TS転生した上に美少女の幼馴染までついてきたぜ! 勝ったな(勝っていない)   作:鐘楼

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病んでるぜ!解決策

 「あなた、ハナビちゃんの何?」

 「なっ……!」

 

 キヌの身体に纏わり付いていた赤い液体が、飛び退くように弾け飛ぶ。おそらくは、キヌが自分の意思で振り払ったのだ。

 

 そして。

 

 「消えて」

 「っ───」

 

 キヌは不意にその手から凄まじい威力の豪炎を放った。キヌの想定外の反応と行動に呆けていたリュッケは、既にかなりの手負いだったのも相まって、あっさりと灰になってしまった。

 

 「キヌ!」

 

 リュッケとはもっと話したいことがあったが、今はキヌだ。ようやく腕を安全な状態に戻せた俺は、一直線にキヌへと向かっていく。

 

 「ハナビちゃん!」

 

 キヌは、先ほどまでの絶望が嘘のようにあっさりと俺を受け入れ、固く抱きしめあった。

 

 「すまん。これまでのは、決してキヌが嫌だったんじゃなくて……」

 「分かってるよ。さっきの人の記憶で分かったんだ」

 「そういうことか……」

 

 界喰みに呑まれかけてたキヌが唐突にリュッケにキレたのは、リュッケの俺と仲良くしていた記憶を読んだからなのか。え、俺めっちゃ愛されてるじゃん……。

 

 「キヌ……」

 「ハナビちゃん……」

 

 抱擁を緩めた俺たちは、正面からお互いの顔を見つめ合う。

 

 「たったの、十日だよ……? それなのに……」

 「あぁ……」

 

 俺が焔精族の土地を追われてから、十日ほどしか経っていない。地下に降りてから捧魂祭の開催までが一週間で、地上に戻って今日で三日目くらいなので、本当にそれくらいしか経っていないのだ。

 

 それなのに、もう何年も離れ離れになっていたような感覚だ。キヌも、そういうことを言いたいんだろう。

 

 「それなのに、何人に粉かけたの?」

 「……」

 

 違った。

 

 「え、いや……うーん。どうだったかな」

 「答えて」

 

 冷や汗が吹き出る。キヌの目は全く笑っていなかった。そうだ、リュッケの記憶を見たということは、俺からリュッケが離れた昨日までの出来事が概ね筒抜けになったということである。まずい。

 

 というか、俺の幼馴染みはこんなに怖い子だったか!? いや、割とこんな感じだったな……村にいた頃はキヌとヒョウヤ以外には避けられてて、他の女がとかそういう余地がなかっただけで。

 

 「えーっと……リュッケに、ザラさんに、シャーリーに、ハズミラ様に、あとホノカで……多く見積もっても五人だぞ? レフバーちゃんはノーカンで、別にそんな……ちょ、いたいいたい」

 

 俺は正直に答えたが、正直すぎたようでどんどんキヌの威圧感が増していく。そして、キヌは俺の左肩を強く掴んだ。

 

 「これが、私とハナビちゃんを引き裂いた腕なんだね……」

 「いやいや、たしかに誤解を生んだけど、俺の命を救ってくれた腕でもあって……」

 「取って」

 「ひぇっ」

 

 真顔で、キヌはとんでもない要求をしてきた。

 

 「そもそもコレ、他の女の腕なんでしょ? そんなのがハナビちゃんの身体についてるなんて耐えられないし、こんな布がないと抱き合えないなんておかしいよ。しかも、その人今もハナビちゃんの中にいるんでしょ? 追い出してよ」

 「え、えぇ……っとぉ~」

 「あと、ハナビちゃんをこんな身体にしたあそこの人と、シャーリーって人。絶対に許さないから」

 「あわわ……あわあわ……」

 

 急に絶許宣言をされたレフバーちゃんは一ミリも動じていなかったが、俺はめっちゃ慌てていた。キヌ、想定の五倍病んでる。他人事ならゲラゲラ笑って茶化すところだが、正直今後の行動を制限されるのは嫌だ。けれど、キヌを悲しませたくはない。やはり、ちゃんと話して譲歩を要求するしかない。

 

 「キヌ。聞いてくれ」

 「なに?」

 「この腕は大切なものだから。キヌの頼みでも捨てられない。ごめん」

 「……やだ」

 「頼む。あと、俺はリュッケを諦められない。これからその為の手段を探したいし、キヌだけに構ってはいられない」

 「嫌だ! ハナビちゃんは、ずっと私だけを見てよ……っ!」

 

 先ほどまでの怖さは鳴りを潜め、弱さを表に出したキヌは思いのままに叫ぶ。

 

 「もう嫌なの! ハナビちゃんのいない場所なんかに戻りたくない! 私を分かってくれる人なんて一人もいない! ハナビちゃんじゃなきゃダメなの! ずっと、一緒にいてよぉ……」

 「……」

 

 これは、ダメだ。できるなら連れて行きたかったが、この様子では無理だろう。ここまでヘラってしまっていると、ホノカ以上に周囲とトラブルを起こすだろう。ヒョウヤと喧嘩する分には構わないが、一々レフバーちゃんに突っかかられたらまともに行動できない。

 

 かと言って、もうキヌを一人にはできない。

 

 ならば……手は一つしかない。

 

 俺はキヌを黙って抱きしめると、レフバーちゃんに目配せした。以心伝心というわけではないが、ひとまずしてほしいことは伝わったらしい。

 

 「《14》《16》《3》」

 「ぁ……」

 

 レフバーちゃんが祝詞を使うと、キヌはあっさりと眠りに落ちた。

 

 意識を失ったキヌを抱きかかえた俺は、レフバーちゃんに思いついた解決策を伝えるのだった。

 

 

 

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