【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第13話【カティアの憂鬱】

【ドラゴンステーキ】には3つのランクがある。

 ドラゴンベビーの肉はCランク。

 ドラゴンマンの肉はBランク。

 そしてカティアが持ってきてくれたのはA級ドラゴンのAランクの肉である。

 

 柔らかい肉質が最高で、焼けば肉汁が溢れ出す。

 ちょっと高いのだが、それ相応の美味さがある。

 豚・牛・鶏・兎と肉の種類は数あれど、竜の肉ほど美味く力が出る食べ物はない。

 

 こんな良い肉を持ってきてくれるとは。

 

「ほう……男の家には初めて入ったが、案外と綺麗にしているんだな」

 

 自宅の内装を見るなりカティアが感心したように言った。

 初めて?

 俺が初めての男というわけですか!

 感激です!

 

「まぁ俺、こう見えてけっこう綺麗好きなんで」

 

「それは良いことだな。男の部屋なんてみんな汚いとばかり思っていたが」

 

 いやそれは偏見ですなぁ。

 男女ともに部屋が汚い人は汚いですし。

 

「さて、肉を焼きたいんだが暖炉くらいはあるんだろう?」

 

「ありますよ。もう火もつけてあるのですぐに焼けます」

 

 家の端の中央にある暖炉を指して言った。

 俺の家の唯一の自慢である暖炉は大きい。

 祖母がやたら寒がりだったからこんなに大きくしたのだとかなんとか。

 

 その暖炉を確認したカティアが頷く。

 

「よし。私が焼いてやる。悪いがお前の調理場を借りるぞ」

 

「あ、はい。どうぞ」

 

 調理場と言っても暖炉のちょっと離れたところに小さなテーブルがあるだけなのだが大丈夫だろうか?

 道具もナイフと木製のまな板ぐらいしかない。

 

 カティアは紙に包まれた竜肉を取り出し、木製まな板に乗せ、紙を外してからナイフで綺麗に切っていった。

 動作に無駄がなく、また切り方も丁寧だった。

 

 食べやすい大きさに切った肉にカティアは自前の胡椒をささっと振りかけていく。

 

 って、胡椒!?

 

 国と国との交易のおかげでだいぶ安くなった胡椒だが、それでもまだ一般人には高め。

 それを惜しみなく肉に振りかけていくカティアは良いところの出身なのだろうか?

 

 そんな俺の疑問は露知らず、カティアはフライパンを壁から取り、肉を置いて焼き始めた。

 竜の肉は油がたくさん出るからくっつき難い。

 焼きやすいのだ。

 

 フライパンを揺らして肉を逆転させるカティアは料理の達人に見えた。

 彼女は普段から料理をしているのかもしれない。

 でなければこうもテキパキとなんて出来ないはずだ。

 というか火力も高いのに綺麗に焼いている時点でもう凄い。

 俺なら焦がす自信ある。

 

「カティアさん。料理手慣れてますね」

 

「妹がたくさんいるからな」

 

「え、妹さんがいらっしゃるんですか!」

 

 しかもたくさん!

 これは是非とも御会いしたい!

 

「手を出したら殺すぞ」

 

「あ、はい」

 

 

 肉を焼き終え、それを真っ二つになった丸い小麦パンに挟む。

 野菜を添え、自家製のソースを垂らして完成!

 その名も『ドラゴンバーガー』である。

 

 噛めば竜肉から香ばしい肉汁が溢れ、パンがその肉汁を吸ってさらに美味しくなる。

 野菜とソースも肉の味を引き立て、さらに柔らかい肉とパンにシャキシャキの食感を加えて絶品と化している。

 

 この食べ物はカティア自身も好物だった。

 

「うっっっまいですよカティアさん!」

 

 満面の笑みを見せながらゼクードは『ドラゴンバーガー』を食べていく。

 なかなか笑顔は可愛らしいな、とカティアは思った。

 

「ふ、おかわりならある。ドンドン食え」

 

「ありがとうございます!」

 

 さすが食べ盛りの男の子15歳。

 妹達より遥かに勢いよく食べる。

 挟むためのパンを多めに持ってきて良かった。

 

 喜んで食べていくゼクードを見ると、昔の妹達を思い出す。

 可愛かった妹たちは、今では自分で料理できるようになって、手が掛からなくなってきた。

 

 いろいろ面倒を見てきた姉としては楽になったのだが、正直つまらなく、寂しくもあった。

 でもやはり料理を喜んでくれるゼクードを見ると、誰かのために料理をするのは楽しいし、嬉しいものだ。

 

 それに見たところやはり両親はいないようだし、一つ提案してみるか。

 

「どうだ隊長。良ければ今後、夜食の支度は私がしてやってもいいぞ」

 

「え!? いや、それは嬉しいですけどさすがに悪いですよ!」

 

「構わん。どうせ妹たちの手が離れてつまらなくなってたところだ。新しくできた弟の面倒を見るつもりでやってやる」

 

「そ、それって毎日やってくれるってことですか?」

 

「嫌か?」

 

「嫌じゃないですよ! 俺にはメリット有りすぎて嬉しいですし! ただこれカティアさん側がなんのメリットもないっていうか、面倒しかないっていうか……」

 

「メリットならある」

 

「え?」

 

 そう、メリットはこうしてゼクードと会話する機会を増やし、強さの秘訣を探れるところだ。

 だから。

 

「お前とこうしてたくさん会うことができて、会話もできるだろう?」

 

 言うとゼクードが赤くなった。

 なぜ赤くなるのか、と一瞬わからなかった。

 しかしカティアは自分の言葉を振り返り、あきらかに自分がゼクードとたくさん会いたいという形になっていることに気づいた。

 

 気づいてカティアもボッと顔を赤くした。

 

「ぁ、いや、違うぞ! お前とたくさん会いたいわけじゃなくてだな! 夜食に一人は寂しいだろうと思ってだな……その……」

 

 自分で言ってて苦しくなってきた。

 何て言えばいいんだこれ?

 お前の強さの秘訣を教えろとストレートに言えば良かったかもしれない。

 

「……カティアさんって、優しいんですね」

 

 ゼクードがそれこそ本当に嬉しそうにカティアに向かって言っていた。

 

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