【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第140話【レイゼの邪念】

「話ってなんだよ?」

 

 女王の自室に来たレイゼの第一声がそれだった。

 向かいに立つ女王は、どこか落ちつきなく、柄にもなくタジタジしている。

 

「レイゼ……実は、その……」

 

「あん?」

 

「そ、その……ゼ、ゼクードとお前はきょぅ……今日も可愛いな」

 

「はぁ!?」

 

 何言ってんだコイツ?

 歳でついに頭が沸いたか?

 

「ぁあいや! 違う! 間違えた! お前なんか全然可愛くないぞ! まだゼクードの方が可愛い!」

 

「悪かったな! なんであいつが出てくるんだよ! てか何なんだよそれ! 呼び出しておいてそんな事か!?」

 

「違う! 間違えたと言っただろう!」

 

「じゃあなんだよ!」

 

「いやそれはそのぉ……あれだ。分かるだろう?」

 

「いや分かんねーよ」

 

「だから、その……お前とゼクードが姉弟だと言ったら、信じるか?」

 

 ──……?

 オレとあの片眼野郎が姉弟?

 

 不思議と、そこまでの衝撃は覚えなかった。

 おそらく事前に【謁見の間】で見た女王の暴走のおかげだろう。

 

 なんとなく、だが……そんな気はしていた。

 フォレッドという男が女王の過去の男だと言うのも、あの話の流れでだいたい予想は出来ていた。

 

 だから、なのか。

 ゼクードと姉弟だと言われても、そこまでのショックは感じない。

 むしろ──

 

「ふ~ん……オレとあいつが姉弟ねぇ。ミオンが似てる似てるってうるさかったなぁ。そういや」

 

「これは本当の事なんだレイゼ。今から説明するから……聞いてほしい。頼む」

 

 女王の真剣な眼差しが、レイゼの黒い瞳に映った。

 まったく同じ色の瞳が重なる。

 

 

 リベカにローエたちの案内を任せ、俺は女王の自室に戻っていた。

 自室の扉を開けようと、ドアノブに手を掛けると中から声が聴こえた。

 

「──というわけなんだ。私はフォレッドを……信じ切れなかった。お前になんて説明すればいいのか……分からなかったんだ……すまない」

 

「ふ~ん……じゃあオレは、あんたの好きな男の娘なんだな?」

 

「ああ。それは間違いない」

 

 ロゼ女王とレイゼの声だった。

 もう話が始まっているようで、入りづらい。

 俺は乱入するべきかどうか悩んでしまった。

 

 今まさに重大なカミングアウトをしているところだから。

 

「そうか……そうならそうと、さっさと言ってくれれば良かったのにな」

 

「……ごめんなさい」

 

 女王は絞り出すような声でレイゼに謝った。

 声しか聞こえないが、レイゼはどうな顔をしているのだろう?

 

「……オレはずっと自分の事を……好きでもない男との間に出来た子供だと思ってた」

 

 レイゼが淡々とした声音で語り出した。

 

「あんた相手してくれなかったもんな? 子供頃からずっと」

 

「ち、違う! それは国の事で忙しかっただけで……」

 

「分かってるよそんな事は!」

 

 レイゼが怒鳴った。

 扉越しなのに、俺は驚いてビクついてしまった。

 それだけ本気の怒鳴り声だったのだ。

 

「でもな? あんたが先にそのフォレッドの事を教えてくれていれば! オレだってこうはならなかったさ!」

 

「だ、だから、それは……フォレッドが、どっちだったのか分からなかったから……」

 

「分からなかったんならウソでもついてくれりゃ良かったじゃねぇか! ウソでもなんでも……「お前は私の愛した男の娘だよ」って言ってくれたら、どれだけ救われたか!」

 

 レイゼ……

 

「それさえ知ってりゃ……あんたがどれだけオレを放ったらかして仕事してても、忙しいだけなんだって割り切れたかもしれねぇのに……」

 

 レイゼの声が、震え出していた。

 泣いている……。

 

「好きでもない男の娘だから遊んでくれない……そんな邪念も生まれなかったんだ!」

 

「レ、レイゼ!」

 

「来んなよ! ……ちょっと頭冷やしてくるだけだ」

 

 足音が近付いてきて、俺は咄嗟に扉から離れた。

 バンッ! と荒々しく扉が開かれ、そこからレイゼが……涙で頬を濡らしたまま出てきた。

 

 正面の俺を見たレイゼは目を見開き、すぐに険しい顔つきになった。

 何か言ってくると身構えたが、舌打ちだけして去って行った。

 

 追いかけるべきか?

 

 一瞬悩んだが、追いかけた先で……なんて声を掛けたらいいのだろう?

 

 答えは出ず、気がつけばレイゼは廊下の曲がり角へ行ってしまい見えなくなった。

 俺は女王の方へ視線をやった。

 

 女王は……義母は……俯いて泣いていた。

 

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