褪せ人が行く!ふかふかダンジョン!【完結】   作:No_46

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一番好きな褪せ人出せて満足です。


燃える瞳

 絶望の草原

 

 

 そこはケンタウロス達の根城

 

 人間が侵入すれば生きては帰れない魔境

 

 何故ならば平地での高速走行用4輪自転車に容易く追随できる速度を不整地でも持ち、持久力も十分なケンタウロス族はダメ押しとばかりに弓矢の技術にも長けている。

 

 高速で追い回し、またその機動力により不整地をどの種族よりも速く踏破する。

 

 自然で培われた先回りの技術により容易く侵入者の逃げ場所を予測し、優れた弓の技術によって一人も逃がすことはなかった。

 

 生まれながらの追跡者、それがケンタウロス族だった。

 

 そんなケンタウロス族は今

 

 追われていた。

 

「グッ、ガアアアアアアッ!」

 

 夜の暗闇を炎が飛び回る、正確ではないが確実にケンタウロスを狙っている。

 普通の赤い火では無い、黄色い炎に微かに触れた仲間は、頭蓋が燃えているかのように炎が脳と瞳を焼き爛れさせ、悲鳴を上げて倒れ込み二度と起き上がらない。

 

「ゾーイ! 、クソッ! 

 戦士隊の生き残りは居ないか! 

 相方が殺られた!」

 

 誰も声を上げない

 

 文字通り自分以外の全滅、その事実を受け止めきれず何度も声を上げる。

 

「誰かいるだろ! 

 第4隊! 欠員だ! 欠〝ズドッ! 〟ご、っガァアアアアアッ! …」

 

 その背を、指痕に焼け爛れ、今も黄色い火に内側から焼き苛まれている槍で貫いた。

 

 助けを呼んでいたケンタウロスは貫かれてすぐ瞳に黄炎が宿り、仲間と同じく脳髄ごと焼かれ、息絶える。

 

 果たしてその下手人は黒い継ぎ接ぎの覆面を被った、東洋の鎧と西洋の鎧を組み合わせたような、使い込まれた鎧を着ている存在だった。

 

 黒い覆面を被った存在は、ケンタウロス達の守っていた先へと歩みを進める。

 

 その通り道には黄炎が道標のように揺らいでいた。

 

 

 

 日が昇り、太陽の日差しも強くなっている快晴の昼

 ケンタウロス大集落の大テント

 

 ケンタウロス族の族長と仲間たちが集まった一室にて外の天気とうって代わり今までにない重苦しい空気の中、話し合いが始まる。

 

「それで、帰還した戦士はゼロ人か」

 

「そうです、申し訳ありません…」

 

 族長の言葉に、ケンタウロスの土地である絶望の草原に侵入した人間への襲撃を指示した戦士長は、悲痛な面持ちで頭を下げる。

 

 戦士長自らが鍛えている優秀な戦士たちが逃走も出来ずに文字通り全滅したという報告は、地上ならばどの亜人よりも速く長く走れるケンタウロス族に動揺を与える。

 

 ざわめきを無視して族長は続ける。

 

「あの存在がどこから来たのかの調査報告は?」

 

 族長が斥候隊の隊長に報告を求める。

 

「はい、最初に発見された地点は草原内230、70地点、外界とはかなり近いですがその方向周辺に人間の部隊が遠征、駐屯していといった事実はありません

 また周辺人間どもの集落は確認できませんでした。

 …結論から申しますと、どこから来たのかなどは全くわかりませんでした、ヒト形の新しい亜人、若しくはモンスターではないかとの意見も出ています」

 

「報告では鎧を着ていたと報告されている。

 武器もだ、モンスターならばそこまで精巧な装備が作れるとは思えん。

 他の報告はあるか」

 

