真昼のように明るい森、揺らめく炎が木々を飲み込んでゆく。
燃やされていく、アラクネ種の命を、繋がりをずっと見守り続けていた死の森が
言葉にならない叫び声と、危険を知らせ仲間を逃がすための怒声が響き渡る。
『もう森はダメだ!
人間どもの要塞側に逃げろ! あっちには白面金毛もいる!
早くしろ!』
『ダメ! 行っちゃだめだよ!』
『悪い…お前ら! 命を懸けるぞおお!』
『あ、火がついちゃった…あは、あははははああ!』
『アイツはもう駄目だ早く離れろ!』
カタナは森に待機していた最大戦力として、下手人の元に向かう。
こっちに到着してまだ数日なのにめんどくさいことになった、と思いながらも仕事はこなす、カタナは見つけた下手人の前に降り立った。
下手人、黄炎の百態と名付けられた存在は、カタナの腰の剣を見て腰に下げていた素出しの長い刀を手に持った。
「…私の父親と兄貴たちの仇、絶対取るから」
最初に仕掛けたのは黄炎の百態、走り出し、鳥居構えに似た構えでふわりと浮き上がり、開店するかのように飛びながら無数の連撃を発する。
対してカタナは
(大丈夫…まだ見える!)
刃の通らない場所をすり抜けようと足元を通り過ぎ、その瞬間に足を切りつけようとした、だが
「グッ! な、なんで?」
確実に、そこに剣は通っていなかった、なのにカタナの体にはいくつもの刃が通ったような傷跡が刻まれている。
それを見た黄炎の百態は
「ウガァアアッ!!!」
と頭を抱えうなったかと思えば、瞳から大量の炎を打ち出す。
それを後ろに下がりながら全力で回避し続ける。
(大丈夫! こっちは当たらない!)
そう考えたカタナの瞳に、うっすらと火種が見えた。
カタナが足止めとして時間を稼いでる間、森から亜人たちが大量に姿を見せ、死の森前要塞へと向かっていく。
要塞の防衛設備はすべて、白面金毛が破壊していた。
弓矢やバリスタの来ないことでより勢いよく要塞へと向かってゆく亜人たちの前に、豪華絢爛な装飾を施した鎧の騎士が現れる。
『邪魔だあああああ!』
そう言って足の速いレッドキャップが突撃していくが、
ドゥン!
杖を回し、放たれた紫電を放っている物体がレッドキャップの近くに落下すると同時に広がり、レッドキャップが引きずり倒され、引き寄せられる。
無理やり引き寄せられたことで足を折ったり、衝撃で立ち上がれないレッドキャップたちを前に足が止まったオークゴブリンを見た騎士は
次は地面に杖を突き立てた。
『あれは…!?
総員退避いいいい!
隕石を降らせて来るぞおお!!!!』
一人のゴブリンの言葉に、疑問を持った亜人たちはすぐ、その言葉が真実であったことを知る。
ゴオオオオッ!
森の火災によって赤く照らされた空に紫電を発しながら先も見えない暗闇が発生すると同時、大量の巨大な岩石が、亜人たちに向けて降り注ぐ。
『正面はダメだ! 、左右に展開しろ!!』
リーダーと思しき声を上げた亜人は対して杖を振るった騎士によって魔法陣から召還された大量の青白く輝きながら飛ぶ剣に貫かれる。
それでも最後のリーターの言葉通りに、展開し、向かっていく。
リーダーが予測していたのかはわからないが、先ほど正面に向かっていた時点よりも、まとめて多くの亜人たちが死ぬことは減っているように感じられた。
しかし、ここで亜人たちにとっての最悪が現れた。
城壁のてっぺんに現れた黄金の鎧に黒い布を纏ったような騎士が現れるのを、目が良いケンタウロス族が発見したと同時
ズッシャアアアアン!
頭部を竜へと変化させたその騎士が、竜の口から極太のビームを打ち出し横に展開した亜人を一掃していく。
それを、エンシェントエルフのルイルは見ていた。
「なんかすごいことになっとるんじゃが」
困惑と共に
「というかノロ、おぬしなんかやったかの?
