褪せ人が行く!ふかふかダンジョン!【完結】   作:No_46

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やっぱ毎日投稿できる人すげぇわ…


ギルドの思惑

 冒険者ギルド

 

 受付にてバトがミッションの失敗とクロについて報告し報告書を書き終わった後、A級パーティ闇蝙蝠は酒場で晩飯を食べていた。

 

「ほーん、マジで見えへんけど居るんよな?」

 

「いますよ! 

 ホントどうなってるんでしょうねこの鎧」

 

 バトの言葉にミルヒが答える

 

 いつも座っている大机、その椅子にはいつもの闇蝙蝠メンバーと黒い鎧にフードを被ったクロが座っていた。

 

「女性なのにスカートもないし胸の形に沿った鎧でもない。

 謎ですよね〜

 普通の女冒険者等の亜人とかと戦う職業なら絶対つけると思うんですけど

 付けるだけで弓や毒矢が明確に減って生かしたままの捕獲が多くなるってこと知らないんですかね?」

 

 ココアは自身の鎧と見比べて首を傾げた。

 

 クロの隣に座っていたバトが鎧に触れる。

 

「しっかり触れるのに音見じゃまるでわからん

 音は全部吸収してるんか? 

 随分と奇麗に作られとるし…ホンマあんた何もんやねん…」

 

 クロは答えずただ座っているだけだ。

 

「洞窟に居た理由も目的も何も話してくれませんし、口を開いてくれても意味がよくわからないんですよね~」

 

 ココアがため息交じりに吐き出す。

 

「身体能力も女性にしてはすごいですよね、暗闇に慣れて音見が使える俺らにしっかりついて来れてるんですし、襲撃も私たちが見つけたと思ったらすぐ動いて全滅させてました。

 その鎧でですよ?」

 

 パーティメンバーの坊主頭が指摘した通り

 クロの鎧はスケイルアーマーと呼ばれる装甲となる小片を布地に縫い付けて作られる鎧の一種だったが、装甲は黒蒼の金属が潤沢に使われており

 全身鎧より軽いとはいえ十分重い、手甲、足甲も装甲が全体を覆うように作られている。

 

 スケイルアーマーといえども重量は嵩み、暗闇を一定以上の速度を維持しつつ走行できる闇蝙蝠のメンバーでさえ、鎧は軽装だった。

 そんな中ベテランの斥候が見逃した亜人を見つけ、それを知らせるまでもなく一瞬で両断した。

 

「鎧もすごいけど武器もそうやろ、こんなん見たことあらへんわ」

 

「不思議ですよねぇ、持っていた武器が体から離したら見えるようになるなんて」

 

 バトの言葉にココアが相槌を打つ

 机の上にはクロが所持していた緩やかに波打つ大型の曲剣と双曲剣、杖があった。

 もう一つ持っていた奇妙な形の短剣は触らせてもらえなかったが

 波打っている大型の曲剣を大きく振り回し、両断したその技量は、抜刀術の上位ランカーとしても知られているバトから見ても高いものであった。

 

「武器もようわからん形の馬鹿でかい曲剣と…スタッフ? 杖? 

 あんさん魔法でも使いよるんか?」

 

 バトは冗談を放つ

 

「こんなデカい曲剣持って走り回って、魔法みたいやけどな、ウチにはできんわ」

 

「いやいや、俺らでも無理っすよこんなの

 ぶん回すならまだしもずっと持つのは…」

 

 横目で視線を送られたパーティ一番の力持ちが苦笑いと共に否定する。

 

「こっちの杖もよくわからないけどめちゃくちゃ高価っぽいですよね。

 鈍器として使うには向いてないですよ。

 貴族や国の所蔵品って言われても信じちゃいます」

 

 ミルヒが言及したその杖は、木のような黒い二つの根が絡まり、頂点に汚れた琥珀が埋め込まれた杖だ。

 

「黒い木の根と琥珀を組み合わせた杖なんて見たことないですよ」

 

 ココアもそれに同意する。

 

 しかしクロはずっと黙っていた。

 

「で、当の本人は飯も食わずだんまりかい」

 

「まぁ武器とかは見せてくれましたし…」

 

 坊主頭のメンバーがバトの絡みを抑えようとするが

 

「なんもしゃべらんと、飯ぐらい食わんか

 ほら、ここの料理はうまいやろ?」

 

 静止の意味はなく、クロはバトに無理やりに口の中へ料理を詰め込まれるが反応は薄い

 

「じゃあこれや! 

 ほらイッキ!」

 

 次とばかりに注ぎ込まれた黄金を、味わったそぶりを見せた後、クロは口を開いた。

 

「これ…何て名前」

 

 およ? 

