TS転生した上に美少女の幼馴染までついてきたぜ! 勝ったな(勝っていない) 作:鐘楼
俺たちの作戦は、成功だったと言っていいだろう。
「ザラ……ッ!」
「一日ぶりですね、リュッケ」
俺が使っていた潜入用の祝詞、《光線回折》のほとんど上位互換である隠密用祝詞《静寂のヴェール》を付与されたザラさんは、姿だけでなくあらゆる存在の証が打ち消され、いかに界喰みといえども一切の感知ができない。
ニコちゃんの恨みを引き継いだ界喰みたちによって未だに暴力を振るわれていたレフトオーバーさんの自爆を開戦の火蓋として、混乱に乗じたザラさんが前のように冥界を展開することで界喰みを十二人仕留めた。
そうして姿を現したザラさんにリュッケたちの注意が向いたところで、その背後からレフバーちゃんが奇襲。固まっていた界喰み三人を仕留めることに成功した。
「レフトオーバーまで……!」
「今日の私は駒の一つなんだがね」
本来の意味でヘイトが高いレフトオーバーの登場に、界喰みたちの注意は当然そちらに向く。そこに、このチームの第三の矢が襲いかかる。
「そこです! 《火の精の恩寵と試練》《愛灰》《厄火の粉塵》!」
ホノカだ。なんと彼女はレフバーちゃんの改造で第八階梯の祝詞まで使えるようになっており、遠距離から火の精が世界を呪った際に遺した災害を引用して界喰みに放った。面の攻撃で決定力には欠けていたが、界喰みの内二人を防御に専念させるほどの威力だった。
そして、稲光が走る。
ホノカの火の粉をガードしていた界喰みを雷電を纏ったヒョウヤが貫いたのだ。
「なっ……!? イロハまで……!」
ここまでが俺たちの速攻作戦。一瞬にして、界喰み十二人が消滅し、四人は赤い液体に還っていった。残り、六人。これならば、俺とリュッケのタイマンという目的は達成できるだろう。
「……どういうつもりよ、ザラ。アンタはアレの味方をするの?」
そう言って、リュッケはレフバーちゃんを睨む。その瞳に宿る憎悪は、退場したニコちゃんの恨みの強さをひしひしと感じさせる。この世界に入ってこれない界喰み本体にバックアップがあるとはいえ、そのニコちゃん本人もレフバーちゃんに殺されてるんだから、そりゃ一晩中リンチしてても憎いものは憎いだろう。
「それは違いますね。アレもこの私も、ハナビが味方につけてここにいます」
「……そう。そうなんだ。敵なんだ。ハナビも。やっぱり、殺さないといけないんだ」
それは違うと、今すぐ弁明したかった。けれども、ザラさんに身体を明け渡した今の俺は外になにかを伝える術を持たない。代わりに、ザラさんが大鎌を振るった。
「ハナビの真意はハナビに直接聞くことです。私はただ、ハナビのために戦うのみです」
リュッケについては思うところがあると言っていたザラさんだが、説得をする気はないらしい。奇襲のあとも、素直に話を聞いてもらえるように可能な限りリュッケを消耗させてほしいという俺の頼みをただ実行するだけ、そんな仕事人じみた覚悟を感じる。
「……アンタ、そう長くは表に出てこれないんでしょ。そんな短い時間でアタシを倒せると思ってんの? いくら人数を削っても、アタシさえ残っていれば……っ!」
問答無用。既に会話の時間は終わったとばかりに、ザラさんが鎌を振るう。その場を飛び退いて躱そうとしたリュッケはしかし、ザラさんがいつの間にか従えていた霊魂によって足を止められ、避けることができない。
瞬時に受け止める方向に切り替えたリュッケは虚空から武器を引き抜き、鎌の一撃を受け止めた。力と力のぶつかり合いが、音だけでなく衝撃波となって辺り一帯に響き渡る。
「上等よ……! アンタがその気なら、叩き潰してあげる! ゴーストスマイト!」
退場したシスター姿の界喰みが用いていた対霊魂用の技を用いて、リュッケは霊障を消し去る。界喰みすべての技が使えるというのは伊達じゃないようで、これではザラさんも結構厳しい戦いを強いられるだろう。まぁ、霊属性ってメタられやすいよね。
そして、界喰みと俺たちの最終決戦が始まった。
ホノカを背にしたレフバーちゃんは、界喰み三人と戦い、ヒョウヤは一対一のタイマンを挑むらしい。レフバーちゃんはホノカの火力を活かしながら多彩な手段で相手を翻弄している。十五人までなら受け持てると豪語していただけあって、かなり余裕そう……それどころか楽をしているくらいに見える。ヒョウヤの方も、互角の勝負をできているようで、あっちの戦局は心配しなくていいだろう。
結局の所、問題はリュッケ一人。ザラさんも、おそらくは勝ちきれないだろう。すべては俺の説得にかかっているのだ。っていうか、俺がリュッケと話し合うための戦いだってザラさんは分かってるんだよな? 別に倒してしまっても構わなくないんだけど、大丈夫だよな?
う す い