「最初に確認された時点では我らの大集落の存在する地点へ向かっていました。

 確認された時点での進行速度から休憩するであろう時間と人間の肉体であることを加味し計算した大凡の到達時間は明朝5時ほどかと。

 また戦士隊の未帰還時、再度斥候を送りましたがこちらも誰一人帰ってきてません、戦士隊の奇襲攻撃によって敵対したのかは不明です。この事実からケンタウロス族の生活地区だとバレているにも関わらず、侵入者はまだ絶望の草原に侵入したままであると考えられます」

 

 報告したケンタウロスは調査報告をまだ侵入者は生きているという事を主題に締めくくった。

 

 ケンタウロスの族長は険しい顔をして思案にふける。

 

 現時点ではまだ正午を過ぎた程度の時刻だ。

 

 しかし最初に観測した速度でずっとこちらに来ているとは考えづらい、襲撃を全て対処したとしても警戒してある程度時刻は前後するはずだ。

 

 全滅というのも疑問が残る、人間ならば地上最速たる我々ケンタウロス族が逃げることもできないなど考えられない、隠れた幾人かの攻撃部隊、若しくは何らかの新兵器を使用した可能性もある。

 

「分かった、すぐに偵察部隊と戦士隊の混合部隊を現時点の侵入者到達地点に向かわせろ、第一目標は情報収集、どの様な攻撃手段なのか判明したならばすぐ引くように、また各個撃破する数が我々の斥候部隊が見つけられないことは考えづらい、道中に斥候隊は分散させ、集中撃破されないようにすること。

 以上だ。戦士長、斥候隊の隊長はそれぞれ準備に取り掛かり、14時に出発するように、では解「族長、緊急事態です!」…なんだ、話し合いはちょうど終わったところだ」

 

 ケンタウロス族の首脳陣が集まっている大テントに入ってきたのは外に立っていた警備隊の一人だ。

 

 通常、絶望の草原にケンタウロス以上の力を持った存在はそうそう居ない、入ってきたとしてもその脚で容易く逃げることができる、ケンタウロス族は一度も絶滅の危機を感じたことはなかった。

 

 今回の侵入者もいざとなれば殺せるだろうと、突飛な手品のタネを暴き、人間の知識を蓄えるだけだと考えていた。

 重苦しい空気の会議でも空気が重い理由は易々と仲間を死なせたことに対してであり、一度に一部隊が丸ごと消えるということはなかったからこその戦士長の謝罪であった。

 

 つまり、今回も結局は生まれ持ったケンタウロスとしての肉体でどうにでもなると考えていたからこその余裕、危機感の無さ。

 

 だが族長達に対する礼節を無視し、入ってきて開口一番に緊急事態を報告しに来た警備兵の顔は焦燥と驚愕に彩られたままであった。

 

「何だ緊急事態とは、手短に話せ、14時には侵入者を迎え撃ちに部隊が出発する」

 

 族長は、悠々と尋ねる。

 

 族長の聞く姿勢に警備兵も少し落ち着いたのか、息を整え警備兵は答え始めた。

 

「絶望の草原、同時に周辺の森林地帯に火が放たれております! 

 既に火の手は草原にも燃え移り、森に至っては見える限りで北部、西部は完全に森林火災に至っております! 

 また火の粉が風で運ばれ、この絶望の草原も危険な火災旋風が起きるとの見込みです!」

 

「なッ! 

 まさか例の侵入者か!? 

 そのようなことをすればドラゴンが暴れ出すぞ! 

 確認されていた西部のドラゴンについて何か報告はないか!」

 

 族長は、森を焼くなど考えもしていなかった。

 

 何故ならば森はドラゴンの居座る土地、燃え広がった火がドラゴンの居住している場所に引火でもすれば、住処を燃やされたドラゴンにより報復として一都市どころか一国が破壊され尽くす可能性もある、だからこそ火の扱いはどの種族も総じて気をつけているはずだ。

 

 そしてケンタウロス族の確認している竜の住処は西部に存在していた。

 既に燃え移っているのならば報復として亜人たる我々ケンタウロスにも攻撃される可能性がある、できるだけ早く絶望の草原を脱出し、アラクネ達が住処にしている死の森にでも逃げなければならない。

