訓練を始めて4日目の夜、他人が使用したルーンと武器が結びつくという初めての現象に気づいた貴方は、シンシアに呪剣士の円刃とのつながりを深く意識するように指示して武器を何度か振ってもらう。
シンシアの振るう武器の動きにはぎこちない形ではあったが、貴方が狭間の地、いや影の地でまみえた呪剣士の円刃を振るっていた褪せ人。
その動きに近づいていた。
振るう刃は鋭さを増し、踏み込みや舞も呪剣士の円刃に最適化されつつある。
シンシアの動きが呪剣士の円刃に導かれているような現象に驚愕しつつ、他に繋がっている人物はいないか鳥脚の白銀漬けを使用し調べる。
するとユーリとクレアがそれぞれ、大鎌と長牙に己の内のルーンを結び付けていた。
シンシアよりもか細いそれに貴方はセリアとキューイはなぜ繋がっていないのかと考える。
貴方はそういえばと思い出す。
呪剣士の円刃や大鎌、長牙、それを貴方が与えた時、既にルーンを身に宿していたその3人は、だが初めて見る形や大きさの武器に大分苦戦し、何度も大きくその身体に傷を刻まれ貴方に祈祷で回復されていた。
今考えれば祈祷の回復はまるで狭間の地、その神秘を身に宿し回復し、体に馴染ませているようではないかと。
確信は持てていないが、現にセリアやキューイは速槍と双曲剣に早く順応し、その身に深い傷が刻まれるのを避けていた。
最終的には貴方に戦闘不能に追い込まれたとはいえ、その体の傷は慣れるのが遅かった3人と比べるならば比較的軽い。
つまり今後はさらに馴染ませるように、もっと瀕死の状態で祈祷を使うべきかもしれない。
いや、そうするべきだろう。
既に結論付けた貴方は、まだ使用するには早く、傷付きすぎてしまうと考え、もっと強くしてから始める予定であった訓練を繰り上げて開始することを決めた。
5人の少女たちを呼び集め、今回の訓練を変更すると伝える。
次の訓練は、視界が極度に封じられた状態での戦闘であると。
少女たちはまるで鳩が豆鉄砲を食らったような顔になるも、しぶしぶという形で頷いた。
貴方はそれを見て早速、祈祷:暗闇を使用する。
祈りを捧げた貴方の体から黒い靄のようなものが発生し、発生した黒い霧にに少女たちは各々の武器を構えるも、成すすべなく暗闇は少女たちの視界を奪った。
正直この状態でまともに戦えるとは思えないが、とりあえず体のうちに在るルーンと武器とを繋げ、より狭間の地の神秘を体に馴染ませるのが主目的だ、問題はないだろう。
貴方は視界を奪われ、まともに武器を振るうことすらできない少女たちへ、さらに深い傷をつけるため、そして大きな音を出し遅い攻撃でどこで刃を振るうのか、どうやって避けるのが一番良いのかわかりやすくするために腐敗した結晶剣を大剣:バスタードソードへと切り替えて振り下ろした。
何十回か視界を隠した状態で戦闘を繰り返して思う。
最初の頃と比べて上達スピードが速い、視界がなくとも貴方がバスターソードを所持していることを察知したのか、最初よりも大きく距離を保ち、貴方の動きから発される音に集中して、回避、稀に反撃も繰り返している。
やはり戦いに慣れたからだろうかと思いつつ、見えない視界と貴方へ意識を向けすぎたことで接触し、足を止めてしまったシンシアとユーリを上下に両断する。
深い傷は作れるが死なないように素早く重症にさせるのは手間だと思いながらも、反撃してきたセリアとキューイの攻撃を避け、二人の奇襲に合わせきれず、遅れたクレアにバスタードソードを叩き込み、全身の骨を粉砕する。
残りのセリアとキューイは特筆すべきこともなく貴方の素早い踏み込みと切り上げで内臓ごと破壊された。
