褪せ人が行く!ふかふかダンジョン!【完結】   作:No_46

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やつらが来た

 死の森前要塞、中央広場

 

 白面金毛は違和感を覚える、それは中央に集められた、投降した人間を見てのことだった。

 

(投降した人間の人数が少ない? 

 もっと人間は居たはずだが、ここまで減るのは考えづらい

 オーク達我慢できずに殺してしまったのであろうか?)

 

 そう考えている白面金毛の耳に、声が入る。

 

『中心部! 避難所と思わしき場所からオーク帝国を壊滅させたと思わしき百態が発見されました!』

 

 その言葉に白面金毛は走り出した、見ることすらかなわなかった怨敵を、この手に掛けるべく。

 

 

 

 南の大門

 

 兵士たちは苦戦していた。

 

 天井壁面を縦横無尽に動き回るアラクネ、恵まれた体躯で兵士たちを吹き飛ばしていくオーク

 

 二種の亜人に挟まれて身動きが取れない兵士たち

 

 とどめとばかりにオークの集団が向かってくる。

 

 既に負傷者や民間人の保護でこれ以上は耐えられないであろう所にこの突撃

 

(ここまでか…ッ!)

 

 そう部隊長があきらめかけたその時

 

グァアアアア!!!!! 

 

 どこからともなく表れた黄金の鎧が浮かび上がると同時、頭部を竜へと転じさせ、そこから放たれた炎のブレスでオークたちを丸焼きにする。

 

「フゥ! すっきりするなぁ…! 

 だが建物が邪魔すぎるぞ…」

 

 そんな言葉を放ちつつ、降り立った黄金の騎士、いやドラゴンスレイヤーに歓声が上がる。

 

 もうだめかと思ったところに、頼もしい応援が来たのだ、喜びもひとしおだろう。

 

「あん? なんだお前ら、死にかけばっかじゃねぇか」

 

 歓声によって兵士と避難民に気付いたドラゴンスレイヤーは、オークとアラクネとの戦いで負傷した兵士たちの中心部で祈るように腕を掲げ

 

 祈祷:黄金樹の回復

 

 を発動させる。

 

 褪せ人の周囲に黄金のオーラが集まり一気に解放されると同時、足元に木を模したような文様が現れる。

 

 通常の回復よりも広範囲な回復により、一斉に傷が塞がり、しかしまだ咳や発熱によって動き出せない兵士たちを見て

 

「ハァ…めんどくせぇ」

 

 そう独り言ちるも今度は

 

 祈祷:回帰性原理

 

 を発動させる。

 

 再度、褪せ人の周囲に黄金のオーラが集まり、腕を時計のように動かして一気に足元から紋様が現れ広がる。

 

 一瞬で体調が戻り、咳も発熱も収まった兵士たちを見て、部隊長が感謝を告げるが

 

「いやいい、邪魔だからどっか行っててくれ、俺の攻撃で建物崩れるだろうし、隠れてるやつはもう見捨てるけど、お前らみたいに集団で固まってるなら助けるから呼び掛けて逃げるように言ってくれ」

 

 そう一息で言い切ったドラゴンスレイヤーに、都市の破壊を公言した事実に驚く部隊長は引き留めることが出来なかった。

 

 

 

 貴方が南の門に近づくにつれて、人間は減っていき、ついに開けた大門前に出た、そこにはすでに多くの亜人がテントを設営し、人間の処刑と選別を行っていた。

 

 敵と味方が同時に存在しているため、広範囲を焼き払うブレス系の竜餐祈祷が使えないことに貴方は気を落とすが、仕方ないと切り替えて

 

 多数のまとまっている標的にはこの祈祷が一番楽だろうと

 

 祈祷:重なり合う光輪を連続して放つ。

 

「救援だ! ドラゴンスレイヤーが来たぞ!」

 

 その言葉に亜人たちが気付き、貴方へ殺到するが、幾度も放つ光輪に体を切断され続ける。

 

「貴様ァ! 仲間の人間を殺されたくなければ武装を捨て”ザンッ! ”…ろ…」

 

 人質を取ろうとした亜人に集中的に重なり合う光輪を投げる、囚われていた人々は近くにいた亜人が全滅したことで次々と逃げ出した。

 

「おい! あんたも早く撤退しろ! 

 ここは既に亜人共の巣みたいになってやがる! 

