【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった 作:ミズノみすぎ
レイゼは頭を冷やしたくて、冷たい風に当たろうと城のバルコニーに出てきた。
日も沈み始めているのか、外は暗い。
雪も未だに降り続けている。
クールダウンには良いが、やはり全身には寒過ぎる。
レイゼはマントを羽織りながらバルコニーの先端へ。
欄干に積もる雪を払い、肘を乗せて溜め息を吐いた。
前方に広がる街の景色を眺めていると。
「だ~れだ」
視界が真っ暗になった。
柔らかい誰かの手に、後ろから両目を塞がれた。
「……やめてくれミオン。今そんな気分じゃねぇんだ」
いつもならもう少しキツめに言って払いのけるのだが、今は本当にそんな気力もないので動かない。言葉だけ。
「どしたの?」
手を離して隣に来たミオンが目を丸くした。
あまりに抵抗しないレイゼに驚いてるようだった。
「べつに」
「聞いてあげるよ?」
「なんでもねぇって」
「目ぇ真っ赤じゃん」
「……欠伸しただけだよ」
「ふ~ん」
どう見ても納得してないミオンが、レイゼの顔を覗き込んで来た。
「で、どしたの?」
「いや、お前なぁ……」
完全に何かあったとバレてるんだろうなコレ。
こうなったミオンはしつこい。
この際だ……ミオンになら打ち明けてもいいか?
「レイゼちゃん。お姉さんに話してごらん?」
お姉さんって……ああでもそうか。
ミオンの方が二個ほど年上だったなそういや。
ああ言ってるんだ。お言葉に甘えよう。
「……じゃあ──」
レイゼはミオンに事の顛末を話した。
女王と自分の事を。
ゼクードと自分の関係を。
「へー、あのゼクードっていう男、レイゼちゃんの弟なんだ。やっぱり似てると思った」
「いやだから似てねぇって。色だけで言ってねぇか?」
「うん」
即答である。
くそったれ。
「でもリベカちゃんも言ってたよ? 似てるって」
「色がか?」
「うん」
こいつら!
「怒るぞ?」
「まぁまぁ怒っちゃダメ~」
ニヘヘと笑うミオンに脱力し、レイゼは再び欄干に肘を置いて大きな息を吐いた。
「……何のために今まで我慢してきたのか、分かんねーな」
「え?」
「遊んでほしい。構ってほしい。見てほしい。オレは……ずっとそれを我慢してた。望んで生んだ子供じゃないから、愛されてないと思ってた」
ふんふん、とミオンが頷く。
「国の仕事仕事仕事仕事ってさ……そりゃ女王だもんな。トップが暇なワケねぇもんな」
ふんふんふん、とミオンがさらに頷く。
「でもよ……それならせめて、子供だましでも良いから、ウソついて欲しかった……そしたらこんなに嫌いにならなかったのに……」
「本当に嫌いにならなかった?」
それは鋭いミオンの一言だった。
虚を突かれた思いで、レイゼはミオンに視線をやる。
「ウソつかれても、遊んで貰えないのは変わらないんだよ?」
「それは……」
「レイゼちゃんはいま大人だからそう言えるだけだよ。子供の時に遊んで貰えなかったら、どんな理由があっても嫌いになると思うよ?」
確信が持てない部分に、ミオンは的確に突き刺してくる。
変わらない未来を、残酷にもぶつけてくる。
そしてそれを真っ向から否定できない自分もいた。
「はは……オレはどのみち……母さんを嫌いになってたって事か?」
「うん」
また……即答である。
「いいじゃん別に。これから好きになっていけば良いんだから」
「簡単に言うなよ……」
「あたしなんてお母さんに捨てられたらしいからね。でもレイゼちゃんならまだなんとかなるじゃん?」
「!」
そうだった……ミオンは……
身元が分からないんだった。