褪せ人が行く!ふかふかダンジョン!【完結】   作:No_46

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もっと早く丁寧に描ける力量が欲しい…


嘆きの街にて早急な再会(騎士編)

 向かってきたゴブリンオークの混成大部隊に真っ先に突っ込んでいったのは速槍のセリアだ。

 

「ウオォオオオオオ! ゴッ!」

 

 先頭に立っていた一番槍であっただろう特に図体の大きかったオークの棍棒を避け、喉に鋭く一突きすると同時、横にいるゴブリンも一撃、二撃と二連の突きを繰り出し頭蓋を穿つ。

 

 だが2連突きが終わった瞬間の隙に先頭、一番槍をしていたオークの真後ろに潜んでいたゴブリンの死なばもろともという気迫の剣が迫る。

 

「セリア! 前に出過ぎだって!」

 

 注意の声と共にゴブリンの腕と首を同時に落としたのは双曲剣のファルクスを持ったキューイだ。

 

 そこに追いついたユーリの大鎌による回転切りによって、前衛として飛び出していたオーク2体と援護要因として出てきていたゴブリン3体をまとめて切り払った。

 

 先頭のオークやゴブリンたちがまとめて殺されたことに動揺が走り、オークゴブリン混成大部隊の足が鈍る。

 

「今回は訓練じゃなくて実戦ですからね! 死ななかったら師匠に回復してもらえるでしょうけど、一撃で脳まで切られたらもう回復できなくなるかもって言ってたじゃないですか! 

 女性解放戦線改め女性の刃パーティーの初陣なんですからもっと冷静に立ち回ってください!」

 

 ユーリはそう言いながらも前に出てきたオークの足の健を切り倒れさせ、それによって前に出れず足を止め躊躇したゴブリンたちへ悶えるオークを足場に飛び越え後ろからまとめて首を刈っている。

 

「ある程度の緊張感を持ちながらもリラックス、師匠の攻撃よりも遅く鈍い攻撃なんです、その気になればいくらでも避けれるんですから」

 

 正確にゴブリンたちの攻撃を避けながら言い放つのはクレア、攻撃後の一瞬の硬直に長牙を差し込み、心臓を貫き腕を落としていく、その鋭い切り口によって刻まれた傷からは血が流れ出し、決死の覚悟で突撃しようにも長牙の広いリーチによって作られた距離にある仲間の死体が邪魔で到達する前に失血する。

 周囲にはすでに血の川が流れていた。

 

 だが最も敵を殺しているのはシンシア、彼女だった。

 

 比較的遅れて戦場へ足を踏み込んだ彼女は、すぐに周囲を亜人に囲まれた。

 

 亜人は一斉に剣や巨大な棍棒を振り下ろす。

 

 対してシンシアは

 

「意外と隙はあるものなんですね、最初見たころは隙のない攻撃だと思ったのですが」

 

 と独り言をつぶやきながら棍棒と剣の雨に生まれている僅かな隙間へ体を滑り込ませると同時に、踊るように舞った。

 

 その姿にゴブリンとオークが目を奪われたと同時

 

ブシャァッ! 

 

 亜人たち各々が武器を振り下ろした腕や自らの胸にいつの間にか生まれている鋭い裂傷から血を噴水のように巻き上げる。

 

 失血死する前に一矢報いようと体を動かそうとするオークは、この程度ではまだ動くことを知っていたシンシアの斬撃によって身体の神経を絶たれている事実に気付くこともなく死んでいく。

 

 シンシアは返り血を避けるように倒れ伏す亜人の死体を抜け、更に亜人たちの密集した場所で舞い、血の噴水を作り上げている。

 

 シンシアの戦いぶりを視認したセリアは

 

「そうだったみたいですね、まだ訓練気分が抜けていませんでした」

 

 と謝罪しながら敵の本命と思わしきオークの密集している地帯へと、道中のゴブリンたちを貫きながらも隙を隠す立ち回りで駆け抜けていく。

 

「グオオオオオオオ!!!!!」

 

 仲間の死に涙を流し慟哭を叫ぶオークたちの攻撃を躱し、即時の戦闘不能へは至らないものの、確実に死へ導かれる場所の一突きを繰り出すとすぐ下がる。

 

 死へは至るだろうがまだ動く体で死なばもろともの特攻を仕掛けたオークたちは素早く下がり、避けられることで無為に命を散らしていく。

 

 次の瞬間、少女たちは一斉に飛び上がるか姿勢を低くした、と同時に先ほどまで少女たちの体があった空間を幾本の弓矢が通り過ぎていく。

 

 全てを避けた少女たち、中でもセリアが

 

「大体敵の位置はわかった! 

