【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

101 / 448
第98話【威力偵察部隊】

 鉱山内に設けられた【王の間】には、これといった派手な装飾はない。

 

 とても国王がいるとは思えないほど質素な場所だが、とくに不便もなかった。

 

 ロウソクのみのその部屋は国王が座る大きな椅子と、長方形のテーブルだけがある。

 

 その長方形のテーブルを挟んで俺の向かいに国王が座っている。

 彼の左右には大臣や精鋭騎士たちが並ぶ。

 

 対する俺の左右にもそれぞれの仲間たちが並んでいた。

 

 左にはローエ・カティア・フランベール。

 右にはグリータ・レィナ・ガイス。

 

 今後の作戦を練るために集められた精鋭陣だ。

 

「全員揃ったな」

 

 国王がみんなを見ながら言う。

 そして俺を含んだ全員が頷いて返した。

 

「今日集まってもらったのは他でもないドラゴンの事だ。ゼクード隊長の話ではドラゴンの数が日に日に多くなっているらしい」

 

 その事実を口にした国王だが、仲間たちが驚く気配はない。

 みんな薄々気づいていたようだ。

 国王はそのまま続ける。

 

「つまり我々にはあまり時間がない。このまま奴らの繁殖が進めば、今度こそ勝ち目がなくなる。そこで考えたのだが……南の奥地へ一気に進むために【威力偵察部隊】を編制しようと思う」

 

 聞き慣れない言葉にこの場にいる全員がどよめき出した。

 俺も馴染みない言葉に首を傾げざるを得なかった。

 

 なんだ?

 威力偵察って。

 

「【威力偵察部隊】とは……敵を討伐するのではなく、素早く撤退して情報を持ち帰ることを優先する部隊のことだ」

 

 説明してくれたのは大臣だった。

 そして国王が言葉を続ける。

 

「南の奥地は右も左もドラゴンだらけだ。発見されずに進むのは至難の技だ。そこでゼクード」

 

「はっ」

 

「この部隊の隊長をお前に任命する」

 

「了解です」

 

 俺はあっさり承諾したが、国王の左右にいた大臣や騎士たちが不安そうにざわめく。

 

「国王さま。ゼクード隊長は対ディザスタードラゴンの切り札。このような危険な任務に出るのは得策ではないかと」

 

 言ったのは騎士の一人だった。

 彼の言葉に大臣も頷いて声を出す。

 

「その通りですぞ国王さま。万が一の事があります。いくらゼクード隊長がSSS級騎士と言えど、不測の事態が起こって命を落とす可能性があります」

 

「そんな事は分かっている。だが今回の任務はそのディザスタードラゴンの居場所を特定するためのものだ。つまり奴を発見する必要がある。発見してすぐに撤退できればいいが、もしこちらも捕捉された場合は撤退は困難を極めるだろう」

 

 大臣たちに言い聞かせながら、国王は俺に視線を移してきた。

 

「その時はゼクード。お前がディザスタードラゴンを抑えるのだ」

 

「はっ」

 

「仲間の撤退が完了するまで凌ぎ、無事に帰還せよ。よいな?」

 

 国王の眼差しは、俺を信頼してくれている絶対的なものだった。

 俺にしかできないと思ったことは、国王は必ずこうして俺に頼んでくる。

 

「お任せください」

 

 真っ直ぐに迷い無く俺は答えた。

 当然である。

 

 ディザスタードラゴンの猛攻を耐えて、味方の撤退まで張り付き、無事に帰還する。

 

 こんな危険な任務は俺にしかできないと思っている。

 

 他の騎士に勤まるレベルの任務じゃない。

 

 囮になって戦って死んでいいのなら誰でも出来るが、絶対に死ぬわけにはいかないから難しい。

 命を持って帰還しなければいけない。

 

 相手が相手なだけに、それがどれほど困難か分からない俺じゃない。

 

「ゼクード隊長。拠点となり得る安全地帯もできるなら探してほしい。そこにキャンプを設ければディザスタードラゴン討伐の要となるだろう」

 

「わかりました。利用できそうな地形なども視野に入れておきます」

 

「頼む。それから【威力偵察部隊】の編制もお前に任せる」

 

 メンバーの選択権は俺にあるのか。

 これは助かるな。

 

「了解しました」

 

「うむ。奴の居場所を特定した後、討伐に向けて作戦を練り総攻撃を掛ける。みなそう心得よ」

 

「はっ!」と士気の高さが分かる声音で仲間たちが答えた。

 それを見た国王が頼もしそうに頷く。

 

「あとの事はゼクードに任せる。各騎士たちは彼の指示に従ってほしい。それでは……解散!」

 

 

【王の間】を後にした俺たちは、部屋に戻る途中でカティアの言葉を聞く。

 

「隊長。【威力偵察部隊】のメンバーはどうする気だ?」

 

「ああ。今回の任務は機動力と戦闘力がいる。だから人数は四人に絞って、文字通り少数精鋭で行くつもりだ」

 

「四人? ってことは……」

 

 察しのいいフランベールはもう気がついたみたいだった。

 俺は彼女に「その通り」と返して続ける。

 

「威力偵察には俺たち【フォルス隊】が出る。機動力・戦闘力ともに適任だろ」

 

【ドラゴンキラー隊】から【フォルス隊】へと改名された我が部隊。

 出産を終えて、修行して強くなったローエたちとならばこの作戦も可能だろう。

 

 ガイス・フランベール・ローエ・カティア。

 この四人しかSS級騎士はいない。

 だから【フォルス隊】は最高レベルしかいない部隊でもある。

 

 できるなら母親たちをカーティスらの側に置いといてやりたい気持ちが父としてはあるが……今の場合それは私情にしかならない。

 

「ガイス隊長。俺たちが留守の間、ここ【ヨコアナ】をよろしくお願いします」

 

 有数のSS級騎士であるガイスに俺は言った。

 

「了解した。任せてくれ」

 

 彼はしっかりと頷いてくれた。

 彼はグリータやレィナの隊長でもある。

 そんな彼に残ってもらうのは他でもない。

 ここ【ヨコアナ】の最高戦力として残ってもらう。

 

 ──っと、表向きはそうなのだが……彼の妻であるリリーベールが出産を間近に控えている。

 彼女の側にいてほしいから、敢えて拠点待機を指示した。

 

 それに、もし、最悪俺たち【フォルス隊】に何かあっても……彼がいれば人類は持ち直すことができるはずだ。

 

 まぁあくまで保険だ。

 カーティスたちを残して死ぬわけにはいかない。

 それこそ死んでも帰還する。

 

 親としてここで死んだら俺は、親父と何も変わらない。

 親父を越えるなら、生きて帰らなければいけない。

 

 妻であるカティアたちを守り抜き、自分も無事に生還する。

 

 難しい任務だが、こなしてみせよう。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。