死の森
アラクネ種ネク族の住処
そこには命からがら逃げてきた多数のケンタウロス達が体を休めていた。
「…マジかよ、あの森林火災を人間がやったっていうのか?
ドラゴンも住んでるんだぞ、すぐに鎮火されるだろ」
「ドラゴンは最後までこちらには出てこなかった。
住処を捨てたか未だに下手人を探しているか分からないが、既に森を捨てた可能性もある」
「いやいやあの執着心が強いドラゴンだぞ、簡単に住処を捨てるかよ」
「だが事実ドラゴンは動かなかった、今後もそうなる可能性は高いだろう」
「…分かった。
一応火がこっちに飛び移らないように作業してる奴らに声をかけて警戒させるよ。
侵入者とやらのの姿は?」
「頭に笠のような鉄製の網帽子を被って使い古された革と鉄を組み合わせたような鎧を着ている。
本当に気をつけてくれ。
侵入者自身も戦士長と斥候長直属の精鋭部隊を殺し、我々を逃がすために足止めを買って出た二十余人の戦士達を容易く殺した。
武器の扱いも上手いが何よりも瞳から放つ炎だ。
奴の放った炎に、火の粉にでも触れたら、最終的に頭から発火し死亡する。
近くにいればそれも感染する」
「…まぁそれは疑ってねぇよ、実際到着したケンタウロスの斥候、何人かが頭から燃え上がるのを見たしな」
「…ところで、なんでゴブリンやオーク、ハルピュイア、レッドキャップまで居るんだ?」
「ゴブリンとオーク、レッドキャップは元々ウチらと同盟を組んでたオーク帝国ってところがあったんだが、どうやらモンスタースタンピードに巻き込まれたみたいでねぇ
指揮官連中が軒並み死んだみたいで生き残りとたまたま外に出てた奴らがこっちに急遽避難してきたのさ
ハルピュイアに関しては統率してたハルピュイアクイーンとやらが殺されたみたいでね、ついでにここ半年近く人間側の領土を飛んだやつの3分の2が帰ってこない異常事態、どことも組まないって話だったけどある程度情報収集のために来てるって話だ。
確かハルピュイアクイーンも人間に見つけられない様な場所にまで一人で攻められて集落ごと壊滅したって言ってたぞ?
共通点も有るし話を聞いてみたらどうだ? 話を橋渡ししてやるよ」
「あのどの種族とも関わろうとしないハルピュイアが…分かった、頼む」
「おう、まだ身体休めとけ、燃え盛った火を通ってきたせいで火傷がいくらか付いてるんだから」
そう言ってアラクネの女は離れていく。
ケンタウロス族の男は目を閉じ、寝息を立て始めた。
あるハルピュイアの証言
お前が話聞きたいっていうケンタウロスかにゃ?
私はテム、よろしくにゃ
当時は、金色の装備に身を包んだ騎士が変な魔法を使ってハルピュイア達を殺してるって噂が流れてたんだにゃ
でも実際に見に行ったハルピュイアは帰ってこなかったり帰ってきても砦とかに新兵器とかの異常は見つけられなくてみんな不思議に思ってたにゃ
それで仲間をたくさん殺されたから遂にハルピュイアクイーンの命令で人間どもの一番面倒な砦、アイギスに一斉に襲撃をかける予定だったんだにゃ
仲間のハルピュイア達も元々見つけて殺しにかかる人間がうざったいと思ってたし、殆ど当たらないにしても未熟な仲間が殺されることもあったからにゃ
いつも通り上空の人間どもが届かない場所でうんこや火をばら撒こうと飛んでいた時だったにゃ
砦が見え始め、みんなで隊列を組みをしてたらいきなり空から赤い雷が降って来たにゃ
たくさんの雷は仲間をどんどん貫いて一気に20人は居たハルピュイアの15人ぐらいを殺したにゃ
テムは真っ先に逃げ出したにゃ
でも何人かは突っ込んでいって都市に入る前に都市の入り口らへんから飛んできた金色の雷を避けれずにやられちゃったにゃ
え、ハルピュイアは弓矢を容易く避けられるだろって?
それが何故か雷はハルピュイアが避けた方に曲がってくるんだにゃ
理由は知らないけどにゃ
でそのまま第二隊が来て今度はそいつらにも忠告したんだけど、やっぱり空からいきなり降ってくる赤い雷は避けれなくてまた結構死んだにゃ
でも今度はまぁまぁ早い奴がいたんだにゃ
周りの味方が下から放たれる金色の雷で殺られる中、そいつだけ一気に降下して避けてたんだにゃ
でもやっぱり近づいた時に今度は5本ぐらいの雷が放たれて避けきれなかったにゃ
それが何度も繰り返して、部隊が飛んでこなくなって逃げた私たちみたいなのが飛んでくる部隊の1つの隊よりも増えた時に
都市の城門のから黒い布を黄金の鎧の上に着せたような騎士が出てきたんだにゃ
真っ先にあいつはテム達が完璧に隠れていたはずの森にいきなり光線を放ってきたにゃ
紅い雷がバチバチッってなったと思ったら頭部がドラゴンに変わってそこから光線が出たんだにゃ
嘘じゃないにゃ! 本当だにゃ!