 キューイ! 援護を頼む!」

 

 と声を上げる。

 

 同時に最初の頃とは比べ物にならないスピードで走り出したセリアに、言葉を聞いてすでに動き出していたキューイが追従する。

 

 茂みに隠れていた迷彩ゴブリンたちの至近距離からの攻撃や即席の罠、それらのことごとくを躱し、時には速槍で矢を弾いて、返すように槍を2連突き、3連突き、矢を薙ぎ払いまたしても突き、そして最後に残った隊長格のゴブリンは振り上げた速槍の突き。

 

 容易く7体のゴブリンを一蹴する。

 

 その間追従していたキューイはセリアの手が足りない範囲の罠を切り払い、矢を防ぎ、隠れていたゴブリンを切り裂いていた。

 

 セリアが斥候の隊長格を貫いたタイミングで、丁度シンシア側に丸投げしたオークとゴブリンの大部隊殲滅が完了したとの声を受け、キャラバンへと帰還した彼女たちに貴方は

 

 セリアはちょっと周りを見ないで突っ込み過ぎ。

 

「うっ…はい…」

 

 キューイは反対に周りを見た立ち回りはうまいけどもっと積極的に突っ込んでも大丈夫。

 

「ですよねぇ…」

 

 ユーリは最初の回転切りで足止めできたのは良かった。

 

「あ、ありがとうございます!」

 

 ただもっと大鎌という武器の特性を活用して、装備の薄い脇とかも積極的に狙っていこう。

 

「はい!」

 

 クレアは間合いを図りながら丁寧に処理できてたのはいいけど無駄な手間が多い、心臓を裂いた相手の腕を落とす必要はないし、武器を投げられても今のクレアなら避けられる。

 

「なるほど、確かにそうですね…」

 

 最後にシンシアは、かなり上手かった、この調子なら戦技も使えるようになりそうだ。

 

「ふふっ頑張りましたから!」

 

 それぞれへ貴方の見た戦闘時の無駄を指摘して、とりあえず初めての実践お疲れさま、と声をかけた。

 

 この蹂躙を見ていた聖騎士と褪せ人とシンシア以外の勇者パーティの面々は

 

(いや、さすがに強くなりすぎでは?)

 

 と心の声が一つになる。

 

 聖剣の勇者セイとアーク大司教はお互い目配せをすると共に

 

「さ、流石は万能の騎士の弟子たちだ! この調子ならばどのような亜人も、白面金毛ですら敵ではないだろう!」

 

う、うおおおぉぉ!!! 

 

 と声を張り上げ、目の前で見た惨状に若干引いていた騎士たちの士気を盛り上げた。

 

「いや、それにしても強くなりすぎじゃない? 

 私たちも気付かなかった弓矢の奇襲を全員避けた時とか訳が分からなかったわよ…」

 

 聖盾の騎士マユリはそう呟く。

 

 聖杖の騎士リリィも同意見のようでしきりに首を振っていた。

 

 そして聖剣の勇者セイは

 

「すごいね、多分もう彼女たち一定以上の速さと力を持ってないと一方的に殺せるぐらいにはなってるよ」

 

 と言い放った。

 

「は!? セイそれってどういうことよ! 

 相手には亜人で一番力が強いオークもいたのよ?」

 

 マユリの言葉に頭を掻きながら

 

「うーん、今言った通り、力の強さだけじゃなくて速さも重要そうなんだよね。

 確かにオークって動きも速く見えるけど、大きいからそう見えるだけで実際にはそこまで速くないんだよ

 特に大きい筋肉や骨で体を支えている分、他の亜人よりも重いから動きも若干だけど遅くなるんだよね

 まぁ若干ってだけだし、それでも成人男性ぐらいのスピードはあるから相対的に速くはある…んだけどその程度だとね。

 彼女たち動き回りながらも攻撃の起こりを見た後は周囲に視線を配ってたんだよね、つまりその程度のスピードだと周囲に目を配る余裕すらあるってことだね」

 

 そこにリリィが疑問を持つ。

 

「で、でも褪せ人さんにセリアさんとかキューイさんはかなりダメ出しされてましたよ…? 

