【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第139話【姑と弟嫁】

 俺は女王との密談を終えて、ローエ達が待つ中央ホールに向かった。

 扉を開けると、そこにはテーブルを囲んで座るローエ・カティア・フランベール。そして姉のレイゼがいた。

 

 彼女たちの視線が入ってきた俺に集中する。

 

「レイゼ」

 

「あん?」

 

「女王様が部屋に来てくれって」

 

「部屋? 玉座じゃねぇのか?」

 

「違う。自室だってさ」

 

「なんでだよ?」

 

「大事な話があるらしい」

 

「はぁ?」

 

「後で俺も行くから」

 

 優しく囁くと、レイゼはさすがに気持ち悪そうな顔をして俺を見ながら「ぉ、おう……」とこの部屋を去っていく。

 

 ガサツな女騎士も……自分と似たような血が流れている姉だと知れば、案外と可愛く見えた。

 そんな姉の背中を見送っていると。 

 

「話はまとまったのか?」っとカティアに聞かれた。

 

 俺は頷いて返し、レイゼの座っていた椅子に腰を下ろした。 

 

「ああ。だが思った以上に事態は深刻かもしれない。ここから西へ行くと【ブルーマウンテン】っていう雪山があるらしい。そこへ今日戻ってなければいけないはずの偵察部隊がまだ帰還してないらしいんだ」

 

「まさか!」

 

 ローエが察して、俺はまた頷いて続ける。

 

「雪による遭難かもしれないし、雪のドラゴンと遭遇したのかもしれない。両方の可能性もある」

 

「どうするのゼクードくん?」

 

「無論【シエルグリス】に協力する。本当に遭難したなら一刻を争う。今日中に準備して明日には【ブルーマウンテン】へ救助に向かう。女王様はレイゼ・リベカ・ミオンや、他の女騎士たちも集めて救助部隊を何個か編成するそうだ」

 

「わたくし達もそれに参加するのですわね?」

 

「そうだ。出来ればいったん【ヨコアナ】へ帰還していろいろ報告して……子供にも会いたかったが……今は人命が掛かってる。こっちを優先しよう。何か質問はあるか?」

 

 するとローエが手を上げた。

 

「なんだローエ?」

 

「話は逸れるのですがゼクード? あの女王と何の話をしていたんですの?」

 

「ああ、それなんだが……俺の妻であるみんなには、絶対に知っておいてほしい事だ。だから心して聞いてほしい」

 

 重要な事だから、真剣な声音で俺は話した。

 それで重い話だと察したらしいフランベールたちは顔を険しくする。

 

「もしかして……やっぱりあの方はゼクードくんのお父様の──」

 

「うん。実は──」

 

「──愛人なんだね」

「愛人か」

「愛人ですのね」

 

「いや違う! 違うから! 奥さんだから!」

 

「え、奥さん?」っとフランベール。

 

「親父のもう一人の奥さんだよ! 愛人じゃない!」

 

「再婚相手ですの!?」

「浮気か?」

 

「うん、少し落ち着こうか? 違うからね? ちゃんと婚約してたらしいよ? うちのお母さんも承認済みだったって話だし」

 

「んー……そのもう一人の奥さんがナンデこんなところにいるの?」

 

 フランベールの疑問はもっともだった。

 

「それを今から説明するからちゃんと聞いてくれ」

 

 そして俺はロゼ女王の過去をフランベールたちに伝えた。

 ロゼ女王にとっては知られたくない部分もある過去だろう。

 しかし、ローエたちも【フォルス家】である以上は知る権利がある。いや、知っておかねばならないことだ。

 

「……そうか。そんな過去が……」

 

 カティアが顔を暗くし、小さく俯く。

 すると次いでフランベールが口を開いた。

 

「聞いたことあるよ。一夜で何人もの男と女性が消えたって事件。門番の男達もグルだったらしくて、簡単に国から脱走されたらしいわ。どこに消えたかもまったく手掛かりがなかったみたい」

 

 おお、さすが最年長のフランベール。

 過去の事件について、多少は知っているようだ。

 ならば……

 

「……フラン。俺の親父がそれで何か動いてたとか、そんな話はなかったか?」

 

「ごめん。そこまでの情報はちょっと……」

 

「そっか……」

 

 残念。

 親父の真実が分かれば、もっと女王を喜ばせてあげられると思ったのだが。

 

「まさかこんな【竜軍の森】の奥地まで逃げて、こんな王国を築いてたなんて。さすがに思い至りませんわ」

 

「だよなぁ……」っと俺はローエに同意する。

 

「ん……ま、よく分かった。つまりあのロゼ女王は、お前のもう一人の母親だということだな?」

 

 カティアに聞かれ、俺はまたも頷く。

 

「ああ。それで間違いない。突然で戸惑うかもしれないけど」

 

「いや、お前が一番戸惑ってるんじゃないのか?」

「大丈夫ですの? ゼクード」

 

 カティアとローエに心配されて、俺は頬を掻く。

 

「はは、俺は大丈夫だよ。親父と勘違いされて本気で泣かれて、殴られて、怒鳴られて……そのせいか案外とすんなり受け入れられたよ」

 

「だろうな」っとカティアが笑うと、釣られてローエとフランベールも笑い出した。

 

「ならロゼ女王様はわたくし達の(しゅうと)となりますのね。……あら? でもゼクードの母はセレン様ですわよね? 義母になるのかしら?」

 

「姑で合ってるよローエさん。わたしの家もそうだったから」

 

 フランベールが説明した。

 さすが最年長……いや、これは違うな。

 さすが一夫多妻の家庭で育っただけあって詳しい。

 

「あ~そうそう。まだあったんだ。みんな、あのガサツな女騎士レイゼの事なんだけど……彼女は女王様の娘らしいんだ」

 

「え!? それって!」

 

 フランベールがやたら素早く反応してきた。

 今度は愛人ネタは無しだぞフラン。

 

「ああ、うん。どうにも腹違いの姉弟みたいで……俺の姉になるらしい」

 

「やっぱり!」っとフランベール。

 

「やっぱり?」

 

「あ、いや、似てるなぁって思ってたから……」

 

 フランベールの言葉にカティアとローエも同意なのか頷く。

 

「いや似てないだろ……色だけで言ってない?」

 

「「「うん」」」

 

 三人ともこの反応だった。

 

「と、とにかく! レイゼは俺の姉さんらしいから、その辺もどうかよろしく頼むよみんな」

 

 俺は無理矢理に話を進めると「了解よ」とフランベールが言った。

 しかしローエが首を傾げる。

 

「フランはレイゼより年上ですわ。この場合はなんて言いますの?」

 

 ……あ、ホントだ。

 兄嫁って言葉なら聞いたことあるけど、この場合はなんて呼ぶんだ?

 

「普通に弟嫁《おとよめ》だ」

 

 カティアが即答してきた。

 

「なるほど」

「なるほど」

 

 俺とローエは思わず同時に納得した。

 さすがカティアも一夫多妻の家庭で育っただけあった。

 

 

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