【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった 作:ミズノみすぎ
鉱山内に設けられた【王の間】には、これといった派手な装飾はない。
とても国王がいるとは思えないほど質素な場所だが、とくに不便もなかった。
ロウソクのみのその部屋は国王が座る大きな椅子と、長方形のテーブルだけがある。
その長方形のテーブルを挟んで俺の向かいに国王が座っている。
彼の左右には大臣や精鋭騎士たちが並ぶ。
対する俺の左右にもそれぞれの仲間たちが並んでいた。
左にはローエ・カティア・フランベール。
右にはグリータ・レィナ・ガイス。
今後の作戦を練るために集められた精鋭陣だ。
「全員揃ったな」
国王がみんなを見ながら言う。
そして俺を含んだ全員が頷いて返した。
「今日集まってもらったのは他でもないドラゴンの事だ。ゼクード隊長の話ではドラゴンの数が日に日に多くなっているらしい」
その事実を口にした国王だが、仲間たちが驚く気配はない。
みんな薄々気づいていたようだ。
国王はそのまま続ける。
「つまり我々にはあまり時間がない。このまま奴らの繁殖が進めば、今度こそ勝ち目がなくなる。そこで考えたのだが……南の奥地へ一気に進むために【威力偵察部隊】を編制しようと思う」
聞き慣れない言葉にこの場にいる全員がどよめき出した。
俺も馴染みない言葉に首を傾げざるを得なかった。
なんだ?
威力偵察って。
「【威力偵察部隊】とは……敵を討伐するのではなく、素早く撤退して情報を持ち帰ることを優先する部隊のことだ」
説明してくれたのは大臣だった。
そして国王が言葉を続ける。
「南の奥地は右も左もドラゴンだらけだ。発見されずに進むのは至難の技だ。そこでゼクード」
「はっ」
「この部隊の隊長をお前に任命する」
「了解です」
俺はあっさり承諾したが、国王の左右にいた大臣や騎士たちが不安そうにざわめく。
「国王さま。ゼクード隊長は対ディザスタードラゴンの切り札。このような危険な任務に出るのは得策ではないかと」
言ったのは騎士の一人だった。
彼の言葉に大臣も頷いて声を出す。
「その通りですぞ国王さま。万が一の事があります。いくらゼクード隊長がSSS級騎士と言えど、不測の事態が起こって命を落とす可能性があります」
「そんな事は分かっている。だが今回の任務はそのディザスタードラゴンの居場所を特定するためのものだ。つまり奴を発見する必要がある。発見してすぐに撤退できればいいが、もしこちらも捕捉された場合は撤退は困難を極めるだろう」
大臣たちに言い聞かせながら、国王は俺に視線を移してきた。
「その時はゼクード。お前がディザスタードラゴンを抑えるのだ」
「はっ」
「仲間の撤退が完了するまで凌ぎ、無事に帰還せよ。よいな?」
国王の眼差しは、俺を信頼してくれている絶対的なものだった。
俺にしかできないと思ったことは、国王は必ずこうして俺に頼んでくる。
「お任せください」
真っ直ぐに迷い無く俺は答えた。
当然である。
ディザスタードラゴンの猛攻を耐えて、味方の撤退まで張り付き、無事に帰還する。
こんな危険な任務は俺にしかできないと思っている。
他の騎士に勤まるレベルの任務じゃない。
囮になって戦って死んでいいのなら誰でも出来るが、絶対に死ぬわけにはいかないから難しい。
命を持って帰還しなければいけない。
相手が相手なだけに、それがどれほど困難か分からない俺じゃない。
「ゼクード隊長。拠点となり得る安全地帯もできるなら探してほしい。そこにキャンプを設ければディザスタードラゴン討伐の要となるだろう」
「わかりました。利用できそうな地形なども視野に入れておきます」
「頼む。それから【威力偵察部隊】の編制もお前に任せる」
メンバーの選択権は俺にあるのか。
これは助かるな。
「了解しました」
「うむ。奴の居場所を特定した後、討伐に向けて作戦を練り総攻撃を掛ける。みなそう心得よ」
「はっ!」と士気の高さが分かる声音で仲間たちが答えた。
それを見た国王が頼もしそうに頷く。
「あとの事はゼクードに任せる。各騎士たちは彼の指示に従ってほしい。それでは……解散!」
※
【王の間】を後にした俺たちは、部屋に戻る途中でカティアの言葉を聞く。
「隊長。【威力偵察部隊】のメンバーはどうする気だ?」
「ああ。今回の任務は機動力と戦闘力がいる。だから人数は四人に絞って、文字通り少数精鋭で行くつもりだ」
「四人? ってことは……」
察しのいいフランベールはもう気がついたみたいだった。
俺は彼女に「その通り」と返して続ける。
「威力偵察には俺たち【フォルス隊】が出る。機動力・戦闘力ともに適任だろ」
【ドラゴンキラー隊】から【フォルス隊】へと改名された我が部隊。
出産を終えて、修行して強くなったローエたちとならばこの作戦も可能だろう。
ガイス・フランベール・ローエ・カティア。
この四人しかSS級騎士はいない。
だから【フォルス隊】は最高レベルしかいない部隊でもある。
できるなら母親たちをカーティスらの側に置いといてやりたい気持ちが父としてはあるが……今の場合それは私情にしかならない。
「ガイス隊長。俺たちが留守の間、ここ【ヨコアナ】をよろしくお願いします」
有数のSS級騎士であるガイスに俺は言った。
「了解した。任せてくれ」
彼はしっかりと頷いてくれた。
彼はグリータやレィナの隊長でもある。
そんな彼に残ってもらうのは他でもない。
ここ【ヨコアナ】の最高戦力として残ってもらう。
──っと、表向きはそうなのだが……彼の妻であるリリーベールが出産を間近に控えている。
彼女の側にいてほしいから、敢えて拠点待機を指示した。
それに、もし、最悪俺たち【フォルス隊】に何かあっても……彼がいれば人類は持ち直すことができるはずだ。
まぁあくまで保険だ。
カーティスたちを残して死ぬわけにはいかない。
それこそ死んでも帰還する。
親としてここで死んだら俺は、親父と何も変わらない。
親父を越えるなら、生きて帰らなければいけない。
妻であるカティアたちを守り抜き、自分も無事に生還する。
難しい任務だが、こなしてみせよう。