 褪せ人さんは男の人とタイマンで無傷で勝てるまでって言ったんですよね…もう既に勝てるようになってると思うんですけど、なんでまだ鍛えてるんですかね?」

 

 リリィの問いかけにセイは答える

 

「多分、褪せ人さんは何回戦っても、絶対傷付かない、そんなレベルが目標みたいだよ。

 そんなの誰でも不可能だと考えるのによくできるって思って、しかも鍛えられるよね。

 あ、でも多分一番大きな要因は…」

 

「「よ、要因は…?」」

 

 マユリとリリィが同時に尋ねる。

 

「褪せ人さん、他人を鍛えるの結構楽しくなってきたみたい」

 

「「…え、そんな理由?」」

 

 マユリとリリィは同時に思わずツッコんでしまった。

 

 セイはアハハと笑いながら

 

「まぁ仲間が強くなるのはいいことだよ!」

 

 そう締めくくった。

 

 キャラバンは順調に嘆きの街へ進んでいった。

 

 

 

 嘆きの街に到着した貴方たちは好奇の視線にさらされながら宿に戻り、そこでそれぞれ街を見て回ることになった。

 

 貴方は今日は町を見てくし道中で何度かモンスターと戦ったことから訓練はしないことを告げると、シンシアはもちろん女性解放戦線改め女性の刃と名前を変えた少女たちのパーティーも付いて来るようだ。

 

 貴方が町を見ながら出店で食べ物を探しているとジャンパーティと出会った。

 

「あ、万能の騎士さんも嘆きの街に来てたんですね!」

 

 アロは驚きと共に走り寄ってくるが、後ろについてきていた少女たちの顔を見て、居心地の悪そうな表情を見せる。

 

 そういえば、と貴方はアロと女性の刃の少女たちは初めて出会った時、お互いに何か言い争いをしていたことを思い出す。

 

 どうしようか悩んでいると

 

「師匠、シンシアさんも、少しアロさんたちに話したいことがあるので先に見て回っててください、問題は起こしませんから」

 

 と言われる、シンシアは不安そうに見ていたが貴方は

 

 わかった、と一言だけ零して

 

 少女たちとジャンパーティを見送った。

 

 

 

 アロside

 

 アロは褪せ人に対し実験を通して好感を持っていたため、会うと思っていなかった嘆きの街での出会いに驚きと嬉しさが沸き上がり思わず口に出し走って近づいてしまった。

 

 だがそこで後ろに、あの女性解放戦線と名乗った、自身と言い争いをした少女たちを見つけてしまう。

 

 女性解放戦線の面々は狂信者レベルで思想が凝り固まっていた、いくら褪せ人であっても思想は簡単に変えられないだろう、せっかくの観光で気分が悪くなることは避けたい。

 

 そう考えたアロはタイミングが悪いと思いながらもまたいちゃもんを点けられたくなかったため、別れの言葉を口に出そうとする

 

 そこに

 

「師匠、シンシアさんも、少しアロさんたちに話したいことがあるので先に見て回っててください、問題は起こしませんから」

 

 と、女性解放戦線のリーダーをしていたセリアが口を開く。

 

 褪せ人が頷いて了承したのを確認して、セリアは近くの酒場に私たちを誘った。

 

 また何か面倒な言いがかりでも付けられるのかと、アロはげんなりするがその考えは、お互いのパーティが1つの大きなテーブルに座り、挨拶が行われたことで驚きと共に払拭された。

 

 全員が座ったことを確認して、まず女性解放戦線のリーダーのセリアが口を開く。

 

「アロさん、以前は助言を聞き入れないで、罵倒してしまい申し訳ありませんでした、今はパーティ名を女性の刃という名前に改名したんです。

 褪せ人さんの訓練で、一番大切なことをいろいろと学ばせてもらったおかげで目が覚めました!」

 

 そう明るく言い放つセリアに対しアロはしかし、違和感を覚える。

 

「いや、いいわよ全然、気にしてないわ。

 そう…訓練を頑張ってるって聞いたわよ。

 何を学んだの?」

 

 違和感を無視しアロは詳しい訓練について尋ねる。

 

「体の動かし方とか戦いの中で効率良く敵を殺す方法とかですね!

