尽蔵とはいきませんが、数回の戦闘であれば存在力を気にせずに祝詞を行使しても問題ないでしょう」

 

 あ、そっか。リュッケが抜けたから祝詞もまともに使えなくなるところだったのか。サンキューザラさん。マジで詰むところだったぜ。

 

 「そして二つ目。私は必要ないので使いませんが、ハナビの持つ私の腕は武器になり得ます」

 

 え……もう十分必殺の武器として完成されてる気がするんだけど……。

 

 「私の腕が人間を死に至らしめるのは、あくまで副産物です。触れた者をこちら側へ近づけ、人間はそれに耐えられずに肉体と魂が剥離してしまう。ですが、私の腕にはそれ以上の身がある。それを持つハナビは、冥界や死者に対して私に次ぐ裁量を持ちます」

 

 はぁ……ええと、つまり? ザラさんが先代冥王から引き継いだ権能の一部を、ザラさんの身体を持つ俺も使えるってことか。

 

 「ただし、代償はあります。ありますが……私は止めません。少し、私に近づくだけですから」

 

 急に不穏じゃん……まぁ、生きてる人間の分際で死者をあれこれするとか、ノーリスクじゃできなさそうだもんなぁ……でもまぁ最悪、最終的にザラさんと一緒にいられるならなんでもいいしなぁ。必要なら使ってみるか。

 

 「必要だと判断した場合、明確な意思を以て腕に力を込めてください。では」

 

 と、ちょうどそこで意識も、姿までもが切り替わる。見ていた映像に急に引きずり込まれるような感覚に船酔いみたいな気分になるが、どうやら戻ってきたらしい。

 

 「ハナビ……!」

 「あ、ども……」

 

 まぁでも、色々お膳立てしてくれたものの、俺は未だにリュッケたちと戦う気にはなれなかった。だってレフトオーバーは本当に悪いし……たとえリュッケたちが他の世界で散々やらかしてきていたとしても、この世界においての理はレフトオーバーよりリュッケたち、というかニコちゃんにあると思う。

 

 「その、リュッケ……ニコちゃんって……」

 「……一度“仲間”になったんだから、人として死んでも心と能力は本体にずっと残るわよ」

 「おぉ、良かった……良かった? 良かったのか……?」

 

 それはニコちゃん本人なんだろうか……なんか聞いたことあるよなこれ。人間の精神をデータ化して電脳世界で生きるみたいなSF。あれっぽい、などと俺がぐだぐだ考えていると、痺れを切らしたリュッケが問う。

 

 「ねぇ……まさか、アンタもそいつの味方をするの?」

 「え……いやぁ、ザラさんも別にレフトオーバーの味方をしてたわけじゃないと思うけど……」

 

 俺やザラさんがリュッケたちと戦う理由は……そもそも説明からして、ここにいるリュッケたちを倒しても本体は健在で界喰みは消えない。ザラさんには何か手立てがあったのかもしれないけど、俺に界喰みの根絶はできない。でもザラさんの言ったとおり、リュッケが俺に止めて欲しいってんなら……。

 

 「いや確証持てないしな……やっぱりパス……」

 「酷いな。約束したじゃないか」

 

 むにゅ。

 

 「は?」

 

 やっぱり降参しようとすると、右腕に柔らかい感触。

 

 いつのまにか復活していたレフバーちゃん(♀)が、俺に抱きついてきたのだ。エッ!

 

 「ハナビは私の味方をしてくれる、って」

 「あっあっあっ」

 

 脳に……! 脳に来る……! 計算され尽くしたささやきボイスが脳に……!

 

 「ハナビ……まさかソレに発情してそんなものの味方をするの?」

 「えーっとぉ……」

 

 この時、俺はテンパっていた。

 

 「じゃ、じゃあ……どっちの方が俺のこと好きなん?」

 「もちろん、愛しているよハナビ」

 「……もういい」

 

 なので、めちゃくちゃ選択をミスってリュッケたちと敵対してしまった。




※ちなみにレフバーちゃんがハナビを籠絡してる間もレフトオーバーさんは横で戦ってる
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。