【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第130話【家族愛】

 結局、ローエたち【フォルス隊】は【ヨコアナ】へ帰還しなかった。

 というか、できなかった。

 

 時間設定のミスはローエ・カティア・フランベールがやらかした事なので【フォルス隊】に責任がある。

 ゼクードも例外ではない。

 

 他のS級騎士たちを報告のために【ヨコアナ】へ帰還させ【フォルス隊】は【竜軍の森】で待機することになった。

 こんな極寒の状態で。

 

「寒いですわ……」

 

「寒いね……」

 

 待機一日目の夜は、ローエとフランベールが先にテントの中で休むことになった。外の見張りはゼクードとカティアである。

 キャンプ場での待機は、やはり寒さとの戦いだった。

 

 外気を防ぎ切れないテントからは冷えが入り込み、毛布でクルまるローエたちの体温を奪っていく。

 

「ふぅぅ……グロリアたちに会いたいですわ……」

 

「うん、わたしも……」

 

 もう3日も会っていない我が子たちに思いを馳せ、ローエとフランベールは毛布を深くかぶった。

 

「…………ねぇローエさん」

 

「はい?」

 

「寒いからくっついていい?」

 

「え!?」

 

 突然のフランベールのお願いにローエは驚いた。

 

「ダメ?」とどこか可愛らしい目付きで聞いてくるフランベールに、ローエはすぐに『良いですわよ?』と言おうとした。

 しかし、すぐにやめた。

 良いことを思い付いたのだ。

 

「ん~…………ダメですわね」

 

「どうして?」

 

「ローエって呼んでくれたら良いですわよ?」

 

「え!?」

 

「ローエって呼び捨てにしてくれたら、添い寝してあげますわ」

 

「な、なんで呼び捨てで!?」

 

 本気で驚いているフランベールが面白く、可愛かった。

 

「だってあなたが一番年上なのに、わたくし達だけあなたを呼び捨てにするなんて変ですわ」

 

「そんなの気にしてないよ。みんな大好きだし」

 

「大好きなら呼び捨てくらいしてほしいですわね?」

 

「そ、それは、ちょっと……」

 

「じゃ、添い寝はしてあげませんわ」

 

「……ケチ」

 

 あ、拗ねましたわ。

 

「ケチじゃありません」

 

「ローエさん……お願い……」

 

 口元を毛布で隠し、眼をウルウルさせるフランベール。

 そんな彼女の眼差しにローエの心臓に矢が刺さりまくる。

 

「……ダ、ダメですわよ? そんな目したって絶対にダメですからね?」

 

 許してしまいそうになる自分を律し、ローエはあくまで心を鬼にした。

 するとフランベールはしばらく黙り、どこか重い口を開いた。

 

「……わたし、母が厳しかったから」

 

「え?」

 

「異端な女は全てにおいて下だから、相手を呼び捨てにする権利はないって」

 

「!」

 

 異端な女は全てにおいて下!?

 なんてことを……

 親が子に言うことか?

 

「昔、友達をうっかり呼び捨てにしちゃってお母さんに殴られたわ」

 

「そんなことで!?」

 

「それがトラウマになっちゃったのかな。誰かを呼び捨てにしようとしたら、舌を噛むようになっちゃって……」

 

 ……そうか。

 そうだったのか。

 誰かを呼び捨てにすれば殴られる。

 

 それがトラウマとなり、誰かを呼び捨てにしようとすると条件反射のようにブレーキが掛かって舌を噛むのか。

 

 そう言うことだったのか。

 

「……ごめんなさい。フラン」

 

「ううん。わたしの方こそごめんね」

 

「その友達の方は、今は?」

 

「二年前の『あの時』に死んじゃった。でも、もう友達じゃなかったから、別に、気にしてないよ」

 

「まさか……」

 

 フランベールは小さく頷く。

 

「その子にわたしが【異端】だってバレちゃってね。振られちゃったんだ」

 

【異端】というだけで友達さえも去っていく。

 ローエにも経験があるからフランベールの気持ちは痛いほど分かった。

 

 そしてフランベールが自分たちを呼び捨てに出来ないことも、やっと理解できた。

 呼び捨てにできないのなら、わたくし達がそれを受け入れてあげれば良いだけなのだから。

 

 ローエはそっと、フランベールを後ろから抱き締めた。

 

「あ……」

 

「……あら、フランの身体、とっても暖かいですわね」

 

 お互いの毛布を交わせ、身体を密着させていく。

 フランベールの肢体は本当に暖かった。

 これは、もしかして……

 

「ローエさんこそ、凄くあったかいよ……」

 

 自分と同じく高い体温だ。

 ローエはフランベールのヘソの下を優しく撫でる。

 

「ふふ、もしかしたら、もうデキてるかもしれませんわね」

 

「え?」

 

「ゼクードの二人目の赤ちゃんですわ」

 

 包み隠さずそう言うと、フランベールは「あ、そっか」と思い出したように答えた。

 

「なんか最近ずっと体温が高いような気がしてたから……そっか、そういうことか。タイミング的にもそうだね」

 

「間違いありませんわ。わたくしたち揃ってボケてしまって3日後に約束してしまったのは妊娠のせいかもしれませんわね」

 

 妊娠すると妙にボケてしまったりするから、無い話ではないと思ったのだが。

 

「そ、それを赤ちゃんのせいにするのはどうかな……はは」

 

 フランベールはさすがに苦笑してた。

 赤ちゃんのせいにしたらダメみたいですわ。

 残念。

 

「なんにせよ、わたくし達に時間がないことが分かってきましたわね」

 

「そうだね。妊娠で動けなくなる前に今回の件を片付けないと」

 

「ですわね。ま、今はどのみち下手に動けませんわ。今日はもう寝ましょう」

 

「うん」

 

「ほらフラン。もっとこっちに」

 

「ぁ、ローエさん……」

 

 ローエはフランベールを包み込むように抱き締める。

 お互いに高い体温を維持する身体は、まるで支え合うかのように暖まり始めた。

 

「こうすれば、わたくし達も、お腹の子達も、寒がることはありませんわ」

 

「うん……ありがとうローエさん。大好き」

 

「わたくしも大好きですわ。フラン」

 

 家族愛を感じながら、二人は暖かい夜を過ごした。

 

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