 

 緊張した面持ちの族長に対して報告の来た警備兵は、

 

「既にドラゴンの咆哮を警備兵が幾人か聞いたそうですが、現在は既に収まっているそうで、またドラゴンのブレスも確認されていたそうですがそれも今は見えなくなりました」

 

 冷静に努めて答える。

 

 一人のケンタウロスが外を見ると、遠目には既に火の海となっている草原と森が見えた。

 

 だが違和感を覚える、何かがおかしい、あの炎は何故

 

「黄色の炎?」

 

 またしてもケンタウロスの警備兵が走って来る。

 

「報告! 

 燃え広がった炎の中に確認されていたと思わしき人間の姿が! 

 何故か火の中に居るというのに苦しむような様子を見せていません! 

 火災はさらに拡大中であり既に集落外縁部にあるテントが発火したという報告も入っております! 

 計算した集落全体への火災到達時刻は大凡1時間後だということです!」

 

 さらに追加された情報に族長は思案する。

 

「ドラゴンがこちらに姿を見せておらず、また咆哮やブレスがされなくなったことから反対方向に進んでいったと仮定、速やかにこの集落を放棄しアラクネの森に一時身を置く。

 女子供を最優先だ。

 男たちは女子供が逃げるまでにドラゴンが来た場合に備えよ、退避が完全に終了すると同時に退却を行う。

 次いで炎の中で確認された侵入者は確実に駆除しドラゴンの報復対象を人間のみに集中させる。

 また装備はある程度持ち帰ってくれ、炎の中で行動できる理由を知らねばならない

 この集落に侵入者が来たというのならば好都合、草原ならば隠れられる場所も少ない、手の内を容易に解き明かせる、我々の足もより速く動かせるのだから先ほど襲撃を行うように指示した部隊を直ぐに向かわせる。

 では各自、行動開始!」

 

 情報は瞬く間に伝達され、女たちがまだ歩けなかったり上手く走れない子どもを抱き、若しくは背中に乗せ、荷物を最低限持ち走り始める。

 

 対して男たちはいざドラゴンが来た時のために装備を整えていた。

 

 戦士隊と斥候隊の混合部隊は仲間を殺したと思わしき侵入者を迎え撃つ準備を完了させる。

 

 そして

 

「あいつか…」

 

 混合部隊の戦士隊長が呟くそこには黄炎の中に居る不気味な存在、使い込まれたかのような和洋折衷の装備を着込み、編み笠に似せた鉄兜をかぶった侵入者がひび割れ溶けた槍を片手に持ち俯いて佇んでいた。

 

「展開完了しました! 

 いつでもいけます!」

 

 仲間の戦士隊は5人、囲むように展開を完了させ弓矢を引き絞っていた。

 

 火災による炎の中に居るため戦士隊の本命たる近接戦闘は行えず、飛び出してきた時に対応できる様に完全武装はしているが使うことはないだろう。

 

 ケンタウロス族の得意な速射を囲んだ状態で撃つならば、戦士でさえ侵入者がたとえ全身鎧であっても確実に隙間を撃ち抜ける技能を持つ、それは接射にも言えることであり、だが火災によって風が吹き荒れることで矢の正確性をブレさせないために通常よりも距離は近かった。

 

 そこで戦士隊の隊長は違和感に気づく

 

(あの槍を持っていない方の手、燃えている?)

 

 侵入者が動いた、だがそれは頭を抱え苦しむ様な姿であり、苦悶の声は狙い澄まされた矢を放つことを一瞬躊躇わせる。

 

 その一瞬で勝負が着いた。

 

 痛ましい叫び声と共に顔を上げたと同時、爛れた様な瞳から黄色い炎を迸らせた。

 

 驚愕するが同時に矢を放つ、しかしその弓矢すら纏めて燃やしながら戦士部隊へと炎が降りかかった。

 

 ケンタウロス族は相性が悪かったと言える、横長で4つ足の身体は広範囲に振りまかれた炎を避けようとするも、避けきれず当たり、毛に燃え広がる。

 

「グアアアアアア!!」

 

 それと同時に瞳と脳を焼け爛れるような痛みが襲い、そして頭蓋から発火し倒れていく。

 

 後ろに待機していた斥候達は前衛の戦士隊が一瞬で全滅した事実に驚愕しつつも正確に侵入者へ向けて一斉に矢を放つ。

 

 トトッ! 