 逃げないと囲まれて押しつぶされるぞ!」

 

 最後に逃げだした鎧の男の言葉に、貴方はめんどくさそうに大丈夫だと手を振り、人間がいなくなったことを確認する。

 

 既に殺されるか捕らえられ、盾のように扱われていた人間以外がいなくなったことを確認し、貴方は囚われている人間を見捨ててまとめてブレスで焼き尽くそうと祈祷を発動させようとしたその時

 

『おうおう! こいつが例の百態かぁ!?』

 

 意味が理解できない言語を話しながら、足が増えた蜘蛛人間のような存在が襲い掛かってくる。

 

 複碗の連続攻撃をローリングでかわし、素早く祈祷:竜爪を発動させる。

 

ズバンッ! 

 

『グウッ! マジかよ!』

 

 発動した竜爪を見て武装した腕を3本ほど盾にしたようだが、腕につけられた手甲ごと切り飛ばされた事実に、アラクネは驚愕し、ジャンプして距離を開けた。

 

 ならば好都合と次は祈祷:雷の槍を発動し、手に現れた雷を握りしめ、蜘蛛人間にぶん投げる。

 

『なっ! グアッ!』

 

 悲鳴を上げ、体を焼かれたアラクネの死体は、そのまま動き出すこともせず死亡した。

 

 

 

 アラクネside

 

『な、我々アラクネ種の最後のあがきが発生しない!?』

 

 それを遠目で確認していたアラクネたちは驚愕した。

 

 なぜならばアラクネは殺されたとき、まだ生きている腰部分の二つの脳みそが、その場で最後にどうするのが敵を倒すのに重要なのかを瞬時に導き出し、死んだ体を囮に一矢報いるのだ。

 

 その最後のあがきが発動しなかったのは貴方の放ったとどめの攻撃、雷の槍によって脳みそごとや焼き焦がし、生命活動を停止させたからであるがそんなことを知る由もないアラクネに、動揺と逡巡が走る。

 

 それが飛び出して集団で一気に押しつぶそうと隠れていたアラクネたちの命を救った。

 

 仲間がやられたというゴブリンの報告でも聞いたのか、オークやゴブリンが一斉になだれ込んでくる。

 

 あの百態の正体不明の攻撃は、攻撃力が高くても動きが遅かったり、素早い攻撃も範囲が狭かったりとメリット・デメリットが明確に分かれている。

 

 ゴブリンとオークは自らの強みである数で押せば勝てると判断したのだろう。

 

『あのへんな攻撃手段は、遅かったり対象が少なかったりでしたし、結構死ぬでしょうがオークゴブリンたちの勝ちでしょうね』

 

 仲間のアラクネがそう言うが、隊長であるアラクネは嫌な予感が拭えない。

 

 そして

 

グォオオオオオ!! 

 

 頭部を竜に転じた百態の姿にアラクネ部隊は驚愕が走る。

 

 しかし衝撃はそれだけで終わらない。

 

『予測してたとはいえ、マジかよ…!』

 

 そう言った隊長の視線の先には、とらえられていた人間どもごと、まとめて青白いブレスで薙ぎ払った百態の姿があった。

 

『寒っ! なんですかあれ!?』

 

『とんでもなく低温のブレス、大方ファイアードラゴンブレスの反対、フロストドラゴンブレスとでも名付けるか?』

 

『ふざけないでくださいよ隊長!』

 

 しかし周りのアラクネも、隊長が冗談を言いたくなる気持ちがわかる、なぜなら百態がブレスで薙ぎ払った地点には、数多くの凍らされ、動きの止まったオークゴブリン共の氷像があったのだから。

 

『嘘だろ…人間もいたのに、まとめてやっちまいやがった』

 

『おいどうすんだよ! このままじゃあんな奴と敵対したままだぞ! 

 これ死の森に百態のやつが差し向けられたら私たちは終わりだ!』

 

 遠出目見ていたため気付かれていないのか、こちらに来る様子がない百態を前に、アラクネたちはどうすれば生き残れるのかと話が紛糾する。

 

 彼女たちは幸い、アラクネ族に百態の脅威が迫っておらず、仲間がそこまで殺されたというわけでもない。

 

 ゴブリンオーク、ハーピーは仲間が殺されすぎて、もうあいつを殺すまで止まることはできないと考えているが、まだアラクネたちは停戦という選択肢を取れる。

 

 しかし

 

『だからってどうしろっていうんだよ! 

 人間の言葉しゃべれるやつは森の方に待機してるだろ! 