遠目で見てた兵士が主の姿を見てすんごい顔をして走り出したんじゃが」
その言葉を聞いたノロは
そういえば砦とかよく襲撃してたから人相が割れてるのかも
とルイルに告げる。
「ええ…ま、まぁ人間どもに敵だと思われるのはめんどくさい、着替えてくれんか?」
ルイルの言葉にノロは鎧を解き、ぼろぼろの毛皮、忌み鬼のマントを纏った。
「なんでその服にしたかは分からんが、というより顔を出すのは大丈夫なのかの…
いや、もう服のことは良い、今はこの戦場じゃ」
貴方、黒衣の褪せ人は既に死の森前要塞が観察できる場所でルイルの指示を待っていた。
最初に死の森前要塞に着いた時には襲撃が始まっていたようで、どうやらルイルも今のところは死の森前要塞ではなく、死の森の方に何か、世界を滅ぼしえる存在がいると話していた。
だからこそ、死の森で一見普通に生活していた亜人に疑問を持ちながらも観察を続けたのだ。
貴方は死の森で浮き上がった日の玉に見覚えがあり世界を滅ぼし得る存在だと確信したルイルに声をかける。
やっぱり狂い火も来ているようだと
「なんじゃ? そいつは」
ルイルの問いに、貴方は大まかに狂い火について教える。
狂い火とは貴方たちがいた狭間の地にて蔓延していた病であると
黄色の炎によって蔓延するもので、感染すれば治ることは無く、ただ瞳が発火し、自殺したくなるような激痛と共に発狂して死んでいくのだと
更に言うと狂い日の王となれば、人の存在や魂までも一つに溶かし混ぜ合わせるまでになるのだと
そして狂い日の王はすべてを溶かして一つに戻すことが目的であるということを
「そいつじゃろ! 絶対そいつじゃ!
っていうか後ろの草原真っ黄色に燃えてるじゃろ!
なんで今になって言ったんじゃ!
もう亜人共が森から逃げたり森も延焼して火災旋風が巻き起こってたりで滅茶苦茶じゃあ!
そのようなことは早く言わんかぁ!」
キレたルイルは発狂するように頭を振り回すもスンッといきなり落ち着いた。
「いや、早めに見つけられたのは好都合、さっさとその狂い火とやらを打ち倒し、この城塞との戦いも早く止めないと亜人殺されつくしそうじゃなからな、生き残りの亜人と人間どもを集めてバランスを取れるように言い含めることもせんといかんしの!」
そうして、呪いの褪せ人、ノロの背に乗り、
「さぁ、我が仲間よ!
世界の終わりを取り除きに行くぞ!」
その言葉と共に、貴方とノロは狂い火に向けて走り出した。
死の森前城塞、南の大門内側
貴方は姿を現した、先ほど殺した蜘蛛人間(アラクネと言うらしい)に、遠距離攻撃祈祷を投げようとして、寸前で動きを止める。
そのアラクネは見るからに武装を解除していて、腕に持っている棒へ括り付けた白旗を大きく振りながら近づいてきていたからだ。
とりあえず敵ではない可能性に、貴方は呼び声頭「こんにちは」を放り投げる。
呼び声頭「こんにちは」から発された言葉に困惑したのか、アラクネは歩みを止め頭を下げてきた。
戦いの前によく行う礼だろうか、そう考えた貴方はとりあえずジャスチャー:恭しい一礼を行った。
貴方のその恭しい一礼を見て、アラクネは戦い始めるわけでもなく、何かを言い始める。
『言葉はわかるか…?』
その言葉にも首をかしげていると今度は地面に何かを書き始めた。
8本足の雑な形のアラクネと棒で描かれた人間が、手と手を合わせているものだ。
手合わせしたいのか…?
