TS転生した上に美少女の幼馴染までついてきたぜ! 勝ったな(勝っていない)   作:鐘楼

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楽しいぜ! SEKKYOU

 「……で、なんで助けに来たん?」

 「……気分だ」

 

 無愛想にそう答えるヒョウヤ。まぁそういうことにしてやってもいいけどさ。普段なら散々いじってやるところだけど、今はそういう場合じゃない。

 

 「……《鉄と正義と》《装鋼》《サーモレーダー》」

 「何をしてる?」

 「索敵」

 

 パワードスーツの標準装備、温度で敵を感知するレーダーを再現する祝詞を発動し、敵の位置を確認する。

 

 「うーん、バッチリ囲まれてんなぁ」

 「……そうか……」

 

 どの道、戦闘は避けられないっぽいなぁ、これは。負けはしないだろうけど、これ以上殺すのは……俺は良い。キヌには捨てられちゃったし、どの道焔精族のコミュニティに俺の居場所はないだろう。だが、なぜかついてきたヒョウヤは違う。復讐だなんだ言ってても、こいつは。

 

 「あーあ、殺っちまったねヒョウヤくん」

 「……別に、予定が早まっただけだ」

 「手震えてんぞ」

 

 俺を守るため(頼んでいない)に、名も知らぬ巫女候補を貫いたヒョウヤの手は血に濡れ、震えていた。ほんと向いてないな。

 

 「……お前は、どうなんだ」

 「え?」

 「殺してただろ、あの男も、他にも」

 「あー……ま、おっさんだったし、ノーカン?」

 「ふざけてる場合じゃ……!」

 「あながちおふざけじゃないぞ」

 

 俺の言葉を冗談だと受け取ったヒョウヤの苦言を遮る。ヒョウヤの前で出したことのないような真面目な声色で、正面から彼の目を見据えて。

 

 「もう最後になりそうだから言うけどな、復讐なんか忘れろ。向いてないよ、お前」

 「……お前になにが……」

 「分かるさ。いいか? 復讐の是非の話じゃない。お前の向き不向きの話だ」

 「向き、不向き……」

 「常人が人を殺すのには許される理由が必要だ。目的の邪魔だから、殺されてしかるべき相手だから、異種族だから。そういう正当化をせずに殺しができる奴もいるが、お前は違う」

 「許される、理由……」

 

 本当に殺す理由も、許される理由もなく人を殺せる人間は存在する。が、そんな奴は失った家族をここまで想えないし、なんだかんだ言って俺に絆されたりはしない。

 

 「お前が殺したのは焔精族だった。焔精族は家族の仇だから、自分の行いは正当だと、そう本気で思い込むのが復讐者だ。でもお前はそれができていない。本当に良かったのかと問い続けている。だから手が震える、違うか?」

 「俺は……」

 「そんなんじゃ途中で後悔して終わりだ。なぁ、焔精族の家族を襲って親をぶっ殺したとして、残った子供が昔の自分みたいな顔でお前を睨んできたときどうするつもりなんだ?」

 「それ、は……」

 「そこで『知らねーよ焔精族なんだからそのガキも殺すに決まってるだろ』って言えないから向いてないんだお前は。マジで復讐なんか止めろ」

 

 これから俺がやるつもりのことを考えれば、下手したら今生の別れ。後腐れなど考えずに言いたいことを言ってやる。あー気持ちいい。説教楽しい。

 

 「お前は……どうなんだ。どういう理由で自分を正当化してる」

 「俺?」

 「言っていただろ……あの男も異種族を差別するだけの理由があったかもしれないって」

 「まぁそれ憶測なんだけど……そうだな、同情ポイントが二十点だとすると、汚いおっさんだからマイナス十五点で、俺の敵だからマイナス五千点で死刑だ。参考になったか?」

 「……」

 

 見たことのない弱気な表情で、俺に怯えるような視線を寄越すヒョウヤくん。これを機に俺を甘いと評した自分の見る目を疑って欲しい。

 

 「ま、そういうわけなんで、今日の殺しは友達だった俺を助けるために仕方がなかった、って正当化して忘れろよ。そんで帰って大人しく暮らせ」

 「ど、どういう……」

 「だから、最後になるって言ったろ。俺が囮になるから、お前はなんとか村に帰れ。時間は稼ぐ」

 

 ヒョウヤは固まったまま、俺の言葉を呑み込めていないようだった。

 

 「なんで……なんでお前が俺を助ける……」

 「男に借り作ったままなの嫌なんだよ何要求されるか分かったもんじゃないし」

 「てめぇと一緒にすんな!」

 「そもそも、お前の方は顔が割れてないんだから日常に戻れるとしたらお前の方だけだろうが」

 

 ……正直、顔が割れていなくても村に戻ったかは怪しいんだけど。だってカノピがいなくて話し相手がヒョウヤだけなのマジでつまんないし。心残りがあるとすれば……セイランお姉さんのキスがもっかい欲しかったなぁ!

