TS転生した上に美少女の幼馴染までついてきたぜ! 勝ったな(勝っていない)   作:鐘楼

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テクいぜ!ネゴシエーション

 「……時間切れのようですね」

 

 ザラさんとリュッケの攻防は、一進一退の戦況が続いていた。ややリュッケが防戦に傾いていたが、それはザラさんの時間切れが目に見えていたからこそ。だがそれも、ここまでだ。ザラさんが意識が沈み、俺の方が浮上する時が近づいている。

 

 「呆気ないわね。これでアタシたちの勝ちは決まったようなものよ」

 「そうですか? 貴女の手札はかなり削れたと自負していますが」

 「……!」

 

 ザラさんの言葉に、僅かに顔を顰めるリュッケ。リュッケの反応からして、どうやら捨て台詞というわけではなく図星だったようが、手札ってなんだ?

 

 「親機である貴女は他の界喰みの力を自在に使えるとのことでしたが、それも無制限ではない。一つの能力を立て続けに使うことはできないんでしょう?」

 「……聡いわね」

 

 つまり? 親機のリュッケは界喰み全員の力を使えはするけど、それぞれにクールタイムがあったってことか。よくよく思い返してみると、リュッケは色んな攻撃をしてきたけど全く同じ攻撃は使っていなかった気がする。

 

 「たしかに、一度使った子の力はもう今日の間は使えないけど……それが何? ハナビ一人を殺すのに支障はないわ」

 「それは分かりませんが……重要なのは、私がハナビの助けになれたということですから」

 「……ふん。ハナビが死んでも、ある意味アンタは勝ちだものね。微妙に緊張感がなくてつまんないわ」

 

 リュッケの棘のある言葉に、ザラさんはなんとも言えない微笑みで返す。そして、俺に身体の感覚が戻る。急に戻った重力に、少しだけ煩わしさを感じた。

 

 「ふぅ。会いたかったぞ、リュッケ」

 「……どういうつもり? レフトオーバーに味方しておいて、今更……」

 「まぁまぁ。ちょっと話そうって」

 「……」

 

 俺が対話姿勢を取ると、リュッケは心底苛立ったような表情をする。が、この顔は呆れの成分が強い顔だ。対話不可能な時のリュッケはもっと真顔に近い感じになるので、これはまだ平和的解決の線があると見た。

 

 「まずさ~、俺がレフトオーバーの側に立ってるみたいなの、あれ誤解なんだよね。むしろ逆っていうか、俺がレフトオーバーを顎で使ってる感じ?」

 「それ、絶対アンタの方が利用されてるやつよね?」

 

 記憶を取り戻そうが、ツッコミ気質は元かららしいリュッケは、俺の言い訳風アイスブレイクにまんまと乗せられて鋭いツッコミを放つ。実際、俺だってレフバーちゃんを信用していない。対価を提示して協力してもらってるだけで、リュッケとレフトオーバーを天秤にかけたらさすがにリュッケを選ぶだろう。

 

 「そもそも、だったら何? アンタの方がレフトオーバーを使っているとして、ここに来たってことは……そうまでしてアタシたちを殺したかったってことなんでしょ……!」

 「いやいや、そんなつもりないって。なんかリュッケたちの方が頭に血が上ってるからさ~、話を聞いてくれる気になってくれそうな戦力を集めただけなんだよね。相互破壊確証……だっけ?」

 

 そもそも、俺が地雷を踏んでリュッケがキレる以前、界喰みたちと割と温厚に話せていた頃から彼女たちは最終的に俺を殺す気満々だったのだ。対話するにも武力を持ってくるのは当然……そんな俺の主張に一分の理を感じたのか、リュッケが言葉に詰まる。

 

 「じゃあ……なに? アンタがそこまでして話したいことってなんなの!?」

 

 リュッケが叫ぶ。

 

 「まさか、アタシたちに復讐を止めろなんて言うつもりじゃないでしょうね!? いたわよ、前にもそんな奴らが大勢……! けどね、ソイツらは何も分かってない! アタシたちはもうそういう存在なの! 今更止めようとするくらいなら、()()なる前に助けてくれれば良かったじゃない……! それが何? 自分たちが危なくなってから、やっと目を向けて! 同情するけど止まれって、そんなの、通るはずがっ……!」