…で隠れてた仲間がそれで殆ど死んじゃって、テムはすぐに後ろを振り返らずに逃げ出したんだにゃ
高く飛ぶと見つかりそうで怖かったから低い空をゆっくり隠れながら飛んだにゃ
漸く集落が見えてきた時、集落は地獄絵図になってたにゃ
どうやって見つけたのかわからないけど私よりも早く侵入してたのが黄金の鎧の騎士でたくさんの仲間がドラゴンに変わった頭部のブレスで焼き尽くされて、ハルピュイアクイーンの居た場所は真っ白にクイーンごと凍りついていたんだにゃ
震えて見ているともう空にハルピュイアがいなくなって、集落を破壊し尽くしてやっと満足したのかまた戻っていったにゃ
怖くなったテムは生き残りを探して、そいつのいるアイギスには手を出さないことにしたんだにゃ
それにハルピュイアだけじゃ情報も足りなかったから最初はオーク帝国に行ったんだにゃ
オーク帝国でも最近はよく偵察部隊とか遠征隊が帰ってこないことも増えて、渡りに船だったっていってたにゃ
オーク帝国では帰ってこない仲間たちの情報を持ち帰るために空からハルピュイアがいなくなった場所に偵察とかして手伝ってたんだけどやっぱりアイギス以外でも帰ってこなかったりすることがあったんだにゃ
対策にオークとかゴブリンとかと一緒に動くことが増えたにゃ
そしたら何人か生き残りが帰ってきて話を聞いたんだにゃ
装備は人間によっていろいろだったけど共通して弓を持ってなくて、変な武器から魔法を使ったり杖から魔法を使ったりしてたらしいんだにゃ
ゴブリン、オークも簡単に殺して、仲間が殺されてる間に必死に逃げて帰ったらしいにゃ
オークが容易く殺されるとは考えられにゃい?
知らんにゃ、自分の目で確かめればいいにゃ
オーク帝国でもネームドとして認定されて百態の騎士って呼ばれてたんだにゃ
帝国のネームドはまだ生きてたから外に出てた白面金毛以外のもう一人のネームド、オークヒーローを含めたオーク、ゴブリン、アラクネ、レッドキャップの混成大部隊で確認された百態の騎士がいる砦に向かおうとしてたんだにゃ
ハルピュイアの仲間が確認した百態の騎士がいる西部前線基地に向かおうとしたときに奴らは来たらしいにゃ
その時テムたちは西部前線基地の近くの森で隠れてて詳しい話は、生き残りの奴隷に聞いただけなんだけどにゃ
青肌複腕で白いローブを纏った女と、豪華な鎧をまとった騎士が魔法を使ってオーク帝国に攻め入って、モンスタースタンピードを起こして壊滅させたんだにゃ
オークヒーローが迎え撃ったみたいだけどネームドもすぐに死んじゃったみたいで、オーク帝国の秘密兵器、鋼道車や戦車も全く意に介さずほとんど破壊されつくしたそうだにゃ
ハルピュイアに情報が届いたとき真っ先に、隠れながら向かったけど、いつもより数が少ないとはいえスタンピードと同じく様々なモンスター、その死骸がオーク帝国の司令部周辺に山積みになってたにゃ
そのあと、生き残った奴隷の話では飼っていた人間の雌どもを引き連れてどっかに行ったらしいにゃ
…一番やばいのは、私たちが監視していた西部前線基地から百態の騎士が出てきていなかったって事にゃ
つまりテムたち亜人側が百態の騎士だと思ってたやつらは、それだけの力を個人で持つ複数人だったことだにゃ。
だから今、百態の騎士は百態の騎士たちって名前になったにゃ
そのあとはご存じの通り、完全に破壊されつくされた拠点は、モンスターの死体によって来るモンスターがいることからも住み続けるのは危険だって拠点をアラクネたちの森に移したんだにゃ
そういえば白面金毛もアラクネの森にいるって聞いたにゃ
あいつも何か百態の騎士達について知ってるみたいだったし、話を聞いてみるといいかもにゃ
アラクネ族が集まっているスペースの一角にて白面金毛の証言
貴方が話を聞きたいというケンタウロスの方ですか。
いえ、かまいませんよ。
あの時のことはよく覚えています。
マーフォークの方と輸送してもらい、仲間と共に降りたときでした。
音もたてず、姿も見せないでいきなりマーフォークの目の前に現れた黒い鎧の百態は杖を地に突いて、白い炎の爆発を生じ周囲を焼き払いました。
続いて私の後ろから出てきた赤黒く、重厚で目を出す場所さえない鎧を身にまとった百態が手から火球を放り投げたのです。
さすがにネームドと言えど同じネームド二人では負ける確率が高いと仲間を集め全力で撤退をしはじめました。
ええ、そうです。
恐らく見逃されてました、奴らの目的はマーフォークだったようでして、放たれた火球がゆっくりと潜水艇に近づき、そして数十メートル離れたはずのこちらまで届く爆風と爆音が轟きました。
