褪せ人が行く!ふかふかダンジョン!【完結】   作:No_46

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暗闇に潜む

 仄かに暗い部屋の中、月明かりとランタンが照らす人影2つ。

 

 冒険者ギルドの最高責任者、三代目ギルドマスター、ルドス

 

 城塞都市アイギスの冒険者学校教官、ティーチ

 

 お互い複雑な顔をし、向かい合って座っていた。

 

「北アイギスは壊滅か…」

 

 ルドスは力なく呟く。

 北アイギスはこの城塞都市アイギスの次に歴史が古かった城塞都市だ。

 防衛設備も整っていた北アイギスが壊滅したという情報は、今朝入ってきたばかりだった。

 

「壊滅と言っても商人等の非戦闘員はアイギスに来る途中、亜人に襲撃されたのを除けば殆ど無事、不幸中の幸いだろう。

 襲撃者の情報は入ってきているのか?」

 

 ティーチは腕を組んだ状態で慰めの言葉を掛けた後、質問を投げかけた。

 

「ティーチくんは聞いていないのかい? あの話を」

 

「そりゃあ聞いてたが、眉唾だぞ。

 魔法を使って都市が燃やされて、しかも襲撃者がたった一人でやったって言うんだから」

 

「…」

 

 ルドスはティーチの答えに苦笑し、目を伏せた。

 

「…今から話す情報は統制されていたものだ、異常事態と判断しギルドマスターの権限で君へと話す」

 

 ルドスの雰囲気が張り詰める。

 

 相対するティーチは姿勢を正し、情報に集中した。

 

「二日前、1年近く行方不明で死亡したと思われてた協会所属の聖女が帰ってきた」

 

「なっ、どうやって!」

 

 ルドスが身を乗り出そうとするティーチを手で制する。

 

「大型集落に囚われていたらしい

 他にも攫われていた軍属の偵察兵と女冒険者が教会にて保護された」

 

「ありえない、大規模な救出作戦でもあったのか?」

 

 ティーチは鋭くルドスを見据える。

 

「そんなモノ実施されてないなんて、君が一番良く知っているだろう?」

 

「だったらなおさらだ。

 どうやって帰ってきた」

 

「なんとね…

 一人の騎士に助けられたと言うんだよ」

 

「…くだらん

 与太話でももっとマシだぞ」

 

 ティーチはため息を吐いて姿勢を崩す。

 

 ルドスは笑って続けた。

 

「私も最初はそう思ったよ。

 だが実際女性たちは帰ってきた」

 

「高難度のモンスターの討伐証明部位を持ってね」

 

 お互いの視線がぶつかる。

 

「5日前の北西部危険モンスター消失事件

 彼女達の証言を元に囚われていたという集落跡地に調査へ向かったA級冒険者パーティ、先導者の報告書だ」

 

 渡された書類に目を通したティーチは読み進めるごとに、額に刻まれた皺が一層深くなる。

 

「本当に一人で救出したっていうのか

 迫りくるモンスターを全てなぎ倒して」

 

 

 北部危険モンスター消失、ゴブリンオークの大型集落についての調査報告書

 

 xx月xx日

 朝、教会の鐘の音が鳴る時間、帰還した女性の報告を元に集落を目指し出発

 道中、剣で殺されたと思わしき亜人の死体を多数発見

 剣姫カタナ曰く殺したのは一人、何かを守りながら戦っているようだと証言

 

 証言から助けた騎士が守りながら亜人を殺したと断定

 

 同日、集落到着

 歩き通しで約9時間、女性の足であったことを考慮し帰還時の速さ、襲撃を全て退ける能力を加味し、大凡証言通りの時間だと推察する。

 

 道中はモンスター、亜人による襲撃が極端に少ないことを確認。

 

 集落周辺には木がなぎ倒され荒れ果てた森、集落自体もほぼ原型が残っていなかった。

 

 中心部と近しいところから半円状に大量の強力なモンスター(未確認、伝承のみで確認されていたモンスター含む)の死体を確認

 

 全て死亡しており、轢き潰されるような傷と体を抉り切り裂かれたような傷が入り混じっていた。

 巨大なモンスターの死体は目測だけで200以上、小型に関しては死体が破損しすぎているため目測不可。

 

 死体も証言との矛盾点はない

 

 状況とカタナの異国の知識からスタンピードが発生しそれによってこの事態が発生したと思われる。

 

 周辺に逃げたと証言されたゴブリンオークの存在は確認できなかった。(強力なモンスターの襲撃に巻き込まれた可能性あり)

 

 未確認モンスターの死体はその利用価値と死体の量から、後日大規模な回収作戦を提案

 

 報告は以上

 

 

「調査結果にケチつけるつもりは無い

 だがこの騎士様はどこだ? 