 

 対して侵入者は体中に刺さった矢を意に介さず、顔に手を当て瞳に黄色い火を収束させて放つ。

 

 先ほど放たれた炎の様に広範囲へばら撒く攻撃と考えた斥候達は後ろに下がろうとするが、収束して放たれた火は鋭く長い槍のように一人の斥候、その頭部を貫いた。

 

 悲鳴を上げる間もなく脳ごと炎に焼かれ倒れ込むケンタウロス、それを見届ける間もなく再度侵入者の瞳に収束して放たれた炎を狙われた一人は腕を犠牲に防ごうとする。

 

 だが放たれた炎は容易く腕を貫き頭部を抉る。

 

 残り2人となった斥候部隊は有効に感じられなかった矢を捨て腰に下げていた護身用の剣で刺し殺そうと高速で向かう。

 

 それに侵入者は槍を構え空にふわりと浮き上がると槍の切っ先に黄色の炎を宿らせ、地面へと勢いよく突き刺す。

 

 突き刺された地面に炎が走り、向かっていた2人のケンタウロスの足を焼く。

 

(この程度ならば耐えられる!)

 

 斥候部隊の生き残りは痛みに耐えこのまま貫こうと剣を振り上げた、だが

 

「…ギイヤアアアッ!」

 

「…!? グッ! ガァアアアアア!」

 

 共に瞳が焼け爛れるような激痛で倒れ込む。

 

 焼ける痛みは脳髄に至り、一層の激痛を与える。

 

 痛みにより動かなくなった斥候部隊の2人を、侵入者は無感情に槍で頭部を貫き絶命させた。

 

 結果、1分にも満たない戦闘時間で、絶望の草原のケンタウロス族、その精鋭を殺し尽くした。

 

 その惨状を引き起こした侵入者は、先ほどの炎を放つ苦悶を感じさせない足取りで戦士隊の死体を通り過ぎていく。

 

 後方に待機していたケンタウロス族の一人は既に逃げ出していた、族長の言葉通り分散して待機していたのが功を奏したのか。

 

 また悲鳴を上げる仲間の声が聞こえる。

 分散していた仲間がやられたのだろう、しかしまとめて殺され情報を持って帰ることができないという最悪の事態は回避できた。

 

 族長たちが避難の指揮を執っている大テントに到着する。

 

「ほ、報告です!」

 

 中に入り目に違和感が走るが無視をして、開口一番に報告を行う。

 

「侵入者は槍を持ち、様々な行動に炎を発する効果がある模様です! 

 瞳から炎を大量に放ち戦士隊はその炎に触れ頭部から発火しました! 

 瞳から発される光線は後方に待機していた斥候隊を容易く壊滅させました!」

 

 報告を受けた族長たちは異常な攻撃に対し対策を練ろうとする、そのうちの一人があることに気付いた。

 

「お前、目がおかしくないか?」

 

「はい? どういうことですか?」

 

 その言葉で近くにある水場から瞳を確認する。

 

 確かに瞳の中で、黄色い炎が揺らめいていた。

 

 驚愕し、同時に激痛が走り始める。

 

「グアアアアアッ!」

 

「なっ! 大丈夫か! 

 医者を呼べ!」

 

 瞳から火がこぼれ、頭部から発火する。

 

 同時に周囲のケンタウロス族の瞳にも黄色い火が感染したかのように宿る。

 

「~~ッ! 、族長! これは危険です! 

 瞳が黄色になると頭部が発火する可能性もあります! 