後ろを確認すれば、衝撃波で海中に逃げていたはずのマーフォークたちは気絶、もしくは内蔵損傷でもしたのは血を吐いて浮かび上がってきました。
マーフォークたちの死体も生きているのも含め集め出し、赤黒い鎧はタバコを吸いながら捌き始めました、それを見ていた黒い鎧の方は臭いから恐らく酒を飲んでましたね。
マーフォークの内臓をかきまぜ、何かを探すような行動を起こしていた二人は、逃げた我々には目もくれていませんでした。
しかし百態が複数いるという重要情報を得られたのは僥倖だと、オーク帝国に帰ってみればオーク帝国の立派な領土は見る影もなくなっていました。
最終防衛ラインとして定められていた場所の一角は地形が変わるほどの攻撃にさらされたのか、死肉と岩が混ざり合って、鋼道は破壊され、鋼道車や戦車も同じく直せないほどボロボロにされていました。
中心にあったモンスタースタンピードの死骸を抜けると、そこにはオーク帝国で飼われていた人間、オーク、ゴブリンの妻たち、そして戦士長や人間ながらオーク帝国の発展に尽力したサイエンの死体が転がっていました。
戦士長は腕を残してぐちゃぐちゃにつぶされ、それ以外はモンスタースタンピードを耐えきれなかったようで、モンスターに食い散らかされ、まともに直視できるような状態ではありませんでした。
何とか我々は近くに退避していたオーク、ゴブリン、家畜と合流し、いまだに防衛ラインが上手く作られているという死の森、アラクネたちの住処へとやってきたというわけです。
幸いだったのはレッドキャップは明確にオーク帝国の協力者というわけではなく、何人か人手を貸し出しただけだったということでしょう。
稀に部族の移動や食料を取りに行くとき、百態に見つかったのかであったのかはわかりませんが帰ってこないことはあります。
ですがオーク帝国ほど大規模に殺されつくしてはいません。
未だに赤帽同盟は健在ですし、恐らくオーク帝国が消えた今、暗黒大陸最大勢力といえるでしょう。
また百態の脅威は赤帽同盟にも危機感を持たせたようで、本格的に奴らを殺すためゴブリンオークたちの散らばった集落や村をまとめ上げ、レッドキャップの足で話し合いの場を設け、同盟を作るなどをしています。
数はやはりオークゴブリンはすごいですね、既に我々レッドキャップの数倍の人数が同盟に参加していますよ。
…実は我々は近いうちに我々レッドキャップの赤帽同盟とその同盟のゴブリンオーク連盟で死の森前要塞に攻め入ります。
作戦としては私の単独突入とアラクネたちの壁面から上る侵入で砦の防御を揺るがし、壁面の兵を皆殺しにしたのちに、オークの部隊を送り込みます。
アラクネ、ゴブリンたちはその間、貿易路などにトラップを仕掛けていただくことになっています。
そして貴方たちケンタウロス族がいれば、逃げる
…あれ、聞いていませんでしたか?
このアラクネ種の集落を使わせてもらう対価として、ケンタウロス族は人間を逃がさないという協力を行っていただきます。
ケンタウロスの斥候部隊を周囲の森に配置して、逃げ出した
本当は突入時の陽動などもしてほしかったんですが、何分脱出できた数が少なかったのか、ケンタウロス族は100にも満たない数しかいませんし、そこはしょうがありません。
ただ我々は絶対にあの要塞は落とさなければならない。
オーク帝国の陥落でレッドキャップはともかく、ゴブリンオークたちは大きく数を減らしてしまいました。
特に安全だったオーク帝国で帰りを待っていたゴブリンの女性たちが数を減らしてしまい、子供を産める存在が少なくなっているそうです。
また、いつまでもアラクネ種の土地に居候させてもらうわけにはいきませんしね、幸いなことにアラクネとも同盟が締結しています。
アラクネ種は死の森にしか居ない為かいまだ百態に接触したことはないそうですが、あの地を駆けるハルピュイアことケンタウロス族の戦士たちがたった一人の百態に全滅させられたというのはかなりの衝撃だったようで、協力関係を結ぶことができました。
どうですか? あなた方ケンタウロス族も我々の同盟に入りませんか?
あなた方も居住地がない為今後どうするかお困りでしょう。
…いえ、私みたいなただの兵士が話すことではありませんね、我々の長たちが話し合って決めることです。
オーク帝国を壊滅させ、わが友の種族に痛手を与えた報いは必ず受けさせてやります。
感想待ってます