【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった 作:ミズノみすぎ
俺は味方のS級騎士たちと共に、先にキャンプへ戻っていた。
その道中で【救難信号】を即座に射ったことを褒めたら、みな複雑そうな顔をした。
なんでも話を聞けば、みんなあの女騎士たちに襲撃されたからやむを得ず【救難信号】を射ったのだと言う。
『新たなる人類の発見かと思いきや敵だった』という、どんでん返しをくらったそうだ。
今回は俺も含めてみんなそうだろう。
女のフランベールたちだけでやっていればこうはならなかったかもしれないが……まぁ結果論だ。
俺たち以外の人類がいるなんて、思ってもなかったからな。
なんにせよ、味方の被害はゼロ。
俺にとってはそれだけでも十分だ。
あとはカティアたちが上手くやってくれることを祈るしかない。
※
「──という事で、向こうの女王が頷かないことには話が進まない」
数時間後にローエ・カティア・フランベールがキャンプへ帰還した。
諸々の説明を受けて、俺は焚き火の前で頷く。
「なるほどね。それでレイゼたちに女王の説得をお願いしてきたってわけか」
隣のフランベールが「うん」と相槌を打つ。
「女王様の名は【ロゼ・シエルグリス】。国の名も彼女の名に則して【シエルグリス王国】という名前らしいわ」
「ロゼ・シエルグリス……」
あれ?
なんだ?
なんか聞いたことあるような、ないような?
……ダメだ。ぜんっぜん思い出せない。
こういう時って何かしら忘れてるだけで、実はちゃんとどこかで聞いてるってパターンが多いんだよな。
でなきゃこんな脳裏に引っ掛かるような感覚はそもそも生まれない。
誰だったかな?
国王かグリータか、誰かにこの名前を聞かれた気がする。
「かなりの美人さんらしいよ? リベカさん達が言ってた」
「おお、それは是非お目にかかりたいな」
妻たちの前で敢えて目を輝かせて言ってみた。
というか乗ってみた。
カティアやローエたちが嫉妬して怒ってこないか、ちょっと期待してやってみたのだが。
「ふふ、あなたらしい反応ですわね」
「相変わらず好きな奴だ」
予想外にもローエやカティアたちに笑われた。
しかもそれだけで終わった。
寛大というかなんというか……ちょっとは怒ってもいいのよ?
こう、ギロッと睨んで頬をつねってきても、いいのよ?
「問題なのは『説得が失敗した時』と『女騎士しか協力を許されなかった時』だね。その時のことを考えておかないと。レイゼさんは説得頑張るって言ってたけど、念のためにね?」
俺の願いはむなしく届かず、フランベールたちが話の続きを開始してきた。
これはあれだ。
三人とも俺のこと信じてくれている。
というのことにしておこう。
他所の女性に鼻の下を伸ばしても何も言われないのは、ちょっと寂しいが。
「説得が失敗した時はもうお互い勝手にやるしかないが、一番困るのは女騎士しか許されなかった場合だ。お前を連れて行けなくなるからな。ゼクード」
カティアが言うとフランベールが続けた。
「今回討伐した二匹のドラゴンも、おそらく雪の元凶とは思えないの。親玉の取り巻きか、雑魚の類だと思う」
たしかに雪が弱まる気配はない。
フランベールの仮説は正しいのだろう。
親玉がいるとしたら、いったいどこに?
いやそもそも──
「──どこから来たんだろうな。そいつら」
前から思っていた疑問を、俺はそれとなく口にした。
この辺に今になって現れた理由は、もしかしたらディザスタードラゴンという脅威が居なくなったからなのか?
タイミング的にはそれで説明できるが、そもそも今までどこにいたのだろう?
一個人の人間である俺に答えなど出せるはずもなかった。
それに今回の奴らは二匹とも翼が有ったそうだ。
格下であろうドラゴンたちに翼があるのなら、親玉にも翼はあるだろう。
みなが飛行可能なら大移動は容易だろうし、どこから来てもおかしくはない。
「分からないけど、世界は広いのよ。この大陸に人類が繁栄したのだって、ドラゴンの脅威が少なかったからだって、昔の文献には記されていたみたいだから」
肩に積もった雪を払いながらフランベールが言う。
確かにこんな環境を変えてしまうようなドラゴンがいたら人類は繁栄できなかっただろう。
ほとんどがA級ドラゴンで、最大の脅威がA級ドラゴンだったこの大地でなんとか人類が生き残れたというのなら、なんとなく納得はできる。
でも昔の人達って、今みたいに大した武器などなかったんじゃなかろうか?
石とかそんなのでドラゴンと戦ってきたのなら、昔の人達は俺たちの何倍も強い人間だったんじゃ?
そう考えると凄いな。
ミスリル装備でディザスタードラゴンに深傷を負わせたオヤジも凄いと尊敬していたが、昔の人間たちはもっと凄い。
女性への扱いはどうだったのかが気になるところだが。
「じゃあフラン。ドラゴンのいない大陸とかって無かったのか?」
「ごめん。分からないの。わたしはこの大陸がそうだったんじゃないかって思ってるよ。今はもうドラゴンだらけだけどね」
「あぁ、なるほどね」
そもそも最初はドラゴンがいなかった説があるのか。
だとしたら、あれだな、うん。
『もし本当にドラゴンのいない場所があったら、そこに国を建てて、ずっと平和に暮らせると思わねーか?』
こんなことを言っていたグリータを思い出すぜ。
もう暮らしてましたってオチだし。
「グリータには聞かせたくないなぁそれ」
「どうして?」っとフランベールが首を傾げる。
「いや、ちょっとね」っと俺は苦笑しかできなかった。
「まぁとにかく、今は【ヨコアナ】へ戻りましょう。この事を報告して、今後のプランを考えておかないといけませんわ」
ローエがまとめて、俺は頷く。
「そうだな。一旦帰還しよう。ところでレイゼ達からの報告って、どう受け取る事になってるんだ?」
「3日後にレイゼ達のキャンプ場で合流することになってますわ。そこで結果を聞くことになってますの」
「えっ!?」
み、3日!?
たったの!?
「どうした?」っとカティアは気づいてない。
「いやいやいやいや……3日後って短くない!?」
「え、そうかな? できるだけ早く行動したいし、こんなものだと思うけど」
フランベールも気づいてない!
「違う! そーじゃなくて! 3日後って言ったら【ヨコアナ】に戻ってたら間に合わないじゃん!【竜軍の森】に着くのに3日も掛かってるんだぞ!」
「「「あ」」」
「おバカアアアアアアアアアアアアアアアア!」