急いで少女たちの体を集め、体力が死の淵ギリギリになった時点でまとめて回復する。
そろそろ変化が起きたかと再度確認する。
予想通り、全員が武器と取り込んだルーンに繋がっている事を確認した。
一番深く繋がっていたシンシアは、鳥脚の白銀漬けを使用せずとも分かるほど繋がりを深めることができていた。
この調子で訓練を続けるべきと判断した貴方は、バリエーションをつけるため、投げナイフなどの飛び道具も開放する。
女性解放戦線の少女たちは視界を奪われた状態での素早い投げナイフに反応できず、
体に刃物が突き刺さるが、シンシアのみ、舞のような動きでいくつかの投げナイフを叩き落した。
これは実戦も期待できそうだと再確認し、貴方の訓練はまだ続いていった。
数日後 城塞都市アイギス:グラス
褪せ人である万能の騎士様に乞われた実験を終えて、手持無沙汰となってしまったグラスは、アロと行動を共にしている内に、アロから緊急生存術教練の存在を知り、カタナから師事を受けていた。
そんなグラスとカタナが二人が葉っぱや枯草から簡単な服を作っていたところに
『カタナちゃん! やっと見つけた!』
「えっ!? お兄ちゃん、どうしたの…?」
「えっ!? カタナさんはご兄弟がいたんですか!? っていうか何語ですかそれ!?」
馬に乗った青年が不思議な語り口調で、突如現れた。
何を言っている意味すら聞き取れない言語と気配も感じないまま馬で近くに現れた事実よりもグラスは剣姫カタナに兄弟がいたことに驚愕する。
その驚愕の声は無視して、カタナはお兄ちゃんと呼び掛けたものに問いかける。
何があったのかを
なぜならばその青年はまるで何十日も走り続けたかのように汗だくであり、体の半分を覆うような痛ましい傷に包帯が巻かれそこに血が滲んでいるという満身創痍な状態であった。
「そんなにボロボロになるなんて…ドラゴンが暴れたとか?」
青年は、近くに少女がいることに今更ながらも気付き、一つ咳をして話し始めた
「状況はそれよりも悪いでござる。
…族長と戦士長、そして戦士隊は全滅、斥候隊も半数が命を落として残りの半数も俺みたいにまともに弓を射れない状態にされたでござるよ
なによりも、俺たちが住んでた平原、そして周囲の森もすべて焼き払われて、今はすぐ近くの関わりが少なかった森にすんでるでござる。
下手人は不可思議な形の使い古された和洋折衷的な鎧、その一人のみだったですよ」
その言葉にカタナは顔を青く染め、思わずといった形で
「お母さんは……」
と聞き返した。
「そこは心配しなくていいでござる
幸い女性陣は斥候たちの奮闘もあってほとんど生きているでござるよ
今は近くの森でみんな生活しているのでござるが…里がすべて焼失して、尚且つ戦力の頼みの綱であった男衆もほとんどが命を落とした現在、カタナちゃんは外で遊ばせておくわけにもいかない一大戦力となったのでござる」
その言葉に安心し、一息つくカタナだったがその後の自身が一大戦力となったという言葉に顔を強張らせる。
「…そんなにひどいの?」
「…今のところ立ち向かって生き残った存在は見つけれてないでござる。
何よりも直接戦闘が得意だった戦士隊の文字通りの全滅、誰も生きて帰ってこなかったことからも、正面戦闘である程度の力量を持つ存在は今の故郷ではとても貴重になったのでござるよ」
「男減ったってことはかなり人集める必要があるよね…
パーティメンバーから来たそうな人たち何人か連れて帰るべき?」
「それもカタナちゃんに下された新しい命令の一つでもあるでござる!
