好きなようにって声が多いのでこれからはたまに投降遅れたり隔日になったりするかもしれませんが、あと少しで完結させる予定なので見守っててください!
クロは薄々感付いていた。
鎧を脱いだノロの姿が自分と瓜二つで、尚且つ忌み鬼のマントに着替えたことでみることが出来たその体は、自分の肉月と全く同じだったのだから。
しかし
それがどうしたというのか、クロは尋ねる。
それぞれが同じ存在でありながら別々の道を選んだ王であろうと、クロが行うことは変わらない。
この未知の世界を探索しながら、頼まれたクエストはこなす、それだけだ。
だが魔女レナは
「私も、最初はそうするつもりだったさ、そもそもこっちに来たのは観光代わりでもある。
だが、狂い火の王、あれが来たことで状況は変わった」
と、眼を鋭く細め、門から覗く戦場、そこで狂い火をまき散らしている褪せ人を睨んだ。
「あれはこの世界を終わらせるものだ、だからこそお前が来たのだろう?
耳長よ」
その言葉にルイルが答える。
「…ふん、そうじゃよ。
あやつは世界を破壊できる、実際に見れば、壊すだけではない、すべてを溶かし一つにするのじゃ
だからこそ、壊されたら立て直せるが、溶かし一つにされたら、この世界のサイクルが破壊され、ただ狂い火が燃え盛るのみになるじゃろう
だからこそ、まだ被害が少ない今のうちに討伐しようとやってきたんじゃ」
「耳長の言う通り、あれが世界を一つにすればこの新しい世界は狭間の地以上にすたれ、崩壊し、何もない死の場所になるだろう。
だからお前たちを「ならなぜじゃ!」…なんだ耳長」
ルイルの答えの後、語り始めた魔女レナは話の途中で耳長に割り込まれたことで不快気に顔を顰め、耳長に目をやる。
だが耳長は、泣いていた。
「なぜノロを、あれを討伐するために、ここに集める前に殺したッ!」
耳長、ルイルにとって、出会ってまだ数日しかたっていない者たち、人の死など幾度も見てきたはずである。
ならばなぜここまで動揺し、星を存続させるための話に割り込んだのか。
それは、クロとノロに手助けを求め、力をなくしていくうちに気付いたこと。
こやつらは自分を見てくれているという事実があったからだ。
ルイルが生まれ、能力を発揮した時、エンシェントエルフと名付けられ、厚遇を受けたが、それはすべてルイルではなくその能力に対してのものだった。
能力で様々な恩恵を人類に与えて行ったが、それでも残るのは能力の事象とエンシェントエルフという名付けられた名前ばかり。
最終的にルイルは、世界の寿命を延ばすという名目で世界を崩壊させ、新世界を作り上げるという世界の保全機構として協力させられることとなった。
初めて世界を崩壊させ、寿命を延ばす神秘を発動させたとき、周りはただルイルのことを神秘の量が多く耐久年が無限の電池として扱った。
そして、最終的に己の力を活用された兵器で、地下施設に閉じ込められることとなったのだ。
ルイルは今でも、最後に掛けられた言葉を覚えている。
「力を持った存在として、その責務を果たせ」
上部のオブジェクトは施設に居るルイルから神秘を抜き出し、禁忌を発生させる拡散機だった。
それこそが首輪であり、施設から抜け出し、地上に出れば阻害されていた神秘の通りがよくなったことで急激に神秘がなくなり、強力な不快感、激痛と共に、じりじりとゆっくりと命まで吸われることになる処刑器具でもあった。
禁忌は最初、それぞれがお互いを傷つけないように危険な武器を開発できないようにする抑止力として生み出された。
事実、エルフの里における記録には、エンシェントエルフという種族名の存在が、いきなり何かをして禁忌が生まれたという話しか残っていない。
興味本位で見に行った存在が封印を解けば世界の抑止力が消えるからだろう。
それでもルイルは恨んでいなかった。
最初にその研究と世界の崩壊と再生のプランに協力することも力をくみ上げるオブジェの原案を決めたのも自分である。
世界を長続きさせるのは寿命が永遠にある自分にとっては大切なことだと理解していたし、少し残る神秘で世界のことをのぞき見することもできた。
だが、寂しさを紛らわすことはできなかった。
そんな中で出会った褪せ人達は、力が弱まった己を、最初の出会いこそ悪かったが文句を言わずに手助けをしてくれ、たまに変な行動をするが、見捨てなかった。
この世界の人間ならば、絶対に発展させたいはずの技術の進歩に関しても、聞き出すことは無く、ただ一緒に過ごしているだけで楽しかった。
己の神秘の力を弱まっているとはいえ全く求めなかった存在は、ルイルの中で日に日に大切なものへと変わっていった。
だからこそ
だからこそだ。
「何故ノロを殺したッ答えろ!」
ルイルは仲間を殺された激情を抑えることが出来なかった。
ルイルの叫びに似た訴えを聞いた魔女レナは、不可解な顔をして口を開いた。
「盛り上がっていたところに水を差すのも悪かろう、何よりその、ノロだったか? が死んだときにはまだお前たちに会ってすらいなかったのだ。
もっと話を早く進めることが出来たという部分は理解できるが…そこまで怒ることか…?」
魔女レナの悪びれない答えに、怒りによって視界が赤く染まるが、ルイルは現在非力な幼女でしかない。
「~ッ! クロ! お主はなんとも思わんのか!? 仲間が殺されたんじゃぞ!」
ルイルの問いかけにもクロは
「いや…とくには…というよりなんでそんな怒ってるの…?」