 

 「なんで、そんな……俺のために……」

 「そりゃまぁ、キヌに振られちゃったしなぁ」

 「あの根暗が、お前を……?」

 「おん。って言わせんなよマジで。アイツは俺なんか忘れて他のみんなと巫女を目指して仲良く生きていくんだよ。はぁ殺しがどうのの千倍辛いわ……って、だからまぁ正直、お前と見知らぬ美少女だったら美少女を選ぶけどさ……俺とお前だったらお前の方が価値があるだろ」

 

 ヒョウヤは……まともだし、常識あるし、差別に怒りを覚えることができるし、悪ぶってるけど良い奴だ。良い子ぶってる中身成人済みおっさんの俺とは違う。

 

 「さっきお前が俺を見る目。アレは正当だよ。分かり合えないドクズだと思ったろ? こんな奴を踏み台にして生き残るなんて悪く思うことじゃないぞ」

 「そんなこと……」

 「ちょっと話しすぎたな。いいか、俺は村と反対側に逃げて派手に音を鳴らす。お前は目立たず村に戻れ」

 「……分、かった……」

 「五秒後、一斉にだ。いいな?」

 

 勢いでヒョウヤを黙らせ、作戦を実行に移す。話しすぎたのは本当だ。もう本当に時間もない。

 

 「「《いかづちのさえずり》」」

 

 これでお別れかと思うと、ムカつくこの美形にも感慨を覚える。あれだな、俺は知識面をヒョウヤに頼りすぎていた部分があるし、これからはちゃんと勉強しなきゃだな。

 

 「「《飛燕の電光》」……ハナビ」

 「なに?」

 「死ぬなよ」

 「保障はできかねますねぇ」

 

 最後まで俺なんかの心配とは、ムカつくくらい良い奴ですね。

 

 「「《迅閃》」」

 

 それを別れの言葉に、俺とヒョウヤは二叉の電光となって駆けだした。

 

―――――――――――――

 

 ……手強い。

 

 いや、相手は全員あの踏みつけおじさんよりも弱いはずだ。つまり、この苦戦は俺が弱ってきているのが原因。

 

 「「《火の精の恩寵と試練》《邂逅》《威嚇の火柱》」」

 「チッ……《ギガンと僕》《守人》《土くれのからだ》!」

 

 既に第三階梯以上の祝詞がままならない。要するに、祝詞を扱う原動力のようなものはMP制だったのだろう。MP切れを起こしている俺は、今まさにHPで代用している、ってところか。

 

 既にヒョウヤが逃げる時間は十分稼いだと思うが、俺がこの状況を切り抜けられるかどうかは怪しいものだ。ヒョウヤにあんなこと言ったけど、別に俺は死ぬつもりなんて微塵もなかった。どうしてこうなった。

 

 『……助かりたい?』

 

 はい! めちゃくちゃ助かりたいですねぇ! まだ見ぬ美少女が待ってるかもしれないしな!

 

 『…………なら、今から言う祝詞を復唱して』

 

 ……え。もしかして死に際の幻聴ではないタイプ? 力が欲しいか系統の声だった!? また一つ夢が叶ってしまった……。

 

 『……死にたいの?』

 

 すみません祝詞教えてください!

 

 『……《冥閻の利鎌》』

 「《冥閻の利鎌》!」

 

 四方八方から降り注ぐ炎を気合いで避けながら、声に従って祝詞を叫ぶ。

 

 『《死の浸食》』

 「《死の浸食》!」

 

 ……うん? なんか字面の雰囲気最悪……最悪じゃない? 大丈夫? この辺一帯に無差別に死を振りまいたりしない?

 

 『助かりたいんでしょ? 良いから。《冥現の逆転》』

 

 本当か? 本当に助かるのか!? ……でも他にもう打つ手がねぇ!

 

 「……うぉぉぉ、《冥現の逆転》!」

 

 静寂。不発を疑ったその時、地面が揺れた。前世ぶりの地震だぁなんて感慨に浸る余裕などない、日本基準でも洒落になっていない規模の地震……いや、これは。

 

 「……あ」

 

 地割れ。おそらく祝詞の効果によって出現したそれに、俺はあっけなく落っこちた。そこからの意識はない。

 

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