 ここに呼んでないってことは居ないんだろう?」

 

「…それがねぇ

 救出された聖女様が連れて行っちゃったみたいなんだよ」

 ハァ…

 

 ルドスがため息を吐く

 

「いや、この話は今じゃなかったね

 そう、強大なモンスターの群れを単独で討伐できる存在が現れているという話だ」

 

 額に刻まれた皺が消えずティーチは黙って話を促す。

 

「消失事件、いや討伐事件から5日しか経っていない

 関連性が無いとは考えられない

 何よりも

 

 スタンピードを単独で終わらせられる存在が人間側についていると確定しているわけでは無いんだよ」

 

 ルドスの顔には一筋の冷や汗が浮かんでいる

 

「まぁそんなのが居るなんてバレたら、新人で勘違いを起こすやつや、国も動きそうだからな

 箝口令はわかった、だがなぜ今、褪せ人という存在を俺に教えた? 

 ギルドマスターのアンタなら情報を開示するまでもなく北アイギスの話が事実だと理解させることもできたはずだ」

 

 ティーチは机の上に置いてあった茶を一口すする。

 

「それはね、君に調査してもらいたいんだよ

 騎士、いや褪せ人を」

 

「ふん…

 褪せ人っていうのがそいつらの名前なのか?」

 

「ああ、聖女様が聞き出したそうだ

 協会の聖女が嘘を付くメリットもない、他にもそう言っていたという確認も取れている」

 

「わかった、だが調査と言ってもどうやって見分ける

 北アイギスの襲撃者も見た目は人間と瓜二つだと聞いたぞ」

 

 ルドスが笑みを浮かべている。

 

「わかっている、こちらでもある程度情報は収集した。

 一つは女性で金髪、お互いの身体特徴として挙げられた共通点だ。

 次は目にも止まらない装備の切り替え、異様に積み重ねられた戦闘技術、魔法のような攻撃手段、

 最後に一般的な常識がないということ、だが北アイギスを襲った褪せ人は交渉ができたという話もある

 これらに当てはまる存在がいたら報告し、監視して欲しい」

 

 一息ついて続けた

 

「今季は女性の新人も多かっただろう? 

 全員はないにせよ、紛れ込んでいる可能性もある」

 

 ティーチは眉間の皺を揉みほぐし

 

「ティーチくんの目から見て異常だと思う新人は居たかな?」

 

「俺は生憎そこまで視野が広くてなんでも覚えてるわけじゃない

 金髪で女って新人は何人かいた、そいつらを注視しながら全体を見ることにする」

 

「ふむ、今のところは普通の女性と同程度だと?」

 

「まだ持久走と座学の授業しかやってないからな」

 

 机の茶を一息で飲み干した。

 

「で、北アイギスはどうするんだ?」

 

「支援を送ってこっちに避難してきた人たちに宿を提供する、今考えているのはこの2つだよ」

 

「妥当だな」

 

 お互いの意見と連絡事項を交換し、夜は更けていった。

 

 

 

 

 side.A級パーティ 闇蝙蝠

 

 同時刻

 

 視界が暗い闇で覆われている洞窟の中、チッチッという音だけが響く。

 音見、反響を利用して暗闇でも物を見る技能だ。

 舌を鳴らし反響から周囲を見ていた盲人バトは少し拓けた場所を見つけ、そこをパーティの拠点にすることにした。

 

「ここでええやろ、未踏地域とはいえまだ何もあらへんなぁ」

 

「まぁ少し入っただけですし、新しいって訳でもないですしね

 新人が見つけた洞窟の探査ってだけですから」

 

 バトの言葉にメンバーのカカオが応える。

 双子のミルヒは既に拠点を建てるため邪魔な石などをどけている。

 

 いつもと変わらない探査風景だ。

 

 仲間がテキパキとテントを設営していくのを少し離れた場所で警戒しながら音見している。

 

 音見は真っ暗闇でも姿を見ることができる。

 音が発されるなら尚更だ。

 

「こんにちわ」

 

 挨拶の言葉が聞こえた瞬間に抜刀しきりつける。

 

 ここは浅いとはいえ未踏地域、人は居ないはずだ。

 しかしそれ以上に不可解なのは、

 

「あの挨拶を発するまでまるで気配を感じられなかった! 

