褪せ人が行く!ふかふかダンジョン!【完結】   作:No_46

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また文字数が少ないです。
もっと早く書けるようになりたい…!


死の森前要塞襲撃

 その日、死の森前要塞は平和なひと時を過ごしていた。

 

 夜になるまでは

 

 哨戒中なはずの城壁に異常が報告される。

 

「北門第一城壁に敵襲ー! 

 北門第一城壁に敵襲ー!」

 

 その言葉に砦は騒がしく動き始めた。

 

「遠くから狙撃されたみたいだ! 陽動の恐れがある! 異常が無いかしっかりと見張れ!」

 

「はい!」

 

 城壁の上に居る兵士たちは己の仕事を全うしようとするが、

 

「は? し、侵入syッ!」

 

 既に侵入されていた白面金毛によって内側のバリスタで外を監視していた兵士たちが次々と殺されていく。

 

「敵襲! もう侵入されてます!」

 

「はぁ敵襲!? どこからだ!」

 

 そんな会話をしていた兵士も白面金毛は容易く殺し、殺すと同時バリスタなどの木製の物品に、火をつけ、燃やしてゆく。

 

「なんだ!? 燃えてないか!?」

 

「北で戦ってるんじゃなかったのか!?」

 

「槍もってこい槍…」

 

 ザザンッ! 

 

 動揺が兵士たちの間に広がる隙を突き、兵士の三つの首をまとめて落す。

 

 その間も火の手が回っていく

 

(いい具合に混乱してますね…

 更に、北の城壁で襲撃があったという報告を受けてから増援に行ったのか、他の場所の警備が非常に薄い、これならば容易く、死の森前要塞は落とせるでしょう)

 

 

 外部から防衛用バリスタを確認していたアラクネが声を張り上げる。

 

「防衛用バリスタ、すべて炎上確認! 

 突撃! 突撃!」

 

 

 対して防衛側である死の森前要塞は

 

 中央指揮所

 

「南の森から何らかの亜人の大群接近!! 

 迎撃! 迎撃用意!」

 

 西側第一障壁

 

「挟み撃ちか!?」

 

「内側に既に侵入されている! 

 侵入された北へ援護に行くぞ!」

 

 南側

 

「がぁ!!!」

 

「クソ! なぜ撃たない! 

 ここまで迫ってるんだぞ!」

 

「戦場の霧」と表現されるように現代であっても戦場は常に混乱し正しい情報が集まらないものである。

 更に

「たった一匹のレッドキャップが何故か空から飛んできて紛れ込み、時間すら稼がせず城の一方面を皆殺しにする」

「こんなありない事態を想定する者」はおらず、現場指揮者たちはそれぞれ不明確な情報の元、現実的に考えられる事態を想定して行動する。

 今回はそれらはすべて裏目に出ていた。

 

『久々に大量狩りと行きましょうか』

 

 そうして第二障壁へたどり着いた白面金毛はまた兵士をなます切りにしながら走り出す、

 

 そして南門周辺は殺されつくし、そこにアラクネたちが侵入する。

 

『白面金毛のおかげでバリスタ撃たれなくて助かったよ』

 

 そう一人ごちるアラクネは、槍を向けた兵士の首を容易く飛ばす。

 

 アラクネたちの多くの腕は狭い室内での近接戦闘に有利に働き、とんでもない効力を発揮することで容易く南門は占領された。

 

ブキ ヲ ステ トウコウ シタモノ ハ イノチ ダケハ ホショウスル! 

 

テイコウ スルモノ ハ コロス! 

 

 投降を呼びかける言葉が人間の言語で、大音量で流れる。

 

 そしてダメ押しとばかりに

 

「おい! レッドキャップが南門開けようとしてるぞ!」

 

「白面金毛だ!」

 

『はぁ、少し疲れました…では、あとはよろしく頼みますよ…

 連合の戦士たち』

 

『任されたぁ!』

 

 南の大門が開き、オークたちがなだれ込んできた。

 

『やっぱり頼もしいですね、オークは、アラクネに至っては妖怪みたいな動きしてますし、僕も落ちてる武器でも拾ってもうひと動きしますか』

 

 白面金毛もそう呟き、また人間を殺すために走り出した。

 

 全ての建築物が城壁として機能するはずの「多重城壁造り」も第一城壁と第二城壁がここまで容易く抜かれる想定はしていなかった。

 

 だが正史(原作)と違い偶然、神秘を組み上げ振りまいている石碑を発見したカーリアの騎士の褪せ人が、周囲に居たヒュドラを発見し、ほぼほぼ皆殺しにしたことで、正史にてヒュドラに攻められていた嘆きの街に送った援軍分の兵士の余裕があった。

 

 お陰で、避難施設と中央司令部は何とか持ちこたえていた。

 

 しかしそれでも

 

『やっぱり中心側の壁はめちゃくちゃ薄いぞ!』

 

『ケツ刺されないように注意しろよ!』

 

 壁や天井に張り付き、俊敏に動き回れる小型の熊のようなアラクネに、なだれ込んできたオーク軍団

 

「クソッ! 