比較マシで有能な男の種は今一番、里で必要といっても過言じゃないでござるからな!」
「え…!? ちょっと待ってください! じゃあもうカタナさんは冒険者辞めちゃうってことですか!?」
カタナの兄という青年の言葉を聞いて驚愕と蒼白に染めた表情で思案し始めたカタナの横から、まるで蚊帳の外のように扱われていたグラスは声を上げる。
だがそれも
「そのとおり、現在は里の緊急事態でござるゆえに、申し訳ないけどカタナちゃんの観光はここで終わり、引きずってでも連れて帰るでござるッ!」
というカタナの兄の迫力に負けてしまう、そこには本気で引きずってでも連れて帰るという凄味があった。
カタナは残念そうな表情と共に凄味に溢れ、グラスを威嚇する兄を止めた。
「わかったお兄ちゃん…ただこの子と今やってる緊急生存術教練はお金をもうもらっちゃったからやり遂げないといけない
この仕事が終わったら必ず戻るから、あと一日だけ待ってくれない?」
その言葉にカタナの兄はとても渋い顔をしながらも…
「1日だけでござるよ…!」
そう言ってまた森へと身を隠した。
「と、いうわけで、貴方には今からかなり急ぎで教練を終わらせるから頑張ってついてきてね?」
「なんかすごい濃い人でしたね…え!?」
なにがなんだかわからなかったグラスは、カタナに掛けられたその言葉に驚愕しつつも思わず頷いたことを、この後すぐ後悔することとなった。
そしてその翌日、城塞都市アイギスからS級パーティ先導者のパーティメンバー複数名と剣姫カタナが姿を消したこの事実は、アイギス中をざわつかせることとなった。
そしてこの話をグラスから聞いたジャンパーティは
「え!? カタナさんに兄弟がいたの!?」
「そうなんですよ! 驚きですよね!」
アロはカタナに兄弟がいたという事実に驚愕しつつも、周辺でそんな大規模に森が塩化するようなことはあったかと考える。
「やっぱり…おかしくないか? その話」
そこにジャンも参加する。
「森を燃やすってことはドラゴンの根城にも引火する危険性がある、そんな馬鹿なことをしていたら良くて禁固刑、最悪縛り首だ。
だからこそ冒険者学校では火の扱いについてこれでもかっていうほど色々と学ばせられただろ?」
「そうなのよね、森を燃やしてもドラゴンがいるならドラゴンのブレスで簡単に鎮火できるって話だし…
何よりそんな大規模な火災が起きたのにアイギスで噂にもなってないっておかしくないかしら?」
ジャンとアロはそれぞれの話によっておかしな点を指摘するがそこにナギが口をはさむ。
「もしかすると馬に乗っていたという話ですから、天才的な乗馬テクニックで急いで伝令のように仲間を呼び戻したのかもしれませんよ?」
「あ! 確かにそうね!」「伝令かぁ…盲点だったな」
確かにその可能性もあるとジャンとアロが納得したところで
「おい、いつまでそこで駄弁ってんだ、そろそろ出発時刻だ、置いて行かれたくなかったらさっさと来い」
とレイドを組んでいるクロスの言葉にせかされて、グラスと話し込んで止まっていた足を動かし始める。
「あ! そうねすぐ行くわ!」
「わるいわるい! じゃあグラスちゃん、また機会があれば会おう!」
そういって手を振りながらジャンたちとグラスは分かれた、ジャンたちは嘆きの街に、グラスは故郷に足を進めるため。
もう会うことは無いだろうと感じても、また無事に出会えることを祈って。
アイギスに到着して7日目
そろそろアイギスを出て死の森前要塞へと向かうこととなった貴方たち勇者御一行は、進む陣形を決めていた、本来は簡単に決まるはずである陣形、それがなぜここまで揉めているかと言えば
「ですからッ! そんな7日間しか鍛えてないしかも女の子に一番前を歩かせるって頭おかしいんじゃないですか!?」
貴方が鍛えた結果かなり強くなったと思うので、実戦でどれぐらい強くなったか確認したかったから危険なキャラバンの陣形の一番前を任せようと言い出したのだ。