 「いや、全然違うけど」

 

 完全にヒートアップしてきたリュッケがなんか見当違いなことを言い始めたので、違うとバッサリ切り捨てる。すると、リュッケはぽかん、と間の抜けた顔をした。

 

 「え……ち、違うの?」

 「うん。掠りもしてない」

 「そ、そう……」

 「ていうか何? リュッケは俺がそんな月並みな主張をする奴だと思ってたの? 心まで見られた仲なのに、なんかそっちがショックなんだけど……」

 「……た、たしかに……じゃ、じゃあ何の用なのよ!」

 

 リュッケの問いかけに、俺はニッと笑い、手を差し伸べた。

 

 「俺と来い」

 「…………は?」

 

 俺のシンプルな要求を聞いたリュッケは、差し伸べられた手を見つめ、鳩が豆鉄砲を食らったような、より一層間の抜けた顔をした。

 

 「俺はまだリュッケと一緒にいたい。来い」

 「な……え、は?」

 

 ちょっと端的すぎたかな、ともう少しだけ詳しく要望を伝えるが、逆にリュッケの混乱は深まってしまった。

 

 「アンタ……アタシがどういう存在か分かってる!? もういくつも世界を滅ぼしてきた、界喰みで……」

 「うるせェ! 行こう!!」

 

 ドン! とダメ押しを加えると、リュッケはたじろぐ。

 

 「そ、そんなの……アタシたちがどんなことをやってきたのか知らないからそう言えるのよ! この怒りを鎮めるために、アタシたちはどんな残虐なことだって……」

 「でも俺は嫌な思いしてないから」

 

 すらすらと口から語録が出てくるが、これは真理だ。俺個人は界喰みになにかされたわけでもないし、むしろリュッケには良い思い出をたくさんと、ついでに命をもらっている。なら、俺はそれでいい。それだけ多くの者が彼女を許さなくとも、それとは関係なく、俺は許す。ザラさんが俺に言ってくれたことと同じだ。

 

 「は……はは……」

 

 俺が本気で言っていることを理解したリュッケは、力が抜けたかのように笑った。

 

 「一本取られたわね……でも、ごめんなさい。アタシは怒りを糧にする界喰み。ハナビの隣がどれだけ楽しそうでも……一緒には行けない」

 「えー、ちょっと借りるだけやん! ちょっとリュッケの一部を俺に預けてもらって、前みたいに話せるだけで良いんだって! 別に復讐は本体とか他の子に任せておけばええやん! 先っぽだけ!」

 「粘り方が見苦しい……」

 

 俺が諦めずに縋ると、リュッケは以前のような親しみのある軽蔑の言葉を口にする。そして、哀しそうな表情を浮かべた。

 

 「たしかに……今アンタが言ったような方法でなら、界喰みでありながらアンタと一緒にいることもできるかもしれない。だけど……無理なのよ。アタシたちは怒りでまとまっている。きっとみんなは、アンタと一緒にいて楽しさを感じる私を許さないわ」

 

 俺と一緒にいて楽しい時間を送るリュッケは、同期している他の界喰みの反発を受ける。そうなれば界喰みの結束が崩壊するかもしれないからと、だから俺の手は取れない……それは……。

 

 「だから……交渉はこれで終わり。心配せずとも、アンタのことはアタシたち全員で覚えておいてあげる」

 

 そう言って、リュッケは臨戦態勢を取った。話が通じなくなった雰囲気はないが、もう話は聞いてあげないという決意はありありと伝わってくる。

 

 「なんだ、結局戦うのか……」

 

 まぁ、こうなっては仕方がない。

 

 「力ずくでお前を手に入れてやるよ。リュッケ」

 

 俺は笑って、左腕を前へ突き出した。

 

 




一人でこの作品の正気成分を担っているヒョウヤに月並みはひどすぎるだろ……
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