TS転生した上に美少女の幼馴染までついてきたぜ! 勝ったな(勝っていない) 作:鐘楼
「冥腕解放!」
ザラさんの青白い肌が灼けるように剥がれていき、透き通るような紅と、その内に骨が顕れていく。皮も肉もない、鮮血のような紅に包まれた骨。ザラさんの腕の真の力を解放し、戦いの火蓋を切る。
先に仕掛けてきたのは、リュッケだった。虚空からハンマーを取り出し、大ぶりの攻撃を放とうとしてきた。俺は咄嗟に右手で銃を抜き、ハンマーを握るリュッケの手を狙う。数少ない俺個人の技術で、ほんの僅かな時間で狙いの通りに弾丸を放つことには成功したが、肝心の銃弾が大した威力ではない。にも拘わらず、リュッケは無理な動きをして弾丸を避けた。この前の戦いで俺が見せた、銃弾に霊魂を込める技を警戒したのだろう。
無理な動きを強いられ、体勢を崩されたリュッケはハンマーの重量に負け、俺に背中を晒す形となった。さすがに、この隙は見逃せない。
「《いかづちのさえずり》!」
祝詞の準備をしながら、距離を詰めて接近戦を仕掛ける。このレベルの戦闘になると、一々ペラペラと口に出さなきゃいけない祝詞をほいほいとは使えない。戦闘のスピードが速すぎるし、発声に意識を割かれるというのも結構な負担だ。
「《鳴禽の稲妻》!」
無防備なリュッケの背に向けて、発砲。これは原理不明の障壁によって阻まれるが、リュッケは同じ手を二度使えない。手札を切らせたとポジティブに考えることにして、銃の持ち手を振りかぶる。
「《纏電》!」
加速より威力・範囲重視の《纏電》を乗せた銃で、リュッケを殺す気で殴る。が、リュッケは先ほどまでとは別人のように洗練された常識外れの動きでこれを回避。おそらくは、武術に長けた界喰みの力を引き出したのだろうが、マズい。想定外の反撃、恐ろしい勢いで放たれたアッパーが来る。
左腕の権能で、リュッケの身体に霊障を発生させる。リュッケの動きは一瞬鈍るが、力任せに振り切り、攻撃を継続される。だが、その一瞬は大きい。俺は倒れ込むように下からの拳を回避し、それと同時に銃撃を放つ。これも回避されるが、それは織り込み済みだ。《纏電》の発動中に放たれた弾丸もまた電撃を纏い、地面に着弾と同時にリュッケを巻き込むように放電する。
そのことを察知したリュッケは跳んで回避を試みるが、俺が倒れ込むと同時に左腕を地面に叩きつけて呼び覚ました死者……骨の手に、足を掴まれて失敗。放電をもろに浴びた。
「ぐっ……!」
「《鉄と正義と》!」
次の祝詞の準備をしつつ、痺れたリュッケに向かって発砲。霊魂を込めたそれが確実に命中し、決着はつく……と、そう簡単にはいかなかった。突如リュッケの姿がかき消えたのだ。同時に、背後に気配。
瞬間移動……! メジャーな能力かもしれないが、実際にやられてはたまったものではない。
今度は虚空から剣を取り出し居合いのように斬りつけてくるリュッケに、俺は一縷の望みに賭けて左腕で身を守ろうとした。ザラさんの腕は見事剣に打ち勝ち、リュッケの斬撃を受け止める。俺が左腕の頑丈さにちょっと引いている間に、リュッケは剣を手放して次の攻撃に入っていた。
俺を挟み込むように生じた魔法陣。いかにも遠距離攻撃が放たれますみたいな見た目からそのまんまの魔法攻撃が放たれる。嫌らしいことに、今から回避することは不可能な配置だった。左腕の権能を使い、霊魂を肉壁として受肉。攻撃を凌ぐが、今度はその肉壁によって逃げ場を失った俺に向かって、リュッケが今度は槍で攻撃してくる。
俺は銃撃を槍の穂先に当て、矛先を逸らす。逸らされた槍は肉壁に当たり、勢いを殺されるが、動じないリュッケはすぐに槍を手放し、かかと落としを見舞ってきた。打つ手がない俺は、やはり咄嗟に左腕でガードすると、腕に触れたリュッケの足が弾けた。
「!?」
「なっ……!?」
どうやら解放したザラさんの腕の即死力はとても高いようで、耐性があるはずの界喰みの身体でも触れれば部位破壊ができるらしい。お互いにとって予想外だったこの現象に、双方が驚くが、立ち直るのはリュッケの方が早かった。
「っ! 《心機一た──がッ!?」
我に返って祝詞を発動しようとした俺だったが、胸に衝撃。肺にダメージを受け、発声が中断される。岩。魔法のようなものによって生成された岩をもろに食らってしまったのだ。
今度こそ、マズい。足を奪ったとはいえ、体勢が悪い。仰向けに倒れるような姿勢に追い込まれた今の俺には、リュッケから距離を取る手段がもうない。
「終わりよ、ハナビ……!」
リュッケが、トドメの一撃を放とうとしたその時。
「──《縛鎖》《乱嵐禍炎》!」
リュッケの背後から、吹き荒れるような炎が彼女を襲った。リュッケはそれに対応するために俺に背を向け、炎を防御する。俺はその隙を突いて、リュッケが炎を防いだ名残の暴風に乗るように立ち上がって距離を取った。
その際に、ちょうど界喰みの殲滅を終えたらしいホノカとレフバーちゃんが目に入る。俺を助けてくれたのは二人ではない。炎を使ったのが、ヒョウヤであるはずもなく。
「大丈夫!? ハナビちゃん!」
随分と懐かしい気がする声が響く。
「キヌ……」
背後からリュッケに一撃を加え俺を救ったのは、キヌだった。