 私たちは抵抗を止めるための投降勧告の言葉しか知らないぞ!』

 

 そう、アラクネたちは人間の言葉を理解しているアラクネの仲間を連れてきていなかった、ゴブリンオークには理解できる存在も多いが、ここでアラクネという戦力を失えば不利となるのはゴブリンオークたちである、停戦の交渉をしてくれるわけがなかった。

 

『…私が行こう、誰か棒と白い旗を』

 

『隊長!? 本気ですか!?』

 

『ああ、もとはと言えば人間だからと油断した結果が、これだ、ゴブリンオークならまだしも、我々アラクネ種は引き返せるかもしれん』

 

『もうこの基地を攻めちゃったんですよ!? 

 人間が納得すると思いますか!?』

 

『それでもだ』

 

『~ッ! わかりました、死なないでくださいよ!?』

 

『ハハッ、確約はできねぇが、努力はするさ』

 

 そうして、隊長は一人、白い布を棒の先に括り付け、百態へと向かっていった。

 

 

 

 第一避難施設、その周辺には夥しい数の亜人たちの死体が積み上げられている。

 

 それを盾に、ゴブリンが仲間に助けを呼ぶが誰も答えない、声を上げたゴブリンは体を青い礫に貫かれ、絶命した。

 

「これぐらいでいいですかね?」

 

 そう聞いたのは杖から青い礫を放った、豪華な装飾の施された鎧を着た騎士だった。

 

「え!? あ、はい! 多分もう大丈夫かと! 

 ここまで殺したのならそうそう亜人共も攻めてこないでしょうし! 

 別の場所の手助けにぜひ行ってください!」

 

 そういった、新人と思われる衛兵がゴンッ! とベテランのような風体の衛兵に殴られた。

 

「すいませんこいつまだ日が浅くて、こんなに殺されたなら亜人共はもっと脅威に感じて、いつでも隙を狙えるように隠れるでしょう

 貴方にはまだここを守っていただきたいのですが」

 

 その言葉に騎士は悩みながらも特に目的があったわけでもなく、降りかかる火の粉を払っていただけだった騎士が、頷きを返した時。

 

『見つけました』

 

 空から降ってきた白面金毛に騎士と話していた兵士二人の首を落とされる。

 

 対する騎士はすぐに剣を抜き、杖を振って魔法陣を展開すると同時に斬りかかる。

 

 槍を振り抜いた姿勢のレッドキャップはそこから後転し貴方の剣を避けると同時に

 

『矢を放て!』

 

 と指示を出す。

 

 隠れていたゴブリン達の一斉に放たれた弓矢はその全てが正確に騎士を狙っていた。

 

 それが仇となる

 

『なッ!』

 

 騎士が杖を一振すると姿が消え、少し離れた場所に現れたことで弓矢は外れる。

 

 現れた騎士は再度杖を構えようとした時

 

「ふむ、貴方の力はおおよそ分かりました。

 先ほどの弓矢で理解したでしょうがこの周辺には多くのゴブリン弓兵が潜んでいます。

 私の指示一つで彼らは背後の避難施設に攻撃しますが。

 貴方はどうしますか?」

 

 その問いに騎士は答えようともせず剣を振り下ろす。

 

 白面金毛は攻める気がなく、下がりながら避けていくその姿に騎士はただ愚直に攻め続ける。

 

「…そういえば貴方は話していた兵士を殺されても全く動揺しませんでしたね…

 普通ならば、同族だからと少しは気持ちが揺れると思いますが」

 

 その言葉に騎士はただ答える。

 

「彼らとはただ避難施設を守ってくれって頼まれただけだからね」

 

「頼まれた…? ただそれだけでここに命を晒しているというのですか?」

 

「うん、まぁそうだよ、観光みたいなものだったし、色々良くしてもらったからね」

 

「…観光…?」

 

「うん、新婚旅行みたいなものだよ」

 

 動きが止まった白面金毛は怒りを滲ませて尋ねてきた。

 

 騎士はその動きに疑問を持ったのか振り回していた剣が止まる。

 

「そんな理由で…オーク帝国に侵攻したのか…!」

 

 怒りに染まった声色で言葉を絞り出す白面金毛に

 

「まぁ、最初に弓矢を向けてきたのはそっちだから、守りきれなかったのはそのオーク帝国? の自業自得でしょ」

 

 と騎士が言い放つ。

 

「…もういい、何もしゃべるな…!」

 

 そうして向かってきた白面金毛の連撃を騎士はいなし、避ける。

 

「う~ん、あとさ」

 

 そして

 

 片手の杖を振っていた剣と瓜二つのものの切り替え、

 

「動揺させようとして自分が動揺しちゃうのはどうなの?」

 