 いや~ほんとかなりきつかったですよ! 

 でも切っ掛けを作ってくれたアロさんには本当に感謝してもしきれません!」

 

「アハハ…ありがとう、そういえば女性解放運動はやめたの? 

 やっぱり褪せ人さんの指導で意識が変わったとか?」

 

 アロは思わず聞いてしまい、あっ

 と口を抑えるが、対するセリアは朗らかに笑って答える。

 

「ははっ! まぁそうですね! 

 褪せ人さんの訓練で意識が変わって、もう女性解放の事なんて忘れかけてましたよ!」

 

 だがここで違和感の意味に気付く。

 

 少女たちがまるで戦場に居るかのようにいつでも武器を取り出せる腕の位置、最適な間合い、視線の異様な動きを行っていることに

 

「だって解放なんて女性自身が強くなれば解決するんですから! 

 平等なんて口だけ言っても意味ないですよ! 

 だって言われてる方は強いのにわざわざ持っている有利な武器を手放すわけがありませんしね! 

 でもその武器は私たちも師匠のおかげで身につけることが出来ました! 

 まるで視界が大きく開けたみたいな気持ちです! 

 だから今は女性の刃って名前にしたんですよ! 

 女性でありながらなんでも切り裂ける強さを持ったから! 

 素晴らしくないですか!? 

 きっとアロさんも気に入りますよ!? 

 絶対的な暴力の安心感! 身の回りに居る存在を自分が容易く殺すことが出来るという支配感! 小馬鹿にされてもそいつを秒殺できるという優越感! 

 一度この暴力という力を手に入れたらもう無かった頃なんて考えられません! 

 それに褪せ人さんの指導でどんどん強くなることが実感できるんです! まるでドレスを着飾っているみたいに強さを実感できて戦いの楽しさも止まらなくなってきたんです!! 

 死が間近に迫るヒリヒリ感にそれを薄皮一枚で避ける緊張感! 自分より肉体的に強い亜人共を殺す達成感! 

 アロさんのおかげでこれらすべてを得ることが出来て本当に感謝しています!」

 

 いきなり狂信者のように話し始めたセリアを

 

「ちょっと。初対面にいきなりぶっちゃけすぎるよ!」

 

 とユーリが諫める。

 

 だがアロは諫めた少女も否定のような雰囲気ではなく同意するのをこらえる表情でその考えへとどっぷりつかっていることに気付く。

 

 少女たちはまるで変っていない、ただ信仰対象が様々な分野の強い女性から純粋な暴力へとシフトしただけなのだから

 

 ジャンがそこに口をはさむ。

 

「亜人ってオークとかも殺せたのか? どうやって?」

 

 その問いに対してセリアはまるで新しくもらったおもちゃを見せびらかすような笑顔を浮かべる。

 

「ふふっ! どれだけ強くなったか知りたいですか!? 

 じゃあ模擬戦しましょうよ! 私一人とジャンパーティ! どちらが強いかずっと気になってたんです!」

 

 ジャンパーティの一面はぞっと背筋に冷たいものが走る。

 

 ジャンが思わずといった形で

 

「え? 一人? 

 そっちのパーティじゃなくて?」

 

 と聞き返すが、セリアは笑顔で頷く。

 

 まるで本気で自分一人でジャンパーティを全滅させることが出来ると考えているかのように。

 

 だが、

 

「面白れぇじゃねぇか、ジャンもここで引いたら女一人相手にパーティで逃げたって後ろ指刺されちまうし、一度その鼻っ面を叩き折っといた方がこいつらのためになるだろ」

 

「う~ん、確かに、別に後ろ指をさされるのは良いんだけど、このままだといつか増長しすぎちゃいそうだしなぁ。

 分かった、受けるよ」

 

「ふふっ! いいですね! じゃあ訓練場に行きますか!」

 

 クロスの言葉に苦笑と共にジャンが模擬戦を受ける。

 

 6人パーティと少女一人、どちらが勝つかなんて明白なはずなのに、アロは不安感が拭えなかった。

 




変わったように見せかけて全然変わってなかった…

感想めちゃくちゃ待ってます。
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