【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第131話【ゼクードとカティアの夜】

 二日目の夜。

 ローエとフランベールが見張りをする中、俺はカティアとテントで休んでいた。

 

「しっかし【シエルグリス王国】かぁ……あんな国があったなんてなぁ」

 

 カティアの隣で横になる俺は、頭の下に手を組みながら言った。

 

「そうだな。しかも我々の国の事を知っている連中だった。過去に作られた国は【エルガンディ】で最後じゃなかったということだな」

 

 最後じゃなかった……ってことは五つ目の国ってことか。

 この【シエルグリス王国】もまた……女性への善意で作られた国なのだろうか?

 

 そしてまたも男どもが暴走し、女たちに反逆された。

 そんなオチだろうか。

 端迷惑な連中である。

 

「今回の任務はカティアたちが居て本当に良かったよ。もし居なかったら、上手く止められなくて、最悪殺し合いになってたかもしれない」

 

「そうかもしれんな。だが私も最初はリベカに逃げられた口だ。本当の功労者はフランだろう。レイゼに一発かましたんだってな?」

 

「そうそう。いきなり出て来てスーパービンタしてたよ。しかもあの時のフランめっちゃ怖かった。俺でも全身がすくんだね」

 

「フランは滅多に怒らないからな。いや、そもそも怒ったところを見たことがないな」

 

「カティアはすぐ怒るのに……」

 

「なんだと?」

 

 ひっ!

 

 ナイフのような眼光が俺に向けられた。

 

「──って、ローエが言ってました。はい」

 

「あのローエがそんなこと…………言ってるだろうが嘘つくな! お前だろう今のは!」

 

「ほらぁ~すぐ怒る~」

 

「……本気で殴るぞ?」

 

 毛布の中から手を出して、握り拳にしてきた。

 

「ご、ごめんなさい! 殴らないでマジで!」

 

「まったく……」

 

 溜め息を吐いたカティアは俺のいない反対方向へ姿勢を変えた。

 リボンを外したカティアのロングヘアーがさらりと枕に流れた。

 ふわりと甘く優しい香りが漂い、俺は思わずウットリする。

 

「……すまん」

 

「え?」

 

 いきなり謝ってきたカティアの背を見た。

 

「短気は自覚はしてる。直す努力はしてるんだが……その、すまん」

 

 その声音は、あまりにも本気だった。

 自分と向き合っている人間にしか、出せないような……そんな声な気がした。

 

 カティアはいつも自身と格闘しているようなところがある。

 だからなのか。

 今の言葉もとても信用できる。

 

 そしてやはり、カティアという女の魅力はここにある気がした。

 

「俺……カティアのそういうところ好き」

 

「な、なに?」

 

 カティアが驚いてこちらに顔を向けてくる。

 俺はたまらず詰め寄った。

 

「可愛い。本当に」

 

「な、なんだ急に! やめろ! ……っていうか近い!」

 

「夫婦なんだし良いじゃん。キスしよ?」

 

「んな! こ、断る!」

 

「やだ。今のカティア本当に可愛いからキスしたい!」

 

「お前な……」

 

「一回だけ! 一回だけでいいから!」

 

 完全にカティアに魅了されている。

 二人っきりのテント内で、同じ毛布に入ってるから余計に。

 俺はカティアを抱き締め、逃げられないようにした。

 

 キスをせがまれたカティアは猛烈に顔を赤くして、目線を逸らしてきた。

 でも抵抗らしい抵抗はしてこなかった。

 

「…………本当に一回だけだぞ?」

 

 やった!

 

 内心で歓喜し、俺はしっかりと頷き返す。

 するとカティアは意を決したように目を閉じて、俺がキスしやすいように唇を差し出してくれた。

 

 俺は遠慮なく、カティアと唇を重ねた。

 彼女の顔を両手で包み込むと、カティアも俺の身体に抱きついてきた。

 

 ほんの数十秒だったが、お互いを堪能して唇を離す。

 

「は~……気が済んだ」

 

「まったく……」

 

「カティア凄いドキドキしてただろ?」

 

「え?」

 

「鼓動がこっちにまで聞こえたよ。夫婦なのにドキドキしてたんだ?」

 

「わ、悪いか!」

 

「悪くない悪くない! 嬉しかっただけだって。そう怒らないで」

 

 ムスッとしたカティアはまた俺に背を向けた。

 隙あり! っと俺はカティアを後ろから抱き締めた。

 

「ぁ、ちょ、ゼクード……」

 

「良いだろこれくらい。な?」

 

「……」

 

 カティアは俺の抱擁を許して、受け入れてくれた。

 彼女の優しく甘い香りが俺の脳を発情させていく。

 身体を密着させると、カティアの体温が直に感じられ、それはとても暖かかった。

 

「カティアの身体……すっごく暖かいな」

 

「そうか?」

 

「うん。暖かくて気持ちいい」

 

 キュッと少し強く抱き締めると、カティアは俺の手に自身の手を添えてきた。

 

「ゼクード……お前の耳に入れておきたいんだが」

 

「ん? どしたの?」

 

「デキたかもしれん」

 

「え!?」

 

 デキたかもしれんって、まさか!?

 

「それってまさか、二人目!?」

 

 聞いたらカティアが頷いてきて、俺の手をヘソの下に誘導してきた。

 俺はカティアのヘソの下を優しく撫でてみた。

 暖かい……とても。

 

「まだ確定ではないんだが、最近、妙に体温が高い状態が続いているから、もしやと思ってな」

 

「そうなのか? カーティスの時もそんなこと言ってなかったか? 体温が下がらないとかなんとか」

 

「ああ。だから今回もそうなのかも、と思ったんだ」

 

「絶対にデキてるって! やったな! 念願の二人目だ! ありがとなカティア! 本当に!」

 

「ん……だが、喜んでばかりもいられんぞ?」

 

「え?」

 

「本当に妊娠なら、早くしないと私は動けなくなる」

 

「あ、そっか。つわりや眠気とかも出てくるんだよな?」

 

「そうだ。そうなるとまともに前線に立てなくなる。そうなる前に今回の任務は達成したい」

 

「そうだな。でも現実は成るようにしか成らないさ。間に合わなかったら俺に任せとけ」

 

「だが……」

 

「へへ、大丈夫。誰の夫だと思ってるんだ? お前が選んだ男だぜ? 任せとけって」

 

 かっこつけて初めてカティアを『お前』と呼んだ気がする。

 それはカティア自身も思ったようで、また顔を赤くしていた。

 でもそれは、決して『お前』呼ばわりそれた怒りではなかった。

 

「ふ……たまにはカッコイイじゃないか」

 

「いつもカッコイイだろ」

 

「いつもは可愛い」

 

「え!?」

 

「……それより、お前の方こそ身体は大丈夫か? 溜まっているなら、その……相手してやるぞ?」

 

「お願いします!」

 

 俺は即答した。

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