そう思って刃を向けると
『ちがうちがう! 手! 繋ぐ!』
と首を横にぶんぶん振りながら否定するのでどうやら違うようだ。
とりあえず絵の通りに手を繋いでみるが特に何も変わらない。
何がしたいんだこいつは…? と思っているとまた絵を描き始める、そこには
ドラゴン!
思わず何度も指さして場所を聞くが言葉が通じない。
こんなことならばこいつらを殺す前に言葉を学んでおけばよかったと苦悩するが後の祭りだ。
とりあえず描き終わった絵はドラゴンを前にする頭を竜にした棒人間とその後ろの8本足の姿が描かれていた。
そんなに上げてない知力をうんうんと振り絞りどういう意味か考える。
もしかして、一緒にドラゴンと戦いたいのか…?
この世界のドラゴンは紛い物だが貴方の変身した竜を見てその竜の姿に惚れ、紛い物のドラゴンを殺す手伝いをしたい、もしくは竜餐をしたいということなのでは!?
いや、そうに違いない!
竜の魅力は溢れんばかりだ、竜餐と言えどその魅力にとらわれても仕方がないだろう!
狭間の地ではほとんどいなかった同好の士を見つけることが出来てとても上機嫌になった貴方は、呼び声頭「すばらしい!」を何度も放り投げた。
アラクネたちの待機していた壁上
隊長を鎧も外した無防備な姿で行かせることに、絶対交渉なんてできやしない、失敗したら助からない、と思いながらも、どうか、成功してくれと願いながら、隊長と百態と思わしき鎧姿の存在を確認する。
周囲に生き残りがいないか見て回ろうとした騎士は、隊長の存在に気付きすぐに手に雷を集め出した。
『ああ、やっぱりだめだ…』
その絶望の声とともに、隊長が死ぬ姿など見たくないと目を伏せるが、いつまでたってもあの雷で貫かれたバリバリッ! っという音が聞こえない。
恐る恐る目を開くとそこには、隊長が降る白旗を不思議そうな目で見ながら、騎士は何かを放り投げる。
火炎瓶か!? と一瞬身構えるも、隊長に向けて投げたわけでもなく、すぐ手前に落下し
『こんにちは』
という声が響いた。
あの騎士はこちらの言葉が理解できているのか!? という衝撃にざわつくが、隊長は頭を下げ、抵抗の意思を見せないことに注力している。
果たして騎士は、恭しく一礼を返した。
周りで安堵が広がる、ここで礼を返すということは話し合いに持ち込めはしたということだろう。
だが、会話はやはりできないようで、お互いが何か話すが全く通じ合っていない。
そんな時、隊長は地面に絵を描き始めた。
『確かに絵なら、言葉通じなくてもわかりますよ!』
そう言った副隊長の表情は、次の騎士の行動で凍りつく
隊長に剣を向けたのだ。
『~ッ!』
何か気に障ることでもしたのかと注視するが、隊長がぶんぶんと首を振ったことで違うと理解したのか剣を収めた。
『そういえば隊長、状況図とかも滅茶苦茶苦手って言ってましたね…』
そう零す副隊長に、まぁ死ななくてよかったよと励ましながらも、心臓に悪いと思いながら見続ける。
だが、意外なことに騎士は隊長が何か書いた直後、とてもテンションが上がったように見え、何度も頷き、絵を指さして最後には
『素晴らしい! 素晴らしい! 素晴らしい!』
と最初に放り投げたものと似たものを投げ称賛を送っていた。
隊長が私たちの元に戻った時、既にその場所は喜びにあふれていた、騎士は隊長に付いてくると決めたのか、後ろについてきている、
無理だと感じられた交渉に成功し、何なら特大の戦力を自陣に引き込むことが出来たかもしれない。
『ほんとすごいです隊長!』
『お、おう、まぁなんでこんなに上機嫌なのかは、ドラゴンスレイヤーって聞いてたからドラゴンと引き合わせるような絵を描いたからなんだが、詳しくは人の言葉を話せる奴に丸投げしよう…
今日はもう疲れた…』
皆が騎士の名前を知り、女だとかで驚いたりしながらも、何とか交渉は終わったと安堵の息を隊長が吐いたその時。
そんな時
ウオァアアアアア!!!!
