【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第10話【全員集合!】

 まさか朝一にローエとカティアの美女コンビの声が聞けるとは。

 叩き起こされた不快さは一気に消し飛んだ。

 

「はーい! 今出ます!」

 

 寝間着のままだったが俺は構わず玄関を開けた。

 すると。

 

「「おはようございます隊長」」

 

 名コンビになれそうなほど息ピッタリにローエとカティアが頭を下げてきた。

 昨日もだがやはり敬語で、俺のことを隊長と呼んでいる。

 

 昨日とはまるで別人になった二人に挨拶され、俺はくすぐったい気持ちと、どこか息苦しい気持ちに挟まれた。

 

「ぉ、おはようございます。どうしたんですか二人揃って」

 

「実は隊長に謝りたいことが──」

「実はあなたに謝りたいことが──」

 

 カティアとローエの声が見事に重なり、二人は言葉を止めてギロッと睨み合った。

 

「ちょっとカティアさん黙っててくださる? わたくしが先ですわ」

「お前が黙ってろ」

「いいえ。あなたが黙りなさい」

 

 おおぅ、息をするようにケンカになっていくぅ。

 どうにも相容れない質の二人なのかもしれない。

 

「まぁまぁケンカしないで。その、ジャンケンで決めたらどうです?」

 

「ジャンケンですわ!」

「ふ、いいだろう」

 

 普通に俺のジャンケン案が採用されました。

 ガッチガチにフル装備した【S級女騎士】が本気でジャンケンしている。

 朝からもの凄い光景だ。

 

「勝ちましたわ!」

「くそ! なんでパーなんか出したんだ私は!」

 

 あ、終わったみたいだ。

 カティアさんリアクションが大袈裟だよ。

 可愛いけど。

 

「ゼクード隊長! 昨日の事ですが、何も言わずに帰ったことを謝ります。本当に申し訳ありません!」

 

「ぁ、いえ……」

 

「わたくしの隊長として、あなたは相応しい力を持っている方でしたわ。もう異議はありません。わたくしはあなたについて行きます」

 

 素晴らしい敬語で話しながら、ローエは美しい角度でお辞儀(じぎ)をしてきた。

 彼女の長い金髪がふわりと垂れる。

 

 部下とは言え、こうまでキッチリとした態度でやられるとなんか気が引ける。

 年上だし普通に喋ってもらいたいのだが。

 

「私もだゼクード隊長」

 

 今度はカティアが前に出てきた。

 ローエの隣に立って、姿勢を正す。

 

「あなたを見くびっていた無礼を謝罪したい。私もあなたが隊長であることにもはや異論はありません。あなたの部下として戦う所存です」

 

 カティアもまたちゃんとした敬語で、ローエと同じ角度のお辞儀してきた。

 

 正直、流石は三年生だなと思った。

 自分の非を認め、自分より下の人間に頭を下げる。

 それが出来るというのはやはりそれだけローエとカティアが精神的に大人の部分があるということなのだろう。

 

 ただ早朝から訪問してくるのだけはやめてほしい。

 

「いえ、こちらこそ。俺を隊長と認めてくれた二人の器の大きさに感謝します」

 

 俺も失礼のないよう精一杯の敬語で話す。

 あぁやりにくい。

 規律正しい部隊なのは良いかもしれないが、この空気はダメだ。

 

 やはりここは。

 

「顔を上げてくださいローエさんカティアさん。できれば二人とも敬語じゃなくて今まで通りの喋り方にしてほしいんですが……」

 

「え、良いんですの?」

「ん? 良いのか?」

 

 あら?

 

「その命令は助かりますわ。一年生相手に敬語を使うのってかなりしんどいですもの」

「まったくだ。隊長の御言葉に甘えさせてもらうぞ」

 

 早いな切り替え。

 えげつない速度だよ。

 

 まぁいいか。

 この方が二人の個性も死なずに済むし、何より素のローエとカティアを見ていられるのは個人的に嬉しい。

 

「お~いゼクードく~ん」

 

 また別の声が実家の周辺に響く。

 いやいや今朝は千客万来だな。 

 今度は誰だ。えらくトロい喋り方──ぁ、わかった。

 フランベール先生だわこれ。

 こんなおっとりした喋り方あの人しかいない。

 

 声のした方へ視線を向けると、そこにはやはり蒼い鎧と大弓を装備したフランベール先生がこちらに向かって歩いて来ていた。

 ベージュのブロンドが相変わらず美しい。

 

「フランベール先生!」とローエとカティアが驚く。

 この二人もフランベール先生のこと知ってるのか。

 いや学校の教師だし知ってるかそりゃ。

 

「あらローエさんにカティアさん。おはよう」

 

「おはようございますですわ」

「おはようございます先生」

 

 ローエ・カティア・フランベールが朝の挨拶を交わす。

 おお、よく考えたら【ドラゴンキラー隊】集合じゃんこれ。

 悩殺ボディの三人が揃うと絶景だ。

 美しい過ぎて鼻血が出そうだ。

 

 これが俺の部隊だと思うと、そのへんの野郎どもに絶大な優越感を感じる。

 グリータやクラスメイトたちに自慢しまくりたい。

 

「ゼクードくんもおはよう」

 

「おはようございます先生!」

 

「ゼクードくんだけじゃなくて二人もいて良かったわぁ。後で呼びに行くつもりだったから」

 

 ニコニコなフランベールが手を揃えて言った。

 

「何かあったんですの?」

 

 ローエが聞いた。

 フランベールは頷く。

 

「うん。実はね、狩猟区にドラゴンの群れが現れたそうなの。朝番の王国騎士さんたちが対応してくれてるみたいだけど、それでもけっこう数がいるらしくて、手伝ってほしいって王国からわたしたちに出撃命令が出たのよ」

 

 ドラゴンが群れを?

 珍しいな。

 

「あら、それはちょうど良いじゃありませんの」

 

「そうだな。【ドラゴンキラー隊】の初出撃だ」

 

 たしかにローエとカティアの言うとおりだ。

 今後の連携強化のためにもなる。

 朝から面倒だけど、そこは美女三人をつれて狩りにいけると思って割り切ることにしよう。

 

「よーし! ならみんなでゲートに向かうぞ!」

 

 俺は隊長っぽく決めて言ってみた。

 なかなか良い発音だった気がするのだが。

 

「ゼクードくん」

 

 フランベール先生が困ったように俺を呼ぶ。

 

「なんでしょ?」

 

「着替えなさい」

 

 そうだった。

 俺は寝間着のままだった。

 

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