TS転生した上に美少女の幼馴染までついてきたぜ! 勝ったな(勝っていない) 作:鐘楼
「うぉぉぉい!」
いきなり殺意全開の攻撃を放たれ、紙一重で回避する。
「ちょっタイム! 誠に申し訳ありませんでした!」
「うっさい! 死ね!」
ザラさんが創った冥界フィールドが未だ有効なのもあって、四方から飛び交う遠距離攻撃を躱すだけでなんとかなってる。発射元が分かっていれば避けるくらいはできるからな。幸い、攻撃の速さもピストルレベルではあったし。
「って! ごめんて! 今のやっぱなし!」
「あぁ、これはもう戦うしかないね」
俺の弁明も虚しく、リュッケが止まる様子はない。そんな状況を見て、レフバーちゃんは蠱惑的な笑みを浮かべる。こいつぅ……!
「とはいえ、だ。冥王に勝ちきれなかった相手に、キミが勝つというのは厳しいだろう」
「確かに……」
いざリュッケと戦うことになったとしても、ザラさんが手こずった相手に俺が勝てるとは考えにくい。たとえザラさんが教えてくれた腕の力を解放したとしても、それが本人を超えた力になるとは思えないし。
「いや、戦うつもりないから!」
「ふむ。ではこのまま大人しく殺されると?」
「えー……うーん」
憎悪に染まったリュッケを見やる。ザラさんが出てくる前。リュッケが大人しくて、ちょっとデレてくれたあの時だったら殺されても良かったし、実際そのつもりだった。死んでもザラさんが拾ってくれるという前提ありきの覚悟だったけど、あの時ならそれなりに綺麗な終わり方だと思ったからだ。
「いや……やっぱもうちょっと生きようかな」
あのリュッケを見ていたら、気が変わった。
「やっぱり……ソレの味方をするんだ」
「違う。リュッケと喧嘩したままお別れは御免なんだよ」
「……!」
……たとえ、今彼女が怒っているのが100%俺に原因があったとしても。このまま死んで、最後に見たリュッケの顔があんなにも歪んだものなのは嫌だ。
「あとさ。俺に止めて欲しいっての、本当なのか?」
「……黙って。もう話すことなんかないから」
「えー、とりあえず仲直りしてくれたら降伏しても……っ!」
俺の軽口は、リュッケの無言の攻撃によって遮られた。どうやらほんとに口をきいてくれないらしい。やっぱここじゃ死ねないな。
「となると、ここは一度引くべきだね」
「うわっ」
そう俺に提案したのは、そっちの方でずっと界喰みと戦っていたレフトオーバーさんだった。では俺に抱きついていたレフバーちゃんはというと、唐突にいつもの黒い靄に包まれたかと思えばすっかり消えてしまったのだ。
「今回の戦闘で得た情報を次に活かし、冥王との交代を残した万全状態で挑むべきだろう。既に界喰みの起点は破壊した。しばらくの間は敵の戦力が増える心配はしなくていい」
「まぁそれしかないだろうが……」
言っていることは分かる。今勝つことができそうにないのなら、日を改めるのが正解だ。極論、ザラさんにヒットアンドアウェイで毎日襲撃して貰うのが一番勝ち目があるのだから。やらないけど。が、そんなことよりも。
「なんでレフバーちゃん消えたの?」
「キミを逃がすための戦いだ。キミはあちらの私を庇いかねないからね」
「たしかに……」
いざって時にレフバーちゃんを庇ってしまう可能性は大いにある。シャーリーの時みたいに。だってかわいいから。
「あれ、そっちは逃げなくていいのか?」
「私のことは気にしなくていい。キミが退くことだけ考えてくれ」
「まぁ……了解」
自己犠牲実力者みたいなセリフだけど、たった今レフバーちゃんが消えたみたいにあっさり離脱する手段を持ってたり、身体が殺されてもどうとでもなったりするが故の発言だろう。やっぱりコイツは常に何かしらの保険をかけるタイプだ。
「逃がすと思ってるの?」
「それなぁ」
今俺がリュッケたちの攻撃に対応できているのは、ザラさんが残してくれた領域にリュッケたちが立ち入れないことが大きい。この完全に囲まれてる状況で逃げ出せるビジョンは正直見えない。
「やっぱザラさんの腕が頼りか」
かなり無法な即死属性を帯びたザラさんの左腕だが、今のところ雑魚にしか効いていない。多分レフトオーバーやリュッケたちがおかしいだけなんだろうが、肝心なときに無用の長物となっている。しかしそれは、真の力を解放していないが故のもの。生物に対する即死効果はただの副産物であり、その真価は冥王の権能らしい。ふわっとしているが、今はこれが頼りだ。
「えーっと……明確に意識して腕に力を込めるんだっけ」
どういう理屈なんだろ。案外俺の意思を汲んでザラさんが起動してくれるアナログ方式だったりするのか……? うーん、でもこういうのは分かりやすいのが良いよな……よし。
「冥腕……解放!」
良い感じに左腕を突き出し、それっぽいキーワードを叫ぶ。すると、まず最初に起こった異変は俺の感覚だった。
繋がっているはずの腕が、存在しないかのように神経から音沙汰がない。唐突に腕が崩れ去ったあの時のことが脳裏によぎり、若干焦って左手を握ってみる。動く。が、感覚がない。無痛症みたいな……?
だが、そんな異変は些細なことだった。みるみると、目に見えて左腕が変化し始める。
青白い肌が灼けるように剥がれていき、その内から顕れたのは透き通るような紅。そして、その紅の中に覗く橈骨、尺骨、手指の骨たち。そうして、ザラさんの左腕は皮も肉もない、鮮血のような紅に包まれた骨があるだけの、異形へと変じたのだった。
ところで、スケルトン仕様のマシンってかっこいいよね。
スラシル(FEH)、いっちゃんえっち。