【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった 作:ミズノみすぎ
二日目の夜。
ローエとフランベールが見張りをする中、俺はカティアとテントで休んでいた。
「しっかし【シエルグリス王国】かぁ……あんな国があったなんてなぁ」
カティアの隣で横になる俺は、頭の下に手を組みながら言った。
「そうだな。しかも我々の国の事を知っている連中だった。過去に作られた国は【エルガンディ】で最後じゃなかったということだな」
最後じゃなかった……ってことは五つ目の国ってことか。
この【シエルグリス王国】もまた……女性への善意で作られた国なのだろうか?
そしてまたも男どもが暴走し、女たちに反逆された。
そんなオチだろうか。
端迷惑な連中である。
「今回の任務はカティアたちが居て本当に良かったよ。もし居なかったら、上手く止められなくて、最悪殺し合いになってたかもしれない」
「そうかもしれんな。だが私も最初はリベカに逃げられた口だ。本当の功労者はフランだろう。レイゼに一発かましたんだってな?」
「そうそう。いきなり出て来てスーパービンタしてたよ。しかもあの時のフランめっちゃ怖かった。俺でも全身がすくんだね」
「フランは滅多に怒らないからな。いや、そもそも怒ったところを見たことがないな」
「カティアはすぐ怒るのに……」
「なんだと?」
ひっ!
ナイフのような眼光が俺に向けられた。
「──って、ローエが言ってました。はい」
「あのローエがそんなこと…………言ってるだろうが嘘つくな! お前だろう今のは!」
「ほらぁ~すぐ怒る~」
「……本気で殴るぞ?」
毛布の中から手を出して、握り拳にしてきた。
「ご、ごめんなさい! 殴らないでマジで!」
「まったく……」
溜め息を吐いたカティアは俺のいない反対方向へ姿勢を変えた。
リボンを外したカティアのロングヘアーがさらりと枕に流れた。
ふわりと甘く優しい香りが漂い、俺は思わずウットリする。
「……すまん」
「え?」
いきなり謝ってきたカティアの背を見た。
「短気は自覚はしてる。直す努力はしてるんだが……その、すまん」
その声音は、あまりにも本気だった。
自分と向き合っている人間にしか、出せないような……そんな声な気がした。
カティアはいつも自身と格闘しているようなところがある。
だからなのか。
今の言葉もとても信用できる。
そしてやはり、カティアという女の魅力はここにある気がした。
「俺……カティアのそういうところ好き」
「な、なに?」
カティアが驚いてこちらに顔を向けてくる。
俺はたまらず詰め寄った。
「可愛い。本当に」
「な、なんだ急に! やめろ! ……っていうか近い!」
「夫婦なんだし良いじゃん。キスしよ?」
「んな! こ、断る!」
「やだ。今のカティア本当に可愛いからキスしたい!」
「お前な……」
「一回だけ! 一回だけでいいから!」
完全にカティアに魅了されている。
二人っきりのテント内で、同じ毛布に入ってるから余計に。
俺はカティアを抱き締め、逃げられないようにした。
キスをせがまれたカティアは猛烈に顔を赤くして、目線を逸らしてきた。
でも抵抗らしい抵抗はしてこなかった。
「…………本当に一回だけだぞ?」
やった!
内心で歓喜し、俺はしっかりと頷き返す。
するとカティアは意を決したように目を閉じて、俺がキスしやすいように唇を差し出してくれた。
俺は遠慮なく、カティアと唇を重ねた。
彼女の顔を両手で包み込むと、カティアも俺の身体に抱きついてきた。
ほんの数十秒だったが、お互いを堪能して唇を離す。
「は~……気が済んだ」
「まったく……」
「カティア凄いドキドキしてただろ?」
「え?」
「鼓動がこっちにまで聞こえたよ。夫婦なのにドキドキしてたんだ?」
「わ、悪いか!」
「悪くない悪くない! 嬉しかっただけだって。そう怒らないで」
ムスッとしたカティアはまた俺に背を向けた。
隙あり! っと俺はカティアを後ろから抱き締めた。
「ぁ、ちょ、ゼクード……」
「良いだろこれくらい。な?」
「……」
カティアは俺の抱擁を許して、受け入れてくれた。
彼女の優しく甘い香りが俺の脳を発情させていく。
身体を密着させると、カティアの体温が直に感じられ、それはとても暖かかった。
「カティアの身体……すっごく暖かいな」
「そうか?」
「うん。暖かくて気持ちいい」
キュッと少し強く抱き締めると、カティアは俺の手に自身の手を添えてきた。
「ゼクード……お前の耳に入れておきたいんだが」
「ん? どしたの?」
「デキたかもしれん」
「え!?」
デキたかもしれんって、まさか!?
「それってまさか、二人目!?」
聞いたらカティアが頷いてきて、俺の手をヘソの下に誘導してきた。
俺はカティアのヘソの下を優しく撫でてみた。
暖かい……とても。
「まだ確定ではないんだが、最近、妙に体温が高い状態が続いているから、もしやと思ってな」
「そうなのか? カーティスの時もそんなこと言ってなかったか? 体温が下がらないとかなんとか」
「ああ。だから今回もそうなのかも、と思ったんだ」
「絶対にデキてるって! やったな! 念願の二人目だ! ありがとなカティア! 本当に!」
「ん……だが、喜んでばかりもいられんぞ?」
「え?」
「本当に妊娠なら、早くしないと私は動けなくなる」
「あ、そっか。つわりや眠気とかも出てくるんだよな?」
「そうだ。そうなるとまともに前線に立てなくなる。そうなる前に今回の任務は達成したい」
「そうだな。でも現実は成るようにしか成らないさ。間に合わなかったら俺に任せとけ」
「だが……」
「へへ、大丈夫。誰の夫だと思ってるんだ? お前が選んだ男だぜ? 任せとけって」
かっこつけて初めてカティアを『お前』と呼んだ気がする。
それはカティア自身も思ったようで、また顔を赤くしていた。
でもそれは、決して『お前』呼ばわりそれた怒りではなかった。
「ふ……たまにはカッコイイじゃないか」
「いつもカッコイイだろ」
「いつもは可愛い」
「え!?」
「……それより、お前の方こそ身体は大丈夫か? 溜まっているなら、その……相手してやるぞ?」
「お願いします!」
俺は即答した。