と同じように不思議そうな顔を向けてくる、まるで自分だけがおかしいのかと、ルイルは絶望しかけた時
「あの、もしかして知らないんですか…?」
声が上がったのは騎士の褪せ人と一緒についてきていた、不思議な円状の武器を持った少女
「知らないって…なにがじゃ」
ルイルの問いに、一人納得したのか軽く微笑み、
「褪せ人様方は死にません、死んでも特定の場所で蘇ってくるんですよ。
だから心配しなくても…あッ! 丁度来たみたいですね!」
その少女の言葉にルイルが振り向けば
「何があったの?」
テントの入り口には死んでしまったはずの、呪いの褪せ人が立っていた。
「ノロッ!」
思わずルイルが抱き着くようにノロへ飛び込み、キャッチさせる。
「めっちゃ泣いてるじゃん…こんなに泣いてるのは最初の時以来かな」
「そんなことよりもじゃ! なんで生き返るなんて重要な話をしなかったんじゃ! クロも!」
ノロの腕の中で泣きながら喚くルイルにノロとクロは困惑しながらも声を揃えた。
「「いや、知ってるかと…」」
ルイルは一人だけ怒っていた恥ずかしさに憤死しかけた。
数分後
「まぁ、とりあえずみんな無事ならばよいのじゃ、だが、死なないというならば、あやつはどうするんじゃ?」
ノロから離れ、少し顔を赤く染めたルイルが話を戻すかのように口を開く。
「儂としては、生き埋めにして生かしたまま動けなくするか、海の底にでも沈めるかぐらいしか思い浮かばないんじゃが」
だがその問いに魔女レナは首を振って否定する。
「褪せ人は祝福と呼ばれる、復活する場所を移動できる、生き埋めや身動き取れない状態でもだ」
その答えを聞いて、狭間の地出身者以外は全員の顔が青褪める。
「え、じゃあどうしようもなくないですか…?」
思わずといった形で少女の口からこぼれたその言葉は、まさに現地人の総意だった。
「まぁ、何とかなるだろう。
この場にいる褪せ人全員で袋叩きにして、勝てないって思い知らせたところで交渉をすれば、大体の褪せ人は乗ってくるだろうし…
だが、狂い火というのがな…」
とりあえず囲んで殴って抵抗できないようにして、有利な状況での交渉は確かに、有用なように思えるが。
「そもそもアレが放っている炎は、感染する重篤な病なのじゃろう? 回復手段があるとしても平気なのかの…?」
ルイルの言葉に、確かに感染するしまぁまぁ痛いけど、結局は当たらなければいいしこっちは5人だ、そうそうやられるなんてことは無いと告げる。
「そもそもすべてを燃やす炎と言っても、王となってから、なぜかアレはまだ王ではなくその一歩手前だ、それに褪せ人は別々の世界の律を基にしているのだから、殺されても復活できないということは無い」
安心させるように魔女レナが答えるがそれでも心配そうなルイルに、クロがあるものを手渡した。
王のルーン
狭間の地の人々に宿った祝福
その黄金の遺物
使用により絶大なルーンを得る
かつて、王となるべき運命があった
エルデンリングが砕けたとき
それは遥かな使命となった。
「なッ! こんな膨大な神秘、儂に与えていいのか?」
クロは少し笑って、仲間のために怒り、泣ける人間性が残ってるなら、大丈夫だろうと答えた。
ついでとばかりに、ノロがこっそり白く薄い文字で作られた指輪をルイルのポケットに入れた。
神秘を纏った白い秘文字の指環
侵入者に侵入された時、自動的に
他世界に「狩人」の召喚を要請する状態になる。
かつて二本指がもたらしたという
失われた秘文字の呪物のひとつ
エンシェントエルフ、ルイルの剝がされた神秘が纏われている
別世界の神秘同士が混ざり合い、ある種の楔として機能するようになった
その楔が、きっとルイルの力となることを願われて。
「ああ、そうだ、一応言っておくが、最悪交渉が纏まらなかったら、私たちは元の世界へと帰還する。
結局、破壊を尽くすのみの攻め手による無限の戦いは、守る方が不利になると往々にして決まっているからな」
魔女レナがそう言い放ち、空気が張り詰めるが、
「まぁ、大丈夫だよ、最悪この子たちは連れて帰れると思うし」
そう答えた騎士の褪せ人、よく見れば少女たちの体にも神秘が生まれている。
「いったい何をやったんじゃ?」
と聞けば、帰ってきた答えは
「さっき君に渡されてた王のルーンよりも下の英雄のルーンを使わせたら、それぞれの体にルーンが吸収されたことしかわからないよ。
でも、ルーンもずいぶん褪せ人みたいに馴染んでるし、祝福も行軍途中で見えたからたぶん連れて帰れる」
「なるほど、このルーンとやらを取り込めば神秘が…
お主ら、少しいいかの?
交渉が纏まらなかったとき、一回だけ儂にチャンスをくれんか、もしかしたら何とかなるかもしれん」
少し悩んだ様子のルイルは、顔を上げるとそう聞きだす。
その問いかけに、褪せ人達は、まぁ、いいけどと肯定を返した。
正直褪せ人達も新しい遊び場がすぐに荒らされるのは嫌だったのである。
そして行動はすぐに始まる。
装備を整えたそれぞれの褪せ人が飛び出していくのを見送る。
少女たちは今回ついて来れそうにないと判断されたのか置いて行かれたようだ。
「お主ら、人のえらい奴と知り合いみたいだったじゃろ?
ちょっとそいつと顔つなぎしてくれんか?」
ルイルは己のやることをやろうと動き出す、褪せ人以外の現地人である人々も行動を始めた。
読み返してたら結局ダンジョン要素どこ…?ってなった