 ここには女がいるんだぞ! 

 殺しちまったら意味ねぇだろうが!」

 

 避難所を守る兵士がそう愚痴るが

 

「問題ない、狙っているのはお前達兵士だけだ、俺は使者でもある、殺しても構わんぞ」

 

 攻撃を止めろ! 

 使者だ! 攻撃するな! 

 

 オークが人間の言葉で使者として向かってきたことで、多くの地区ではすでに投降が相次いでいた。

 

 そんな中、

 

『ん? なんだコイツ』

 

 オーク達に連れられ捕囚の身として歩いていた人間たちとオーク達の前に、不気味な骸骨の面の黄金の兜と鎧を身に着けた存在が立ちはだかった。

 

「投降すれば命までは取らん

 …お前みたいなのに言っても意味ないだろうがな」

 

 だが黄金の鎧を着た存在を人間たちは知っていた、その名は

 

「ドラゴンスレイヤー! 

 来ていたのか…!」

 

 小声で思わず言葉がこぼれた。

 しかし兵士は何伝えることはできない、捕囚の身となった兵士が、投降した後に仲間へ利敵行為を行えば、他の捕囚の人々が皆殺しにされる可能性もあったからだ。

 しかも連れているのは使者、殺してしまえば交渉もできなくなってしまう。

 

 だがからこそ、不運だった。

 

 元々、ドラゴンスレイヤーは安眠を阻害されとんでもなくイラついていたのだから

 

「人が気持ちよく寝てたのに、いきなり殴りかかりやがって

 今響いてるうっせぇ声でまた眠りにも入れねぇしよぉ…てめえら殺したら、止まるのか?」

 

 投降の意思が見えず、背負った大刀を向けられたことで、使者として捕虜の人間どもを連れていたオークは、こいつは捕虜の人間どもの見せしめとして殺そうと駆け出す。

 

 対して、ドラゴンスレイヤーは

 

「攻撃してきたってことはよぉ! お前らがうっせぇ音出してるっとことだよなぁ!?」

 

 怒気のこもった叫び声をあげ、向かってきたオークに人の身長ほどもある大刀を振り下ろした。

 

 風切り音が聞こえる、大きさに似合わない素早い打ち下ろしにオークは動じず、手に持っていた特大のハルバードで防ごうとするが、容易くハルバードごと切り裂かれたのは予想外だったのか、驚愕の表情で頭部を割られ、死亡した。

 

「はっ!? あ、あんた何やってんだ! 

 さっきの話聞いてなかったのか!? 

 こいつは使者! 殺したら交渉も何もできなくなるだろうが!」

 

 使者が殺された、その事実に捕囚の身となっていた人々は絶望する。

 

 これでは和平交渉もできず、ただ全滅するまで殺されるだろう。

 

 だがドラゴンスレイヤーはそんな人々に苛立ちのこもった目を向けることで黙らせた。

 

「いや、使者が刃を向けられたとはいえ向かってきたのだ、抵抗しても文句は言えまい、それよりも、侵入してきた亜人たちだ! 

 ドラゴンスレイヤー殿、南の大門に向かい亜人共を倒す手伝いをしてくれ」

 

 捕囚の身となっていた部隊長が声を上げ、ドラゴンスレイヤーに協力を求める、だが

 

「ああ? なんでそんなことしなきゃならねぇんだよ

 俺ぁさっさとこの糞うるさい声をぶち殺して寝てぇんだ、邪魔するならてめぇも殺すぞ」

 

 通常、この緊急事態であるならば、冒険者は都市を守るために協力する義務がある、だがドラゴンスレイヤーはそこら辺の講習を全く受けておらず、というよりもそもそも冒険者ですらなかった。

 

 その為、高級な宿を取り、最上級のベッドで睡眠をしていた途中で起こされた苛立ちによって、今にも暴れ出しそうなドラゴンスレイヤーに、部隊長は気圧されてしまう。

 

 しかしここで、副部隊長が言い放った言葉により、苛立ちの矛先を逸らすことに成功する。

 

「そ、その大音量で声を出してるやつらが南の大門に居るって話なんです! 