 隔離と迅速な退避を!」

 

 奥に居た族長は幸いといえるのか運よく報告しに来た斥候兵から離れていたためか、瞳が黄色く揺らめくことはなかった。

 しかし既に幾人かがすでに感染してしまっている以上、この場所に居てまだ感染しない確証はない。

 

「…! すまん! 

 瞳が通常の者は私に続け! 

 女子供を護衛しつつ草原を抜けるぞ!」

 

 族長が外に出た時にはすでに、炎は集落の外縁部すら飲み込み、中心にまで迫っている。

 

 時間はないと着の身着のまま走り出し、女子供を逃がした場所へと走る。

 

 後ろから叫び声が聞こえた。

 

 そちらを見ると頭から発火し倒れる戦士長。

 

 大テントは既に焼け落ち、焼け跡に報告されていた侵入者らしき人影が見える。

 

「あの距離から炎の乱気流の中で当てたのか…!」

 

 より早く、スタミナを考えない全速力で走り出す。

 

 逃げ出したケンタウロス族を侵入者はただ静観していた。

 

 

 

「なんということだ…」

 

 女子供たちにようやく合流し、気付いてしまった、

 

 既に火の手は逃げ先を塞ぐように回っており、足止めされているのだ。

 

 草原で逃げてきた者どもは、もちろん消火できるものなど持ってはいない。

 

 だが後ろからは侵入者が追ってきている。

 

 なんとかせねばならない。

 

 しびれを切らしたのか若い男が火の上を飛び越える。

 

 着地地点は燃えカスとなり火が消えていたが、それでもかなり熱いはずだ。

 熱さで痛む足をさらに地面にたたきつけ、燃えた熱を持っている木などを避ける。

 

 そうして二人分のスペースを確保し、又若い男が次の火がかろうじて消えかけた狭いスペースに飛び込み、道を確保することを繰り返す。

 

 五つ目のスペースに差し掛かったところ、足を挫き火だるまになる。

 

 族長は決断をくだした。

 

「あの勇敢なケンタウロス族の誇りに続け! 

 女子供だけでも逃がすんだ!」

 

 男たちはいっせいに火を飛び越えスペースを確保しようと奮闘する。

 

「族長! 来ました!」

 

 仲間が奮闘している間、族長は背後に歩き迫る侵入者を見つけていた、ここが自分の死地になることを自覚し、剣を掲げ仲間を鼓舞する。

 

「ここで貴様を殺し! 我らの草原を焼いた贖いをさせてやろう!」

 

 勇ましく飛び出した族長に続き、ケンタウロス族の戦士たちが次々と向かって走る、その数は20を優に超えていた。

 

(一番槍の私は、あの謎の炎に焼かれるだろう、だが! 後ろに続く者の盾となり侵入者を殺せるのなら私の命ぐらい安いものだ!)

 

 ついに族長の剣が届く範囲へと足を踏み入れたその時、侵入者が鮮やかな朱色の花弁を生やし、空に飛びあがった。

 

「怯むな! かかれぇ!」

 

ドン、ボォンッ!!!!! 

 

 突撃したケンタウロスのど真ん中へと降り立った蕾のような朱色の花弁が花開き、周囲を囲んでいたケンタウロス族を吹き飛ばす。

 

 吹き飛ばされずに済んだケンタウロスは仲間の屍を超え再突撃する。

 

 だが

 

「ゴホッ!?」

 

 口から血を吐き、動きが鈍る。

 

 侵入者は鈍った動きのケンタウロスたちに対し、腕を広げ、同時に頭上に巨大な火の玉が出現する。

 

 火の玉から飛び出した炎は動きの鈍った仲間たちを焼き尽くしていく。

 

 最後に残った一人の瞳に写ったのは、燃え盛る森を超えたのか、森のまだ燃え広がっていない方向へ走っていく仲間たちの姿だった。

 

(どうか…生き残ってくれ)

 

 こうして絶望の草原、ケンタウロスの戦士隊は全滅した。




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