TS転生した上に美少女の幼馴染までついてきたぜ! 勝ったな(勝っていない)   作:鐘楼

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本音だぜ! 誠実トーク

 「おい」

 「……」

 

 明日、再びリュッケたちと戦う。そうと決まったので、今日はゆっくり休むことになった。俺が助けるまで割と極限状態だったホノカは食事の後すぐに眠ってしまったが、俺は一応休み方を心得てるつもりだ。こうして夜風に当たっていても明日にはベストコンディションに戻せるくらいの自信はある。

 

 「なにヒョウヤ? てかまだいたの?」

 

 そんな俺のリラックスタイムを邪魔してきたのは、相変わらず眉間にしわを寄せたヒョウヤだった。正直こんなところにいないでさっさと逃げてて欲しいんだけど。

 

 「俺はまだ何も分かっちゃいねぇ。知ってることを全部教えろ」

 「えー……もう大体説明したくねー?」

 「俺をあの脳天気女と一緒にするな。あの時俺らにした説明はほとんどただの誤魔化しだろ」

 「無駄に鋭い」

 

 今からヒョウヤに全部教えるってのはめちゃくちゃ面倒だったが、ヒョウヤはやけに真剣な眼差しを俺に注いで逸らそうとしない。納得するまで逃がさない、そんな本気度を感じる。簡単には折れてくれなさそうだ。

 

 「いやー……知らない方が幸せなこともあるんじゃ」

 「俺は!」

 

 適当に煙に巻く言葉を口にしようとすると、ヒョウヤは声を張り上げてそれを遮る。いつものようにキレてる感じじゃない。こんなヒョウヤは初めて見る。

 

 「俺は……ちゃんと自分で判断したい。このままじゃ俺は何も選べない。お前に手を貸すべきなのかどうかも決められねぇ……!」

 「いや、それは決めるまでもないって。お前が手伝う意味なんてねーよ」

 「それは、俺が決めることだ」

 

 ヒョウヤにまで無駄死にして欲しくないという、俺の真っ当な老婆心を真っ向から否定するように、ヒョウヤが俺に詰め寄ってくる。なんていうか、身長逆転しちゃったのもあって全然怖くないな。

 

 「だから情報を寄越せ。俺はあの根暗や脳天気とは違う。盲目的にお前に与するんじゃなく、まず……ハナビ。ちゃんとお前のことを知りたい」

 「別に味方して欲しいわけじゃないけど……はぁ」

 

 一応幼馴染みではあるが、結局俺は一度たりともヒョウヤを対等に思ったことはない。子供に対する線引き、堅気に対する線引き。それらが合わさって、内心では近所のガキみたいな認識が拭えない。そういう意味では、俺の中でキヌやヒョウヤはリュッケとかレフバーちゃんとかとはカテゴリーが異なる。あ、これが俗に言う日常の象徴ってヤツか……多分二度とこの日常味わえないだろうけど。

 

 そんなんだから、ヒョウヤは美少女とはまた別の意味で巻き込みたくないというのは、正直ある。けどまぁ、割と少なくない確率でヒョウヤと話すのは今日が最後になる可能性がある。そう考えると、今日くらいはその真剣さに免じて誠実に対応してやってもいい。

 

 「……分かった。ただし、お前の疑問にだけ答える」

 「……ありがとう」

 「お、おぉ……」

 

 初めて聞いたぞ……こいつの口からお礼とか。なんか本気度高すぎてもう気味が悪いな。いつもの喧嘩腰はどこへ……まぁアレはおれの煽りが悪いんだけど。

 

 「まず、レフトオーバー。あの女はなんだ? 昼の説明は嘘が混じってるだろ」

 「あー、それなぁ……」

 

 当たり前のようにこの世界を凍結できるかのような口ぶりの美少女。只者ではない雰囲気や俺との会話内容も相まって、そりゃ気になるだろう。でも、アイツのこと説明するとなるとこの世界の意義とかも話さなきゃならんのよなぁ……まぁ約束したからには説明するけど。

 

 「まず、昼にした説明はお前が思ってるより真実寄りだ。レフバーちゃんがこの世界を創ったの本当だし、世界凍結云々も事実」

 

 そもそもレフバーちゃん、俺と違ってヒョウヤやホノカを無視していたから、俺との会話で一切配慮してなかったんだよな。だからあの時のレフバーちゃんに誤魔化しは何もない。

 

 「嘘を混ぜたり伏せたりしたのは、焔精族でいう火の精や、青雷族でいう雷の異能の少年だったりの、いわゆるルーツについてと、レフトオーバーが世界を創った理由」

 「……続けろ」

 「結論から言うと、ルーツってのは異世界の強者らしい。あ、異世界ってのは……」

 「ニュアンスは分かる。続けろ」

 「おう。種族ってのは、その異世界の強者の力をレフトオーバーが起源書を通じて掠め取り、その力を受け継ぐよう細工された人間のこと……っぽい」

 

 俺もレフトオーバーに一回説明らしきものを聞いただけだから、あんまり断定はしたくない。けどまぁ、大体あってるだろうし、重要なのはここからだ。

 

 「なんでレフトオーバーが種族なんてものを創ったかというと、異世界の強者の力を我が物にするためらしい。なんでそうなるのかはよく知らないが、そのためには種族たちに殺し合いを繰り返させる必要があるらしい」

 「なんだと……!?」

 「それを円滑に遂行するため、アイツは種族に別の種族を攻撃する本能のようなものを植え付けたらしい。だからまぁ……お前の真の仇はアイツだと、言えなくもない」

 「っ!」

 

 ヒョウヤの顔が、衝撃に歪む。ま、無理もないか。

 

 「お前は……! なんでそんなヤツと仲良く……!?」

 「いやー、だってめっちゃかわいくね?」

 「てめェ……!」

 

 普段より、かなり湿度の高い怒りを向けられる。ただやはり怖くはないので飄々と受け流して、次の言葉を口にする。

 

 「真面目な理由もある。レフバーちゃんの手段はたしかに終わってるが、最終的な目的は真っ当なものだったりな。あとそもそも、お前がレフバーちゃんにキレてなんか意味があるのか? アイツはこの世界の管理権限を持ってるし、どの種族の祝詞も第九階梯まで使えるし、なんか変な呪いの力を使うしついでに死なないんだぞ?」

 「な……んだそりゃ……」

 

 それは俺が聞きたい。アレをあしらえるリュッケたちについても聞きたい。

 

 「……敵対しても意味ねぇのは分かった。納得はしてねぇが、一旦呑み込む。けど、お前がそんな奴と平気で仲良くしてる理由にはならねぇ……!」

 「そりゃ簡単だよ。俺の目的を果たすのにレフバーちゃんが必要なんだ。キヌを助けるため、リュッケと……相棒と仲直りするために、レフバーちゃんは欠かせない。この世界で死んでいった大量の他人の無念より、俺は自分の目的の方が大事だ」

 「……チッ」

 

 俺が率直に自分の心境を述べると、ヒョウヤは顔をゆがめながら引き下がった。とりあえず理解はしてくれたらしい。

 

 「あ、これで終わりでいい?」

 「んなわけねぇだろ。次は……レフトオーバーの目的、界喰みってのがそうなのか?」

 「あー、そうね」

 

 ……え、リュッケたちの説明もすんの? これ長くなるな……。

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