 きっとそこの亜人を殺せば静かになりますよ!」

 

 何の根拠もない暴論、しかしドラゴンスレイヤーはその言葉を信じたのか、

 

「南の大門ってどこだ」

 

 と尋ねた、副部隊長が大まかな方向と分かりやすい目印を教えると、ドラゴンスレイヤーは走り出していく。

 

 その背を見送った部隊長は

 

「…副部隊長、生き残ったら俺の奢りで好きなだけ飲ませてやる」

 

「ハハッ! そいつはうれしいですね、生き残れたらですけど、より一層生き残りたくなりましたよ」

 

 と軽口をたたきながら、捕囚とされた民間人たちを避難施設へと送り届けるため、歩みを進めていた。

 

 

 

 中央部第一避難施設

 

 そこは死の森前要塞において特に大きな避難所であり、多くの非戦闘員である人間が潜んでいるという情報は、亜人にとって仲間を増やす家畜の、つかみ取り会場のようなものという認識だった。

 

 奴が出てくるまでは

 

 パァンッ! 

 

 第一避難施設に攻め入っていたアラクネたちの頭部に、一斉に放たれた青い軌跡は、正確に頭部を貫くと同時、ガラスが砕けるような音と共に破裂し、アラクネたちの頭部を破壊する。

 

 キィ…ンッザンッ! 

 

 かと思えば前線を貼っていた重武装のオークたちの体に巨大な青白い剣が通り抜け、数瞬遅れたのちにオークたちの防具すらまとめて分割される、その下手人は…

 

『百態発見!! 

 百態発見!! 

 攻撃手段から恐らくオーク帝国を滅ぼした百態であると予想される! 

 援護を頼む!』

 

 派手な意匠の全身鎧をまとった、騎士であった。

 

 生き残りのゴブリンたちが大声で叫び、伝言ゲームのようにその情報は侵入していた亜人たちに伝わっていく。

 

 しかし、全身鎧の騎士は一人で避難施設から離れると、距離を開けて佇む。

 

 何をやっているのかわからないが、あの距離まで離れているのならば避難施設に攻め入れるのでは、守っているのは数人の兵士だけなのだから。

 

 そう考えたゴブリン戦士衆、数十人が一斉に飛び出す、後ろの避難施設側以外、すべての方向から突撃された全身鎧の騎士は、為す術がないかと思われた。

 

「魔法使いさん! 頑張ってぇ!」

 

 子供の声が響くも、無情な現実は変わらない、あのまま埋もれて死んでしまうと誰もが予測した時、

 

 全身鎧はまるで誰かに抱かれるように浮かび上がり、そしてその身に二つの青白い月が重なった。

 

 自らの目の不調を疑い、目をこする間もなく、双月が落ちる。

 

ドォン! ドォンッ! 

 

 その衝撃は避難所にいた人々すべてを揺らし、より近くに居たゴブリンたちは吹き飛ばされ、体をぐちゃぐちゃにされていた。

 

 目を輝かせ、声援を送った少女以外はその惨状に絶句した。

 

 

 

 中央指令室

 

 現れたドラゴンスレイヤー殿と真偽不明の魔術を使う騎士により戦場は膠着状態とのこと、しかし衛兵が亜人側に呪いの褪せ人と暗殺者、黒衣の褪せ人、クロを見たという報告もあります! 

 

 全体から寄せられた報告に首脳陣は頭を悩ませる。

 

「何とか膠着状態には持ち込めた、だが二つ名が暗殺者である黒衣の騎士、クロ、彼女の能力は危険だ、一刻も早く救援を呼ばなければならない」

 

 首脳陣は一つの決定を下す。

 

「馬に乗れ! 嘆きの街に救援を要請するんだ! 

 乗り潰して構わん! 急げ!」

 

 それは、殆ど確実に死ぬ可能性の方が高いが、何とかして情報を外部に届け、援軍を呼んでもらう死兵としての扱いだった。

 

 少しでも情報伝達の可能性を上げるために5人の伝令兵が選ばれる。

 

 中央指令室の言葉に頷き、全力で走り出した特に馬を乗るのが上手い兵士たちが町を駆けていく。

 

 道中で運悪くアラクネと鉢会ったりオークと鉢会った仲間が死んでゆく。

 

 最後の一人となった兵士は目立つおかげで幾度も矢に射られるが、何とか致命傷まではならない、背に幾本の矢がつき刺さった兵士は、血を流しながらもやっと壁門を抜ける。

 

「ここまで大規模な襲撃、殆どが内側に集中して追える戦力は残っていないはず!」

 

 そう自分に言い聞かせるが。

 

 ヒュッ! 

 

 風切り音に思わず頭を下げる、頭を下げた空間を弓矢が通り過ぎた、血の気が引く。

 

 そこに居たのは幻として語り継がれていた、ケンタウロスだった。

 

 まるで走馬灯のように今までの人生が流れる、だが

 

ゴォッ! 

 

 亜人たちが攻めてきていた方角の森に、黄色い太陽のようなものが浮かび上がる。

 

 それを見たケンタウロスは、すぐに反転し、兵士は見逃された。

 

 射られた場所からの出血がひどいが、何とか情報を届けなければならない。

 

 何故見逃されたのか訳も分からず、ただ兵士は馬を走らせた。

 




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