地響きと共に声が聞こえた。
『!? まだ何かあるのか!? 報告!』
『は、はい! 死の森が炎上、そしてそこから大量にオーク、ゴブリン、アラクネ、ケンタウロスなどが逃げ出しています!』
『チッ! ドラゴンとでもかち合ったか? どれぐらいこっちに向かっている!?』
『そ、それが! ほとんぞ全員がこっちの砦に向かってます!』
『はぁ!? 通常は分散して逃げるだろ!
いや、火災で逃げ道が封じられたのか!?』
『恐らくそうだと思います! どうしますか!?』
『どうするって…まだこの砦落とせてもないんだぞ!?
囲まれたら終わりだ!』
『で、ですが既に…
あッ! ドラゴンスレイヤー! なにを!』
向かってきた亜人たちに目を取られ、後ろのドラゴンスレイヤーに目が回っていなかったことで、彼女が城壁で一番高い部分に立ち上がる。
『し、下の方でもオーク帝国を全滅させた話と同じ魔法みたいなのを使ってるやつが暴れてます!』
既に大分近づいた亜人たちに、豪華絢爛な装備の騎士が杖を振り回し、亜人をひき潰していく。
そこで横に広がった、亜人たちを見てドラゴンスレイヤーは、腕を胸に当て祈るような姿勢となる。
近くでよく見れば、腕には赤紫の紋章のような一片が見えた。
同時に、竜へと変化したブレスは今まで見た度のドラゴンのブレスよりも長く、細く、しかし破壊力を秘めていた。
そのブレスによって亜人たちは蒸発するかやけどを負う。
『なッ!』
『他の亜人は仲間だと教え切れてなかったからか…』
隊長は再度ジェスチャーで攻撃をやめるよう頼むが
「すぐ終わるから待ってろって!」
とお互い何かをすれ違っているように幾度もブレスが放たれる。
だがよく見ると
『隊長! アイツアラクネのところは避けてるっぽいですよ! 見た目土と毛で汚れてますが外傷っぽい外傷はほとんどありません!』
『何! 救護を始めろ!
…オークやゴブリンには悪いが、同じアラクネ族を最優先に、最悪下の魔法を使う騎士にはドラゴンスレイヤーをぶつける!』
その隊長の言葉で、アラクネ族は動きだした。
死の森近辺、黒衣と呪いの褪せ人
ある程度順調に貴方たちがルイルと共に死の森へ進みながらも、罠で妨害してきたゴブリンの雌を、ノロが殺そうとしたとき
トンッ!
という音と共に、ノロの振り下ろそうとした腕に弓矢が突き刺さる。
ノロは動揺せず弓が放たれた方向を見ると
「ふむ、動揺もしないか…」
ボーゲンが弓を打ち抜いた体制で隠れていた。
『ボーゲン!』
なぜかゴブリンの雌がボーゲンの名を呼ぶ、ノロは糞食いのように心は亜人なのかと考え、走り出す。
糞食いの死体に呪いは育った、つまりボーゲンも糞食いと同じ思考ならば呪いを育てられる可能性もある。
ボーゲンはノロに弓矢が効いていなとみるや否や、様々な手法で後ろに退避しながらも狙い打ってくる。
貴方はなぜゴブリンを殺そうとしたときにボーゲンが狙ってきたのかはわからなかったが、とりあえずクロは背負われているルイルをノロの代わりに背負う、ノロは礼を言うとボーゲンを追って走っていった。
「ちょ! なんで勝手に行動するんじゃ! 戻ってこんか!」
そんなルイルの言葉を無視し、ノロはボーゲンを追い、貴方は死の森へ侵入した。
そこで見たものは、
「うっ…ガアアア!」
瞳に火を宿した少女とそれに刃を突き立てようとする狂い火の褪せ人であった。
感想めちゃくちゃ待ってます!