TS転生した上に美少女の幼馴染までついてきたぜ! 勝ったな(勝っていない) 作:鐘楼
「まぁうん。界喰みの打倒がレフトオーバーの目的で間違いない」
「それは、あんな所業が許されるような大層な目的なのか?」
冷静を保とうとはしているものの、ヒョウヤからはレフトオーバーへの隠しきれない嫌悪感が浮かんでいた。うーん、ごく普通の反応。だというのに、そんな相手の事情を知ろうと呑み込んで俺に話を聞けるのは素直にすごいことだ。
「界喰みっていうのは、色んな世界を滅ぼして回ってる厄介な存在らしい。ちゃんとは聞いてないが、レフトオーバーも故郷を滅ぼされてるっぽい」
「じゃあ、奴もその復讐のために? だからと言って……」
早合点しかけるヒョウヤを制する。レフバーちゃんのことを人間的な理屈に当てはめると致命的な間違いを引き起こしかねないので、ここはキッチリ訂正しておく。
「それは違うだろうな。あいつは界喰みに対抗するために創られた人工的な存在らしい。復讐ってよりは、それが使命だからやってるという風に見える」
まぁレフバーちゃん本人はともかく、レフトオーバーという存在には滅ぼされた世界の人達の無念や憎悪が掛かっていても不思議じゃないけど。
「それに、手段に関しても許すとか許されないとか気にする奴じゃないしな。それが界喰み打倒に有効な手段ならそれが全てなんだよ、あいつにとっては」
「……」
とはいえ、レフバーちゃんにとって界喰み打倒が全て……にしては、俺への対応が優しい気がするけど。良い研究対象だと思われてるのか? でもザラさんと一緒になる前から助命はしてくれたんだよな。うーん、あんま深く考えるものじゃないな。
「……じゃあ、結局界喰みってのはなんだ。なんで世界を滅ぼして、この世界まで……」
「界喰みは……力を持った複数人の集合体、的な? そういう存在っぽい」
「集合体だと?」
いや、これまた説明が難しいな。俺もリュッケたちに一回話聞いたくらいだし。
「えーと、どこかの世界で、その世界すべてを憎んで滅ぼした女の子が、別の世界で自分と同じような境遇と考えを持った子に、滅びを実現させるに足る力を与え回る。そうして力を与えられた子は界喰みの一部になって……そうやってどんどん膨張して手が付けられなくなった存在、それが界喰み」
割と俺の憶測が混じったけども、大体合っていると思う。そういえば戦った界喰みはみんなかわいかったが、界喰みになれるのは女の子だけなんだろうか。あれかな? リュッケが共感できることが条件だから、その辺が関わってるのかな。
「……あの時、お前が戦ってた女の集団。アレがそうなのか?」
「あぁ。で、そんな存在がなんでこの世界を滅ぼそうとしてるのかっていうと……ちょうどお前みたいに、この世界の理不尽に晒されて世界とレフトオーバーを憎んだ女の子が、界喰みの一員になったんだ。今じゃその子の恨みは界喰み全員の恨みだから、レフトオーバーに復讐してついでにこのクソみたいな世界を終わらせようとしている、ってのが理由だ」
「それは……」
ヒョウヤの瞳が揺れる。俺が説教したとき以来の動揺が見れて面白いが、本人はそれどころじゃないだろう。
「思うところがあるか?」
「……どう考えても、正しいのは界喰みだろ」
「俺もそう思う」
ヒョウヤの気持ちは分かる。というか、これに関してはどう考えても滅びた方がいい世界を創ったレフバーちゃんが悪い。
「でも俺は正しさに頓着してないし、公平の為に一つ付け加えておく。この世界はレアケースなんだ。界喰みは色んな世界を滅ぼしてきた。その中には、憎くて仕方がない相手を消すために普通に生きてる関係のない人を巻き添えにしたことが何度もあったはずだ。これを正しいと思う奴はあんまいないだろ? まぁここ育ちのヒョウヤには普通の世界ってのが想像つきにくいかもしれないが……」
「……バカにすんじゃねぇ」
いつもの反発の言葉も、どこか勢いがない。ヒョウヤくんこれ結構沈んでるな。
「でも、少なくとも俺は正義が誰にあるとかはどうでもいいと思ってる。……界喰みのリーダー、リュッケとは色々あってな。大切な人なんだ。リュッケと仲直りするために。キヌを守るために。俺は戦う。だから……」
ゆっくりと、封遮布に覆われた左腕をヒョウヤに向かって突き出す。
「お前が正しさに従って俺の邪魔をするなら、ここで殺す」
「……ッ!」
じり、とヒョウヤが一歩後ずさる。約二週間前になし崩し的に初体験をしただけのチェリーくんに俺の殺気は刺激が強すぎたようだ。
「……他人の復讐を手助けしてやるほど優しくねェよ」
「あ、そう」
「けど……」
「けど?」
「一度、その界喰みの話を聞いてみたい」
「……」
いやー、ヒョウヤはひねくれてるけど共感性高そうだし、会話をさせたら敵になる気がしてやめて欲しいんだけど。
「……ま、無理な願いだな。さすがに危ないって。命懸けるほどの願いじゃないだろ?」
遠回しにヒョウヤを遠ざける俺の言葉の意図が通じたのかは分からないが、ヒョウヤは何も反論しなかった。やっと会話が終わった感が出てきたので、俺は踵を返す。
「待て」
「えー、まだなんかあんの?」
「まだ肝心なことを聞いていない」
呼び止められて気怠く振り返ると、ヒョウヤは今日の真面目モードの数割増しで真摯な目線を俺に向けていた。
「お前は一体、何者なんだ」
そんな顔で何を聞いてくるのかと思えば、ヒョウヤの口から出たのは他でもないこの俺自身についてのことだった。
こうシリアスが続く場合、読者が疲れないように一話の文量を長くして一気に終わらせた方がいいです(他人事)
一話を長くしても更新頻度を維持できる作者様は試してみてください()