そんなあなたの言葉に猛反発しているのは聖盾の騎士マユリと聖杖の騎士リリィであった。
「貴方がいくら強くても、7日だけ育てた5人がキャラバンの先頭で守り切るなんて不可能ですし、もしも戦闘の少女たちが敗れれば陣形が瓦解する危険性もあるんですよ!?」
「そもそもなぜ彼女たちを一番前にするというのですか!?」
貴方は彼女たちはまぁまぁ強くなった、無傷で騎士に勝てるぐらいには、と答えるもにべもなく二人して否定される。
そこに
「まぁまぁ彼女たちもかなり強くなったそうだし、実際騎士たちの強化にも協力してくれたじゃないか
彼が監督するならば大丈夫じゃないか?」
アークの助け舟が出される。
貴方はアークに呼び出されはしたが、体内のルーンと武器のルーンがつながるというのはやはり、貴方がルーンによって作られた武器を渡し、更にルーンを取り込ませ、祈祷で繋げないと意味がなかった様で、少しの身体強化や直感力の向上のみにとどまり、シンシアや女性解放戦線の少女たちほど、能力が伸びているということもなかった。
しかしそれでも十分だったということだろうか、アーク大司教が助け船を出してくれたということはいけるのでは? と考えるも
「「リスクが大きすぎます!」」
と聖盾の騎士マユリと聖杖の騎士リリィに同時に言われて黙ってしまった。
貴方はそういえば少女たちが女性解放戦線という名前を変更したとか言っていたなと、ダメだしされた現実逃避に考えていると。
「じゃあ、遊撃隊みたいに、褪せ人殿も含めて、敵を見つけたら倒してもらうということはどうだい?
実際彼は亜人の集落から女性たちをかばいながら5人近く救い出している実績がある」
そのアーク大司教の言葉に聖盾の騎士マユリと聖杖の騎士リリィは渋々ながらも大司教様が言うのであればと頷いた。
さっきはダメ出ししていたじゃないかと思いつつも。
ありがたい、と貴方はアーク大司教に感謝を述べる。
対してアーク大司教は
「いや、実際君に訓練された少女たちがどれほどの実力を発揮するようになったのか見てみたいという気持ちも大きいからね、渡りに船という奴さ」
と朗らかに笑った。
再度頭を下げると貴方は少女たちに決まった役割とその動き方を決めるべく、部屋を退室した。
死の森前要塞へ向かう道すがら、貴方は残念だと思っていた。
なぜならば
「あ、また居なくなっちゃいましたね、すっごく逃げ足速いんですねここら辺のゴブリンやオークって」
貴方はユーリの言葉に同意する。
そう、貴方たちが近づくとまるで蜘蛛の子を散らすように、貴方の周りにいる亜人たちが逃げて行ってしまうのだ。
「いったいどうしたんでしょうか?
こんなこと生まれて初めてですよ」
放浪騎士の鎧に、呪剣士の円刃を持ちながらシンシアが呟く。
呪剣士の円刃を持ったシンシアだけではない、少女たちは、切り裂かれすぎてまともに切れなくなった装備を新調し、貴方から与えられた、自動的に装備の傷が修復されるルーンの装備を纏っている。
それは貴方が最初に着ていた貴方がいざ壊れた時の為と、ルーンの効果もよく知らない頃にたくさん購入していた、放浪騎士の鎧であった。
貴方が過去着ていた鎧はシンシアが異常に欲しがったため与えたが、貴方としては舞の威力が上がる踊り子の装備を着てほしかった、だが結局死ぬときは死ぬのだ、どうせ死ぬなら好きな装備で楽しく戦ってから死ぬ方がいいだろうと考え、貴方が来ていた放浪騎士の鎧を与えた。
そして貴方が与えた鎧も今では鎧ごと切り裂かれた傷を、祈祷で共に直し、武器と同じように体内のルーンと深く結びつき、体が回復すると装備も共に治るまでへと繋がりを強めていた。
そんな少女たちを眺めながら貴方も、まったくだと同意したとき
『見つけたぞおおお!!!
百態の騎士、その一味だぁ! 皆殺せ!』
20体ほどのオークと数十体のゴブリンが迫ってきていた、それに対して貴方は、いい練習台ができたことに喜び。
少女たちに攻撃を始めるように指示する。
そして…
蹂躙が始まった。
感想めちゃくちゃ待ってます。