 音見も何も返ってきてないということや…!」

 

 通常誰かがいたのならばその障害物を音見で感知できるはずなのだ、いきなり現れたわけでもなければ、ありえない。

 

「総員警戒!」

 

 円周状に集まり警戒する、音見は何も感知していない。

 

 背中に人の感触を感じる。

 

「おいおい、焦りすぎちゃうか? 

 ちゃんと離れん…と…」

 

 仲間かと軽口を叩く途中で気づく

 背後の存在が音見で感知できてないことに

 

「後ろや!」

 

 姿は見えないが予測だけで刃を振るう。

 刃は空を切るだけで何も切れていない

 

「こらアカン、撤退や! 

 総員全速力で逃げるで!」

 

 近くにいた闇蝙蝠の力が一番強い男に抱えてもらい、ランタンを点け光が届かない場所だけ危険がないか音見で探査する。

 

「はぁ!? 鎧!?」

 

「消えた!? 嘘でしょ!?」

 

 そんな声が右前方のココアとミルヒから発言されるが周囲には自分を含めたパーティメンバーしか探知できない。

 

「鎧ってなんや!」

 

「音見では見つけられないんですが目で見たら黒い鎧が立ってたんです!」

 

「すぐ消えたので詳しくはわかりません! 

 ただ下がって暗闇に紛れるというより本当に透明になった感じです!」

 

「アホか! そんなん魔法やんけ!」

 

 双子の言葉を一応心にとめて置き、数分走り続けようやく洞窟から外に出る。

 

「一応洞窟からもう少し離れて休むぞ」

 

 斥候が先を調べるその間に自分たちは近くの草の中に身を隠す。

 

「本当に居たんですって!」

 

「私も見ましたよ!」

 

 双子は自分の見たことが事実だと言い張るが

 

「じゃあなんで音見でいるのがわからんかったんや」

 

「俺らも音見してたけどそんなのがいたなんて見えなかったよ」

 

 声を潜めつつバトは二人を諫める。

 

 それに同意するようにメンバーの男も加勢した時

 

「だから…!」

 

「待って、あれ…!」

 

 バトは二人が指さす方向を音見で見るが何も見えない、普通の洞窟だ。

 

 目が見える他のパーティメンバーは武器を構える始める。

 

 またしても

 

「こんにちは」

 

 声が聞こえる。

 

「なんや、お前」

 

 武器の切っ先から場所を予測し声の出た場所に問いかける。

 

「この場所について教えてほしい」

 

 少しハスキーな声だ。

 

「女っすね…」

 

 メンバーが思わずといった口調で話す

 

「ここは暗黒大陸、深き不可知の迷宮、1800マイナス2000地点や

 アンタ、冒険者証は? 

 今日と明日、この周辺はウチら、闇蝙蝠の探索地域として申請したはずなんやけど?」

 

 バトは冷静に問いかける、明らかな異常事態、音が聞こえない存在との遭遇はしかし

 相手側からの問いかけから交渉の余地と、たまたま特殊技能を持って迷い込んでしまった冒険者という可能性を見出す。

 

「…冒険者証はどこでもらえる」

 

 冒険者証を知らない、つまり冒険者ではない

 

「冒険者組合でやけど、ここら辺は冒険者以外立ち入り禁止、とまではいかんが普通は来ないような場所やで? 

 お宅、何しにきてたんや?」

 

「…この世界の律を殺しに」

 

 答えは全く要領を得ない。

 

「とりあえず、冒険者組合ってところで冒険者証もらえばここら辺も探索できるようになるで

 ついてくるか?」

 

 バトの問いかけに彼女は少し考える素振りをすると頷いた。

 

「まったく、赤字やな」

 

 途中で引き返したためクエストは失敗、道中の食料分を考えると赤字だ。

 

「アンタ、名は」

 

 そう聞くと彼女は

 

「もう忘れた」

 

「おかしなやっちゃなぁ

 まぁええわ、黒い鎧やしクロって呼ばせてもらうで」

 

 彼女が特に反応を返さなかったのでバトは仲間にクロと紹介して、帰ってきた斥候に紹介し、城塞都市アイギスへと歩みを進めた。

 

 

「そういやあんた、なんで音消えとんの?」

 

「この鎧着ると音が消える」

 

「…マジ?」




ギルドの練習風景とか全くわからん…
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