ポイズンスライムと地球に行く【オリジナル】 作:苺のタルトですが
自分たちにも同じ目にあった時のことを想像して欲しい。
出来ない、か?
魔法が使えないのに想像は無茶振りってやつだったかな。
「騒ぐのは良いんすけど、我慢できそうですか?」
リズベッタは困ったように頬を指で摩る。
花村は困ったように笑って、言いにくそうに呟く。
「無理、かなぁ」
殆ど独り言らしい、ぽややんとした口調。
花村はその時感じたことと、異世界に居た時のことを告白してくる。
彼は、半年以上異世界に居て呆然としているときもあったが、帰れると分かったら現金にも魔法に興味が湧いて、何度も使ったのだ。
使えるとなれば、使いたい人達がごまんと居る。
と、色々恥ずかしそうに、照れ臭そうにしていた。
魔法を使いたい人はたくさんいて、そういった民衆が群がる未来をリズベッタは容易く思い浮かび、考える。
それを避けて過ごすのはかなり難しいのではないのかと安易に想像できる。
「いいですよ。適当に魔法使ってパパッと避けるなりガードするなり、しますから」
その時は、その時。
仮に権力者がなにかを治せ、誰かを治せ、自分を治せと言うのなら、黙って帰ればいい。
それができるのだ。
リズベッタは強く頷くと、花村に顔を向けながら笑みを浮かべた。
「そうですね。一番の方法です。こちらとしてもその方がトラブルがなく、安心します」
これからも監視や護衛がひっそり付いたりするかもしれないが、迷惑をかけようとする地球の人間側をチェックできるメリットもあるので、追い払うことはしないでおく。
ただ、やっぱり地球に出入りする時の把握はいらない。
来る時に出待ちされるのはちょっと。
案内されたのは、家電売り場だった。
花村が最近電子レンジの調子が悪いというから、そこに行き見ていこうよと提案したのだ。
リズベッタは申し訳ないなぁ、という花村の背中を押して、二人して家電について話したり、店員に聞いたりして盛り上がった。
盛り上がった後もリズベッタはついでに細々としたものを買った。
服を綺麗にするものも気になっている。
頭の上で商品を見ていたスライムも買いたいものをリクエストしてくる。
「これ?」
「それだ。2個」
「レジ持っていくね」
お菓子を見つけて買うのが今のタロンのブームらしい。
買い物を済ませると、花村と並んで次はどこに行くかと話し合う。
「どこが良さそうですか?」
聞くと彼はうーんと腕を組む。
接待相手ではなく、半年世話になった町の人という気やすい空気にリズベッタも嬉しくなる。
「そうですね。あ、タロンさんの意見はなにかありませんか?食べたいものなど」
「食べたい?なら、異世界から流れてきた冊子の中にあった絵のものが食べたい」
「冊子?」
花村の疑問の声にリズベッタはどれのことかと思い出そうとするが、雑誌や本などはよく読むので、その中のものを特定させるのは至難の業。
「秋のイワシ」
「ああ!イワシは季節的に無理ですが、サンマなら食べられますよ」
季節的にズレてしまい手に入らないので、その季節になったら食べに行こうねとタロンと約束。
かなり嬉しそうで、ぷるっぷるに震えていた。
サンマの美味しい混ぜご飯のお店を検索した男が、そこへナビゲーションしてくれる。
「ここです。ここ、ここ。魚市場と契約しているらしくて、系列店なんですが美味いって評判良いです」
言われた通りに中を見てみると魚の香りが漂う。
美味しそうだ。
「リズベッタ、おれも食べるから頼んでくれよ」
タロンの言葉にこくりこくりと、何度も何度も頷く。
花村も嬉しそうに空腹を訴える。
「大盛り、あったら頼もうかなぁ」
などと、独り言に近いことを言っている。
案内され、メニュー表を使う。
リズベッタに花村が、丁寧にメニュー表について解説してくれる。
案内してくれて、ここまで色々やってくれるなんて、やはり花村は真面目な男だ。