 剣から炎が燃え上がり、至近距離で連撃を繰り出していた白面金毛を包み込む。

 

 その豪火は悲鳴すら上げることもできず、白面金毛の命を奪った。

 

「やっぱりそこまで強くなかったなぁ」

 

 白面金毛が殺られたのを見て焦ったのか避難施設に弓矢が放たれる、対して騎士は何も行動を起こさない。

 

 何故ならば

 

「私の王よ、早く終わらせてくれよ?」

 

 避難民から現れた、青肌の女が杖を振り、凍えるような寒さの吹雪が生まれ矢を全て逸らし落としたからだ。

 

「わかってるって!」

 

 そうして避難所周辺の亜人、ネームドである白面金毛も死亡した。

 

 

 

 死の森、中心部

 

 そこでは今回の襲撃に参加していない亜人、アラクネのオスやゴブリンのメス、ケンタウロスのメスなどが送り出した戦士たちの帰りを待っていた。

 

「おい、なんだあれ」

 

 そんな中、死の森から未だに燃え続けている絶望の草原を監視していたアラクネが気づく。

 

 炎の中、何かが炎を放ちながら向かってきていることに。

 

「おい! 報告!」

 

 アラクネはすぐに伝令を走らせ、その情報はすぐに死の森全体に広がった。

 

 死の森にいる亜人達の首脳陣は話し合う。

 

 どうするべきかと

 

「ケンタウロスからの報告と照らし合わせて、絶望の草原を焼いた人間、おそらく百態達の一人であると目されている」

 

「どうする? 使者でも送って今のところは攻めてこないようになんとかなだめるか?」

 

「さすがに無理じゃないか?」

 

 ケンタウロス、ゴブリン、アラクネの族長たちは頭を悩ませる。

 

 そこに、

 

「ケンタウロス族は先に攻撃したから殺られたのでは? 

 ケンタウロス族以外のオーク、ゴブリン、アラクネで交渉に行けば話を聞いてくれる可能性もあるんじゃないか?」

 

 そのゴブリン族長の言葉に、ケンタウロス以外の亜人達は同意し、使者が送られることになった。

 

 選ばれた使者は人間の言葉が分かり、話せるゴブリンのホヤク、オークのトリミ、アラクネのネイが向かう。

 

 すぐ近くまで近づいていた百態と目される存在にゴブリンのホヤクが慎重に声をかけた。

 

「攻撃はしないでくれ、こちらにも攻撃の意思はない、ただ今は取り込み中でな、話し合いが難しい、一段落したらこちらから接触を取る、だからこっちに炎をばら撒かないでくれないか?」

 

 ホヤクの言葉に、炎の放出をやめたその人間は、燃え盛る草原にから足を踏み出し、ホヤクたちへ近づいてきた。

 

 この使者達は運がなかった。

 他の褪せ人ならばまだ交渉の余地はあっただろう。

 

 だがこの褪せ人は

 

狂い火の褪せ人だった

 

 おもむろにホヤクの頭を掴み、瞳を無理やり合わせる。

 

 その瞳は、黄色く濁り、焼け爛れていた。

 

 ホヤクが認識した瞬間、頭と瞳に激痛が走る。

 

「ガ、ァアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!!」

 

 激痛でのたうち回るホヤクを見て、アラクネとオークが狂い火の褪せ人を殺そうと攻撃を仕掛ける。

 

 そこでアラクネのネイはあることに気付いた。

 

(あいつ、手袋に瞳がへばりついてやがる…!? 

 なんかやばい!)

 

 言い表せぬ悪寒に思わず攻撃の手が止まる。

 

 だがオークのトリミは止まらず、振り抜いた腕の下を狂い火の褪せ人がすり抜け、拳を振り抜いたオークの背に、抜き手を差し込んだ。

 

「このッ! 、なっアアアアアッ!」

 

 次の瞬間にはホヤクと同じように頭部が火に包まれる。

 

「クソッ! やってやるよぉ!」

 

 ヤケクソの様に放たれた一人九頭龍閃のような攻撃は、狂い火の褪せ人がバックで下がられることで対処される。

 

 その手には何時の間に持ち替えたのか、赤黄色の瓶を持っている。

 

 その瓶から放たれた粒子に当たり、ネイはすぐ退避しようとするがその前に

 

ボォンッ! 

 

 燃え上がった狂い火に包まれ、死亡する。

 

 狂い火の褪せ人は、自分がいることを知らしめるかのように上空に巨大な火の玉をを出現させ、森を燃やし始めた。

 

 悲鳴が広がり、世界は混沌と化していく。




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