 とバトは眉を上げる。

 

「エールや、気に入ったんか?」

 

「…こういうのは初めて飲んだ」

 

「ここのエールはうまいからなぁ、まぁ好きなもん見つけれたならよかったけど

 で、うまいもん飲んだなら本題や、クロは冒険者になるつもりなんやろ?」

 

 バトの問いにクロは頷きを返す。

 

「ちょっと力量見たいしな、この後模擬試合やらへん? 

 クロが着てる鎧やとこっちが見えへんから貸し出し用の鎧でや

 帰り道で亜人処理してくれた礼としてここは奢ったるさかい、どうや?」

 

 クロは無言で再度、頷いた。

 

 

 

 バトは内心で報告をしていた時のことを思い出していた。

 

 尋問室、バトとティーチが大きな机を隔てて向かい合っている。

 

「で、なんや? 嘘なんてゆうてへんのにわざわざ尋問室まで呼び出すなんて、なぁティーチはん」

 

「わかっている、実際連れて帰ってきた女は報告通り冒険者組合の冒険者登録もされていない、迷い込んだ一般人の狩人の可能性もある。

 だがな」

 

 ティーチが言葉を区切る。

 

「顔を見た事があるというやつがいる。

 例の北アイギス襲撃事件で戦闘に参加していた冒険者だ」

 

 バトは目を細める。

 

「ほーん、よう生きてましたな。

 その襲撃事件、下手人は赤黒い全身鎧って聞きましたが? 

 恐怖で逃げたやつは人の顔もわからんようになるんですなぁ」

 

「確かに襲撃事件で生き残ったのは殆ど早くに逃げ出した新人や別の場所にいて異変を察知して逃げたベテランだけだが、少数だけ対面で生き残ってる奴らもいる」

 

「それが赤黒い全身鎧って話やろ

 クロは青黒い鎧に頭はフードや、全然違うわ」

 

「…鎧を変える前に見ていたやつがいる」

 

「襲撃中に全身鎧に着替えたっちゅーことか? 

 冗談も大概にせえよ」

 

「落ち着け、何も処刑しようって話じゃない、ただ彼女の強さを見せてくれるだけでいい

 亜人を苦も無く殺したと報告を受けている、容易なはずだ」

 

「ティーチ教官、ウチはメクラでクロの鎧は音を吸収する特殊素材や

 まともに戦えへんわ」

 

「ギルドの貸し出し用の鎧を渡す

 現状今、彼女と戦えるのはお前だけだ」

 

 他のA級、高ランカーは運悪く帰ったかミッション中だと聞かされる。

 

 バトは顔を顰めると

 

「…今日は奢りな」

 

 一言こぼして尋問室を出ていった。

 

 ティーチはため息を吐き、思い出す。

 

 訴えに来た生き残りの言葉を

 

「全く同じ顔…か」

 

 なぜ自分がギルドマスターから要望を受けた直後に、面倒が舞い込んでくるのかと。

 

 

 ギルド裏、修練場

 

「なんでこんな人居るんや」

 

 修練場の周りには野次馬のように酒場で飲んだくれていたベテラン冒険者のおっさんどもが集まっていた。

 

「そりゃ抜刀術の最上位ランカーの盲人バトがとんでもない大きさの獲物を持った新人候補と戦うんだぜ?」

 

「観戦しに来ないやつの方が珍しいだろ」

 

「俺はあのクソデカい曲剣をどんなふうに使うのかが気になるな、やっぱり引きずる感じか?」

 

「馬鹿言え、あの曲剣背負えるってことはそれだけ体幹もしっかりしてるってことだ、必殺の打ち下ろしだろ」

 

 バトの独り言に近くにいたおっさん達が答える。

 

 既に異様な風体をした新人の攻撃手段予測まで始まっている。

 

「チッまぁええわ

 クロは鎧着替えたんか?」

 

 そんな飲んだくれ共を無視し、貸し出された鎧を手に取ったクロはすぐに着替えたことでようやく姿を音見で見ることができた。

 

 薄いフードにストレートの髪を入れた女、顔はずいぶんと大人っぽい。

 

「クロ、そんな顔してたんやなぁ

 じゃ、さっさと終わらせて飲み直すで!」

 

 バトが闇蝙蝠の仲間に声をかけ進む。

 集まった冒険者を避けながら試合の立ち位置へと向かうバトは周囲の喧騒に気がとられ気付かなかった。

 

 クロが着替えた直後、鎧を着替えたのならその動作が音見で見れるはずなのに、動作の起こりもなく着替えたことに

 

 目の見えるクロに注視していた数少ない冒険者たちは見た。

 

 陥落した北アイギスの生き残りが喚いていた戯言、「黄金の粒子から一瞬で装備が切り替わった」

 という言葉の意味を

 

「えー今回の立ち会いは俺の要望によるものだ、お前ら冒険者も女には見えない鎧で驚いてるかもしれないが、実力は闇蝙蝠から聞いたところ亜人を容易に両断できるそうだ。

 この試合は真偽確認の為でもある」

 

