TS転生した上に美少女の幼馴染までついてきたぜ! 勝ったな(勝っていない) 作:鐘楼
「くっ……ぁ……」
俺に片足を奪われ、キヌに燃やされたリュッケはしばらく動けそうもない。その隙に、キヌはこっちへ近づこうとしていた。
焔精族がここ……本来は創獣族の土地であるこの場所にやってくるのは、ホノカの証言で分かっていた。だが、できるなら巻き込みたくなかった。俺はもう、キヌの人生からぬるっとフェードアウトした身だ。もっとこう、直接会わないけど影から助けになる……みたいな関わり方が理想だった──
「ハナビちゃん……!」
などと考えながら、こっちへ向かってくるキヌを見ていると、とんでもない事実に気づいた。
リュッケもレフバーちゃんもなんか耐性があるし、ヒョウヤもホノカも耐性を付与されているから無事なだけで、キヌが俺に触れたら……いや下手をすれば近づいただけで死んでしまう。
「っ! 来るなッ!」
「ぇ……」
駆け寄ってくるキヌを、強く制止する。かなり心苦しいが、優しく言ってもしキヌが死んでしまったら最悪だ。
「な、なんで……」
「すまん今腕を……」
冥腕解放状態は、一瞬で解除できるわけじゃない。加えて封遮布に包み直す時間も必要だが、そう何分もかかるわけではない。俺だって久々にキヌと話したいし、なるべく早く腕を安全な状態にするよう集中しようとした、その時だった。
「キヌさん!」
「ホノカ……なんで……?」
キヌの友達であるホノカが俺とキヌの間に立ってくれたのだった。おぉ、ナイスだホノカ。そのままちょっと時間を稼いでくれ……!
「聞いてください! ハナビさんは素晴らしいお方だったのです!」
「……は?」
「わたくし
そう言って、ホノカは必至に冥腕の解除を早めようとしていた俺のもう片方の腕に抱きついてきた。
「ちょ……」
今は集中したい時間なのだが、無事キヌに再会できたことを喜んでいるホノカの頭には配慮の二文字がないようだった。
「なんで……なんでホノカがハナビちゃんと一緒にいるの」
「はい! ハナビさんに助けていただいたのです! それから、今までハナビさんの力になるため戦っていたのです! 見ての通り、こうして信頼関係を築きました! ハナビさんは信頼できる人です!」
いや、共闘したのは今日が初めてだし、出会って二日経ってないだろ……というツッコミが引っ込むくらいには空気が重くなっていた。具体的には、ホノカが喋れば喋るほどキヌの形相が険しいものになっている。そして、ついにそれは爆発する。
「そうじゃないッ! なんでハナビちゃんの隣にいるのが私じゃないの!? なんでよりにもよってホノカなの!? 愚図で無能なホノカが、ハナビちゃんをバカにしたその口でハナビちゃんを語るな……ッ!」
「え……」
なんか……なんか思ってたんと違う!
ホノカさん、あなたキヌの友達じゃなかったんですか!? ……いや、どう見てもキヌのホノカを見る目は友人に向けるそれではない。これは、ホノカが一方的に友達だと思い込んでいたパターンだろう。あり得る、ホノカなら……!
「き……キヌさん……? 何を言っているのですか……? わたくしとキヌさんは、ライバルで、親友で……」
「黙れ! おまえなんかを友達だと思ったことなんて一度もない! 私の支えだなんて勘違いをしているおまえを、いつか絶対焼き殺すって思ってた!」
「な……ぇ……」
溢れ出すキヌの本心に、放心するホノカ。もはや、疑いの余地はない。キヌは、俺から卒業なんてできていなかった。もうキヌは一人で大丈夫なんてのは、俺の勝手な勘違いだったらしい。だとするならば、今すぐキヌを落ち着けなければいけない。まず、ホノカを振り払って……と、思考を巡らせているのがあだになった。
「だからもう……消えて」
轟音、熱風。手をかざしたキヌが、放心しているホノカに向かって何の前兆もなく炎を放った。
「なっ!? マズい……!」
咄嗟にホノカの前に出た俺だが、もう祝詞で対抗する暇もない。やむを得ず、やたら丈夫だと判明したザラさんの左腕でキヌの炎を受け止める。
「無詠唱の祝詞……? ありえない……いや、そうか……! あれが前人未踏の第十階梯か……! 道理で……ふふ、素晴らしい……!」
あまりに空気の読めていないレフバーちゃんのセリフの通り、キヌが放った炎はとんでもない威力だった。
「冥腕、解放……ッ!」
仕方がないので、もう一度冥腕を解放し、権能を使って相殺を図る。やがて炎が消え去っても、俺はなんとか立っていられた。
身体も、割とダメージは少ない。最小限で抑えられたが……左腕を包みかけていた封遮布は燃えてしまった。
マズいぞこれ……これじゃキヌに触れない……!
「しめた……!」
キヌのことに気を取られていた俺は、そんなリュッケの呟きを右から左へ流してしまっていた。
ホノカおもしれ^^〜
この日のための存在と言っても過言ではない女