 ティーチの言葉にざわつきが広がる。

 特に金髪の少女は目を異様に輝かせていた。

 

 お互いが少し距離を置いて修練場に相対している。

 

 バトはいつも通りの軽装に抜刀用の仕込み刀を片手に持ち、自然体で抜かずに構える。

 

 対してクロは波打つ大曲剣を肩に片手でかけただけだ。

 

「構えもせんのは、少し舐め過ぎとちゃうか?」

 

 クロは無言で反応を示さない

 

 ティーチがお互い準備ができたことを確認する。

 

「はじめッ!」

 

 開始の合図、バトが距離を詰めると同時、全身で仕込み刀を抜き放つ

 

 その刃が通った場所にはクロは居ない、音見で位置を確認する前に

 

 ゾッ

 

 脇下に刃の感触

 

 音見で見えた視界には姿勢を低くし、今にも大曲剣の刃を引き抜こうかという状態のクロがいた。

 

 一瞬の間が開く、そして

 

ワァーッ! 

 

 まさかのジャイアントキリング、観衆が一斉に盛り上がる。

 

「は?」

 

 クロは終わったと考えたのか大曲剣を背負い直し酒場へ戻ろうとする。

 

「…ティーチ教官、アンタは動き見えたやろ、ウチの抜刀術どうやって避けたんや」

 

「お前もわかってるだろう、ただ姿勢を下げて抜刀を避けた後そのまま曲剣をお前に押し付けた。一瞬でな」

 

「カタナちゃんの同類か…」

 

 バトが納刀し肩の力を抜く。

 

「全く、これでウチの評判下がるんちゃうか?」

 

 容易く負けたことで勘違いするバカが出ないかと愚痴を吐きながら自分も酒場に足を向け歩き出そうとする。

 

 ティーチが複雑な顔で眉間の皺を増やし、先に酒場に向かうクロの背を呼び止めた。

 

「クロ、だったか

 もう一度試合をしてくれ

 今度は俺と」

 

 今度こそバトはブチギレた。

 

「はぁぁあああ!? 

 教官がやるんやったらウチがやった意味ないやん! 

 最初からそうせいっちゅーねん! 

 クロ、あんなやつの事聞かんとさっさと飲み直すで!」

 

「いや、待て

 今回はある程度力量を見るのが目的だった、それが一瞬で終わっちゃ測れるものも測れん」

 

 ティーチの言葉にバトは顔を顰めると

 

「クロはどうなんや」

 

 と聞いた。

 

 クロは無言で頷く。

 

「ハァ、しゃーないから飲むのは待ったるわ」

 

 うわっちょっと切れとるやんけ

 などと言いながらバトは観戦していた闇蝙蝠に合流する。

 

「一応力量を測るのが目的なんだ、俺が攻撃を十回振った後に反撃してくれ、いいか?」

 

 ティーチの言葉に頷くと先程立っていた試合の始まりの位置に戻る。

 

 ティーチは外していた頭の兜を締め、実践と全く同じ装備で立つ。

 

 もう一度あの攻防が見れるのかと期待した野次馬の観客も静かになった時

 

「カァッ!」

 

 いきなりティーチが腰に下げていた剣を切り上げる。

 

 バトの抜刀と似たそれはしかし、横に半歩歩いたクロによって躱されていた。

 

「ちょッ! 教官! 

 流石に真剣は不味いですって!」

 

 周りの静止を無視し、一撃、二撃と攻撃を積み重ねる。

 

 だが当たらない

 

(カタナと初めて戦ったときを思い出すな)

 

 ティーチは過去のS級との試合を思い出す。

 

 しかし何かが違う。

 

(目だ、カタナは剣を見て回避していた、だがクロは違う

 忙しなく動いているが見ているのはどこだ?)

 

 考えが纏まるよりも前に十回目になる攻撃の時が来た。

 

 今度こそ渾身の力を込めて突きを繰り出す。

 

 渾身の突きはひらりと躱され、確実に避けられないタイミングで、大曲剣が振りかぶられた。

 

(そうか、クロは、間合いと隙を読むのが完璧なんだ)

 

 と走馬灯の様に脳裏によぎり

 

 目の前で大曲剣が停止した。

 

 クロは停止させた大曲剣を背負い、闇蝙蝠に(特にバト)揉みくちゃにされながら酒場へと連れて行かれた。

 

 周りの喧騒も聞こえない。

 

 ティーチは冷や汗を拭い、試合の終わりと解散を宣言した。

 

 




はい、まぁ特にネタバレってわけでもないので説明するとこの世界に来るのは同一人物のそれぞれ別ルートを選んだ世界線です。
なので鈎指とか使わずに同じ世界に存在できます。
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